輸出は決して甘くない!

瀬高町の南筑後地域農業改良普及センターで開催された
研修会に参加させていただいた。

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会場の南筑後普及センター

センターは福岡県の組織で、今回で2度目の参加となる。

県南に位置する南筑後地区八女(やめ)地区が対象で
今、農産物の海外輸出に熱心だといわれる福岡県にあって
とりわけ積極的に取り組んでいるチャレンジ精神に富む地域でもある。

主な産品は、野菜ではイチゴ(あまおう)が出色で、ほかにナスやトマトがあり、果樹ではみかん、ぶどう、モモ、キウイなどだ。
(ちなみにイチゴはフルーツではあるのだが、分類上野菜に属している)

また、日本一の産量を誇る玉露を有する緑茶の産地でもあり、
電照菊などの花卉類も有名だ。

輸出に対しては、年間を通じて多品種で臨む戦略をとっている福岡県ではその候補となる商品群の有力な供給元のひとつでもある。

情報交換の場においても、普及職員の皆さんはとても熱心で気迫すら感じる。

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単に関心を示すだけでなくて、この数年の輸出供給の経験から
その困難さや現状の限界についても、最前線で肌で感じているので
かなりシビアな議論も行なった。

輸出が現場の生産者に利益をもたらすまでは、
まだまだ多くの問題を解決しなければならない。

話題が先行しがちな農産物の輸出において、
パイオニアである福岡県関係者の意識は、
ここにきてむしろ強い緊張感を感じている

「輸出はそんなに甘くない!」

そんな言葉が現場から聞こえてきた今こそ、
これを乗り切る正念場だ。

批判や人任せでは決して前進しない。
信念と行動、熱い思いと冷静な知恵が今求められている。

誰もやったことのない新しい挑戦なのだから。

その意味で、生産者と海外需要家をつなぐ、各地の普及センターやJAの職員の皆さんともっともっと議論を深めていきたい。

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麦秋の筑後平野

折りしも、残留農薬のポジティブリスト制度を核とする改正食品衛生法が施行されるにあたり、現場産地の対応は本当に多忙を極めている。

生産者と消費者ともに安心できる農業実現のために今何をなすべきなのか改めて自問自答しながら帰路についた。

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瀬高の町

新聞報道に掲載

11日付の西日本新聞と10日付の毎日新聞に福岡県の農産物輸出に関する記事が掲載された。
ネット配信から記事全文および画像もそのまま引用させていただく。

県産農産物の輸出好調 05年度、過去最高の6億円超 アジアで販路拡大 高級志向「あまおう」人気

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台湾や香港に向けの輸出が好調な県産イチゴ「あまおう」

 2005年度の県産農産物の輸出は、特産のイチゴ「あまおう」の輸出量が前年と比べ1.7倍に増えるなど好調で、輸出総額は過去最高の6億1000万円となった。海外で農産物をPRする「福岡フェア」の開催や、シンガポールなどへの新販路開拓などが効果を上げた。今後はアジア向けの販売戦略をさらに強化し、08年度までに輸出額20億円達成を目指す。

■「08年度までに20億円」

 県によると、県農産物は、イチゴ、カキ、ブドウなどの果物や野菜類など約25品目が、中国や香港、台湾など9地域に出荷されている。輸出額は、03年度の2億100万円が、04年度に4億2500万円、05年度には6億1000万円と順調に伸びている。

 05年度は、ナシを初めて中国・上海に輸出し、百貨店で本格的なセールスを展開。海外の流通業者を個別に招き、県内の産地との商談をまとめるなど販路の拡大にも取り組んできた。特に、「あまおう」は消費者の高級志向が高まっている台湾や香港で人気。03年度に1.4トンだった輸出量は、04年度23.4トン、05年度40トンと急増している。

 県は、アジア諸国と地理的に近く、鮮度を保った状態で輸出することができることや、香港では春節(旧正月)や中秋節などにフェアを開き、贈答品として売り出したことがあまおうの輸出増につながったとみている。

 今後は、あまおうの輸出先をシンガポールやタイにも拡大するほか、香港や台湾でのイチジクの本格販売を計画。欧州でもドイツなどで八女茶の販売先を開拓するなど、いっそうの輸出拡大を目指す。

 県は「今後も積極的に品質のよい県産農産物を輸出する“攻め”の姿勢で、輸出先と品目を増やし、県内産地の活性化につなげたい」と話している。
=2006/05/11付 西日本新聞朝刊=

あまおう:県産ブランドイチゴ、アジア向け輸出好調 イチジクなど売り出しへ /福岡

 ◇イチジク、茶など
 県産のブランドイチゴ「あまおう」のアジア向け輸出が好調だ。一昨年度の23・4トンから昨年度は40トンと、倍近く増えている。中国産など低価格の輸入モノに押される国内農産物だが、県は、海外では珍しいイチジクや潜在的な需要を秘める茶など、他の農産物の輸出にも力を入れる。
 県は4年前からあまおう輸出に力を入れ始め、昨年度は中国・上海、香港、台湾の輸入・小売業者を招いておいしさをPRした。あまおうは香港などの百貨店では、国内販売価格(1キロ1100円)の約1・5倍もする高級品として並んでいるが、順調に輸出量は伸びているという。
 県は今後、シンガポールやタイなどに対象地域を拡大する方針で、大消費地を抱える中国についても「現在、政府レベルで協議中」だ。
 あまおうの他にも、県産イチジクが香港、台湾で人気を得ている。県産は全国2位の生産高を誇るだけに、県は今年度、イチゴの出荷の端境期にあたる8~9月にイチジクを売り出す予定。
 また、日本食の浸透につれて茶の消費が進んでいる欧米をターゲットに、八女茶の輸出も検討。今年度は「ドイツ・フランクフルトの県の駐在員を使うなど、現地での市場調査をしていきたい」と県は話している。
=毎日新聞・福岡都市圏版5月10日朝刊=

記事のとおり、昨年度はJA関係者、地元企業、および「福岡の食・輸出促進センター(県農政部)」スタッフの並々ならぬ努力で販路拡大を実現した。天候不順や国内調整で厳しい経営環境にも関わらず、これだけの実績を作られたことに心から敬意を表したい。今年度も引き続き成果を挙げて、地域農業振興のために貢献できることを強く願っている。

また、この輸出事業に一貫して注目し続け報道してくれる新聞やテレビ、経済紙など地元の各報道機関にも心から感謝したい。主に報道を通じて農業生産者にこの事実が伝わるからである。
                                                
地方発の元気が出る明るい話題を提供し続けていくのが「ニッポンを売る!」の信念だ。

ミス福岡に感謝

多どんたくの行事の中でも、人々の関心を集めるイベントのひとつに「ミス福岡」の選出がある。

毎年5月2日に開かれる「どんたく前夜祭」で最終審査が行なわれ、その年のミス福岡が3名選ばれるのである。

ミス福岡は一年間、福岡の親善使節として内外の各種行事に参加するのだが、県産農産物の海外販路開拓にも大いに貢献していただいた。

今年1月末には、旧正月休みの台湾・中国・韓国から来日する観光客向けキャンペーン活動として、福岡空港でミス福岡の宮田さんに県産イチゴ「あまおう」を空港に降り立ったツアー客に振舞っていただいた。

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やはりミス福岡がいてくれると、その場の雰囲気がパッと華やかになる。

台湾からの観光客もはじめはビックリしていたが、ミスの宮田さんから試食用のイチゴを受け取るととても嬉しそうにしていた。

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空の玄関では大いに注目を集めた

また、2月には台北の高級デパートや量販店9店で「イチゴ尽くしフェア」を展開した時には、ミス福岡の毛利さんも同行してくれて、各店舗で大いに歓迎された。

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連日朝から晩まで次々とキャンペーンを渡り歩き、本当に疲れ果てているはずなのに、最後まで笑顔を絶やさず好印象を与え続けてくれたのには感心した。本人曰く、「楽しくて仕方がない」のだそうだ。

もうひとつ嬉しかったのは、このように国産農産物の消費を少しでも拡大し、地域農業を元気にするために、農業団体や県庁の人たちが海外にまで日本ブランド農産物を苦労して販路開拓していることにミス福岡も共鳴してくれて、その後も事あるごとに県産イチゴの素晴らしさを訴え続けてもらっていることだ。

生産者にとって心強い味方だと思う。

今年もさる2日に第46代ミス福岡が3名選出された。

毛利さん、宮田さん、一年間本当にお疲れさまでした。プロモーションでは大活躍して頂きありがとうございました。

これからも郷土が育んだ農産物をみんなに紹介してくださいね。

テーマパーク化する中華街

年ぶりに横浜中華街を訪ねた。

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平日の昼間というのに多くの団体客やカップル、家族連れで一杯。

以前から中華街は人出の多いところで、
土日に行ったら歩くスペースもないくらいだった。

その後、長期不況もあってしばらく停滞する時期があったと聞くが
この日見る限り、そんなことはない様子だ。

街全体が生まれ変わっていることが実感できるのである。

先回のエントリで、アメ横でアジア人観光客が急増していることを紹介したが、中華街もそうかと思ったら、日本人が圧倒的に多いのである。
しかも老若男女、団体・個人さまざまな訪問客を迎えている。

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つまり、アメ横は売っているのが日本人で、買っているのはアジア人であるのに対し、中華街では訪れるのが日本人でそこで働いている人のほとんどが中国人なのでまるでどこにいるんだか分からなくなる。その中国人というのも二世・三世の華僑ではなく、中国からの就労者や留学生アルバイトが多い。たどたどしい日本語が面白い。

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(売り子さんの多くが中国人!?)

地下鉄も渋谷から直接乗り入れるようになり、確かにアクセスが便利になったことも大きいだろう。
しかし、街づくりにも熱心に取り組んでいるし、昔の閉鎖的なコミュニティー特有のあのワクワク感というよりは、外からも受け入れる開放感が感じられ

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(オープンしたばかりの横浜媽祖廟

関帝廟に続き、今年立派な「媽祖廟」も完成し、またひとつ立ち寄りスポットが出来た。そういう意味では、以前は本格中華料理を食べに行くところ、他では売っていない食材を手に入れるところというイメージだった中華街も、飲食はもとより、雑貨や土産店を冷やかしたり、中国寺を詣でたり、占いをしてみたり、と単店舗目的ではなく、街全体の回遊性が高まり、さながら入場無料のテーマパークを散策しているよう。また、年間を通してイベントも企画されている。

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(イベントの呼び込み?)

20年前、私が横浜中華街の貿易商社協議会の皆さん方と貿易促進のお手伝いをしていた頃の社長さんたちは、今中華街のさまざまな組織の会長や顧問としてますます活躍されている。当時も日中貿易にはさまざまな障害があり、会社の利害を超えて数多くの難題を解決してきた。今の反日騒ぎどころのレベルではなかった。貿易そのものが出来なくなるほど、当時は中国の政治情勢や社会混乱の影響をいつも受けていたのだ。それでも、いつ私が訪ねても中華街の皆さんは快く迎え、共に汗を流していたことを懐かしく思い出す。

それにしても中華街散策は益々面白い。
特に目に付いたものは、肉まんや焼売など点心類のテイクアウトだ。持ち帰りやその場で歩きながら食べるなど随分と消費の姿も変わった。

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(ディズニーランドの家族連れと変わらない)

また占いも大変な人気で、女の子だけでなく若い男の子が集まっていたのは興味深い。

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他に、足つぼやエステなどの癒しマッサージ系、食べ放題、麺食、開運グッズ、健康ハチミツなども人気が高い様子だった。

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(開運ストラップも人気)

危機感をバネに常に挑戦と革新を続けていくことが発展のために必なのだ。
変革なき組織や地域が長期にわたり存続し続けることはありえない。

伝統を受け継ぎ、それを現代に生かしながら自己改革していくことが、地方ではいま特に求められている。

横浜中華街には熱い想いを持つ行動派が何人もいるのだろう。大いに参考になる。

アメ横に続き、ここ中華街も観光誘致、企業誘致、物産振興のアイデア満載の宝箱だ。

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(中華料理の七つの味は・・・)

日本でわかるアジア人の嗜好

東京でまとまった数の外人に出会うとなると
少し昔までは六本木や品川など港区と相場が決まっていたが、
今確実に、しかもアジアの人たちと出会おうとすれば
秋葉原かアメ横に行くのが一番手っ取り早い

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桜の満開を過ぎた上野公園ではなく
フラリとアメ横に立ち寄ったら、
いるわ、いるわアジアの団体ツアー客や常住者らしき人たちが
大勢買い物をしている
ではないか。

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もしかしたら日本人より多いんじゃないかと思うくらいの比率だ。

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(立ち止まって観光ガイドブックで場所を確認)

耳を澄ませば、韓国語、広東語、台湾語、北京語、タガログ(フィリピン)語、タイ語が聞こえてくる。

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それにしても旺盛な購買欲だ。これは最近、上海やバンコクなどの食品スーパーで見た光景とどこか似ている

変な人だと思われないよう彼らが何を買っているのかをコッソリと観察する。

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宗谷産干し貝柱、ドンコ椎茸、水産珍味、ワサビ味の豆菓子、うなぎ蒲焼、タラバガニ、イクラ、イチゴ、健康茶などを買っている。

海苔屋では、台湾人と思われる若い女性の二人連れが、家で寿司を作りたいからと英語で交渉して、寿司用海苔をまとめて数帖買っていたのにはビックリした。寿司がアジア人家庭にも入り込んでいるのだ。

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(家庭で寿司を作るらしい・・・)

ほかにもいろいろ興味深い消費行動をしていたが、 紹介はいずれ別の機会で。

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(電卓片手に値切り交渉は当たり前)

またここでは、食品だけでなく時計やアクセサリー、化粧品、薬品、ハローキティーのキーホルダーや携帯ストラップなども売れていた。

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何もいちいち海外に行かなくても、日本国内でテストマーケティングをしているようなものだ。アジアの華人や韓国人がどんな日本食材を求めているかを知りたければ、一度アメ横に行ってみることをお勧めする。

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継続性と革新性と

4月は言わずと知れた新年度の始まりの季節で、
多くの組織で人事異動が起こる。

一般的に2年か、長くて3年で人事が変わることがあり、
最近は数値目標などが設定された事業もあり、
日々、緊張感を求められることが多いが、
せっかくチーム内にそのノウハウやネットワークが培い始め、
さあ、これから、と言うところで人事異動することが多い。

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(桜の季節は異動の季節)

後任はまったく別の部署から配属されることが普通だから
振り出しとまでは行かないまでも、事業が巡航速度に戻るまでしばらく時間がかかるのは避けられない。

特に、新規事業やこれまで前例のない挑戦的な事業には、チームスタッフの「熱い想い」に支えられていることが多いからなおさらだ。

また、事業対象やパートナーがいる場合は、相手方が困惑することもあるので注意が必要。

それを少しでも回避するためにも、極力引継ぎをしっかりと行ない、十分に情報を伝え、継続性を持たせることが重要だ。

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(文京区小石川・播磨坂の桜並木)

しかし一方で、後任担当者が、全くの継続性踏襲ではなく、異なる視点から事業を組み直し、独自の方法論を用いることによって、事業がステップアップされることがあるから、この流れを封じては決していけない。

革新的な成果が生まれるのもこういう時だ。

ただし、これはあくまで正確な判断力や分析力、行動力がそろった場合。プロジェクトチームの親和性が加わると、さらに面白い結果が生まれる。

悪しき前例主義は、変化激しい昨今、何も対応できなくなる。
築き上げた基盤の上に、いかに新しい息吹を吹き込めるかが重要で
その意味では、変化は常に飛躍のチャンスだ。

私も4月は、仕事の進め方をリモデルしようと思う。

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(4月はスタートのとき・・・)