タイ・ショック(その2)

        
(先回から続く)

タイで観光と言えば、もうひとつビックリしたことがある。

            
昨年9月、タイ・バンコクの新国際空港であるスワンナプーム空港の開港直後に訪れた時のこと。

            
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バンコク新国際空港
   
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免税店フロアのコンコースにオープンな寿司バーやカウンタバーがあってビックリした
    
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1997年の香港新空港開港時に苦い体験をしていたので、初めてのこの空港でも預けた荷物がチャンと出てくるだろうか?などと、ターンテーブルのところで心配しながら待っていたら、何やら聞き覚えのある外国語がガヤガヤと聞こえてきた。とにかく大勢の団体さんだ。
     

ロシア語に間違いないッ!

   
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なぜ解るのかと言うと、
そのつい数日前までウラジオストクに行っていたから。

    
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ウラジオストクの街
      
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て、再びバンコクの空港。

彼らは体格もいいし、きっとロシア人に違いない・・・。

   
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とにかく声も大きく、元気がいい。

   
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しかも若い人、年配、男性も女性も家族連れもおり、みな開放感に満ち溢れていてとにかく楽しそうだ。

    

ロシア経済の好調さはこんなところにも現れているのか? と感じ入ることしきりだった。

    

なかでもモスクワ経済が一人勝ちだと聞いているから、きっとこの人たちはモスクワから来たんだ、と思っていた。

       
しかし、後日、ウラジオストクで面識を得た政府機関の方と再会した時、バンコクでの一件について話したところ、それはウラジオストクの人である可能性が高い、と言うのだ。

      

ウラジオストクとバンコクを結ぶ定期航空路線が開通したとのことで、景気好調を背景にウラジオではちょっとしたタイ観光ブームになっているとのこと。

      
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バンコクを訪れる多くの欧米系の観光客の中にロシア人もきっといる・・・

       

寒いところの人は温かい場所で過ごすことを好むのだろう。

    

逆に年中暖かい東南アジアの人たちは雪や温泉のある観光地を好むようだ。

      
そういえば、ウラジオストクでは買い物をする時、値段を見ないで高級品を買う階層が人口の5~6%程度いるとの調査結果があると現地で聞いたことを思い出した。
       
      
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ウラジオストクの高級スーパーにて

   
いまや日本の自動車をはじめ、様々なメーカーや物流企業がロシアに進出しているという。

     
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中国、インド、そしてロシアという人口大国の一般庶民が豊かになるということは、いったい私たちに何をもたらすのだろうか?

     
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ウラジオストクのメインストリート

        

タイ・ショック(その1)

                      
先回に続いて、もうひとつの話題を
         

福岡県久留米市の田主丸町といえば、巨峰ぶどう狩りで有名な地域であるが、この季節は「柿狩り」もまた楽しみのひとつである。

      

久しぶりに観光柿園にやってきた。

    
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ここも元気な青年生産者がいろいろ知恵と工夫を凝らして運営している観光果樹園で、来園者はハサミとカゴを手にして思い思いに柿狩りを楽しむのである。

       
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目を皿のようにして大きな果実を見つけ、パチンと枝から切る瞬間は柿好きにはたまらない。

       
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手にずっしりと重さが伝わってくる。

      
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この季節は「伊豆早生」という品種で、名産の「富有柿」はまだ青く、来月の収穫の時期を待っていた。

   
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3ツ4ツほどちぎり、
   
さ~ァて、もうひとつ行くか」と意気込んでいたら、

大型観光バスが乗り付けてきて、ドヤドヤと団体さんが下りてきた

         

柿園の人たちがにわかに忙しくなり、「外人さんたちがやってきたッ」と準備に取り掛かっている。

    

外人さんといえば思いつくのが、韓国人?台湾人?中国人?
      

最近なら普通そう思うのが常識と言うもんである。

        

ところが、聞こえてくる言葉がまるで違う。

そう、タイの団体さんなのである。

    

もう、みんなハサミとカゴを持つやいなや大はしゃぎして、柿の林の中へ散らばっていく。

     
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一心不乱に柿をちぎったり、記念写真を撮ったりしたりと、さながら興奮のルツボ状態

    
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僕ら日本人はせいぜい5~6個くらいだが、タイ人の彼らは、一気にもうカゴ一杯15個も20個もちぎってる。

    
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皆さん 大収穫だ!

       

一体いくらになるんだろう?

      
こっちが心配になってくるが、ちぎった柿を重さで量る清算所では、一万円札が飛び交っているのである。

    
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試食用の柿もみんなで平らげてしまった。きっとタイ語で旨い旨いと連発していたのだろう。

    
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以前から、タイやフィリピンの人は柿が好物だとは聞いていたが、こんなにまで喜んでいるとは想像もつかなかった。

    
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バンコクの百貨店で販売される日本産の柿

        
      
話を聞くと学校の先生たちの団体さんだそうである。

         
皆、服装のセンスも良く、なかにはブランドに身を包んでいる人もいた。

            
こんな自然豊かな九州の山懐(ふところ)にまで、タイの団体さんがやって来る時代になったのだ。

           
心地よいショックが身を包んだ。

         

      
タイでの観光と言えば、

そうそう、もうひとつ驚いた事を体験したのだ。
(次回に続く)

      

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夕焼けと大志

                     
表的な秋果実のひとつであるが旬の季節を迎えている。

   
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もちろん僕も大好物で、つい食べ過ぎて時々お腹が張ってしまうほどだ。

        
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福岡は甘柿の生産では日本一の県であるが、
その主な産地のひとつでもあるJAにじの柿部会青年部の勉強会に参加させて頂いた。
      

農業をめぐる様々な可能性について議論したのだが、とにかく熱心。
     
そと者、よそ者の私の話を真剣に聞いてくれるし、
質疑応答には、とにかく次々を手を挙げて訊いて来る。
     
自分の主張も意見もはっきりと述べてくれる。
    

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第一、考え方がみな前向き、建設的、専門的なのである。
     

技術革新、販路開拓、観光や地域との連携、海外市場視察など、自分たちでドンドン行動しているのだ。
    
女性のJA職員も組合員も元気一杯で目がキラキラしている。

      

今でも柿の生産は、決して恵まれた経営環境ではないけれど
この人たちなら何かやってくれるかもしれない、と思わせる頼もしい存在として私の心に映った。

      
       
国内有数の規模と近代性を備えた柿の選果場も見学。

       
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最新鋭の設備で、選別や検品、包装、出荷まで一貫した作業が大規模に効率よく進められている。
   

ロボットも活躍していてビックリ。

    
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この日も全国に向けて発送されていた

      
    
施設見学の後は、最近お目見えした新顔の柿「太秋」とのご対面だ。

      
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昨シーズンに初めて味わい、ひっくり返るほど美味しくてビックリした。
       
その深い甘みと共に、なんか別の果物でも食べているようなサクッとした食感が、柿とは思えない新鮮な感覚に襲われる。

    
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直販所でも最近は指名買いの顧客も増えている
      
   

これだけは食べんとわからんよお~ッ。
(食べてみなければ判りませんヨ!)

       
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これが太秋の食べ頃の色合いなのだが・・・
      

大玉でずっしりとした存在感なのだが、果皮は決して鮮やかなオレンジ色ではないので、見た目で損をしているけれど、とにかく味わうべし!

     
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このアバタ(条紋)こそ、じつは美味しさの証し
        

柿が苦手な人でもスイーツ感覚で食べられると思う。
     
     

青年の志(こころざし)、施設の先駆性、新種の味わいに3度の驚きを体験して、深い充実感に浸りながらふと西の空を見上げたら、一面真っ赤な夕陽に染まっているではないか。

    
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柿と同じ、青年たちの情熱とまったく同じ、大地を照らす太陽の輝きがそこにあった。

     

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スローフード礼賛

                   
筑後地域と呼ばれる16市町村、22地域で、37日間にわたって繰り広げられるイベント「筑後スローフードフェスタ2007」が始まり、そのオープニングイベントに参加した。

   
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坂東太郎(利根川)、筑紫次郎、四国三郎(吉野川)という日本の三大河川のひとつ筑後川流域一帯を指し、昔から米どころの穀倉地帯で、豊富な農水産物で有名な地域である。

      

その筑後地域が連携して、広域かつ長期にわたるイベントを行うもので2年前から始まっている。

     
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地域の伝統食や食材を見直す「スローフード運動」だが、その意義は市民の間にも広まりつつある。

      
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不ぞろいなのが自然を感じる

       

何よりも生産者が元気と自信を持って、消費者との交流に臨んでいる姿を見るのはとても頼もしく映る。

    
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子供に懐かしいおやつの作り方を教え伝える

        
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農業生産者は地元の消費者を大切にし、また生活者は改めて生産者に対する畏敬の念と産物の魅力を再認識する素晴らしい機会となるだろう。

      
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子供たちも秋の味覚あけびを勧め歩く

     

農産物の海外での販路開拓は、地産地消、スローフード運動とよく対比されることもあるが、アジアの大都市でも食が大きく乱れ、安全性や素材の価値についての渇望感とも言えるニーズはむしろ日本以上で、工業的生産でない手作り感が伝わる日本産の農産物に寄せる期待は、我々の予想以上のものがある事も知っていてもらいたい。

    
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台湾にも伝統食や健康食が一杯
    
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この面での訴求力を海外でも高めることは重要で、日本ならではの戦略を打ち出すことを常々主張している。
その意味で、このようなイベントは大変参考になるのだ。

       

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今日は理屈抜き。

     

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プロの指導による美味しい食べ方も情報発信

       

ひとりの参加者として、大いに楽しんだ。

   
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なが~い一本巻き寿司をみんなで作る
もちろん県の特産「有明ノリ」を使う
        
                 
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最近静かな商店街もこの日は親子の歓声が響いた

       

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小麦粉からうどんを打つ 子供たちも真剣

         

自然の恵みに
「ちっご(筑後)の生産者の皆さん、ありがとうね~ッ!」

     
       
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虹色のフルーツ

         
憶えていますかぁ~ッ」と
嬉しいメールが届く。

      

そう、今年始め
10月の収穫の季節になったら、必ずお知らせしますからね」と
約束していたことをすぐに思い出した。

        
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収穫の季節・・・

       
       
知らせてくれたのは、JAに勤務するKさん。
農業技術や経営に造詣が深いだけでなく、
海外事情をはじめ、専門外の世界にも広く関心を払う、とても柔らかな頭の持ち主だ。

    

ここは、福岡県八女市の立花地区

     

八女は、あまおうなどのイチゴをはじめ、ミカンやぶどう、緑茶や様々な野菜・フルーツを産出する農業王国だ。

      
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もうひとつ、町単位としては日本一の収穫量を誇るキウイフルーツの産地でもある。
     
キウイ専用の選別設備を持っているのもここだけだそうである。

      

ちょうど栽培30年目を迎える当地のキウイは、年間4~5000トンを栽培するまでに成長した。

           

主な品種は「ヘイワード」という果肉が緑色をした、私たちにもなじみの深いあのキウイだ。
   

JA全農ふくれんでは、「博多完熟娘(うれっこ)」というブランド商品化をしており、一部アジア市場に向けて輸出もされている

   
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ところで、私が首を長くして待っていた今日の主役は、「レインボーレッド」という数年前からお目見えしている新品種のキウイだ。

    

いよいよ今年もご対面。

   
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袋に入ったままでも、プ~ンと広がる甘い香り。

       

ヘイワードのように表皮の表面に毛が無いのにまず違いを感じる。

       
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確かにツルンとしている美人系の概観!?

     

期待に胸を高めながら真ふたつにナイフを入れると、断面は見るも鮮やかな黄色と真紅のグラデーション。

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「うおおおお~ッ。」
     

つい声が出てしまう。

     

       
いつもより気を遣いながらスプーンですくって口に運ぶと、甘い味わいに全身が反応する。
     

本当に五感が目覚めるくらいの糖度の高さと美味しさなのだ。

      
   
           
今年からキウイの担当をしているKさんも自信たっぷりの表情で僕を見ている。
     

素晴らしい! 早く多くの人に食べてもらいたいね
と僕も応酬。

     

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“恋するキウイ”がキャッチフレーズ

      
   
しかもレインボーレッドには、あのジャリジャリと口に残るキウイ独特の食後感が無いのも大きな特長だ。

       

もっともヘイワード種のあのジャリ感こそがタンパク質分解酵素で、パパイヤやパイナップル同様、肉などと一緒に食すと柔らかく、消化にも良いそうだ。
       
それに、お腹にもとっても良く効き、便秘に悩む人には2個も食べるとテキメンに効果が現れる自然薬だ。
       
ビタミンCが豊富であることは周知の事実。お肌にも良い。
      

正真正銘、女性の大きな味方だ。
    

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なんか“食べる宝石”といった感じ

     
      
  
は、この数年で倍増ペースで生産しており、元祖静岡県に並ぶまでになっているが、それでも今年はわずかに100トンで、限られた需要家らからの要望にも応じきれないのだそうだ。

        
それでも高級果物店やデパートで、今の季節お目見えしているかも知れない。
        
10月末までだそうだから、見つけたらぜひ一度お試しあれ。

      

様々な工夫とノウハウを凝らして完熟状態で出荷されていることを教えていただいたが、食べるタイミングをしっかり見極めることも肝要だ。
              
より美味しく食べるためにネ。

   

     
Kさんはじめ選果場の皆さん、ありがとうございました。

       
N国産に負けず、頑張って全国・海外に広めていってくださいね。
応援しています。

     
       
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ここは棚田でも全国的に有名な土地  -残そう自然!

   

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国指定重要無形文化財である八女福島燈籠人形
時代の香りそのままの伝承芸能に感動!

         
   

高齢化も日本にすぐに追いつく!?

        
上海市人民政府(市役所)の福祉政策主管部門を訪ねた。
       

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珍しく上海で晴天に出会った

            

今後の日中間の福祉分野での協力関係について情報交換、意見交換を行なった。

           

政府担当者の話によると、05年の上海市の60歳以上の高齢者の割合は約20%弱だという。

       
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                            早朝の公園にて

            

日本の統計は65歳以上だから単純比較できないが、上海の高齢者比率は決して小さくない

        

今後、2020年までに35%くらいまで増加していくと予測されている。

    
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上海ではもう少子高齢化は始まっているのだ。

         

もっとも、上海では長期にわたる好景気で、若い人を中心とする流入人口が小さくないし、中心市街地だけを見れば活気ある若者の街という印象を持つのだが、実際の戸籍で政策を運営する政府にとっては、次第に頭の痛い問題になってくるだろう。

    
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紙には「怒るな、機嫌よく」と書いてある

            

現に、今の第11次五カ年計画では、経済過熱、環境汚染が克服すべき問題に据えられているが、次の五カ年計画では、間違いなく人口バランス、高齢化問題も取り上げられるはずだ。

     

    
それでも数年前、一部緩和された一人っ子政策も、最近維持強化の方向へ向かっているといわれるし、経済的理由、生活の豊かさを求めて、日本のように晩婚化、非婚化、望んだ少子化やノーキッズなどの状況が上海でもすすんでいるから、5年後10年後はやはり懸念されるテーマである。

       
    
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老人と子供
     
     

近い将来、中国で少子化が顕著になる時は、どんな事が起こるのだろうか?

    

上海市政府も高齢者福祉、障害者福祉、保険制度ほか少子高齢化に向けた対応について、今から対応を進めている。

      

情報交換・政策交流の面でも“少子高齢化先進国 ― 日本”への期待は大きい。

   
ビジネスチャンスかも・・・。

     
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また、「ニッポンを売る!」視点で観ると、対象国・対象地域の社会問題についても情報を収集しておくことは重要だ。

    

すでに台湾をはじめ東南アジアなど主要地域・都市の社会事情についても様々な特徴が見えてきている。

      
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上海の路上にて

      

例えば、   

今、日本食品を支持している年代や階層はどうなっているのか?
             
また10年後はどのように変化していくのだろうか?

      
など、思考を縦・横・時系列に広げていく事が求められる。

         

日本商品輸出の長期戦略を練る上でも、単なる実践マーケティング活動だけでなく、いろいろな「切り口」で捉えていく事が大切ではなかろうか。

    
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新旧の建物のコントラスト

     

    
まさか、将来中国は、石油・食糧のように世界中から移民、労働者の大量輸入を始める時代がやってくるなんて考えるのは早計だろうな。
      

しかし、エンジニアや優秀な経営者など高度人材は、もうドンドン世界中から引き寄せている

     
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上海カニ料理の名店 -王宝和酒家

          
                   

好き嫌いを越えて、海外事情に対して冷静に見ておくことが重要だ。

    
      

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