反日の上海を行く

今日午前、北京・広州に続いて、
上海でも反日デモが発生し、
一部投石騒ぎや破壊行為が行なわれたことが、
日本では終日報道された。

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(時事通信社)

WTO加盟以来、
SARSを除けば、経済関連のニュースが多かった中国だが
思い出したかのように、
反日感情の悪化とその行動が
日本中に衝撃を与えている。

いま中国・韓国で起きている一連の出来事は、
多くの日本人に激しいショック、
あるいはこれらの国々に対する嫌悪感を与えたことは間違いない。

デモ活動の背景については、
いろいろ観測されているが、
いずれにしても、
中国当局側により、世界中にこの感情を知らしめることが
ある種の目的であったことだけは間違いない。

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(朝の上海の街角で)

「ニッポンを売る!」という視点から見れば、
この反日、日本商品ボイコット(排斥)、歴史認識問題などは、
マーケットとしてのアジア、消費者としてのアジア人をとらえる上で
どうしても避けられないテーマである。
中国、韓国だけでなく、台湾、香港、東南アジアにおいても。

対日感情については、
今後長期間は、いかなる条件・方法をもってしても
根本的な解決はありえないと考える方が自然であり、
それを前提としたアプローチを目指すべき
だろう。

ただ、ハッキリとしておかなければならないことは、
この種の事態は、
これからも起きる可能性があり続けると同時に、
もう日本商品が売れなくなるとか、
日本人が現地でビジネス出来なくなるという事は
まったくない
と言うことである。

中国と30年近くも付き合っていると、
この辺の感覚がなんとなく分かってくる。

昨年来、講演の機会があるたびに訴えているのだが、
中国特需だからといって、北京オリンピック、上海万博までは
ビジネス天国だとばかりに舞い上がり、
反日デモや人権問題、汚職や格差といっては
嫌悪感や差別意識が支配する。
どちらに振れても、日本人は中国に対して熱くなりすぎて極端なのである。

おそらく日本のような安定した平均社会を前提として
中国に過大な期待を寄せているからなのではないだろうか?

とにかくビジネスマンたるもの、
冷静にチャンスを窺(うかが)おうではないか。

今週11日から13日まで
渦中の上海に、マーケティング調査のために出張した。

精力的に数多くの日本人駐在員の方々と情報交換したが、
まったく普段と変わらない様子であった。

日本の騒ぎぶりが信じられないといった風である。

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(いつもと変わりない上海の街)

さすがに、この週末は、それなりに注意を払っていると思うが
日本で我々が想像しているような状態ではない。

出張時の上海の様子については
私のレポートが、Yahooニュース中国情報局
転載されているので、参照されたい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050415-00000003-scn-int

http://forum.searchina.ne.jp/2005/0415/column_0415_001.shtml

愛国の熱情も大切だけれど、
熱くなり過ぎると客観情勢を見誤ることも
過去の歴史が教えてくれている。

佐賀の挑戦

佐賀県が、上海・青島から食品バイヤーを招聘し
県産農産物の輸出振興のための現地視察を行なった。
同県は、米(もち米)、麦(ビール麦)、大豆などをはじめ
たまねぎ、アスパラ等の野菜は日本ランキングレベル。
かんきつ、梨、イチゴなどの果実も有名で、
ほかにも佐賀牛、嬉野茶など
いわゆる「実力派」商品を有する九州屈指の農業県である。
視察では、神埼地区のイチゴ・アスパラガスの産地を訪ねた。
佐賀では、いま「さがほのか」「さちのか」を主力に
イチゴ栽培にも力を入れている。
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ちょうど最盛期を向かえ、
最新鋭のセンサーによる選別・パッケージラインのフル稼働の様子は壮観だ。
大粒で真っ赤なイチゴが一粒ずつベルトコンベアーで選別されていく様子は中国からのバイヤーも驚いていた。
国内はもとより海外に向けても、
イチゴを中国本土へ輸出することを
最大の目標としていることからもその熱意が伝わる。
佐賀県は昨秋から、
青島と大連に向けてナシの輸出も始めている。
山東・遼寧省といえば、中国でも指折りのナシの産地。
そのお膝元ともいえる青島で、
大玉2個で約2700円相当の贈答用ナシ等を含め
日本からコンテナで持ち込んだ8割を売り切ったというのだからスゴイ。
その青島の大手日系スーパーの総経理は、
当初、「まさかここまで売れるとは思わなかった…」と
小声でチラリ。
現地のプロも驚くジャパンブランドの威力は
想像以上かもしれない。
輸出の試験地となったJA伊万里を訪ねた。
不安も多い輸出事業だが、担当者のチャレンジ精神は旺盛だ。
伊万里港も大連港との航路が開設し、
物流からの支援も整いつつある。
今回、果実を味わうことが出来なかったが
ハウスの中では、ナシの花がとても美しかった。
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会場を佐賀市に移し、
東京から農水省の輸出担当室長も招いて、セミナーを開催した。
室長のほかに、上海・青島のバイヤーからそれぞれ
現地最新情報も報告され、たいへん熱の入ったものとなった。
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夜は、地元大手ホテルの料理長が提案する
佐賀県農産物を使った料理のプレゼンテーションが行なわれた。
とても斬新な企画で、
地元で採れたての野菜や肉、海苔などを素材にした
前菜やメイン、スープが、また果物を使ったデザートなど数十種類に及ぶレシピが提案された。
どれも秀逸・ユニークなものばかりで、とても面白いのだが、
これは佐賀県のノウハウなので、残念ながら詳細をご紹介できない。
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産地を訪れ、商品の持つ素晴らしさを知ることも当然大切だが、
「どのようにして食べるのか」という提案
販路開拓にはとても重要だ。
特に、海外で野菜を売る場合には必要だろう。
あっという間の3日間であったが、
中国からのバイヤーもたいへん満足し、
また多くの情報を持ち帰られることになった。
佐賀県は、知事をはじめ、県や市、
また農業団体が、輸出事業に対して極めて熱心な地域だと感じた。
それぞれの輸出担当者の理念は明確で、
何よりもスピード感ある行動で、実行力が高い
県連責任者の方が、

「輸出は、すぐに実績をあげるのは難しいが、
次の世代のために、今行動しておくことが
生産者のために何よりも必要だ。」

と語られたのには共感した。
言うのは簡単だが、組織の中で実行できる人は極めて少ない。
佐賀県の輸出事業に対する挑戦は、必ず実を結ぶことだろう。

大牟田市で講演

福岡県の南部、大牟田市で
大牟田市、大牟田商工会議所、三池貿易振興会の主催による
中国経済セミナーで講演をさせていただいた。
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(会場の大牟田文化会館)
大牟田市はもとより、県南の家具の街 大川や水郷柳川、
高田、筑後の各地、また熊本北部の玉名などからも
大勢の企業や貿易関係者が集まった。
演題は「激変する中国ビジネス環境をどう捉えるか」と題し、
2時間にわたって最近の中国特需を中心に
それに関わる日本企業の活動について紹介した。
大牟田と言えば、やはり三井三池炭鉱で、
近代日本の産業振興を支えたエネルギー基地である。
今は、すべての炭鉱が閉鎖され、
金属精錬や素材加工、ケミカル工業などが立地する。
また、エコタウンとしても整備され始めており、
環境リサイクル産業の街として生まれ変わろうとしている。
かつての石炭黄金期の繁栄に比べれば
かなり静かな街となったのであろうと容易に想像がつくのだが、
昨年来の素材需要の好転により、
やはり関連産業で業績が回復しているという。
中国のエネルギー逼迫や環境汚染の実情、
リサイクル、リユースのニーズについても話題に触れたが
やはりエンジニアリングの街だけあって
大変熱心に話を聴いていただいた。
また、ここから20キロほど南に行った「玉名」は
昨年、台湾市場に温州みかんを輸出し、
積極的な販路開拓を行なっている。
乾物・万能調味料製造販売の地元企業も
香港・台湾に向けて積極的に売り込みをかけている。
国際貿易港である三池港を有し、
有明海沿岸を周回する無料高速道路の計画や
九州新幹線の新大牟田駅など、
将来の交通・物流インフラは着々と整いつつある。
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(JR大牟田駅)
農産物・食品から、素材・金属工業、環境エコ産業、家具などの
産業を有するこの地も、またアジアを目指して復活・飛躍してもらいたいものである。
050208karutaちなみに、大牟田市は
日本のカルタ発祥の地とされている。
16世紀後半にポルトガル人によって伝えられ、日本カルタが、ここ三池の人たちのよって作られたのだそうである。

中台チャーター便 相互乗り入れが意味するもの

春節(旧正月)で帰省する台湾人ビジネスマンらを乗せた
中国のチャーター機が29日午前、
台湾に乗り入れた。
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(台湾中央通信社)
1949年の中台分断後、56年ぶりに
中国と台湾の直行チャーター便の相互乗り入れが実現した。
一般には
中国統一に関わる政治問題として報道されているが、
「ニッポンを売る!」の立場からは、
少し異なる視点から
現実を先取りしておかなければならない。
すなわち、
中国と台湾の統一、もしくは独立にともなう混乱は、
今しばらく時間を要するものと考えられるが、
いわゆる「大三通
(台湾当局による対中国大陸の通信、通航、通商の禁令解禁)が
実現し、人や物資が直接自由に往来されるとなると
現在、私達は台湾マーケットへ
日本の農産物等を必死で売り込みをかけているが、
いつ中国大陸から安い農産物が
ドッと台湾市場に押し寄せてくるかどうかわからないのだ。
また、中国市場でも、
台湾産青果物が本格的に輸入されるとなると
双方のマーケットで、
日本の強力なライバルが出現すると言うわけだ。
今回の中台チャーター便相互乗り入れは、
東アジア地域の政治的安定へ半歩踏み出すものである一方、
経済的には更なる激しい競争の予感を感じさせる、
非常に注目されるニュースなのである。
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(台湾中央通信社)

日本最大の貿易相手国が変わった!

財務省が26日朝発表した2004年の貿易統計速報によると、
香港を含めた対中国の輸出額と輸入額を合わせた貿易総額は
22兆2005億円となり、対米国の20兆4795億円を上回り、
日本の最大の貿易相手国となった。
貿易相手国で米国が最大でなくなったのは、
戦後初めてのこと
だという。
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香港の港湾風景
私が中国に関わりを持ち始めた1970年代後半には
想像も出来なかった変化のしようだ。
我が国にとって名実ともに重要な存在になったことだけは
間違いない。