天橋立を真正面に臨む海浜に、突如現れた
一際センスのよい看板が目に飛び込む。
「天橋立ワイナリー」
付近の民家や海の幸を供する建屋とは一線を画した、
でも、決して近隣との景観との調和は乱していないワインシャトー。
外観は工場然としてないが、
屋内の醸造設備は、世界最先端のもの。
もちろん樽や瓶が並ぶ地下の貯蔵庫も見学できる。
発酵途中のワインで、盛んに出てくる炭酸ガスが舌を刺激し、フルーティーなシャンパンのような口当たりとなる。酒税法上、持ち出すことが出来ない。
階上のレストランで昼食をとる。
すべて地元産の素材を使用した宝石箱のようなランチプレート。
まるで小宇宙 これにスープと豪華なデザート、珈琲が付く
近くの漁港で水揚げされた魚介類。
地鶏に加え、地元で肥育された黒毛和牛と短角牛のハイブリッドである京都肉のローストビーフ。
そして、万願寺とうがらしをはじめとする京都産野菜群。
素晴らしい食事のベストパートナーは、
もちろん天橋立ワインだ。
こちらのお店のオーナーである山崎社長にもお話を伺うことが出来た。
とにかく個性的な発想と卓越した行動力の持ち主で
1分と経たないうちにその魅力に引き込まれる。
とても手入れをされた一面のブドウ畑の向こうには天橋立が
馥郁としたワインの香りと同様、
個性的なのに、決して調和は乱さない。
決してでしゃばらない京都人の姿勢が垣間見える。
*ちなみに、帰郷後お礼のお便りを出したら、さっそく返事のメールが届いた。
なんとウィーンから。 その行動力には驚いた。
その後も、地域の元気人の皆さんとの出逢いを果たし、
後ろ髪を引かれる想いで、丹後半島を後にした。
帰路の3時間の車中、ずっと感じ続けた心地よい酔いは、
天橋立ワインのまろやかな酒精をベースに、地域の皆さんの熱い心、地場産食材、延々と拡がる車窓の景観、そしてむせ返るような暑さと程よい倦怠感がカクテルされて生み出された、
文字通り「京都の盛夏の酔い」だった。
(シリーズ終わり)