江南の春

江蘇省昆山を訪ねた。

ここは早くからアパレルや精密機械、電子工業など日系企業が
盛んに進出している地域で一時期よく通った所でもある。

揚子江(長江)下流南岸一帯を江南地方と呼ぶが、
詩人杜牧(とぼく)の詠んだ「江南の春」でも有名だ。

千里鴬啼緑映紅
水村山郭酒旗風
南朝四百八十寺
多少樓台煙雨中

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は、立春の一番良い季節にこの地を訪ねたのは初めてのこと。
のどかで、穏やかな風景に改めて感動した。

「周荘(しゅうそう)鎮」一帯は、観光開発もすすみ、外人観光客はもとより、国内ツアー客の多さが目立った。
 また、数千台の収容能力があろうかという広大な駐車場も週末には、上海や蘇州などからのマイカー族のドライブ客で駐車スペースがなくなるというから驚いた。ここでも時代の変化を実感した。

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(とにかく国内観光客の多いのには驚いた)

江南地方は別名「魚米の郷」とも呼ばれ、水稲、麦、綿、シルク、茶、魚、カニなど食材の宝庫でもある。

今回も淡水魚や上海ガニ、エビなどの養殖場、延々と広がる水田やビニールハウスが至る所で見られる。

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長江に繋がる大小の湖とそれらをつなぐ運河が網の目のように広がっているのである。

中国第一の水郷と呼ばれるこの街でも、その穏やかな流れと水と共に暮らす人々の生活を眺めていると本当に気持ちが和らいでくる。

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(水郷での生活風景)

上海から車でわずか1時間半ほどのところで春の息吹を体一杯に感じることが出来るエリアがあるのだ。

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(遠くに広がるのは淀山湖)

この20年ほどの間、海外からの投資も急増し、一帯では多くの工場も稼動している。国内観光客も飛躍的に増え続けるだろうから、この地も、もう穏やかでなくなる日が近いかもしれない。

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(昔の中国にタイムスリップ)

FOODEX JAPANでもニッポンを売る

14日から千葉県幕張メッセで
第31回国際食品・飲料展(FOODEX JAPAN 2006)が開催された。

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(会場エントランス)

期間中、10万人に迫る動員を誇るこの商談会は、世界三大国際食品展のひとつにも挙げられている。

思えば、今から22年前、私が北京に駐在していた当時、中国の食品貿易の唯一の窓口商社であった中国糧油食品進出口総公司から
「日本で事業効果の高い食品展示商談会に出展したい」と言われ、このFOODEXを紹介し、日本の主要輸入商社が共同で受け入れ体制を整えて、初めて中国ブースが実現したときのことを懐かしく思い出す。

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(今年の中国ブース)

久しぶりに中国食品館を視察したが、中国全土から出展者を集め、一大勢力となっていた。

て、ここでも初めてFOODEXにブースを展開した新コーナーがある。
それは、まさに「日本食品の輸出促進コーナーである。

「ニッポンを売る!」アクションに携わる者としては、とても嬉しいことだ。

ジェトロ(日本貿易振興機構)農水産課がプロデュースするもので、和のひろば」と称する一角にセミナー会場と輸出に挑戦する全国24団体による商品展示コーナーを設け、日本食品を海外に発信するブースがここに誕生した。

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(日本食品輸出促進コーナー)

私もジェトロの要請を受け、会期中、セミナーのパネリストと参加全ブースへのアドバイス活動を行なった。

食品輸出セミナーでは、台湾、香港、シンガポール、タイのバイヤーも登壇し、各地のマーケットや日本食品の販売事情などを紹介した。

日本食品がすでに定着しつつある香港・台湾とこれから次の可能性を含むシンガポール・タイ、そして誰もが関心を持つ巨大市場-中国のマーケット比較は、参加者の貴重な参考になったと思う。

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(日本食品輸出のパネルディスカッション風景)

展示ブースでは、北は青森から南は鹿児島まで、全国の食品企業や団体がバイヤーとの出会いや情報を求めて積極的にプロモーション活動を行なった。

すでに輸出実績の豊富な青森県の農業法人(リンゴ)や静岡県の製茶企業(緑茶)、各地の酒造メーカー(日本酒・焼酎)も参加し、さすが販促活動に習熟しているなといろいろ勉強になった。

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(経験豊富な出展者のブースには何故か次々と有力バイヤーが現れる・・・)

ただ、ほとんどの出展者が、輸出については初めての企業が多く、「どうしたら一歩が踏み出せるか?」「安心できるパートナーを探したい」という点で試行錯誤しているようだった。

海外の商談会では、来場者が当然、海外企業バイヤーばかりなので、一見、ストレートに商談や情報収集につながるように思われるのに比べ、FOODEXとはいえ日本での商談会では日本人の来場者が多く、外人バイヤーが少ないことが物足りないように感じられる向きもあるが、特に地方の企業にとっては、実は必ずしもマイナス点とは言えない事実もあのだ。それは輸出を始めてしばらくすると自ずと判ることである。

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(NHK「経済最前線」クルーも取材に来場)

しかし、今回は初めての試みったこともあり、輸出促進のブースであることの演出やより効果あるビジネスマッチング実現のための改善点はいくつかありそうだ。

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(輸出促進ブースにも多くの来場者が集まった)

とにかく、日本食品輸出促進コーナーが、このFOODEXでも中国館同様、近い将来、この巨大会場にあって、一大テーマ館を構成できるよう、今後の展開を期待している。

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(今年のFOODEX会場遠景)

毎年好評の食品ビジネスイベントが開催される

る3月20日、福岡市で「FOOD2006 in FUKUOKA」が開催される。

この事業は、福岡市福岡商工会議所、(社)福岡貿易会ジェトロ福岡貿易情報センターの4者で構成される「福岡アジアビジネス支援協議会」が主催するもので、在福岡の各国貿易代表機構も後援している。

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今年の事業は、中国、イタリア、カナダ、タイ、台湾、韓国、シンガポールから50社近くの企業が集まり、品質や価格、安全性などに特徴ある食品・食材を展示商談する「新食品・食材商談会」とその食材を用いてプロの調理人がアイデア料理を競うキッチンデモンストレーションが目玉の「福岡対話」の二つのイベントで構成される。

実はこの福岡市のFOOD事業は、過去6回にわたって毎年開催されており、すでに圏内の食品関係業者の間ですっかり定着した評判の事業なのである。

その理由は、第1回目からこの事業は、「個性も特徴もない商談会やセミナーにしない!!」「出展者にも来場者にも役に立たない、主催者の独りよがりのイベントにしない!!」というスタッフの強い意志があった。

東京や関西と異なる九州圏の食品企業のニーズを事前に徹底的に調査し、日本側需要家が求める商材をアジアの各企業に準備してもらうことと、福岡対話と称するシンポジウムでは、その時代の半歩先ゆくテーマ、たとえば、輸入食品の安全性、ITと食品、地場食品の輸出などを常に情報発信し続けてきた。

今年もアジアを中心に、欧米企業も一堂に会して、個性ある新商品を出展提案してもらい、食べ方のレシピも実演で提供するという新たなコンセプトで「食都福岡」「食品ビジネス拠点都市―福岡」を情報発信する。

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毎年毎回、進歩・進化する今年の事業には、すでに過去最高の来場希望者のエントリーが事務局に寄せられている。食品関連の企業、企画関係の方は、ぜひ参加されることをお勧めしたい。

開催日: 3月20日(月)
会 場: ソラリア西鉄ホテル8階大宴会場「彩雲」

プログラム:
「新食品食材商談会」 10:00~18:00
「福岡対話」キッチンデモンストレーション 10:30~16:00

参加: 無料

申し込み・問い合わせ:
福岡商工会議所経済部国際センター
TEL:092-441-1117  FAX:092-474-3200
E-mail:kokusai@fukunet.or.jp

ブランド対策セミナーに参加して(2)

…(1)から続く

ミナーの後半は、作家で金儲けの神様として知られる邱永漢氏が登壇して、「中国・台湾で勝負する農産物の日本ブランド確立に向けて」と題する講演をされた。

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実は、邱先生が9年前に福岡で基調講演をされた後、パネルディスカッションのパネラーとしてご一緒した時以来、2度目の再会となった。それ以来、邱先生の著作や行動については、ずっとチェックを入れている。

だから、邱先生の言論や発想は多少知っていたつもりだったから、日本の農産物を中国や台湾に輸出するというテーマについて講演されるとはとても意外だったのだ。

060311Qsan2 なぜなら、邱さんはこれまで、永田農法の中国での展開を提案したり、コーヒーや日本そばの中国での栽培に挑戦されているから、日本からの輸出ではなくて中国に移って生産せよという、発想としては逆なのではないか、と感じていたからだ。

講演は相変わらずの名調子で、会場を大いに沸かせた。まるで名作落語を聴いているような心地良ささえ感じてしまう。パワーポイントに頼る私の講演などは、まだまだ修業の余地がありそうだ。

060311Qsan3 やはり日本産の農産物の輸出について、邱さんは、とても難しいのではないか、と本音を漏らされた。生産コストが大幅に安い中国に対して、高コストの日本産農産物を恒常的に販売することは、邱さんの原理原則では、やはり反対なのだろう。

私はそれを聞いてむしろホッとしたほどだ。ホッとすると同時に、ますますファイトも沸くというものだ。

でも、最後には
「私は日本産の農産物がどうしたら中国で売れるのか、その答えは持っていない。普通に考えれば、とても難しいと思うからだ。もし、売れるような情報があったら、むしろ私に教えて欲しいくらいだ。皆がグズグズしているうちに、私はサッサと行動に移しますから」と。

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会場は大いに沸いた。さすが邱先生。
齢82歳にして、この発想と行動力。脱帽する他ない。

同行の方が、講演終了後に邱さんに題字を求めたら、丁寧に一字一字筆を走らせてくれた。

毎日、聞いたことのないことを聞き
毎日、見たことのないものを見る
          邱 永漢

また、大いに刺激を受けた。

ブランド対策セミナーに参加して(1)

東京・虎ノ門で、農水省、関東農政局等の主催によるブランド保護対策セミナーが開催された。

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(セミナー会場)

中国・台湾への農水産品の輸出に関わるブランド保護対策に関するセミナーは、国内でも新らたな試みらしく、たいへん勉強になった。

やはり東京、大阪には、このような情報収集の機会があるから
私のような活動をしている者は
平素出来るだけフットワークを軽くしておき
情報源を広げておかなければならない。

セミナーの前半は、中小機構国際化アドバイザーの太田光雄氏による「中国・台湾における日本産農産物のブランド保護対策」についての講演だった。

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実は、太田先生は、私が20年ほどまえ前職当時、住友商事の中国食品関連のご担当をされており、数年間にわたり、よく一緒に仕事をしていたのだ。

早くから中国に対してとても造詣が深い方で、まだ駆け出しだった私に、いろいろと教えていただいたことを思い出す。

講演では、中国における商標・ブランド戦略など知的財産権に関する様々な情報や事例を挙げて、広範囲な紹介がなされた。中国での「青森」に関する商標権の争議無印良品をめぐる日中間の侵害事例の経緯など細かく解説され、非常に参考になった。

海外における販売戦略において、日本産農産品や食品などは高級商品として扱われるだけに、ブランド維持やコピー対策などでも、「守りとしてのブランド対策」と、積極的に販売を展開するための「攻めのブランド戦略」のふたつの視点があることを再認識した。

ルート開拓にどうしても関心が偏りがちだが、このブランド構築と保護対策は、これからますます重要になると感じた。

多くの関係者が懸念するアジア市場でのコピー商品の出現は、当事者だけでは解決できないので、ぜひとも国の支援が必要な分野である。地方で輸出を展開するには、国や専門家との連携を強化すべきである。

このような情報は、私もぜひ地方で発信していかなければならない。 (続く…)