日本から一番近いヨーロッパへ(その2)

 
(前回から続く)

 

機内食を食べ終わったかと思うと、もう降下を始めている。

   

そのうち延々と広がる海岸線とロシアの大地を見ながら無事着陸。
   

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新北九州空港の滑走路を飛び立って着地するまでの時間を正確に計測したら、なんと92分間であった!?

   

九州から東京へ行くのと同じ時間で、飛行機の計器が壊れて、方向を間違ってしまったら、もしかするとウラジオストクに着いてしまうのだ!!  

     

信じられないッ。

   

旧式のタラップを降りて、一台のバスにギュウギュウに押し込まれて発車するまで待つこと10分以上

    

ところが、発車して10秒後に空港ビルに到着、と、バスを降ろされた。

    

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あのタラップから道路隔てたここまでわざわざ満員バスに乗るなんて!!

      
何のことはない、たった20メートルほどの車両用の車道を一本またぐのにわざわざバスに乗せたのだ。歩いても15秒ともかからない。

       

皆んな、エエ~ツとどよめいた。

     

パスポート検査の入国審査では、3つも4つも検査を越えなければならず、しかも要領が悪く、時間ばかりかかる。

      
列も乱れがちで、この気の遠くなる非能率・縦割り手続・ノンビリ作業に忍耐力も限界が来る。

    

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昔懐かし、あのイライラ・・・・

   

「これは30年前の中国、15年前行ったベトナムと同じじゃないか!」

  

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ひと気のない簡素な到着ターミナル
   

僕にとっては、懐かしい昔の社会主義体制を思い出させてくれる有難い経験だったが、これから一体何が起こるのか、と少々暗澹たる想いが頭をよぎりながら、すでに夕闇の迫った薄暗い空港を後にした。

     
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着陸した時は、まだ明るかったのに・・・

 

しかし、空港を一歩外に出ると、それから4日間の間、僕はウラジオストクの魅力にトコトン参ってしまうのだった…。

  

    

日本から一番近いヨーロッパへ行く(その1)

  
物流ビジネスの視察を目的に
ロシアのウラジオストクに出張した。

初めてのロシア訪問である。

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ロシアと言っても、世界一の面積を持ち、
いわゆる極東沿海地区のウラジオストクなら
実は、九州からでもわずか1時間50分で着いてしまう距離なのだ。

  

これなら東京へ行くのとほとんど変わらない。

  

もうひとつ、今年3月、新北九州空港が開港し、
8月と9月の時限つきでウラジオストク間の定期便が就航
西日本のビジネスマンにとってはグッと身近な存在になったのである。

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JR小倉駅から新北九州空港までバスで約40分間、
海上に浮かぶ新空港がお目見えだ。

コンパクトで機能的な感じだ。

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ウラジオストク航空カウンターで手続きをする。

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乗客は少ないだろうと思っていたら、年配の団体観光客らしい人たちで機内はほぼ満席

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機材はツポレフ154Mだそうな。昔の中国やベトナムで乗ったことがあり、少々不安。

  

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約30分遅れで離陸。急上昇してすぐに急旋回するという何ともいえないスリル。

エンジン音はうるさいが、上空に達すると結構安心して乗れた

   

機内食にピロシキが付いていたのもロシアらしい。
   

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ウラジオストックの地名は、
ヴラジェイ(征服・支配) ・ヴォストーカム(東方)ということで
かつての皇帝が言った「東方を征服せよ!」に由来するという。
(総領事館HPより)

  

さてさて、これからどんな東方の姿が私たちを待っているのだろうか?

(続く)

    

ヘルシー料理の本命はどこ?

 
体に良い、体にやさしい料理と言えば、
日本料理の素晴らしさは、かなり世界中に浸透している

   

ヘルシーで、油脂分が少なく、栄養バランスに富んだ日本食は、世界一の長寿国の大きな根拠となるものである。

 

最近は、BSEや鳥インフルエンザなどの流行を背景に、肉食から魚食への転換も世界中で起こっているようで、魚介類を素材にした日本料理がブームになっている要因のひとつにもなっているようだ。

  

アジア各地でも、ずっと日本食の健康志向については注目を集めており、単なる高級接待料理だけではなくなっている。

   
  

が、しかし、最近、そのヘルシー料理の地位が危ういかもしれないのだ。

 

シンガポールのある庶民向けのフードコートの一角にあるレストランで、下の写真のようなメニューを発見した。

   

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大長今」とは、日本でもブレイクしたTVドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」の韓国原題で、「養生套餐」とは「ヘルシーセットメニュー」という感じだろうか。

  

この番組は東南アジア一帯でも相当ヒットしたようで、台湾では冬のソナタより視聴率が高かったという話もある。

  
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HPより引用

  

かつて、日本の連続ドラマ「おしん」が世界中でヒットしたのと同じような現象に近いのかも知れない。

  

それが単なる視聴率だけの問題ではなく、もしかしたら飲食の業界にも影響するかもしれないのだ。

  

「チャングム」では韓国の宮廷料理だけではなく、不老(アンチエイジング)や長寿、病気予防・治療などの食養生の知恵が満載で、長い歴史に育まれた韓国伝統の医食同源、薬食同源のイメージが視聴者にも伝わってくる。

  

もっとも、この店では、ナムルやビビンバ、コムタンスープ、人参茶など、すでに日本でもおなじみの定番料理をヘルシーメニューと謳っているだけの話なのだが、時としてイメージは消費者に大きな影響を与えることがある。 

   

裕福になったアジア大都市では、若返りや長寿にこだわる、いわゆる「健康オタク」が急増している。

   

日本で放映されたテレビの健康番組が現地語に即刻翻訳され、結構ブームになっているらしい。

  

健康酢、ウコン、五穀米、納豆いたるまで、日本食材のブームが各国に伝播している。

   

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シンガポールでは牛丼にもこのとおり長い列が

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東南アジアでも讃岐うどんブーム!?

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健康食品もこの人気

    

このように、単に商品を紹介するだけではなく、メディアを通じて食べ方や文化、健康知識、情報伝達などを戦略的に活用することも有効に違いない。

  

このままにしていると、「ヘルシー料理の代名詞は韓国料理」に取って代わられるかもしれない。

  

ここでも「攻め」の姿勢が求められる。

   

異国でも感じるインドの熱気

 
初めてシンガポールに行ったのが1983年だから
かれこれもう23年も前の話になる。

その頃すでに、クリーンシティーとして安全・清潔な街として
多くの観光客やビジネスマンたちを集めていた。

  

多民族のこの街は、
中国人、マレー人、インド人、アラブ人などが各々のコミュニティーを形成していて、何処を歩いても異国情緒を味わえる。

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この国では当然チャイナタウンが最も大きく、必ず立ち寄るところだが、もともと華人(中国系人)の国家だから、本来、
国全体がチャイナタウンのようなものなので、
私はここ数年、シンガポールに立ち寄る度に、隙間時間があれば
リトルインディアを訪ねるのが、ちょっとしたマイブームになっている。

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地下鉄リトルインディア駅
  

BRIC’sなどといって、確かにインド経済の活況が伝えらているが、
ここへ来るたびにいつも新しい発見や出会いがあるから、
やはり本国の元気のよさと無関係ではないのだろう。

  

とにかく、何処に目を向けても絵になる街なのだ。

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市場に行けば、いつも活気に溢れている。

  

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「袋入りの吊るし売り」とは、インド人の合理性ゆえか?

  

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バナナの葉も立派な商品

 
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通りに出れば、繊維製品を中心に雑貨や家具、絨毯なども売っている。

  

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雑誌の屋台に釘付け!?

     

商売上手という意味では中国人とは好敵手だし日本人には足元にも及ばない分野だ。

   

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食べるパワーも中国人に負けてない

   

旨いモノでは最近いつも通っているのが、フィッシュヘッドカレーで有名な「MUTHU’s CURRY」。

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5年前、現地の人に案内されて初めて来たのだが、それ以来、病み付きになっている。

  

ひとりの店員嬢が僕のことを憶えておいてくれていたのには結構感激。

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インド人はホスピタリティーがあるからか、あるいは商売上手なのか?

   

通りや食事だけなく、街行く人たちがとにかく個性的で華やかだ。

   

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携帯電話とインドの人って、なんかイメージが新鮮だ

   
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コスメ、タトゥー、整形など美容関連のビジネスが盛んのようだ

    

いつか彼らインド人に「ニッポンを売る」時がやってくるのだろうか?

なんだか今から楽しみだ。

  

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壁画か塑像と同じ顔だちをした人を見つけてドキッとした

  

インドに行かなくてもインド人コミュニティーにどっぷり浸れるのも、シンガポールの魅力のひとつでもある。

    

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緊急事態に翻弄される対外貿易

  

属する貿易団体から、緊急のニュースレターが届いた。

  

経済産業省貿易経済協力局からの通知で、
11日、政府が「北朝鮮による核実験に係るわが国の当面の対応について」を発表し、その中に北朝鮮からの全ての品目の輸入を禁止するという措置が含まれている。

この措置は、今日13日に外為法第10条に基づき閣議決定され、明日14日から施行される予定だ。

詳細については、同省のホームページに掲載されることになっている。

  

措置の主な内容として、

○北朝鮮からの全ての貨物について、経産大臣の輸入承認義務が課せられることになり、輸入が禁止される。

○北朝鮮から第三国へ輸出される仲介貿易取引や承認を受けずに行う輸入貨物代金の支払いも禁止される。

また、施行日以前に交付された輸入承認の取扱いについても別途規定が盛り込まれる。

今回の北朝鮮による核実験は、唯一の被爆国であるわが国としては断じて容認されるべきものではない。それはわが国に近かろうが遠かろうが関係はない。人類存亡の問題でもあるからだ。

  

核問題に対してわが国、我が国民が敏感に反応するのは当然のことである。

  

民間貿易取引は、原則的には平和と安全保障が前提として行われる経済行為である以上、これが脅かされることがあれば、政治上の理由で制約が加えられることは覚悟をしておかなければならない。

  

国際貿易では市場原理だけでなく、政治問題や様々な天災・人災が原因で予測もつかない事態に急変することが時々起こる。

最近でも、9.11テロSARSの流行で身動きすら取れない経験をした記憶はまだ新しい。

  

私も業務上関係している農水産、食品、繊維、建材の業界では北朝鮮と何らかのつながりがあるはずで、企業によっては取引中断や制限、逆に他国へのシフトや調達奔走など、逆風や特需に追われているはずだ。

前世紀までは中国をはじめ、主に社会主義国とのビジネスは常に政治問題に翻弄され、私も何度か修羅場を経験してきた。

  

新内閣発足直後、様々な波紋を呼んでいる今回の核実験問題だが、平和を前提とする貿易立国に住む国民のひとりとして、この事態に対して毅然と立ち向かうことが求められている。

  

同時に、したたかな国際派ビジネスマンなら、当然、世論やマス報道だけに目を奪われるのだけでなく、次ぎの展開、またその次ぎの展開を見据えた変化を先取りするイメージを持ち、アクションを起こしおかねばならない事は言うまでもない。

    

整備を進める博多港

 
多湾のアイランドシティ地区で9日、国際コンテナターミナル整備事業着工式が行なわれた。

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国交省、福岡市など行政をはじめ、工事関係者、各界来賓や福岡地区選出の国会議員、多くの報道陣が式典に参加した。

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神官による安全祈願祭礼の後、式典が行なわれ、国土交通省九州地方整備局長および福岡市長が挨拶に立った。

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国交省九州地方整備局 小原局長
 

最後に来賓によるスイッチ起動が行なわれ、海上のポッパーが作動して工事が始まった。

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最近、北部九州への自動車関連産業の集積や躍進する東アジア各国との活発な輸出入を背景に、博多港で取り扱われるコンテナ貨物は急増している。

この10年間で全国平均で約1.5倍の伸びに対して、博多港は2.4倍の勢いである。

コンテナ船も大型化しており、その対応として岸壁水深15mのコンテナターミナルが計画されている。

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この地点にターミナルが整備される

   

また昨年、予想外の地震を体験した博多港は、今回耐震仕様となっている。

平成20年初めの供用を目指してこの日工事が始まったが、高規格のコンテナターミナルが整備されることによって、国際中枢港湾としての更なる貢献が期待されている。

博多港は、主に工業製品や素材などを輸出し、肥飼料、食品、民生品などを輸入しており、産業の動脈として重要な役割を担っている。

 

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既存の14mバースでは効率よい荷役が行なわれていた

  

物流の利便性が向上することにより、新たなビジネスが発生する。

アジアとの近接性を生かすためにも、今後も地域の物流機能が高まることは、自動車・IT半導体関連から農産物・食品に至るまで幅広い産業振興の可能性を押し広げるもっとも有効な「架け橋」のひとつであると実感している。

  

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さらに一歩動き出したアイランドシティー事業だが、真に地域社会に貢献し、少しでも効率的で将来ビジョンに即した現実プロジェクトとなるよう、今後も多くの人たちの知恵と努力を結集していかなければならない。

  

私は仕事を通じて様々な産業の国際化支援に携わっているが、ビジネスマンは海運および港湾の機能や利便性について、もっともっと認識を深めておくと大きな武器になると考えている。

  

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国際交流最古参の地 ―長崎

   
毎年10月7日から9日まで「長崎くんち」が行なわれる。
   

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(船大工町の川船)
  

9月9日の重陽節に行なわれたので「くにち」が「おくんち」になったものと言われている。

 

今年は3連休とピタリと重なり、中秋節にも重なった上に好天に恵まれたから、長崎の街は県内外から集まった大勢の人でごった返した。

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(新地中華街のランタン)

 

私は初めてのおくんち参観で、2日間にわたり大いに堪能させてもらった。

これまで、私は長崎くんちは、奉納される諏訪神社の境内でしか見られないものとばかり思い込んでいたのだが、3日間の期間中、市内随所を練り歩き、主要ポイントで出し物の演技が披露される事を知った。

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今回はJR長崎駅前のかもめ広場に陣取って、6つの出し物を鑑賞した。

すでに372年の歴史のある長崎くんちは日本三大まつりのひとつに数えられ、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。

 

今年は6つの町が素晴らしい出し物を披露してくれた。

数トンもある山車(だし)を前後に勢いよく引いたり、クルクルと廻す曳き物。男衆たちの力強さは他の勇壮な祭りと比べても引けをとらない。
 

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(本石灰町の御朱印船)

演技が終わるたびに、観客から威勢よく「モッテコーイ!」 「ショモー(所望)ヤレー」と掛け声がかかると、また引き返して再度演技を始める。

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会場全体が「モッテコーイ・コール」でどよめく
 

いわば祭りのアンコールである。これが感動ものなのだ

演技者も観客も一体となって、大きな興奮に包まれる。
   

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(万屋町の鯨の潮吹き)

 

また、本踊りと呼ばれる日本舞踊や阿蘭陀漫才など、あでやかな舞いや子供たちのコミカルな動きは、しばし緊張をほぐしてくれる。

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(栄町の阿蘭陀漫才)

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町の幹部の装束も面白い。
   
日本の羽織に、下は中国の唐人パッチを履き、西洋の山高帽子をかぶるのだ。

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そう、和・華・蘭(わからん)チャンポン文化なのである。

 

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(ベトナムから凱旋帰国したテーマがモチーフに)

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ベトナムのアオザイ姿も…
  

お囃子の音楽も、三味線あり、銅鑼や鐘もあり、異国情緒がタップリだ。
 

翌朝、各町内の出発式も見学した。

41年ぶりに参加する花町があった丸山町は、さすがに粋な風情。

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(丸山町の出発式の模様)

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地元に根付き、老若男女地域共同体の伝統が垣間見えて興味深かった。

鎖国時代から、海外交流の唯一の窓口として重要な役割を担った長崎。

日本で最も早くから国際交流を始めていた長崎の人たちの活躍の舞台は今も世界に広がっている。

いわば国際派最先端のDNAを持った人たちだ。
  

どこかハイカラでセンスが良く、垢抜けているのも港町特有の情緒かも知れない。

 

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期間中、こうして町中を練り歩く

  

一度はぜひ足を運んで見学することを勧めたい秋祭りである。

  

韓国人、台湾人観光客はもとより、インド人、ロシア人、マレー人の観光客を見つけた。誘致活動もすすんでいるようだ。

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長崎駅にて

   

2日間にわたり案内してくれた国際派のNさん、本当にありがとうございました。

 

中国の規制強化を考える

ここ数日、中国内で日本製の化粧品や食品に有害物質が検出されたということで当局の検査が強化されているという。

 実際に通関に時間がかかったり影響も出始めているようだ。

  

 日本国内の報道では、この原因は今年5月の日本の使用農薬のポジティブリスト制への移行に伴う規制強化に対して、中国側がこの措置は形を換えた非関税障壁であるとして報復措置に出たもの、との見解がもっぱらである。

 確かに、中国当局が規制を強化する背景には必ず何らかの意図が働いていると考えられるのも無理は無いが、我々は冷静さを失っては却って問題を複雑化させる

  

 農産物や食品貿易における日本の規制強化やネガティブ報道は、実は私が中国ビジネスに関わってからも数多く経験している。1980年代にも輸入が急増した中国茶の中にダニの死骸が異常に含まれているという報道やコメ不足のときにタイ産米にも同じように報道され、交易に大きな影響を与えた。

 

 最も大きかったのが2002年の中国産ほうれん草に残留農薬が検出されたとの報道をきっかけに、日本中の世論が「中国産は汚染だらけ」の大合唱となり、検査が大幅に強化された結果、中国からの輸入が大幅に落ち込み、現在もその余波が続いている。

 確かに、急成長する中国において食品に対する管理がずさんとなり、国内外で問題が噴出していることは事実であるが、中国当局がまったく放置しているわけではなく、また、日本向け輸出の大きな担い手である日系企業もかなりの負担をしながら、ここ数年改善に乗り出している。

 ある意味では、残留農薬問題をきっかけに、中国における対日向けの食材では、近代的食品管理や有機・減農薬農業などが急速に普及していると言う皮肉な結果すらあるくらいである。

 

 しばらく消費者はそっぽを向くだろうなどと安心するようでは先が思いやられる。

 

この種の問題は、一部のネガティブなとらえられ方をして、正常なビジネスに大きなコストや負担、制限が加えられてしまうことである。

 

 これは国際交易の局面では、長期的に観れば決してプラスに働かない。

 

 数日前も、テレビの人気女性キャスターが、何の脈絡も無いところで「農薬汚染がひどい中国産の農産物云々・・・」など平然と形容詞をつけていた。

 

 また、中国の農業事情を取材するに当たって、衛生状態の悪い栽培現場を撮りたいので探して欲しいなど、初めから結論ありきの偏向ともいえる要求をされることも多い。

 

 世論が求め、大衆が歓迎する方向に報道が移ろって行くのは理解できないわけではない。しかし、あまりに極端に走ると却って国益を失うことになることを知るべきである。

  
これは日中双方に言えること。

  

冷静に対応しないと現実離れした問題に発展しかねない。

 もうひとつ、私のこれまでの経験から、ネガティブキャンペーンをしてみても最終的に勝利することは無い。短期的には得をしても、大きな潮流の中で根本解決することは無いからである。

攻めの姿勢で、堂々と渡り合うほうが絶対に強くなれる。

  

20年前、あれだけウーロン茶ブーム、紅茶ブームにさらされ、危機的状況とまで言われた日本茶の業界も、今はどうだろう。国内ばかりでなく、東南アジアやアメリカでも人気を呼び始めている。

  

今回の化粧品・食品の規制強化を動きを注意深く見守っていかねばならない。