輸出は決して甘くない!

瀬高町の南筑後地域農業改良普及センターで開催された
研修会に参加させていただいた。

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会場の南筑後普及センター

センターは福岡県の組織で、今回で2度目の参加となる。

県南に位置する南筑後地区八女(やめ)地区が対象で
今、農産物の海外輸出に熱心だといわれる福岡県にあって
とりわけ積極的に取り組んでいるチャレンジ精神に富む地域でもある。

主な産品は、野菜ではイチゴ(あまおう)が出色で、ほかにナスやトマトがあり、果樹ではみかん、ぶどう、モモ、キウイなどだ。
(ちなみにイチゴはフルーツではあるのだが、分類上野菜に属している)

また、日本一の産量を誇る玉露を有する緑茶の産地でもあり、
電照菊などの花卉類も有名だ。

輸出に対しては、年間を通じて多品種で臨む戦略をとっている福岡県ではその候補となる商品群の有力な供給元のひとつでもある。

情報交換の場においても、普及職員の皆さんはとても熱心で気迫すら感じる。

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単に関心を示すだけでなくて、この数年の輸出供給の経験から
その困難さや現状の限界についても、最前線で肌で感じているので
かなりシビアな議論も行なった。

輸出が現場の生産者に利益をもたらすまでは、
まだまだ多くの問題を解決しなければならない。

話題が先行しがちな農産物の輸出において、
パイオニアである福岡県関係者の意識は、
ここにきてむしろ強い緊張感を感じている

「輸出はそんなに甘くない!」

そんな言葉が現場から聞こえてきた今こそ、
これを乗り切る正念場だ。

批判や人任せでは決して前進しない。
信念と行動、熱い思いと冷静な知恵が今求められている。

誰もやったことのない新しい挑戦なのだから。

その意味で、生産者と海外需要家をつなぐ、各地の普及センターやJAの職員の皆さんともっともっと議論を深めていきたい。

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麦秋の筑後平野

折りしも、残留農薬のポジティブリスト制度を核とする改正食品衛生法が施行されるにあたり、現場産地の対応は本当に多忙を極めている。

生産者と消費者ともに安心できる農業実現のために今何をなすべきなのか改めて自問自答しながら帰路についた。

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瀬高の町

内陸を疑う 成都紀行(その5)

家用車の普及やファッションへの関心の高さに触れて
私営経済の活発さを感じたのだが、
地元政府(役所)に行って、また驚いた。

省や市の人民政府の本庁ビルとは別に
四川省と成都市は連合して、巨大な市民サービスセンターを新設している。

日本で言えば、県庁と市役所が共同で行政窓口を運営するようなもので、普通にはとても考えられない。

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四川省&成都市連合の行政サービスセンター

これがまた立派な建物で、すべての行政サービスの窓口が揃っており、ここへ来ればほとんどの行政関係の手続きをワンストップで解決してくれる。

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すべての行政窓口が揃う

教育や医療、公安、衛生、交通、計画生育、会社登記などあらゆるサービスであり、もちろん成都市や四川省に投資を行なう外国企業に対するサービスもここで一元的に行なう。

060528gaisyo_1 外国企業の投資を一元的にサポートする

市民が窓口で相談すると、その内容によって、その場で解決や翌日までとか一週間以内など規定のタイムリミットが示され、それまでに行政が解決できなければ、相談者は別途独立した苦情相談部門で提訴することも出来るのだ。

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大勢の市民が来庁していたが、どこもスムースな感じで手続きが行なわれている様子だった。
もしこれが本当だとすると、革命的な変化だ。

現に、ここまで徹底して行政サービスを一元化ているところは成都だけで、これまでも北京や上海、江蘇省、広東省の各都市からも行政幹部がひっきりなしに視察に訪れて来るという。

また、ちょうどここを訪れた日に、成都市政府では新たに商務局が誕生し、それまで国内流通管理部門と対外経済部門が合併し、内外の経済商業部門を一手に管轄することになった。

新商務局の高官たちも大変熱意を示し、日本企業とのビジネス交流を活発化させたい表明した。

都市の中心部に華西医科大学という古くから有名な医学系の名門校がある。現在は四川大学と合併しているが、この大学病院を訪ねてまたビックリした。

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一日1万人が来院するという。とにかくデカイ

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広大な駐車場が自家用車で満杯

とにかく大きな病院で、ベットが4000床を超え、これは世界一のギネスものなのだそうだ。設備も最新鋭の機器を揃え、独立経営で一日約1万人の患者がここを利用するのだそうだ。

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日本の大学病院と少しも変わらない

大学病院の漢方製剤開発室長で、西洋医学・漢方医学一体治療(中西結合)の責任者でもある李教授と知古を得、中国医学と今後の日中ビジネスの件で情報交換を行なった。

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医学部キャンパス正門

また四川省は古くからの漢方薬材の宝庫で、成都市の北地区の漢方原料卸売市場は中国一の規模を誇るという。

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とにかく広かった・・・

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日本人の多くも健康・長寿を願い、中国医学や漢方に強い関心を持っているが、このネットワークを通じてまだ知られていない様々な知識や情報をこれから発信していこうと思う。

驚きのファッション先進地 成都紀行(その4)

れまで3回のエントリでは、四川省成都の料理や歴史遺産などを紹介したが、もちろん今回の訪問目的はビジネスだ。

3日間で政府をはじめ、様々な機関を精力的に訪問し、
多くの収穫を得た。

中国の西南地区といえば、
西南大開発という国家的な地域発展戦略の地であり、
交通不便で多民族が住む貧しく遅れた地域のイメージがある。

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このくらいの都市景観は想像していたのだが…

それでも、雲南省の昆明や直轄市となった人口3000万の重慶市などは、ビルが林立する大都市だろうという映像イメージを持っていたが、想像通りだったのはその近代的な都市景観だけで、都会としての機能やそこに住む人々のあか抜けた姿には予想を裏切られっぱなしだった。

とにかく訪問前の想像以上に進んでいるのだ。

成都市は自家用車の保有比率は全国第三位だそうで、とにかく公用車より自家用車ばかり目立つのだ。

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知り合う誰と逢っても、車で送り迎えはあたりまえ。完全に車社会といってもよいだろう。

四川人はとにかく消費が大好きのようだ。

天府の国のおおらかさがあるからだろうか、あまり後先を気にせず、
消費に走るのだそうだ。

都心のシンボル的なポイントである天府広場を中心とする中心街に行ってビックリした。

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とにかく道行く人がオシャレなのだ

一部の特別なレベルの高さではなくて、一般市民のファッションに対する意識の広がりという意味では、上海や大連、広東、はたまた台北などよりも高いんじゃないかと思う。

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確かに一部の金持ちや若い女性がファッションセンスがいい大都市は、いまや珍しくない。

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しかし、ここ成都では、若い男の子や年配女性たちもファッションに強い関心を持っている人が多いことが見て判る。

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服装はもとより、髪型、化粧品、バッグなどの持ち物にいたるまで気を遣っている人がやたらに多い。

よく成都や重慶は美人やハンサムが多いと言われるが、素質の上に自己演出が巧みなのだろう。

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本から進出したイトーヨーカ堂も平日というのに買い物客で満員。しかも実際に商品を買っている。昨年も巨大な売り上げと納税額をあげてくれたと地元政府の官吏も笑みを隠さない。

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現在、伊勢丹が進出予定の大型ショッピングセンターも建設中で、さすが日本企業も見過ごしていないようだ。

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伊勢丹出店予定の工事も着々とすすむ

「ニッポンを売る!」スピリットをもってして、これを見逃す手はない。

ウソだと思うのなら、ぜひ成都へ行ってみることをお勧めする。内陸中心都市の従来イメージを見事にぶち壊してくれる。

元気と忍耐と

馬県前橋市で講演させていただいた。

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会場の群馬ロイヤルホテル。手前は利根川

主催は「群馬国際ビジネス協同組合」といい
海外と非常にアグレッシブな活動を展開している会員組織だ。

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メーカー、物流、商業サービス、教育機関など幅広い分野の企業から構成されており、共同で国際ビジネスを展開している。

対中ビジネスでの人材育成をテーマにした活動を活発に行なっており、この一年で西安市などから200名を超える中国人研修生を受け入れて各企業に派遣したり、江蘇省張家口市に日本語学校を設立するなど、日中間で活躍する人材育成に熱心に取り組んでいる。

今回で私も4回目を数える講演会だったが、ますます熱気を感じ、具体的なアクションを起こしているからなのか、アジアビジネスに対する関心の内容も非常に現実的で、とにかく積極的なのに驚いた。

少々おっとりした群馬県人のイメージが変わりそうなくらいだ。

ホットな精神とクールな思考を持った元気人たちの組織だから、交流していても話題が未来ビジョンまで弾む。

今後、農業や観光分野についても、関東広域とアジアとの交流を目指して計画が進行中だというから、これからの活動が楽しみだ。

橋での講演に先立ち、高崎で時間があったのでしばし散策した。
これまで何度が立ち寄ったことがあったのだが、仕事ばかりでじっくりと街を歩いたことがなかった。

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JR高崎駅前

高崎市は新幹線、高速インターと交通の要所にあり、今は県都・前橋市とほぼ同じ人口だが、9月にはまた合併があり、人口では群馬県一の都市になるそうだ。

060522pasta_2 高崎はパスタで町おこしをしているらしい

郊外にある少林山達磨寺を訪ねた

名前といい、また黄檗宗であることから中国の影響を受けた禅寺らしく、総門はやはり特徴的だった。

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少林山総門

本堂に至る参道から観る境内の景色は、言葉にならないくらい美しかった。

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写真術が未熟なので表現できないのが悔しいくらい実物は素晴らしい。

なんと言っても、この寺の特徴は境内に沢山のだるまが納めてあるのが面白い。

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奉納といっても、いわゆるお札やお守りの納めどころと同じで、役目を果たしただるまさんを引き取ってもらう所なのだ。

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両目が黒いものもあれば、片目のダルマもいる。選挙必勝もあれば、営業目標必達、合格祈願など大小様々なダルマが納めてあった。

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高崎といえば全国の約8割を占める日本一のだるまの産地で有名だが、初めて縁起だるまを生み出したのがこの達磨寺で、特徴は、マユは鶴、鼻から口ヒゲは亀をあらわしているおめでたいだるまなのだという。知らなかった。

本堂の隣には、達磨堂という木造の平屋があるが、出入り自由のちょっとしただるま陳列館になっていて、全国のダルマや達磨大師に関する収集物が所狭しと陳列してあって、ついつい長居してしまった。

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達磨堂は面白かった

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群馬三宰相の選挙ダルマと思われる実物も鎮座している。

僕もダルマのように忍耐強く不屈の精神で、困難と思える事業にも挑戦し続けていかなきゃ…。

この日は多くの元気人たちと再会を果たし、思わぬダルマ様との出会いに心洗われる一日だった。

新聞報道に掲載

11日付の西日本新聞と10日付の毎日新聞に福岡県の農産物輸出に関する記事が掲載された。
ネット配信から記事全文および画像もそのまま引用させていただく。

県産農産物の輸出好調 05年度、過去最高の6億円超 アジアで販路拡大 高級志向「あまおう」人気

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台湾や香港に向けの輸出が好調な県産イチゴ「あまおう」

 2005年度の県産農産物の輸出は、特産のイチゴ「あまおう」の輸出量が前年と比べ1.7倍に増えるなど好調で、輸出総額は過去最高の6億1000万円となった。海外で農産物をPRする「福岡フェア」の開催や、シンガポールなどへの新販路開拓などが効果を上げた。今後はアジア向けの販売戦略をさらに強化し、08年度までに輸出額20億円達成を目指す。

■「08年度までに20億円」

 県によると、県農産物は、イチゴ、カキ、ブドウなどの果物や野菜類など約25品目が、中国や香港、台湾など9地域に出荷されている。輸出額は、03年度の2億100万円が、04年度に4億2500万円、05年度には6億1000万円と順調に伸びている。

 05年度は、ナシを初めて中国・上海に輸出し、百貨店で本格的なセールスを展開。海外の流通業者を個別に招き、県内の産地との商談をまとめるなど販路の拡大にも取り組んできた。特に、「あまおう」は消費者の高級志向が高まっている台湾や香港で人気。03年度に1.4トンだった輸出量は、04年度23.4トン、05年度40トンと急増している。

 県は、アジア諸国と地理的に近く、鮮度を保った状態で輸出することができることや、香港では春節(旧正月)や中秋節などにフェアを開き、贈答品として売り出したことがあまおうの輸出増につながったとみている。

 今後は、あまおうの輸出先をシンガポールやタイにも拡大するほか、香港や台湾でのイチジクの本格販売を計画。欧州でもドイツなどで八女茶の販売先を開拓するなど、いっそうの輸出拡大を目指す。

 県は「今後も積極的に品質のよい県産農産物を輸出する“攻め”の姿勢で、輸出先と品目を増やし、県内産地の活性化につなげたい」と話している。
=2006/05/11付 西日本新聞朝刊=

あまおう:県産ブランドイチゴ、アジア向け輸出好調 イチジクなど売り出しへ /福岡

 ◇イチジク、茶など
 県産のブランドイチゴ「あまおう」のアジア向け輸出が好調だ。一昨年度の23・4トンから昨年度は40トンと、倍近く増えている。中国産など低価格の輸入モノに押される国内農産物だが、県は、海外では珍しいイチジクや潜在的な需要を秘める茶など、他の農産物の輸出にも力を入れる。
 県は4年前からあまおう輸出に力を入れ始め、昨年度は中国・上海、香港、台湾の輸入・小売業者を招いておいしさをPRした。あまおうは香港などの百貨店では、国内販売価格(1キロ1100円)の約1・5倍もする高級品として並んでいるが、順調に輸出量は伸びているという。
 県は今後、シンガポールやタイなどに対象地域を拡大する方針で、大消費地を抱える中国についても「現在、政府レベルで協議中」だ。
 あまおうの他にも、県産イチジクが香港、台湾で人気を得ている。県産は全国2位の生産高を誇るだけに、県は今年度、イチゴの出荷の端境期にあたる8~9月にイチジクを売り出す予定。
 また、日本食の浸透につれて茶の消費が進んでいる欧米をターゲットに、八女茶の輸出も検討。今年度は「ドイツ・フランクフルトの県の駐在員を使うなど、現地での市場調査をしていきたい」と県は話している。
=毎日新聞・福岡都市圏版5月10日朝刊=

記事のとおり、昨年度はJA関係者、地元企業、および「福岡の食・輸出促進センター(県農政部)」スタッフの並々ならぬ努力で販路拡大を実現した。天候不順や国内調整で厳しい経営環境にも関わらず、これだけの実績を作られたことに心から敬意を表したい。今年度も引き続き成果を挙げて、地域農業振興のために貢献できることを強く願っている。

また、この輸出事業に一貫して注目し続け報道してくれる新聞やテレビ、経済紙など地元の各報道機関にも心から感謝したい。主に報道を通じて農業生産者にこの事実が伝わるからである。
                                                
地方発の元気が出る明るい話題を提供し続けていくのが「ニッポンを売る!」の信念だ。

会津を訪ねる

材関係の仕事で福島県会津若松市を訪れた。

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JR会津若松駅前                    (出所:あいづ観光情報館)

初めての訪問地だったが、この街にも元気印の企業が頑張っている。

途中、猪苗代町に立ち寄った。

確か今月初め小泉総理がアフリカ・ガーナのアクラ市を訪問した際、
野口英世博士が通ったという研究室に立ち寄ったことを思い出し、
生家のある猪苗代の野口英世記念館を訪ねたのである。

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僕ら世代の幼稚園や小学生の時の偉人といえば
圧倒的に野口英世だった。
伝記を読んで、みな医者や科学者にあこがれ、そして世界で活躍することを夢見たのである。

060514hideyo_1 僕らはこの姿に憧れた…

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英世が幼少の時に落ちて大やけどをしたとされる囲炉裏

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今日も生家には未来の科学者たちが見学に来ていた

それにしてもあの伝記に読んだ猪苗代湖と磐梯山の景色の素晴らしいこと!!
あまりの美しさにしばし言葉を失った・・・。

060514mtg_2 磐梯山

060514lake_1 猪苗代湖

遠くに残雪冠する山々も眺め、東北の山河を堪能した。

また、大の幕末史ファンの私は、仕事の合間に無理をお願いして会津若松市の飯盛山に白虎隊の史跡をわずかの時間、見学することができた。

060514iimori_1 飯盛山

改めて説明するまでもない会津藩公に殉じた19人の若者の悲劇は、日本人なら誰でも深く思いを馳せることだろう。

060514jijin_1 白虎隊自刃の地

自刃の地を踏みしめると、やはりその場に身を置かないと感じないような「気」に触れた。

なんだか旅ブログのようになってしまったが、
午後陽も傾きかけた頃、蔵の町として有名な喜多方市にも足を運んだ。時間がなかったのでサッと町を縦断した。

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味噌や醤油、日本酒などの蔵が確かに多そうで、もっとゆっくり歩きたい街だなと思った。

また、喜多方ラーメンでも全国的に有名だが、なんと午後3時を過ぎるとスープがなくなるのか、多くが店じまいしてしまっているのだ。もちろん、夜まで開いている店もあるそうだが、次の予定が入っていてタイムアウト。

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喜多方まで来て本場のラーメンにありつけないなんてッ!?

今度はいつ再訪することが出来るんだろうか。

福島県といえば、昨年秋、
上海の有名百貨店で赤ナシの販促活動を熱心に行なっていたのに遭遇した。

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上海の百貨店でのプロモーション風景

聞くところによると、
県知事をトップに上海への売込みに大変熱心な地域のようで
上海事務所を拠点に活発な活動を行なっているという。

ナシのほかにもモモやブドウ、柿、リンゴなども有名な農業県だけに
今後の元気な活動が注目される。

木材輸出セミナーに参加

11日、東京・虎ノ門で「国産材輸出促進セミナー」が開催された。

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虎の門のセミナー会場

とても内容の濃いセミナーで大変勉強になった。

冒頭、主催者である木材輸出振興協議会会長で東大大学院教授の安藤直人先生によると、中国の経済成長と不動産の活況により日本の杉材の輸出の可能性が現実味を帯び始めていること。世界的な資源の需給バランスや各国通貨の変動により国産材も競争力を持ち、資源としての見直しとアジアとの交流の可能性について、じっくりと取り組む必要性について説かれた。

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安藤直人協議会会長

わが国の木材需給における自給率は、昨年ようやく20%台に乗った状況で、産業の活性化はもとより国土の環境保全に対しても、木材の有効利用は非常に重要なのである。

もし輸出への道のりが開けるとしたら、大きな活力になることは間違いなく、関係者は密かに期待しているところではないだろうか。満員のセミナー会場もそれを示している。

講演の前半は、北京から来日した中国林業科学研究院資源情報研究所の易浩若氏が中国の森林資源と木材需給について、詳しく紹介した。国家プロジェクトとしての森林資源保護、植林事業が大々的に展開されているプロセスと旺盛な国内需要と輸入増加の関係についてさらに理解を深めることが出来た。

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北京周辺の衛星写真。赤色の都市部が近年急速に拡大しているが、緑色の森林部も増えているのがわかる(出所:中国林業科学研究院)

中国の2004年の木材輸入量(紙パルプを除く原木換算)は約4000万立米で、1995年に比べ4.5倍に急増し、米国に次ぐ世界第2位の木材輸入国になっっているのである。

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(出所:中国林業科学研究院)

今後、日本一国分の需給量が中国で増えるというのだから、これを放って置く理由はないのではなかろうか。

後半は、木材輸出振興協議会事務局長の日比野義光氏による「上海住宅における木材利用状況」というテーマで、とても詳細な分析報告がなされた。上海では今後、内装済みの住宅建設への転換が行なわれ、高品質の内装材に大いにチャンスがあるのではないか感じた。上海市民へのアンケートでも、すでに不動産を所有している中間層の多くが、新たに高品質内装の住宅購入を希望しているという驚きの結果を見てもそれがわかる。

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日比野局長の講演風景

「単に高品質・高付加価値の商品が売れるからといってそのまま日本の木材や木質建材が売れるわけではない。日本はタタミ、中国は床の生活の違いなど、相手のニーズに合ったものを作る努力なくして販路開拓は実現できない」という日比野氏の最後のメッセージは、特に心に響いた。

実は加工が出来ないように見える農産物についてもそれが言えると、最近私も感じ始めていたのである。

日本国内での「こだわり」の商品を持ち込むだけでは海外の消費者にはすぐには通じないのである。酒類しかり、茶葉しかり、和菓子もしかりである。

大胆な発想転換が出来ないと十分な成果は得られないのではないだろうか。

木材輸出振興協議会では、今年11月に参加者を募って、中国でセミナーや商談会を行なうビジネスマッチングを企画している。本格的に動き出せば、木材は物量や金額が大きいだけに今後の動向が注目される。

世界遺産に触れる  成都紀行(その3)

川人のお国自慢の一つに中国で最も世界遺産が多い省だ、というのがある。

九寨溝(きゅうさいこう)峨眉(がび)山、黄龍、都江堰(とこうえん)などが有名だ。

そのもうひとつに1996年に世界遺産に認定された「楽山(らくざん)大仏」がある。

成都から約140キロほど離れた楽山市にあるが、今は高速道路も整備され一時間半ほどで行くことが出来る。

実はこの楽山大仏、私がまだ高校生の頃、とある写真を見てガツンと衝撃を受け、ぜひ行ってみたいと心底願っていた場所なのだった。もしかしたら万里の長城以上だったのかも知れない。

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学生の頃、一枚の写真を見て衝撃を受けた楽山大仏

だから30年以上も恋焦がれ、とうとうやって来たこの日は、感動のあまり暫く声も出ないくらいだった。

ところでこの大仏像だが西暦713年から建造が始まり、なんと90年の歳月をかけて完成した楽山大仏。頭の部分だけで10年を要したという。

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どれだけの大きさかが分かってもらえるだろうか

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足指だけでもこのくらいだ

全長72メートルで12階建てのビルに相当するという。もちろん磨崖坐像としては世界最大である。

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まさに「山が仏、仏が山」と言われる所以だ

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壁面から観るとこんな感じになる。まさに断崖絶壁!

この地はちょうど、揚子江の支流にあたる岷江大渡河、そして青衣江が合流する大河の難所で、長年洪水に見舞われ、多くの犠牲者を出していたという。説明によると、この川の氾濫を鎮めるために大仏が建立されたわけだが、大仏建立後、目立った洪水は発生していないのだそうだ。まったく科学的根拠がないのに

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右側が岷江、左側が大渡河が合流するところ。川の色が違う

それにしても、このハンサムというか個性的というか、大仏様の顔は印象的だ。

また、普通なら座禅を組むとか、手は印を結ぶなどするはずなのに、ここの大仏様は椅子に腰掛けているようでもあり、また手もお行儀良く膝の上に乗せてあって、とにかくユーモラスだ。

大仏の壁面だけでなく、対岸から船に乗って、岷江の水面からも大仏様全体を俯瞰したが、とにかく素晴らしかった。

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大仏は船上からと山上、足下から眺めた

30年前、中国渡航すら特別な事だった時代に、まさか仕事もあってここを訪れるなんて思いもしなかった。

いま観光開発の真っ只中だった。もう数年もすると立派な観光地になっているに違いない。 (続く)

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ゆったりした時間が流れる楽山の街
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ミス福岡に感謝

多どんたくの行事の中でも、人々の関心を集めるイベントのひとつに「ミス福岡」の選出がある。

毎年5月2日に開かれる「どんたく前夜祭」で最終審査が行なわれ、その年のミス福岡が3名選ばれるのである。

ミス福岡は一年間、福岡の親善使節として内外の各種行事に参加するのだが、県産農産物の海外販路開拓にも大いに貢献していただいた。

今年1月末には、旧正月休みの台湾・中国・韓国から来日する観光客向けキャンペーン活動として、福岡空港でミス福岡の宮田さんに県産イチゴ「あまおう」を空港に降り立ったツアー客に振舞っていただいた。

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やはりミス福岡がいてくれると、その場の雰囲気がパッと華やかになる。

台湾からの観光客もはじめはビックリしていたが、ミスの宮田さんから試食用のイチゴを受け取るととても嬉しそうにしていた。

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空の玄関では大いに注目を集めた

また、2月には台北の高級デパートや量販店9店で「イチゴ尽くしフェア」を展開した時には、ミス福岡の毛利さんも同行してくれて、各店舗で大いに歓迎された。

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連日朝から晩まで次々とキャンペーンを渡り歩き、本当に疲れ果てているはずなのに、最後まで笑顔を絶やさず好印象を与え続けてくれたのには感心した。本人曰く、「楽しくて仕方がない」のだそうだ。

もうひとつ嬉しかったのは、このように国産農産物の消費を少しでも拡大し、地域農業を元気にするために、農業団体や県庁の人たちが海外にまで日本ブランド農産物を苦労して販路開拓していることにミス福岡も共鳴してくれて、その後も事あるごとに県産イチゴの素晴らしさを訴え続けてもらっていることだ。

生産者にとって心強い味方だと思う。

今年もさる2日に第46代ミス福岡が3名選出された。

毛利さん、宮田さん、一年間本当にお疲れさまでした。プロモーションでは大活躍して頂きありがとうございました。

これからも郷土が育んだ農産物をみんなに紹介してくださいね。

博多どんたくのオープンマインド

3日と4日に、福岡市では「博多どんたく港まつり」が行われた。

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ゴールデンウィーク期間中、弘前の桜まつりと並んで約200万人の人出を記録する日本一のイベントである。

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今年も大勢の観客でごった返した

この人出の数値について関係者の人に聞いた話だが、結構意外な算出法みたいだ。もちろんここでは言えない。

博多どんたくは820年の歴史を持つ民俗行事を起源としているそうだが、今のような港祭りに発展してからもすでに45回目を数える歴史ある祭りだ。

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同じく全国的に有名な夏祭りである博多山笠が、限られた町内の格式と規律によって統制される地域伝統行事であるのに対して、博多どんたくは市民総参加型のオープンマインドの開放的なイベントである。

だから時代の変化に従って参加者も多種多様となり、現在のようにアジアとのゲートウェイとしての福岡・博多を反映して、どんたくパレードに参加する外国人も年々増えている。

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今年も大勢の外国人居住者や参加のために来日したアジアの人たちがパレードに参加した。観るのと参加するのでは感じ方がが大違いだというから、参加した人たちはきっと感激したに違いない。外国人の福岡ファンが着実に増えることだろう。

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姉妹都市の広州市からもパレードに参加

おりしも中国もまた5月の第一週は、メーデーのゴールデンウィークとして一週間の連休になっているので、数年後には大勢の中国人観光客で賑わうはずだ。

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今年は特に2016年夏季オリンピックの候補地に福岡市も名乗りを上げていて、なお一層海外へのアピールを強めている。

また、どんたく直前には、台湾から観光誘致のために関係者が来日し、福岡市の繁華街でGW直前の観光宣伝活動を行なった。

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双方向のアジア交流が活発化し、地方も活気が出てきたように思う。