全国規模のうねりになる日本農産物の海外輸出

27日、「農林水産物等輸出促進全国協議会」
(会長:木村尚三郎東大名誉教授)が正式に発足し、
その設立総会が全国の関係者を集めて、
東京・大手町で開催された。

総会には、アジアアフリカ会議から帰国したばかりの
小泉総理も駆けつけ、来賓挨拶を行なった。

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総理は、他の改革同様、
「守りから攻めへ」の農業改革について
熱心に自説を唱えた。

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具体的な事例として、
青森のリンゴ、島根のコメ、
福岡のあまおうイチゴ、宮崎のシンビジウム

アジア各国で高値で売れているという例を紹介し、
極めて強い関心を寄せていることを参加者にアピールした。

続いて、
この協議会の名誉会長である島村農水大臣が挨拶に立ち
参集者に向けて激励の言葉を贈った。

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また、経団連の奥田会長も祝辞を行ない、
農業セクターも同連合会のメンバーになるよう
エールを送ったのが印象的だった。

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第2部のパネルディスカッションでは、
木村会長をコーディネーターに、
全国的に有名な青森のリンゴ生産者の片山社長
上海・蘇州で評判の日本食材店を
8店舗経営する石橋水産有限公司の石橋会長と
私の3人がパネリストとして登壇し、
農産物の輸出の可能性と心構えについて発言・提言した。

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(左は石橋氏、中は片山氏、右は木村会長)

生産者自らが主体的に動いて、
新たな活路を見出すことを実践する片山さん。

中国という、ビジネス上の障害が多く、
競争激しい市場で勝ち抜くための厳しさと可能性について訴える石橋さん。

両名とも、行動力と実績があるだけに説得力は抜群だ。

私は、地方の行政や団体など、輸出支援をする立場から、
地域の生産者や企業が、
いかにしてやる気と工夫を引き出すかの重要性について
発言する機会を与えてもらった。

この「全国協議会」は、関係省庁、47都道府県知事、
農業、林業、水産業、食品産業、酒類、流通、外食、観光
JETRO、日商、経団連等の広範な団体組織から構成
されており、
官民一体となった経済促進・地域振興を目指すものである。

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輸出促進、食文化発信という様々な基本戦略と共に
輸出額を5年で倍増という数値目標も設定している。

全国協議会の事業を通じて、
日本全国から、やる気のある生産者、企業が排出し、
地域が元気になることを期待すると同時に、
輸出当事者も、困難多い海外ビジネスに際して
この協議会の情報やネットワークを
ドンドン使い倒してもらうことを願っている。

事務局:農林水産省大臣官房国際部貿易関税課輸出促進室

福岡地震と反日デモと「ニッポンを売る!」

16日に発生した上海での反日デモ活動が契機となり、
いま日中両国間で様々な駆け引きが展開されている。

我々日本人にとっては
中国政府が次にどんな対応をしてくるのか大いに注目している。

事態はまだ流動的で、
国際情勢、および中国の国内世論や政権内部の動向次第で
どう変わるのか、なかなか予測がつかず、未だ予断を許さない。

ところで、今朝6時11分、
福岡地方で震度5強の大きな地震が発生した。

私も福岡に滞在していたので、
この激しい揺れには驚いた。

3月20日の震度6の本震以来、
数日間めだった余震がなく、少しだけ忘れかけていた後の
突然の激しい揺れだっただけに、
実際の被害より、精神的なショックの方が大きかった。

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ここで、ふと考えてみると、
「これは、中国の反日活動をはじめとする
アジアで起きる様々な事件災害と同じではないか」
と。

私が30年ほど前から中国と関わりを持ってからも
政治問題に端を発する反日抗議や権力闘争による混乱、
予測もつかない事件や災害の発生などによる
突然の交流中断を何度体験させられたか。

数年間にわたり情勢が安定していたことなんて記憶にない。

最近でも、
大津波、SARS、鳥インフルエンザ、アジア通貨危機、天安門・・・

忘れかけた頃に決まって突然現れる不測の事態

戦後だけでも、日本は大国・中国に大いなる期待や幻想を抱きながら、
「これからはアジアの新時代だ」と盛り上がるのだが、
必ず乱気流に巻き込まれ、右往左往してしまう。

日頃、私は

多くのビジネスマンの方々は
2008北京オリンピック、2010上海万博までは
少なくとも右肩上がりのはずと期待されているようですが、
それ以前にも紆余曲折は何度かありますよ、

と訴えていたが、やっぱりそうなってしまった。

でも、その後、下の句が続く。

絶望的に見える状況になっても、いつの間にか回復し、
忘れたかのように、
また中国ブームが始まるのが不思議なんです

と。

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             (反日デモ数日前の上海)

要は、
常に不測の事態、予想もつかない出来事が起こりえるのが
当たり前の環境で、
それでも我々は「ニッポンを売る!」ことに挑戦するのである。

それは、今日発生した福岡西方沖の余震と同である。

専門家は、後追いの解説や分析は出来ても、
決して正確な予知は出来ないのである。

この耐性がない人・組織は、
中国などとのビジネスはやめておいたほうが無難である。

反日の上海を行く

今日午前、北京・広州に続いて、
上海でも反日デモが発生し、
一部投石騒ぎや破壊行為が行なわれたことが、
日本では終日報道された。

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(時事通信社)

WTO加盟以来、
SARSを除けば、経済関連のニュースが多かった中国だが
思い出したかのように、
反日感情の悪化とその行動が
日本中に衝撃を与えている。

いま中国・韓国で起きている一連の出来事は、
多くの日本人に激しいショック、
あるいはこれらの国々に対する嫌悪感を与えたことは間違いない。

デモ活動の背景については、
いろいろ観測されているが、
いずれにしても、
中国当局側により、世界中にこの感情を知らしめることが
ある種の目的であったことだけは間違いない。

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(朝の上海の街角で)

「ニッポンを売る!」という視点から見れば、
この反日、日本商品ボイコット(排斥)、歴史認識問題などは、
マーケットとしてのアジア、消費者としてのアジア人をとらえる上で
どうしても避けられないテーマである。
中国、韓国だけでなく、台湾、香港、東南アジアにおいても。

対日感情については、
今後長期間は、いかなる条件・方法をもってしても
根本的な解決はありえないと考える方が自然であり、
それを前提としたアプローチを目指すべき
だろう。

ただ、ハッキリとしておかなければならないことは、
この種の事態は、
これからも起きる可能性があり続けると同時に、
もう日本商品が売れなくなるとか、
日本人が現地でビジネス出来なくなるという事は
まったくない
と言うことである。

中国と30年近くも付き合っていると、
この辺の感覚がなんとなく分かってくる。

昨年来、講演の機会があるたびに訴えているのだが、
中国特需だからといって、北京オリンピック、上海万博までは
ビジネス天国だとばかりに舞い上がり、
反日デモや人権問題、汚職や格差といっては
嫌悪感や差別意識が支配する。
どちらに振れても、日本人は中国に対して熱くなりすぎて極端なのである。

おそらく日本のような安定した平均社会を前提として
中国に過大な期待を寄せているからなのではないだろうか?

とにかくビジネスマンたるもの、
冷静にチャンスを窺(うかが)おうではないか。

今週11日から13日まで
渦中の上海に、マーケティング調査のために出張した。

精力的に数多くの日本人駐在員の方々と情報交換したが、
まったく普段と変わらない様子であった。

日本の騒ぎぶりが信じられないといった風である。

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(いつもと変わりない上海の街)

さすがに、この週末は、それなりに注意を払っていると思うが
日本で我々が想像しているような状態ではない。

出張時の上海の様子については
私のレポートが、Yahooニュース中国情報局
転載されているので、参照されたい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050415-00000003-scn-int

http://forum.searchina.ne.jp/2005/0415/column_0415_001.shtml

愛国の熱情も大切だけれど、
熱くなり過ぎると客観情勢を見誤ることも
過去の歴史が教えてくれている。