(先回から続く)
観光用とはいえ地元の人や文化の一端に触れた後、さらにずんずんと森の中へ進んでいく。
行きすがりの人の表情も実に穏やか
とりあえず葺いたような簡素なあぜ道をおしゃべりしながら歩いているうちに、いつの間にか熱帯ジャングルの中に足を踏み入れていることに気付く。
シュロやバナナの樹の向こうから、何やら水音に混じって人の声が聞こえてくる。
そう、今日のメインイベントである手漕ぎボートでのジャングルクルーズの始まりだ。
「エエッ!こんなに簡単なボートに何人も乗って大丈夫なの?」
という不安をよそに、早く乗れ乗れと催促される。
細長く幅が無いから横に揺れるとても頼りないボートで
ヨロヨロしながら乗り込み、とにかく早く安定するように、と祈るような気持ちでボートのヘリに腰かける。
前後に二人のこぎ手が体を折り曲げるようにして中屈みの姿勢でオールをかぎだす。オールと言うよりはやっぱり櫂のほうがピッタリするか。
細長いからか、加速がつくとロケットのようにスウ~ッと前に進んでいく。
ジャングルの木漏れ日の中を水面を這うようにして、
スウーッ、スウーッ
気持ちがいい。なんとも気持ちいいヨ。
手を伸ばせば届きそうなくらい両岸が迫っているが、とても巧みに櫂を使って舵を切るから安心だ。
反対方向からも、客を降ろしたボートなのだろうか、次々と列を成して漕ぎ上がってくる。
バナナや椰子、見たこともないシュロの樹の合間を縫うようにボートは進んでいく。
両側のジャングルの茂みを見ていたり、とんでもない量のマイナスイオンを浴びているからなのだろうか、アジアの癒しを感じてなまくらになっている僕の脳全体にα波がタップリと出ていることを実感する。
This is Vietnam !!
でも突然、ベトナム戦争の時、こんなところをゲリラが待ち構えていたら・・・ なんて映画のワンシーンを重ね合わせてチョッとぞお~っとしてみたりと、なかなかスリルも味わえる。
水面スレスレなのだ
それに観光船とは言え、子供の頃、アニメや小説で夢見ていた冒険心を呼び起こし、年甲斐も無く大興奮してしまった。
時折、さすような日差しが照りつけるが、でも笠を借りているから大丈夫。
とってもベトナム気分を味わえるのだ。
どの位の時間乗っていただろうか?
とつぜん大海原、いやメコンの本流だった、に合流し、強い日差しと滔滔たる大河の中に再度放り込まれた。
クルーズもこれで終了。
この笠をかぶると本当に感じる熱さが違うから不思議
行きに送ってくれた渡しのクルーズ船のあのお姉さんが待っていてくれている。
ボートを乗り換えて中州を離れ、元の船着場を目指して再度メコンを横切る。
降り注ぐ強い日差しが反射するメコンの水面(みなも)を眺めながら
ミトー最高!と心の中で叫んでしまうくらい大満足なひと時だった。
様々な恵みを与え、いまだに人々の生活の場にもなっている「母なるメコン」。
その懐深い大自然の憧憬を目の当たりにして、私の脳裏にまた新たな思考の空間を与えてくれたような気がする。
ボートを降り、船着場に上がってベトナムコーヒーで一服だ。
“メコン河畔のオグシオ”がコーヒーを淹れてくれた
つかの間の時間を有効に使えた時の充実感は、いつもハッピーな気分にしてくれる。
(終わり)
ハンモックに揺られ、波に揺られ・・・