自然の宝が生まれる町

               
桜島が浮かぶ錦江湾の反対側を目指していくと、
福山町(現・鹿児島県霧島市に合併)にたどり着く。

  
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Fukuyama
wikipediaより抜粋

   

    
ここは、誰もが知っているあの天然黒酢の里なのだ。
     

          
さっそくカメ仕込みの現場を見学させていただいた。

   
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錦江湾を広々と見渡す斜面に
ズラリと並べられる仕込みカメ。

     
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錦江湾の向こうには、鹿児島のシンボル「桜島」が間近にそびえる

   
   
      
その数1万4千個を超える。

   
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天空からは、薩摩の日光がふんだんに降り注がれている。

   

     
そう「天日静置製法」と呼ばれる天然醸造酢の製造現場なのだ。

   
     

ここにも、長年の経験を積む、誇るべきマイスターがいる。

  
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伝統の技を懇切丁寧に教えていただく

     

    
十分な日射、清らかな水、適した米。
   

この風土3条件がそろった上で、歴史に受け継がれた伝統技術が加わって、奥深い味わいの黒酢が出来上がる。

   

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仕込んでから4か月ほどたったカメの内部。
表面に酢酸菌の膜が張り、ここでようやく品質が安定し始める。
舐めてみると突き刺すような酸味に驚くが、これも意気の良い青年を感じさせるような味わい。これから本格的な熟成に移る。

     

     
「自然任せの製法だから、きっと品質にばらつきが出るんじゃないか?」

   

素朴な疑問だが、やはり微妙な違いまで、とことんコントロールしているらしい。

    

だったら、理想的で安定した人工的な室内環境を作り出し、
大きなタンクで衛生的に均質に製造すればよいものを…。
    

でも、ここ福山町ではそうはいかないのだ。

   
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来週から、この現場で秋仕込みの作業が始まるそうだ。

   
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多忙を控え、仕事師の皆さんの緊張と誇りを感じる。

     

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素晴らしい自然遺産、技術遺産を生かして、
今や全国的に広まった天然醸造黒酢がこの場所で日々熟成されている。

   

株式会社福山物産様、ご指導ありがとうございました。
          

一面に降り注ぐもの

                         
北海道を離れて翌々日に
鹿児島中央駅に降り立っていた。

ほんの数時間のトランジットで(!?)。

       
   
訊けば、昨日までおよそ20日間も桜島の噴煙の灰が市内一円に降り注いていたらしい。 
       

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快晴の蒼い空を見上げてもにわかに信じがたい。

     

    
街角のどこを歩いても、清掃した灰がビニールに詰められ、
うず高く積み上げられていた。

   
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鹿児島のいわば日常風景。

   
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目につき厄介な灰だけに、市民の皆さんは苦労も多いことだろう。

      
   
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1月末に噴火した新燃岳の降灰被害を受けた宮崎県の生産者の皆さんにも思いを馳せる。

        

          
さらに、目に見えない放射性物質の飛散に苦しむ福島県を中心とする
東北・関東の皆さんのことを思うととてもやりきれない。

      
    
       
降灰直後といっても、鹿児島の中心市街地は注意していないと気付かないほど綺麗に清掃されていた。

     

このノウハウを除染に応用できないものだろうか。

   

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大地に立って再認識する

(前回から続く)

      

さらに車で2時間。

      
北海道は本当にデッカい。

   
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一見単調に続く風景でも、ちっとも見飽きない

    

     

人参と玉葱の選果場を訪問。

       

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ちょうど作業もピークを迎えており、
全国に向けて出荷の作業を行っていた。

   
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僕はどれだけの規模が、北海道では標準なのかは分らないが、
このパワーで農業が効率的に行われれば、
きっと競争力もあることだろうと感じつつ、現場の皆さんの話を聞けば、
これはこれで多くの課題があり、壁があることも知り、
農業の奥深さを再認識すると同時に、
安易な議論は出来ないものだと改めて実感した。

   

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高速回転して、玉に傷がつかずに外皮がとれていく
    
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広大な工場には最新鋭の生産ラインがずらりと並ぶが、こうして人手によっても入念にチェックされる

       

それにしても、今年も9月に入って収穫の時期に大雨に遭い、
2年連続で天候被害を受けている。

   
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畑での乾燥がままならず天を仰いでしまう

           

台風15号の被害も心配だ。

     

北海道の状況は、そのまま全国の相場に直接影響するだけに他人事ではない。

     
   

ますます大自然に対する畏敬の念を心に刻む。

     

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北海の四大美人の競艶に胸が押しつぶされた夜(第4回)

(前回より続く)

      

4大カニのほかにも、ウニやつぶ貝、ホタテ、真ホッケ、各種高級カレイ、イクラ、紅鮭、これからが旬の秋サケ、大漁サンマほか書き留めきれないほどの海産魚介類を、ひとつひとつ丁寧に紹介していただいた。

    
         
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礼文島産の極上のウニ

   
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生はこんな色をしていたんだ。   北寄(ほっき)
    

水産チームの皆さん、ありがとうございました。

   

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断っておくが、あくまで試食会(!?)であるが、
浦島太郎が竜宮城で受けた歓待とは、きっとこんなことを指すんじゃなかろうか、などと
膨れきったお腹を擦りながら、しみじみと感じた夜だった。
                                  (次回に続く)

   
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溢れ出るウニも本場ならでは
      

北海の四大美人の競艶に胸が押しつぶされた夜(その3)

(前回より続く)

    

僕が楊貴妃に例えた
甲羅のミソの濃い味わいが絶品の毛ガニは、
地元のご自慢のひとつ。

  
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オホーツク海沖産と噴火湾沖(太平洋側)産の二種を比べてみた。

   
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上がオホーツク海沖、下が噴火湾沖の毛ガニの脚。よく観るとなまめかしくさえある

   
      

流氷と共にやってきた海の栄養分をたっぷりと取り込んだオホーツク産の濃厚で深い味わいは、もう僕の筆力では形容できないレベルの逸品である。

  
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滴るカニ味噌。毛ガニの醍醐味だ。舌の上でネットリとまとわりつく。凝縮された旨味成分が攻撃的でさえある
   
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正身も決して大味でない。ミソと供和えで頂くとまた格別。 

       
     
  
タラバガニは、中華圏では帝王蟹と呼び、あっという間に大人気の高級食材に登りつめた。

  
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あの口いっぱいに膨れ上がるボリューム感と独特の甘みが最高の食べ応えを演出する。

        
      

      
他の3種と比較すると、モデルさんのようにスリムな感じのズワイガニ
繊細な肉質と滋味あふれるカニ本来の味が堪能でき、
北海道でもこのカニが好き、という根強いファンが多いらしい。

   
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比べるとどうしてもボリューム感に欠けるが、なかなかもって奥深い滋味にノックアウトを食らった

       
水揚げされる地域によって、
越前ガニや松葉ガニと呼ばれるのもこのカニだ。

             
   
            

茹でると鮮やかな朱赤色に染まり、鎧のようなトゲに覆われる花咲ガニ
花咲と呼ばれる根室港で主に水揚げされることからこの名がついたとも言われる。

  
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一際大きな個体を見せるボリューム感ある肉質と溢れ出るミソは
初めて食体験するものを仰天させるに余りある存在感だ。  
   
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あふれ出る外子と濃厚マッタリの内子が同時に楽しめる。ヘビー級の旨さだ。
ロシア船が運んできたものだそうだ

   

ちなみに、北海道で水揚げされる蟹は、
甲羅の全長が8cm以内の小型とメスのカニは、
必ず海に戻されるのがルールである。資源保護のためだ。
市場に出回っているメスガニはロシアなど外国産ということになる。
   

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花咲ガニの脚。一際大きなトゲが個性的

     

もうひとつちなみに、タラバガニと花咲ガニは、確かに同じく十本脚なのだが、
実際に歩行に使う脚は3対しかなく
ヤドカリの仲間に分類されることはご承知だろうか?

     

         
カニを食べると押し黙るとよく言われるが、
僕も始めはギャーギャー子供のように絶叫し、

そのあとは、
とにかく説明を聞き、頷き、記録し、口に頬張るという繰り返し。

     

      
モグモグ、モゴモゴ、モグモグ、、、
    
   

ゴックン、ゴクン、、、
   
       

キョロキョロ・クラクラ、、、

    
    
     
そのうち、ズッシン、ズシン・・・

    

      
   
溢れんばかりの4種・多産地・多規格のカニ肉が
僕の脳裏と胸中と、そして胃袋の中で急激に膨張してきた。

      
       
お腹いっぱい、胸いっぱいという境地である。

    

神様、今宵だけ中学生時分の食欲をお与えください。

   

この時ほど、自分の胃袋の許容量の小ささに悔やんだことはなかった・・・。

    

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北海の四大美人の競艶に胸が押しつぶされた夜(その2)

(前回より続く)

      

いいか、これは宴席じゃないんだぞっ! 勉強、勉強…!
        

何度自分に言い聞かせたことか。
       
      

      
水産のプロから一つ一つ説明を受ける。

     

       
        
今回のメイン食材は、カニ (蟹)

      
    
中央の大皿にドカッと鎮座している。

          

この日は四大品種のカニを産地別、規格別に調理して
その外観や味について比較する。

       

         
毛ガニ、タラバガニ、ズワイガニ、そして花咲ガニである。

    

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上段がズワイガニ、中段は毛ガニ、下段はタラバガニの巨大ハサミ
      
       
     

中国では、西施、貂蝉、楊貴妃、王昭君という四大美女が有名だが、
まさに頬を紅く染めた北海道の四大美女の競艶そのものだ。

     
   
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上段は花咲ガニ、中段は毛ガニ、下段はタラバガニ

        
   
    
スリムでしなやかなボディーラインが美しいズワイガニは、
さしづめ越の西施に例えられるか。

       
         
ふっくらとボリューム感に満ち、誰もがその美味を知っている毛ガニは
傾国の美女・楊貴妃に例えてみよう。

         
        

    
ああ、見とれているだけで、だんだん胸が熱くなってきた…。
                                   (次回に続く)
                

北海の四大美人の競艶に胸が押しつぶされた夜(その1)

         
北海道の水産の流通現場で本当に沢山の情報や知識を学んだら、
今度はもう一つの現場、
そう、食卓で再現される水産物の各要素の違いを学ぼうということになった。

  
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世界遺産知床・斜里港の秋ジャケや羅臼のホッケ、根室港の黒カレイ…。
北海道の多様な品目や水揚げ港もたくさん学んだ。

    
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早い話が「食べ比べてみよう」、ということなのである。

         

               
ここは札幌市から車で約2時間半離れた某市の料亭を借りての試食会である。
           
   
広いテーブル上には、すでに一部の隙間もないくらいの大小の皿が並んでいる。

   
     
うおおおおおおおおお~っ!

       
   
僕は水産品の専門家でもなんでもないから、
素人そのままの感受性むき出しに絶叫してしまった。

       
憧れの北の海の幸が180度の視野でドッカ~ンと飛び込んでくる。
       

         
   
これがビジネスの現場でなかったら、絶対におのれの頬をつねっていることだろう…。
                                       (次回に続く)
                   

宝物を学ぶ

         
「明朝、4時半出発ですからね。」

    
       
エエ~ッ!?  朝にも夜にも弱い僕は、
一遍に気力が萎えてしまった。
     

さっきまでのやる気はどこへやら…。

        

     
眠い目をこすりながら、札幌の街を移動。
    
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やって来たのは、札幌市中央卸売市場。

      

特別のパスをもらって、見学コースではなく、
セリの現場に入れてもらう。
       
   
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初めてマグロの取引場に足を踏み入れる。気が張り詰めている
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あちこちで威勢の良いセリの声が聞こえてくる。
         
    
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滞在すること3時間。
      
                
水産の宝庫、北海道の底力を存分に学ぶことができました。
      
       
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冬化粧の前に

             
今日、札幌にやって来た。                              
        
                 
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新千歳空港に降り立ったら
ターミナルビルがリニューアルされていてビックリした。          

               
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確か7月に来た時は、まったく様子が違っていたはず・・・。            
      
                     
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ゆったりとしたスペースも確保されている
       
           
                                       
お土産を売る店舗やレストランもすっかり模様替えして
さらに強力に北の物産の魅力を発信している。
      

ガラス張りのチョコレートの工場も併設されていて
これはもう立派な屋内テーマパークになっている。
                  
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空港利用でなくても冬場でもショッピングやレジャーに足を運ぶファミリーが増えるだろう                     

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国際線ターミナルも化粧直しをしていて、
いつでも世界中からの訪問客を受け入れ準備完了。                             
          

      
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英語、韓国語、中国語、そしてロシア語の表記は
北海道の特徴を表している。        
                           
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カニは、きっと中国人へのキラーコンテンツなんだな。   
            

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さあ、明日から北の大地で活動開始。                       
            

古都恋情(その9)

(前回より続く)
    

その日、仕事も終わり、夕刻散歩がてらに恒例の路地裏歩きをしていると、
暗い路地の一角で、ひと際目立つ看板の明かりに
斉天大聖」という文字が目に飛び込んできた。

   
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我こそは、天にも斉(ひと)しい大聖なり。」
と豪語する野猿あり。

    
      
学生時代に京劇で見た一節を思い出した。
     

もしかして、あの西遊記の主人公“孫悟空”ではないのか??

  
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ワクワクして本堂に入ると、果たして、このお寺の祭神は、
斉天大聖・孫悟空に違いなかった。

  
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中国大陸でもあちこち寺社仏閣を訪ねたけれど
孫悟空を祭ってある所には、これまでお目にかかったことはない。

  
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ずらりと居並ぶ悟空さんたち。

  
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自分の毛をむしって息を吹きかけ無数の悟空を造りだす分身の術にも思えるし、天界で悪さが過ぎて、菩薩様から石猿に変えられてしまったようにも見えるしでユーモアたっぷり。

  
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夜の本堂で独りポツんと拝んでいたら、
どこからともなくオジさんが二人、ス~ッと現れて来て、
僕に向かってやおら講釈を垂れ始める。

   
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顔は赤いし、酒臭い。 足元だっておぼつかない…。

   
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僕とは、国語(北京語)で会話しているのだが、
方言なのか、ロレッているのか、そのうち何を話してるんだが解らなくなって、とにかく僕は相槌を打つばかりになってきた。

   

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そう、一生懸命にいろいろ紹介してくれてるんだ。

    

そのうちこのオジさん、気が大きくなって、

わざわざニッポンから来たのか?  おい、入れ、入れ
     

と、やおらカギを開けて、柵の内側の本尊が安置されている仏壇を案内してくれるという。

  
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この酔っぱらった人が管理人さんなのかどうか分らないが、
菩薩様に免じてもらって、ご禁制の柵の中に入り、
居並ぶ悟空さんたちを抱き上げたり、サワサワ撫でさせてもらった。

   
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間近で触れながら、悟空様と仲良しになる
   

Dsc_0937       後ろ姿だって観ることが出来た

      

悟空が天界の無数の蟠桃を盗み食いして不老不死になったように
僕も何体かの悟空に触れて、強力パワーを授かったかも知れないゾ。
      
    

オジサンたちはきっと僕に、興味深いこと、面白いこと、故事来歴など
たくさん教えてくれたんだろうけど、
残念ながら、その後は翻訳不能、理解不能、判別不能でした。

  
でも、オジサンの熱い想いは届きましたよ。
       

      
             
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それにしても、この青いTシャツのオジサンがだんだん孫悟空に見えてくるから不思議なんだよねぇ。

もしかして、彼も分身だったりして!?

  

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おっと、もうひとりのオジサンも関帝のような神様に見えたッ
        

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やっぱりこのお寺のご本尊は、菩薩様と観音様だった。
悟空がちゃんと守ってくれてるんだね。

     
    
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お寺を去る時、オジサンは、僕が見えなくなるまで、
本堂の外からいつまでも手を振って見送ってくれた。

  
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南部台湾の人って、ほんとうに親切なんだ。
    

悟空さん、イヤ間違った。 おじさ~ん、ありがと~~う。
   

また来ます。再見!

      

       

んッ?? それにしても、あの二人
本当に神様の化身だったのかも知れないぞ???