気が付いてみれば、もう師走も半ばを迎え、
まだまだ日常の作業が残っているにもかかわらず、
とてもそんな気はしないのだが、今年を振り返る頃となった。
そこで、農産物の海外輸出の総括や
内外で出会った思い出深い体験などを
拾い集めてみたいと思う。
まず最初には、やはり
本ブログのメインテーマであるニッポンを売る! すなわち
農林水産物・食品の海外販路開拓についてであるが、
総じて「久々に逆風が収まって、商談や企画事業が円滑に進めることが出来た一年だった」と思う。
台北での展示商談会の日本ブースも、大勢の来場者で賑わった(6月)
考えられる理由としては、やはり
異次元緩和による円安側へのスイッチが挙げられよう。
とりわけ以前から輸出を続けていた高額商品ほど顕著だったように思う。
ある県のナマコを扱う事業者さんに聞いたら、
「この円安のおかげで、止まっていた輸出がようやく5年ぶりに動き出した。アベノミクス様々ですよ」
と去年までと違うほころんだ表情を見せてくれたのが印象的だった。
日本産乾燥黒ナマコ。加工過程でも手間がかかり歩留まりが悪いために高額になってしまう。宝飾品のように扱われるほどの価値がある (香港で)
なにしろ、この事業者さんの乾燥ナマコの販路は
9割以上が中国と香港の海外市場で、国内向けは微々たる比率なのだ。
そんな海外市場あっての地場産業もあるのです。
水産物など高級食材もそうだし、和牛や木材なども
動き出しているようだ。
世界中から熱い視線を浴びているジャカルタ市場
おそらく今年は、
5年ぶりに輸出額5000億円の大台を突破しているのではないだろうか。
ただし、僕は円安になったから自動的に売れ出したとは考えてもいないし、円安だけが伸長の要因ではないと、現場感からそう感じている。
それは、これまで海外輸出に取り組んできた事業者さんたちが
円高、風評、不景気、周囲からの冷ややかな目線、上がらない実績などの逆風にもめげず、諦めることなく「継続して」販路開拓に努めていたからこそ、この機会をとらえることが出来たのだと考えてる。
リーマンショック後の急激な円高が原因で、日本からの輸出額はずっと4500億円前後で頭打ちになったとよく言われるが、これらの全国のチャレンジャーたちが頑張っていたからこそ、この金額が維持できていたのであり、もしもこの努力や挑戦が無かったら、数字はさらに大きく落ち込んでいただろう。
その意味で、僕は、特にこの苦しい5年間をあきらめず
継続的に販路開拓に努力をした全国のすべての事業者、生産者、そして、官民の支援者、海外の関係者の皆さんに深く敬意を表したいと思う。
総人口が120万人足らずの宮崎県で160名を超える参加者を集め、沸々たる活況を呈した輸出勉強会
また、この間、
輸出にチャレンジする事業者の裾野が広がっていることも挙げられる。
もっともビギナーの人たちは、円高で輸出には大変厳しい環境だったことは、ほとんど認識されていなかったのではないだろうか。
「輸出支援の現場は必ずしも海外だけでなく、実は足元にもある!」と僕はずっとそう訴え続けている
無理もないと言えばそのとおりだろうが、
為替というものはそういうもので、円安から円高局面に向かって初めてその影響を肌で感じるものだから。
さきほどのナマコの事業者さんの安堵のセリフがすべてを物語っている。
また、世界中で日本食や日本文化の認知度が高まったり、
オリンピック誘致活動や海外での日本人、日本企業の活躍も目立ち始めたこと、
香港のバスターミナルで(2月)
同じく円安効果や震災のイメージ改善などで海外からの旅行客も増え、おもてなしに感激したニッポンファンも着実に増えている。
北海道のおへそ富良野にも本当に大勢の外人観光客が訪れ楽しんでいる(5月)
要は、僕が10年以上前から繰り返し主張してきたように
まずは我々日本人が、自分たちの可能性やその文化・技術などに
自信と誇りを持つこと。
香港九龍の街頭で (10月)
元気を取り戻すこと。
そのために下向き、後ろ向き、内向きの議論ばかりしないで
まず海外にも目を向け、視点を変えてみること。
ホーチミンでのブランドショップ(6月)
すなわち心の姿勢の問題だと、元気人という言葉を使って
訴えてきたつもりだ。
ともすれば閉鎖的な地域や業界にあって
空気を読むことが常識となっている風潮の中で
個性を生かしてトンがる人たちが現れてきた。
ベトナム・ホーチミンシティーに拡がるコンビニ (6月)
もっとも、これからのステージでは
熱いハートに加えて、冷静でクールな
調査分析、マーケティング、戦略発想、仕掛け仕組みの手法など
様々な取り組みが求められることは言うまでもない。
香港で (10月)
来年はさらにチャレンジャーが増え、一律でない多様な戦略戦術が現われることを祈らずにはいられない。
そのためにも、この5年間の経験を「建設的に総括」して
これからの活動に生かしていく知恵が求められるはずだと強調しておきたい。