徳島でもニーハオ

徳島を訪れた。

久方ぶりの四国行で、徳島県は恥ずかしながら初めてだ。

高松から海岸線沿いを南下したが、
徳島駅に着いたのは、もう夕方5時を回っており
すでに真っ暗だった。

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明日から始まるビジネスを控え、少しでも徳島の事を知りたいと、
夜「阿波おどり会館」に足を運んだ。

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ここでは、毎日昼と夜に、阿波踊りをショー仕立てで実演してくれるもので、8月12日からの本物の阿波踊りには中々行けないが、ぜひ一度観てみたい者にとっては、本当にありがたいスポットだ。

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正面の席を確保するために早めに会場に入り
しばらくすると、品のよさそうな中年婦人や若い女性の団体さんが
大勢入って来て、僕の周りの正面の席を広く陣取った。

品がいいといっても、そこは女性たち。
いつの間にか、ガヤガヤとお喋りする声が満ち溢れてきた。

聞き慣れた方言だなあ、などと思っていたら、
なんと台湾語や中国語なのである。

「どこから来たんですか?」
とすぐに聞いてしまう私。

「台北ですよ」
と見た目には日本人と区別がつかないご婦人が笑顔で答えてくれた。

いろいろと話すと、この団体さん、
日本の有名な華道流派の台湾支部の人たちで、初めて京都の家元を訪ねてお稽古をした帰りに、徳島に観光に立ち寄ったとのことである。

051113yokoso_japan 「徳島は素晴らしい。東京や京都もいいけど、ここは空気も綺麗だし自然が美しい」

「日本には何度も来てもワクワクする」

と、屈託なく返してくれる。

嬉しいじゃないですか。
だから日本人は、台湾の人に親近感を覚えてしまうのである。

また、乗って来た観光バスの中には
抱えきれないほどのお土産を買って置いてあるそうだ。

海産珍味やワカメ、お饅頭、小物、湯呑などだとか。

私にとっては彼女らが何を買うのか、仕事柄興味深々なのだが
おば様方にしてみれば、私が何でこんなに根掘り葉掘り効くのか、不思議だったに違いない。

台湾では、結構日本の華道が盛んだそうで、
いくつかの流派があるんだそうな。

茶道はあまり普及していないらしい。

「くそっ!抹茶や和菓子、それに茶器を台湾に売り込むチャンスだったのに…」

「でも、待てよ。
普及していないということは、これから流行るチャンスということでもあるんだな。」

ただでは転びたくない性格である。

気を取り直して、

「台湾は、いつだって綺麗なお花が沢山あるから、
花材には困らないんでしょうねぇ。
蘭なんかも使って生けるのですか?」

などと、素人丸出しの質問をすると、
彼女たちは「ワハハ」と笑って答えてくれた。

「いろいろあるんだけど、季節によって台湾にはないものや
スイセンなどのお花は、日本から取り寄せなきゃならないので、結構お稽古代がかかっちゃって大変なのよぅ」

ん~っ、これはチャンスかも。

花卉(生花類)の海外輸出も
ニッポンを売るアイテムのひとつだからである。

宮崎県がシンビジュームなどの蘭鉢を中国に輸出している。

花と一緒に、陶磁器製の花器や織物のテーブルセンターなども一緒に売ってみては?

などとアイデアだけは広がっていく…

そうこう話が弾んでいると、いよいよ開演の時間。

本場の阿波踊りを堪能した。
祭りはどこでもそうだが、この鐘と太鼓、笛、三味線のテンポ良い一定のリズムを聞いているとだんだんトランス状態になってくるのを感じた。大興奮だ。

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「踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らなソンソン」

台湾の女性たちも、隅で固まっている日本人サラリーマンの人たちに混じって、いつの間にかみんなステージに上がって踊っていた。
言葉は要らない…。

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ここ徳島でも台湾や韓国、中国の旅行者が最近増えてきているらしく、
このように日本文化や食の世界を体験する人たちの間で
地方のことに対してもかなり詳しく理解している人が増え、認知度、知名度を上げている。

観光誘致、物産振興ともに、すでに海外ニーズは高まりつつある。

興奮の余韻残る、夜の阿波おどり会館を後にした。

まず足元の良さを知らねば

「上海から福岡まで、飛行機でわずか一時間半です。東京より近いんですよッ」

「福岡―プサンと福岡―松山間は、それぞれ直線距離でほぼ同じことを知っていますかっ」

 などと講演の時に、少し物知り顔で紹介していたら、

なんと瀬戸内海をはさんで、岡山と高松というふたつの県庁所在地が、快速電車でわずか50分余りで結ばれていることを、今まで私は知らなかった。

何も知らないのだ。自分の国のことですら…。

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(列車は瀬戸大橋を渡って行く…)

出張の折に、香川県高松市に立ち寄った。

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生まれて初めての訪問地は、やはりワクワクする。
少しでも時間を惜しんで街中を歩き回りたい生来の癖が頭をもたげる。

ここ数年、大河ドラマファンの私は、源義経の屋島戦跡があちこちにあるというだけでもう興奮してしまう。もっと時間があったら、屋島一帯をぜひ歩いてみたかった。

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(高松平家物語歴史館のロウ人形)

日本の名園「栗林(りつりん)公園」は、広大な敷地のどこに立ち止まっても言葉が出ないくらいの絶景だった。

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この季節、ほとんど松の樹しか目につかず、11月だというのに、特に紅葉が綺麗な訳ではない。
まして、菜園や果樹園には興味があっても(!?)、庭木には興味がなく、風流心も人並み程度なのだが、その私が、とにかくその完璧なまでの美しさに感動した。

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「ニッポン万歳!」と心の中で叫んだ。

おりしも前々日、上海で「豫園」という古い明代の名園を訪ねたばかりだが、中国の人にとっては侘び寂に感じる庭石(玉玲龍と呼ばれる名石)にも、正直、私には頭で解析してみてもピンとこない。

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(上海の名園と謳われる豫園)

それに引き換え栗林公園の造形美には、やはり日本の文化も洗練されていて文句無く素晴らしいなと感じてしまう。

ご当地に来れば、当然、名物「讃岐うどん」をいただかなければ話にならない。

これもとにかく筆舌に尽くしがたい美味さで、小麦、醤油、薬味の洗練された食文化の妙を舌の上で感じ取った。

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(自分で暖めて作るセルフ式では、はじめ惑ってしまう)

半日に4杯もうどんを食べたのは、もちろん生まれて初めてである。

うどんと言えば、私が海外に頻繁に行くようになった20年位前から、香港では「烏冬麺」、台湾では「烏龍麺」として、普通に家庭料理素材として、スーパーや麺売り店でどこででも買えたのには、当時ビックリした。

日本のうどんは、早くから国際的にデビューしていたのである。しかも、日本語の音のままで。

いつか必ずこだわりの食を求めて、アジアでも讃岐うどんのブームがやってくるに違いない。

海外事情を収集するのも結構だが、わが国の知識や素晴らしさをもっと知っておかなければならないことを高松の街は教えてくれた。

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(今年前半、水不足に陥った四国地方)

高雄の変貌ぶりに驚く

およそ7年ぶりに、高雄に来た。

台湾南部の大都市、高雄は、
コンテナ取扱量でも世界第5位のアジアを代表する港湾都市で
台湾経済の発展とともに大きく変容してきた街である。

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(アジア物流の拠点-高雄港)

宿泊したホテルが85階建ての高層ビルの61階の部屋で、
その眺望のよさも見事だったが、単なる港町だと思っていたら
かつてのタイペイ(台北)を思わせるような規模に拡大している。

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(陸地にも広がる高雄の街)

商業の中心地には、日系百貨店の看板も目立つ。
伊勢丹、三越、そごう、阪神などなど。
大丸も今は撤退したが、店舗を構えていたという。

高雄の人たちは、とりわけ親日的な様子で、
出会った人は大方、心底日本びいきではないかと感じてしまう。
だから、食の世界でも日本製、日本産の商品は関心が高いようだ。

また、ここ数年、富裕層が増えたそうで、
高額商品のほとんどが、地元ローカルの顧客層が購買するのだという。

台湾のお金持ちは、確かにひと目でそれとわかる風貌の人もいることはいるが、暑い気候の土地だからか、服装や持ち物をみても庶民と変わらない人が結構多い。
普通のTシャツを着てハンバーガーなどをかじっているようなオジサンがベンツに乗って、すごい時計をしていたり、高級レストランやスポーツクラブなどに出入りしていたりする。
袈裟の良し悪しで、簡単に判断できないのである

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(ここにもいた台湾家族の団結力)

ちょうど25日の午後2時に、防空訓練と称する
市民総動員の避難訓練に出くわした。

14時の時報と共に、街を歩いている人も
デパートで買い物をしている人も、
決められた防空施設(シェルター)に非難するのである。

おりしも、中国でロシアとの共同軍事訓練の最中で、
すわ緊張か、と、妙に興奮したが、
今日の訓練は、年一回定められた定期的なもので
年中行事のごとく慣れた感じだった。

050826boukuu それでも、街には装甲車が走ったり、
戦闘機が高速道路に着陸訓練することもあるそうだから驚く。
平和になれた日本人には、にわかに信じがたい。

台湾には徴兵制もあり、地域によって様々なコストがあるもんだと考えさせられる。

コストといえば、高雄まで、農産物を運ぶとすると、運賃、積み替え、荷痛みなど地方独自のコストが発生するかもしれない。

これまでは、タイペイ、香港、シンガポールなど、
国際空港のある拠点都市で販売していたから、あまり意識していなかったが、高雄の街では新たな課題ができそうだ。

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(高雄市有国民市場にて)

それでもアジアでは、高雄までは十分にマーケット目標にしても良い都市なのかもしれない。

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(夜遅くまで多くの客でにぎわう六合夜市)