11日、東京・虎ノ門で「国産材輸出促進セミナー」が開催された。
虎の門のセミナー会場
とても内容の濃いセミナーで大変勉強になった。
冒頭、主催者である木材輸出振興協議会会長で東大大学院教授の安藤直人先生によると、中国の経済成長と不動産の活況により日本の杉材の輸出の可能性が現実味を帯び始めていること。世界的な資源の需給バランスや各国通貨の変動により国産材も競争力を持ち、資源としての見直しとアジアとの交流の可能性について、じっくりと取り組む必要性について説かれた。
安藤直人協議会会長
わが国の木材需給における自給率は、昨年ようやく20%台に乗った状況で、産業の活性化はもとより国土の環境保全に対しても、木材の有効利用は非常に重要なのである。
もし輸出への道のりが開けるとしたら、大きな活力になることは間違いなく、関係者は密かに期待しているところではないだろうか。満員のセミナー会場もそれを示している。
講演の前半は、北京から来日した中国林業科学研究院資源情報研究所の易浩若氏が中国の森林資源と木材需給について、詳しく紹介した。国家プロジェクトとしての森林資源保護、植林事業が大々的に展開されているプロセスと旺盛な国内需要と輸入増加の関係についてさらに理解を深めることが出来た。
北京周辺の衛星写真。赤色の都市部が近年急速に拡大しているが、緑色の森林部も増えているのがわかる(出所:中国林業科学研究院)
中国の2004年の木材輸入量(紙パルプを除く原木換算)は約4000万立米で、1995年に比べ4.5倍に急増し、米国に次ぐ世界第2位の木材輸入国になっっているのである。
(出所:中国林業科学研究院)
今後、日本一国分の需給量が中国で増えるというのだから、これを放って置く理由はないのではなかろうか。
後半は、木材輸出振興協議会事務局長の日比野義光氏による「上海住宅における木材利用状況」というテーマで、とても詳細な分析報告がなされた。上海では今後、内装済みの住宅建設への転換が行なわれ、高品質の内装材に大いにチャンスがあるのではないかと感じた。上海市民へのアンケートでも、すでに不動産を所有している中間層の多くが、新たに高品質内装の住宅購入を希望しているという驚きの結果を見てもそれがわかる。
日比野局長の講演風景
「単に高品質・高付加価値の商品が売れるからといってそのまま日本の木材や木質建材が売れるわけではない。日本はタタミ、中国は床の生活の違いなど、相手のニーズに合ったものを作る努力なくして販路開拓は実現できない」という日比野氏の最後のメッセージは、特に心に響いた。
実は加工が出来ないように見える農産物についてもそれが言えると、最近私も感じ始めていたのである。
日本国内での「こだわり」の商品を持ち込むだけでは海外の消費者にはすぐには通じないのである。酒類しかり、茶葉しかり、和菓子もしかりである。
大胆な発想転換が出来ないと十分な成果は得られないのではないだろうか。
木材輸出振興協議会では、今年11月に参加者を募って、中国でセミナーや商談会を行なうビジネスマッチングを企画している。本格的に動き出せば、木材は物量や金額が大きいだけに今後の動向が注目される。
田中 豊
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MIXIコミュニティからやってきました。いいですね!大賛成です。
私はその国内の林業活性に尽力中です。
これからも宜しくお願いします。
うーん、示唆にとんだセミナーですね。中国関係だからということで参加されたのですか?今まで斜陽と思われていた産業でも海外での環境変化で活性化する可能性があるとい端的な例ですね。