母なるメコン(その3)

    
(先回から続く)

観光用とはいえ地元の人や文化の一端に触れた後、さらにずんずんと森の中へ進んでいく。
      

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行きすがりの人の表情も実に穏やか

  
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とりあえず葺いたような簡素なあぜ道をおしゃべりしながら歩いているうちに、いつの間にか熱帯ジャングルの中に足を踏み入れていることに気付く。

    
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シュロやバナナの樹の向こうから、何やら水音に混じって人の声が聞こえてくる。
   
       

そう、今日のメインイベントである手漕ぎボートでのジャングルクルーズの始まりだ。

   
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「エエッ!こんなに簡単なボートに何人も乗って大丈夫なの?」
という不安をよそに、早く乗れ乗れと催促される。

   

細長く幅が無いから横に揺れるとても頼りないボートで
ヨロヨロしながら乗り込み、とにかく早く安定するように、と祈るような気持ちでボートのヘリに腰かける。

  
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前後に二人のこぎ手が体を折り曲げるようにして中屈みの姿勢でオールをかぎだす。オールと言うよりはやっぱり櫂のほうがピッタリするか。

  
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細長いからか、加速がつくとロケットのようにスウ~ッと前に進んでいく。

      
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ジャングルの木漏れ日の中を水面を這うようにして、
スウーッ、スウーッ

   

気持ちがいい。なんとも気持ちいい
   

       
手を伸ばせば届きそうなくらい両岸が迫っているが、とても巧みに櫂を使って舵を切るから安心だ。

   

反対方向からも、客を降ろしたボートなのだろうか、次々と列を成して漕ぎ上がってくる。

 
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バナナや椰子、見たこともないシュロの樹の合間を縫うようにボートは進んでいく。

 
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両側のジャングルの茂みを見ていたり、とんでもない量のマイナスイオンを浴びているからなのだろうか、アジアの癒しを感じてなまくらになっている僕の脳全体にα波がタップリと出ていることを実感する。

   
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This is Vietnam !!

 
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でも突然、ベトナム戦争の時、こんなところをゲリラが待ち構えていたら・・・ なんて映画のワンシーンを重ね合わせてチョッとぞお~っとしてみたりと、なかなかスリルも味わえる。

    
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水面スレスレなのだ

   
それに観光船とは言え、子供の頃、アニメや小説で夢見ていた冒険心を呼び起こし、年甲斐も無く大興奮してしまった。

    

時折、さすような日差しが照りつけるが、でも笠を借りているから大丈夫。  
とってもベトナム気分を味わえるのだ。

   

どの位の時間乗っていただろうか? 
  

とつぜん大海原、いやメコンの本流だった、に合流し、強い日差しと滔滔たる大河の中に再度放り込まれた。
     
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クルーズもこれで終了。
   

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この笠をかぶると本当に感じる熱さが違うから不思議

    

行きに送ってくれた渡しのクルーズ船のあのお姉さんが待っていてくれている。

 
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ボートを乗り換えて中州を離れ、元の船着場を目指して再度メコンを横切る。
    

   
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降り注ぐ強い日差しが反射するメコンの水面(みなも)を眺めながら
ミトー最高!と心の中で叫んでしまうくらい大満足なひと時だった。

   
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様々な恵みを与え、いまだに人々の生活の場にもなっている「母なるメコン」。

   

その懐深い大自然の憧憬を目の当たりにして、私の脳裏にまた新たな思考の空間を与えてくれたような気がする。

      
   
ボートを降り、船着場に上がってベトナムコーヒーで一服だ。

    
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“メコン河畔のオグシオ”がコーヒーを淹れてくれた

   
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つかの間の時間を有効に使えた時の充実感は、いつもハッピーな気分にしてくれる。
                                  (終わり)

 

      
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ハンモックに揺られ、波に揺られ・・・

   
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母なるメコン(その2)

                 
(先回から続く)

中型の華奢なクルーズ船でメコンの大河を横切り、中洲に渡る。

    
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渡し舟とはひとまずお別れ。また後でッ

      
         
中州と言っても、対岸のようなもので大きさが判らないほど広そうだ。

     
 
そりゃそうだ。大河メコンの河口岸にバカがつくほど大きな中州があっても不思議ではないさ。

    
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なんか上陸といった感じも大げさではない。

   
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先ほどまであれだけ喧騒を振りまいていた車もバイクも無い別天地。

    
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ギラギラと輝く太陽にバナナやパパイヤの青々した樹が勢いよく茂っている。

   
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ヤッパリ天然。植物園のハウスとは違う。

    
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自然と共生の小屋

     

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果樹か植木を作っているのだろうか?

         

しばらく行くと、おみやげ物売りの屋台が軒を連ねている。
   

   
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地元の娘さん達だろうか。

   
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英語、日本語だけでなく、韓国語、中国語、広東語まで使い分けて呼び込みを行なっている。

   
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それだけアジア勢観光客の進出はすさまじいんだろう。

   
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なんかこんな工芸品、ロシアのウラジオストクでも見たことあるぞ

    
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それにしても日本の観光地とは大違い。シンプルでいいからもっと多言語対応してもいいと思うのに。

   
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この日は広東省からの団体さんが騒ぎまくり、買いまくっていた。

     
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パワーを見せつけられた。同じ亜熱帯の地区だからだろうか、元気さが違う。

   
ん~ッ。
昔は日本人の団体さんもこれくらい元気だったんだがなあ。

    
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ベトナム南部の特産を生かしたココナツやコーヒー、サトウキビを使ったお土産にも意外に気をそそられてしまう。

   
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ココヤシを煮詰めて作る手作りの飴も素朴な美味しさ
   
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一粒ずつ切りそろえていく
      
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硬い椰子の実を割るために・・・

     

作られた観光地とはいえ、素朴で粗野でノンビリした南国風情が、これまた何故か旅情を掻き立てられる。

    
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民族音楽の演奏も

   
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そう、ここだけ時間の進み方が違って感じるあの感覚。

    
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いずれここも近代化の波に揉まれて変わっていくんだろうな、などと思いながら、忘れかけていた遠い昔の「今、この時」を心の底で味わい返していた。

                              (次回に続く)

    
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母なるメコン(その1)

                 
トナム・ホーチミン市から車で約1時間半ほど南下するとミトーという人口18万人の小さな街に着く。

    
   
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ミトーの街角
   
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一見どうという事のない集落だが、ここはメコン河の最下流に位置する観光拠点でもある。
   

       
土ホコリ立つ街道が途切れると、突然大河が姿を現した。

          
  
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何か起こったのか、何に感動しているのか、まだ訳がわからないまま、感動して思わず「アッ」と声が出てしまう。

     
川辺には無数の商店や私の船頭や観光案内の娘さんたちが大勢いる。

     
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アジアに来たァ~と感じる瞬間
   
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ヒソヒソ話し

       

さっそく渡し舟に乗船。
   
20人くらいが乗れる中型のクルーズ船だ。

期待の心ワクワク。

  
力強く船は岸を離れる。

   

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ほどなく船尾で物音がすると思ったら、

娘さんが椰子の実を割ってくれている。
   

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ひとりに一個、ズシリと重い椰子の実を渡されたが、
ストロー越しに渇ききった喉にサッパリとした椰子汁がゴクゴクと滑り落ちていく。

     
何故かこんなことが贅沢に思えてくるから不思議だ。

      

サービスの原点ってこんなことだったのかも知れない。

椰子って地域資源なんだ。   

    

僕らは川と言えば澄んだ水こそが当たり前で、濁った水は汚染されたもの、汚れたものという感覚があるが、このメコンの土気色の水色こそ、沿岸の栄養分をタップリと含んだ命の水なのだ、という想いもするのである。

       
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滔滔と流れる大河には、大小様々な運搬船や漁船、観光船が忙しく行き来しており、日本とは異なり河川も重要な「交通手段」だということを教えてくれる。

     
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確かに「川」というよりは「河」という表現がピッタリする感じだ。

   
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もうあと40キロも南下すると海にでるそうで、遠く源流を中国に持ち、タイ、ラオス、カンボジアを貫き、ここベトナムで河としての使命を尽くすのである。

      
河口にせまるこの地域でも河を生活の場とする風景があちこちに見える。

     
   
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およそ20分で大河を横切り、中洲に上陸した。
                                (次回に続く)

   
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