九州上海事務所が正式開業

再び上海を訪れた。

2週間ぶりなのに、朝晩はめっきり寒くなって、街行く人も冬の装いだ。

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(南京西路のブランド街で)

21日、上海市のホテル、花園飯店で、「九州上海事務所」のオープンを記念して、レセプションが盛大に開催された。

この九州上海事務所は、福岡県、北九州市、福岡市、九州電力の4団体による共同事務所で、自治体や企業が連携して、上海を基点に中国における情報収集や支援サービスなどを行なうもので、非常に画期的な取り組みといえる。

レセプションでは、上海市、江蘇省、連雲港市などの中国側来賓をはじめ、日本側は関係自治体の副知事や副市長等をホストに、総勢300人を超える招待客を集め、この種の式典としては非常に大規模なものとなった。九州のこれからの上海および中国に対する意気込みの強さが感じられる。

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式典での九州紹介のコーナーでは、福岡県をはじめ、沖縄県を含む九州全県の情報や物産・観光を映像を通じて紹介した。

あくまで「九州」である。観光や物産、企業誘致などを海外に向けてアピールするためには、やはり県境を越えた広域連携が不可避である。

特にアジアでは、北海道、東北、九州という名称の認知度が最近急速に上がっており、これを利用しない手はないのである。

もちろん、各県や市の担当者は、県名、都市名ブランドの売り込みに熱心だから、九州と**県、△△市などと巧く使い分ければよいのである。各自治体間の競争と連携は、今後、多様な展開を見せることだろう。

式典と併催で、「九州福岡産業観光展 in 上海」が開催された。

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上海からわずか1時間半という近さをもつ福岡の多様な観光、産業資源を紹介した。また、福岡県が重点とするIT、自動車産業、ロボット産業に関する展示も行なっており、来場者の注目を集めた。

051125aibo (ロボット犬も参加)

物産についても、地場産業の得意技を披露するものになっていた。博多織や久留米絣、日本酒、大川家具も、展示はもとより、ミスが笑顔で応対したり、販促マーケティング関係者が人脈構築や情報収集に取り組んだ。

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(博多織も中国への輸出を検討している)

加工食品も、日本酒・焼酎のほかに、和洋菓子、飲料、明太子、ラーメン、味噌、醤油など幅広い商品が紹介され、来場した中国人関係者の注目を浴びた。

「私たちで取り扱えないか」という引き合いが随分あり、反応の強さに驚いた。

輸出にかかわる煩雑な手続きなど、克服すべき課題は多いが、九州・福岡の産品の潜在的な需要があることを確認できたという点では収穫があった。

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(食品のコーナーは人で一杯)

会場では、招待者全員に化粧箱入りの愛宕梨(あたごなし)が配られ、大好評だった。一個1kgほどもある巨大梨だが、食味も食感も、そして見た目の豪華さも中国人の心を捉えたらしく、日本ブランドの実力を、ここでも確認することが出来た。

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(福岡の愛宕梨は大きくて歯ざわりが良いと大評判)

もちろん、この福岡産愛宕梨は、いま、上海の高級デパートでも高値で販売されている。

今後に向けて、手ごたえ十分だ。

中国の微妙な変化を見逃すな!

上海に出張した。

051116muji およそ2ヶ月ぶりだが、今回も至る所でスクラップ&ビルドにより、街の様相が目に見えて変化している。

建築物だけではない。街行く人も店舗も、商品もやはり変化している。

在住でなく、短期出張で行き来する人間が「微妙に」感じることのできる瞬間だ。

気のせいだろうか、最近、タバコを吸う人がめっきり少なくなっているような気がする。
ゴミを無造作に捨てる人もいることはいるが、都心ではあまり目立たなくなった。
上海の街にいる限りにおいては―だが、トイレの不潔さで悩むストレスがめっきり減った…。

最近、ニッポンを売るプロジェクトに関わるようになってからは、
今回のように別件で中国に訪れても、青果市場にはできるだけ足を運ぶようになった。
一種の職業病だな、と思う。

日本国内でもそうだ。
若い人のコンビニ詣でのように、買う目的が無くても、デパートの地下食品売り場と物産催事場へは、必ず立ち寄るスポットになってしまった。

今回も早朝、上海の黄浦江沿いにある果物の卸売市場を訪ねてみた。
ここは市場といっても、競りを行なう処と異なり、全国からブローカーや生産者が商品を持ち寄り、相対取引を行なう問屋街のような通りである。

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確かにここは、いつも雑然としており、商品管理というには程遠く、地面に果物を転がしっぱなしにしていたり、箱を高く積み過ぎて下が潰れても平然としているし、ゴミも散らかしっぱなしというくらいで、販売以前の衛生管理すら心配してしまうほどだ。

また、最近は、緑色食品や有機食品、AA級などとケースに記載してあることがあるが、規格や等級、品質保証、ブランドなど、素人の私には全く判別できない。もしかしたら、価格と鮮度、外観などを、見ながら、触りながらで区別しているようにしか思えない。

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(この時期、柿の出荷が目立った)

価格も、当然この国では一物一価ではないはずだ。上海語の出来ない私なんて初めから相手にされてない。カメラを向けると冷やかされっぱなしで、却って面白いコミュニケーションが図れた。

「にいちゃん!ちゃんと立派に撮ってくれよっ」

「私とオレンジとどっちが綺麗?アハハハハッ」

ってな調子だ。(下写真

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(市場の人との会話も弾む)

ただ、ここ数年の間で、微妙だが明らかに品種や品質が向上しているのではないかと、今回初めて感じた。
味わってみていないので、まさに外観だけだが、大きさや色、鮮度が向上し、種類が豊富に「なりつつ」ある。

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(商品構成にも明らかに進歩のあとが…)

現在、中国農業はある意味危機的な状況にあり、農村、農民への対策は、政府の最重点政策だ。対外開放に伴う食糧生産の矛盾は、当然、付加価値の高い経済商品への転換を大きく促している。

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(上海市内にある共同青果小売市場)

中国産の参入による海外市場での一層の競争激化も懸念されるが、一方で中国国内に流れる製品へのニーズも高級化していくこと間違いない。

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(今、上海では、乳製品売場の充実振りが目立つ)

いま、日本産の青果物を、この商流・物流に預けることは、天地がひっくり返っても考えられないが、この微妙な変化だけは、「行き来すること」によってしっかりとウォッチしていなければならない。

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(あった、あった!! 福岡県の梨が売られている!)

中国の流通が飛躍的に発達することは、十年先二十年先のことではない。もうすぐそこまで来ていると考えておいたほうが良い。

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(上海バンドの夜景)

秋の名品「鳴門金時」の畑を見た

徳島にも、全国に有名な農水産物が多い。
今回機会あって、名高い産物の生産現場を訪ねることが出来た。051115kintokiimo

徳島の名産といえば、まずは、なんと言っても「なると金時」と称するサツマイモである。

東の「べにあずま」と並ぶ西の代表格で、大阪市場などでは圧倒的なブランドになっている。

あの上品な甘さとホクホク感はたまらない。

ブランド名は早くから知っていたが、
どんなところで生産されているのか想像もつかなかった。

徳島県の北部、鳴門市郊外に“なると金時”の栽培を見ることができた。

東岸は紀伊水道に面していて、一面の海岸線が広がる。
北側を臨むと、淡路島が近くに横たわり、関西がとても近いことを実感できる。
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(鳴門側の海岸より淡路島を臨む)

実際、鳴門橋の開通以来、神戸や大阪、京都などには日帰り圏内で、ショッピングや行楽に出かけることは普通の事だそうだ。当地の言葉も関西のイントネーションだから、昔からその結びつきの強さは容易に想像できる。

ここ一帯の農地は、独特の海砂の畑で、しかも緑っぽい色をしたここだけの砂らしいが、どうもこれが鳴門金時のすごさの秘密らしい

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皮の鮮やかな紅色がすぐに目を引く。

大きさも立派だ。

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(すでに収穫は終盤)

海外では、台湾、香港、シンガポールでこの鳴門金時が売られているのを見たことがある。

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(台湾で売られていた鳴門金時)

すでに収穫は終盤を迎えていて、採り入れが終わった多くの土地には、はや大根が元気に育っていた。

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(砂地の高い畝が特徴的だ)

砂地というと、らっきょうも思い浮かべるが、やはりここでも栽培されていて、紫色の花がとてもきれいだった。

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また、徳島はレンコンの産地でもあり、ちょうど収穫の風景も見られた。
他の多くの産地は、水が張ってある状態で、水圧を使って収穫するのに対して、徳島県の場合は一旦水を引いて、泥を露出させた上で、重機を使って掘り出すそうだ。

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それにしても、レンコンがどこに埋まっているかを探り当てるのは、
素人では出来ないらしく、また、こんなに重労働だとは思わなかった。
これからレンコンを頂く時は、感謝して食べよう、と思った。

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次に、トンネル栽培のニンジンの生産現場を見せてもらった。
品薄のシーズンを狙って投入されるもので、4月には立派なニンジンが出荷されるのだそうだ。

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トンネルといっても人が中に入って作業できるほど大きく、以前は竹だった芯も今は金属製で、機械で設置されるそうだ。

水産物でも「鳴門ワカメ」は三陸に並んで有名で、海岸の至る所で養殖ワカメの「ワカメ棚」を見ることができた。やはり現地で、生産されている風景、環境、生産者の人たちと触れ会うことで、理解を深め、そしてファンになってゆく。

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(有名な鳴門のうず潮)

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(この日は、地元の人も滅多に見ることができないようなはっきりしたうず潮を見ることができた)

徳島の多様な物産の生産現場を訪れ、とても豊かな気分に浸ることが出来た。

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(徳島の農業を潤す“四国三郎”吉野川)

四国が一気に近づいてきた。

青年は宝

福岡県青年農業士会の研究会で講演させていただいた。

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(会場の博多サンヒルズホテル)

青年農業者の皆さん達との交流は、これで2度目だが、とりわけ楽しみにしている。いつも感じるのだが、農業を志す若い青年や女性は、地域にとって、そして国家にとってもかけがえのない財産である。

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(壇上で挨拶する農業士会幹部)

講演では福岡県が農産物の輸出に力を入れている経緯や実績、そして未知の事業に挑戦する人たちの姿を青年達に紹介した。

ただ、壇上から見ていると、後ろの方で数人居眠りしている人が目に付いた。
他地域の高齢者が多い会場では、ほとんど居眠りする人はいないのだが…。
年配者のほうが向上心や探求心が強いからだろうか。それとも、私の話の内容に、若い人は魅力を感じないからなのか・・・。

しかし、後半から終盤になるにつけ、全員が身を乗り出して聞いてくれた。

一時間半の講演にもつい力が入り、声がかすれてしまう。

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講演後の意見交換の時間にも、積極的な反応が返ってきた。
質問が途切れないのだ。これは、他の会場では滅多にないこと。
講演者としては、とても嬉しいことだ。

また、研修後の懇親会では、個別に面談できて有意義だった。

次の予定があるので、30分で退席する予定が、青年達が次々に語りかけてくれて、ついに1時間半も会場から離れられなかった。

蘭の苗を、人任せにせずに自分で台湾から買い付けて、すでに海外と信頼関係を築いている人。

韓国と行き来するほどのネットワークを持っている人。

スモモやナスを差別化し、商品開発に挑戦している人。

イチゴのあまおうをもっと積極的に展開しようと企画を練っている人。

作っている作物や地域は違えども、皆、熱い想いは同じだ。
目が生き生きしている。

ひときわ声が大きく、私に喰らいついてきそうなひとりの青年は、
5年後に1億円の売り上げを目指して頑張っている夢を語ってくれた。
彼はソフト業界からの転身組だ。

彼の農業に対する先見の明は、近い将来必ず開花する、と私は断言した。

彼らが主役となり農業を担う数年後には、日本の農業事情もすっかり変わっていることだろう。

今は、とても辛い時期。
しかし、文字通り、農林水産業が実りある産業に展開するかどうかは、すべてこの青年達の頑張りにかかっている

徳島でもニーハオ

徳島を訪れた。

久方ぶりの四国行で、徳島県は恥ずかしながら初めてだ。

高松から海岸線沿いを南下したが、
徳島駅に着いたのは、もう夕方5時を回っており
すでに真っ暗だった。

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明日から始まるビジネスを控え、少しでも徳島の事を知りたいと、
夜「阿波おどり会館」に足を運んだ。

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ここでは、毎日昼と夜に、阿波踊りをショー仕立てで実演してくれるもので、8月12日からの本物の阿波踊りには中々行けないが、ぜひ一度観てみたい者にとっては、本当にありがたいスポットだ。

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正面の席を確保するために早めに会場に入り
しばらくすると、品のよさそうな中年婦人や若い女性の団体さんが
大勢入って来て、僕の周りの正面の席を広く陣取った。

品がいいといっても、そこは女性たち。
いつの間にか、ガヤガヤとお喋りする声が満ち溢れてきた。

聞き慣れた方言だなあ、などと思っていたら、
なんと台湾語や中国語なのである。

「どこから来たんですか?」
とすぐに聞いてしまう私。

「台北ですよ」
と見た目には日本人と区別がつかないご婦人が笑顔で答えてくれた。

いろいろと話すと、この団体さん、
日本の有名な華道流派の台湾支部の人たちで、初めて京都の家元を訪ねてお稽古をした帰りに、徳島に観光に立ち寄ったとのことである。

051113yokoso_japan 「徳島は素晴らしい。東京や京都もいいけど、ここは空気も綺麗だし自然が美しい」

「日本には何度も来てもワクワクする」

と、屈託なく返してくれる。

嬉しいじゃないですか。
だから日本人は、台湾の人に親近感を覚えてしまうのである。

また、乗って来た観光バスの中には
抱えきれないほどのお土産を買って置いてあるそうだ。

海産珍味やワカメ、お饅頭、小物、湯呑などだとか。

私にとっては彼女らが何を買うのか、仕事柄興味深々なのだが
おば様方にしてみれば、私が何でこんなに根掘り葉掘り効くのか、不思議だったに違いない。

台湾では、結構日本の華道が盛んだそうで、
いくつかの流派があるんだそうな。

茶道はあまり普及していないらしい。

「くそっ!抹茶や和菓子、それに茶器を台湾に売り込むチャンスだったのに…」

「でも、待てよ。
普及していないということは、これから流行るチャンスということでもあるんだな。」

ただでは転びたくない性格である。

気を取り直して、

「台湾は、いつだって綺麗なお花が沢山あるから、
花材には困らないんでしょうねぇ。
蘭なんかも使って生けるのですか?」

などと、素人丸出しの質問をすると、
彼女たちは「ワハハ」と笑って答えてくれた。

「いろいろあるんだけど、季節によって台湾にはないものや
スイセンなどのお花は、日本から取り寄せなきゃならないので、結構お稽古代がかかっちゃって大変なのよぅ」

ん~っ、これはチャンスかも。

花卉(生花類)の海外輸出も
ニッポンを売るアイテムのひとつだからである。

宮崎県がシンビジュームなどの蘭鉢を中国に輸出している。

花と一緒に、陶磁器製の花器や織物のテーブルセンターなども一緒に売ってみては?

などとアイデアだけは広がっていく…

そうこう話が弾んでいると、いよいよ開演の時間。

本場の阿波踊りを堪能した。
祭りはどこでもそうだが、この鐘と太鼓、笛、三味線のテンポ良い一定のリズムを聞いているとだんだんトランス状態になってくるのを感じた。大興奮だ。

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「踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らなソンソン」

台湾の女性たちも、隅で固まっている日本人サラリーマンの人たちに混じって、いつの間にかみんなステージに上がって踊っていた。
言葉は要らない…。

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ここ徳島でも台湾や韓国、中国の旅行者が最近増えてきているらしく、
このように日本文化や食の世界を体験する人たちの間で
地方のことに対してもかなり詳しく理解している人が増え、認知度、知名度を上げている。

観光誘致、物産振興ともに、すでに海外ニーズは高まりつつある。

興奮の余韻残る、夜の阿波おどり会館を後にした。

まず足元の良さを知らねば

「上海から福岡まで、飛行機でわずか一時間半です。東京より近いんですよッ」

「福岡―プサンと福岡―松山間は、それぞれ直線距離でほぼ同じことを知っていますかっ」

 などと講演の時に、少し物知り顔で紹介していたら、

なんと瀬戸内海をはさんで、岡山と高松というふたつの県庁所在地が、快速電車でわずか50分余りで結ばれていることを、今まで私は知らなかった。

何も知らないのだ。自分の国のことですら…。

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(列車は瀬戸大橋を渡って行く…)

出張の折に、香川県高松市に立ち寄った。

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生まれて初めての訪問地は、やはりワクワクする。
少しでも時間を惜しんで街中を歩き回りたい生来の癖が頭をもたげる。

ここ数年、大河ドラマファンの私は、源義経の屋島戦跡があちこちにあるというだけでもう興奮してしまう。もっと時間があったら、屋島一帯をぜひ歩いてみたかった。

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(高松平家物語歴史館のロウ人形)

日本の名園「栗林(りつりん)公園」は、広大な敷地のどこに立ち止まっても言葉が出ないくらいの絶景だった。

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この季節、ほとんど松の樹しか目につかず、11月だというのに、特に紅葉が綺麗な訳ではない。
まして、菜園や果樹園には興味があっても(!?)、庭木には興味がなく、風流心も人並み程度なのだが、その私が、とにかくその完璧なまでの美しさに感動した。

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「ニッポン万歳!」と心の中で叫んだ。

おりしも前々日、上海で「豫園」という古い明代の名園を訪ねたばかりだが、中国の人にとっては侘び寂に感じる庭石(玉玲龍と呼ばれる名石)にも、正直、私には頭で解析してみてもピンとこない。

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(上海の名園と謳われる豫園)

それに引き換え栗林公園の造形美には、やはり日本の文化も洗練されていて文句無く素晴らしいなと感じてしまう。

ご当地に来れば、当然、名物「讃岐うどん」をいただかなければ話にならない。

これもとにかく筆舌に尽くしがたい美味さで、小麦、醤油、薬味の洗練された食文化の妙を舌の上で感じ取った。

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(自分で暖めて作るセルフ式では、はじめ惑ってしまう)

半日に4杯もうどんを食べたのは、もちろん生まれて初めてである。

うどんと言えば、私が海外に頻繁に行くようになった20年位前から、香港では「烏冬麺」、台湾では「烏龍麺」として、普通に家庭料理素材として、スーパーや麺売り店でどこででも買えたのには、当時ビックリした。

日本のうどんは、早くから国際的にデビューしていたのである。しかも、日本語の音のままで。

いつか必ずこだわりの食を求めて、アジアでも讃岐うどんのブームがやってくるに違いない。

海外事情を収集するのも結構だが、わが国の知識や素晴らしさをもっと知っておかなければならないことを高松の街は教えてくれた。

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(今年前半、水不足に陥った四国地方)

現場から変わる日本の農業

農林漁業金融公庫の筑後地区友の会の総会が八女市で開かれ、福岡県庁農政部の方と共に講演会に登壇させていただいた。

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農林公庫は、経営基盤の弱い農林水産業に対する融資を行なう機関で、これまで大きな役割を果たしてきたが、現在、政府系金融機関の再編問題の渦中にある。

福岡県の筑後地区は、四季を通じて多種多様な農産物を産出している。都市圏消費者に向けた商品開発や新技術の導入にも積極的な地域で、JAのレベルでは海外輸出に対しても日本でもトップクラスの取り組みを行っている

昨年来、全国的にも注目されている福岡産イチゴのあまおうの香港、台湾向けの輸出でも、この筑後地区のJAの積極的な挑戦によるところが大きい。

国内でもトップクラスの販売力を誇るJAふくおか八女は、昨年来、独自の輸出戦略に取り組み、貿易実務を行なう通関士の資格を持った職員も活躍している。スゴイ!
JA福岡大城は、平成4年ごろからエノキタケをいち早く香港に輸出し、一時、大ブームを呼び起こした。

また、この地域でキノコを生産販売する農業法人を経営する元気な女性達も総会に参加され、大いに意気投合し、農業の持つ可能性について語り合った。

会合では、野田八女市長とも懇談する機会を得、今後の様々な取り組みや同市の農業政策に対するビジョンについての熱い想いをうかがった。

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(スピーチする野田国義八女市長)

10月28日29日には、筑後市で第59回全国お茶まつり福岡大会が開催された。

茶葉の生産販売に関する資機材の展示や製品の即売などが大規模に行なわれ、大勢の人で賑わった。会場では、タレントの森口博子さんやアナウンサーの林田スマさん、地元名士によるトークショーも開かれ、日本の文化に根ざす茶の文化の再認識について語り合った。

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会場では、若い生産者や青年会による様々なイベントが特に印象的だった。彼らにこそ、海外の市場についても理解を深めてもらい、その企画力と行動力で世界に挑戦して欲しいと強く感じた。生産現場の青年、女性達こそ、ニッポンを売る原動力なのだ。

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(青年会のイベント企画には長蛇の列が)

海外を取り込むスピリット

佐賀県西部に位置する白石(しろいし)町にある杵島(きしま)農業改良普及センター主催の勉強会に参加させていただいた。

金木犀の香りがする駅を降り立つと、延々と刈り取った後の田んぼが広がる。

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ここは県の機構であるが、所長をはじめ、若い職員にいたるまでとても勉強熱心な皆さんだった。土地柄なのだろうか。情報交換の場では、次々と質問や意見が出され、予定時間を大幅に超えてしまった。

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(センター全景)

ここでは水稲以外に、タマネギは全国トップクラスの生産高を誇り、ほかにもアスパラガスやレンコン、花卉、イチゴなども栽培されているそうだ。

技術開発にも熱心なようで、閉会後、面白い生食用の葉野菜を紹介してもらった。一見なんでもないサラダ菜のように見えるが、よく見てみると表面に**が噴いているようなとてもユニークな形状だ。

こりゃすごいインパクトだ! しかも、葉を生で食してみると、なんと**味がするではないかッ! すごい! 話によると、何でもアフリカ原産の品種を改良したものらしい。

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(残念ながら、まだ公表できない)

現在開発中なので、実は詳しく紹介できない。ごめんなさい。量産できれば、近いうちに、杵島**や白石**というサラダ野菜が発売されることになるかもしれない。お楽しみに。

こんなインパクトある商品であれば、国内市場と同時に海外にも輸出してみたらどうだろうか、と考えてみた。「技術革新」「販路開拓」このふたつを自分たちの手で行えば、これはすごい自信と活性化が図れることだろう。

また、地域の女性グループが開発したという、地元産大豆を使用したテンペを紹介してくれた。テンペとは、インドネシアで食べられている大豆の発酵食品で、納豆そっくりである。

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(商品カタログより抜粋)

現地では油で揚げたりして食べられているが、日本の納豆と違うところは、粘り気がなく、あの特有の納豆臭さがない。大豆イソフラボンをはじめ栄養価も高いらしく、コレステロール値や血圧を下げる効果もあるということで、最近、健康食品として、日本でも食べられるようになった。

どっこい日本の女性生産者もやるではないか。
「日本商品は海外ではすぐにコピーされるから」などと屁理屈を言わずに、しっかりと海外の良いものを取り入れてアレンジして開発している。こうでなくちゃ。本場に逆輸出する事だってありうるかもしれないゾ。

白熱したやり取りを終え、とても心地よい疲れを感じて、白石の町を後にした。