(前回より続く)
あたりはいつの間にか真っ暗。
海岸沿いの広い畑が両側に広がっているんだろう、何も見えない。
どこをどう行ったのかさっぱり判らないまま、とある寿司屋へ案内された
どこにでもある造りの広い座敷に腰をすえる。
遠くから来た者なんで、福井の美味しいもの食べさせてください!
カウンター越しのご主人に向かって、調子に乗ってお願いする。
厨房からは無言。 なんの返事も無い・・・。
ところが、、、、、、だ、
福井県といったら、今が旬の“越前ガニ”(ズワイガニ)が登場。
手前はメスで「せいこがに」と呼ばれ、奥がオスの越前ガニ。
黄色のタグが付いたのが、正真正銘の三国港産・越前ガニだ。
皇室への献上ガニは三国港で水揚げされたものが毎年届けれられる
ぷ~~んと漂うカニ味噌の香りと
トロリと舌をとろけさせる官能的な食感がたまらない。
嗅覚、味覚をシビれさせるこの旨みを知ったら、即座にノックアウト。
食べるんだったら、その旬の季節に現地に来るに限る。
足を運んだ甲斐というものをまざまざと感じさせられる。
今まで知らなかったメスのせいこ(勢子)ガニ。
溢れんばかりの外子(受精卵)と赤いダイヤと呼ばれる内子(卵巣)は珍味の域を超えて食べる者を虜にしてしまう。
足が細すぎて身が小さく食べ辛いので、3~4ハイで1000円くらいの安価で売っているのだが、僕はこのせいこガニの方が美味しいかも・・・、と恐る恐る漏らしたら、ご主人が、味がわかる人だね、地元でもカニ好きはせいこファンが結構多いんだよ、と教えてくれた。
具沢山のカニ汁。せいこガニの甲羅が丸ごと。身も心もあったまる。
貧乏性なだけで味覚の方ははなはだ自信がないが、
僕にとって、カニだってやはり女性のほうが宜しいということだ。
福井に来たら食べたかったんだぁ。
あこがれの鯖サバ、サバ、サバ
日本海の甘エビ。
そのネットリ甘い食感は、これまでの味覚体験を覆す。
今まで食べてた冷凍甘エビはなんだったんだろう???
今が旬のノドクロ。 脂がこれでもかッというほどタップリ乗っていて、異常なまでの存在感を示してくれた。
おかみさんがマンジュウガイとか言ってた初体験の貝。
こんなの違反だよッ! と叫びたくなる旨さ。
海の香りと貝の旨みが溶け合って、縦横無尽に鼻腔を撫で回す。
あまりに堪能してしまって、このあと、何を食べたんだか記憶が消えてしまってるのだ。
本場のカニ寿司 北前船で運ばれたであろう昆布の仕込みも素晴らしい
もう、何がなんだかわからない。
おご馳走さまでした・・・。
と、「お」と「ご」を重ねて付けたくなるほど、ご主人の手さばきと日本海の食材に感謝したい気持ちだった。
お礼を言ったら、それまで職人肌で寡黙に仕事をしていたご主人が破顔一笑、地元・三国町の食材に関わる楽しい話を披露してくれた。
デザートのその後に、さらに心がとろける会話だった。
このご主人、イラスト絵画の名手でもある。
この絵は、0.3ミリの極細の水性サインペンの筆先をさらに細く削って書いたという真冬の東尋坊である。
細かい黒いドット(点)だけで、荒々しい波しぶきや積もる雪をも表現している。
本物を間近で観ると、見事としか言うほかない。
これはご主人が客のために描いた自画像。
こちらは正反対の単純なタッチなのに、写真よりずっとリアリティーがある。
今回の福井ファースト・トリップは忘れられないものとなった。
セミナーでは北陸・新潟地区の積極的に海外にチャレンジする関係者の方々と出会い、郊外では新井さんをはじめ、珍しい品種の果樹を組織的に栽培加工している元気な女性経営者とも交流した。
帰還の直前には、あの福井を代表するB級グルメ「ソースカツ丼」と名物「おろしソバ」をいただく。
プ~ンと香りたつ懐かしいウスターソースが食欲をそそる。
B級万歳ッ! と心の中で叫んだ。
ご飯は脇役ではない。
日本を代表する品種「コシヒカリ」は、実は福井で育成され誕生したのだそうだ。
素晴らしいお米があって、様々な食文化が花開いているのである。
なんともうらやましい幸せな土地だろう。
越前名物「おろしそば」
おろしに使われる辛味大根も当地の特産。
新井さんは年中使える辛味大根の保存法についても研究している。
そしてまた・・・、
突然、時の人ならぬ、時の町となった元気な小浜市のアクションにも拍手を贈りたい。
正真正銘の旨いもの王国-福井の奥はかなり深いようだ。
こりゃ、もう一度足を運ばなければならんな、
などと都合のいい予感をしている。
福井県の皆さん、本当におせわになりました。
(シリーズ終わり)