四川人のお国自慢の一つに中国で最も世界遺産が多い省だ、というのがある。
九寨溝(きゅうさいこう)や峨眉(がび)山、黄龍、都江堰(とこうえん)などが有名だ。
そのもうひとつに1996年に世界遺産に認定された「楽山(らくざん)大仏」がある。
成都から約140キロほど離れた楽山市にあるが、今は高速道路も整備され一時間半ほどで行くことが出来る。
実はこの楽山大仏、私がまだ高校生の頃、とある写真を見てガツンと衝撃を受け、ぜひ行ってみたいと心底願っていた場所なのだった。もしかしたら万里の長城以上だったのかも知れない。
学生の頃、一枚の写真を見て衝撃を受けた楽山大仏
だから30年以上も恋焦がれ、とうとうやって来たこの日は、感動のあまり暫く声も出ないくらいだった。
ところでこの大仏像だが西暦713年から建造が始まり、なんと90年の歳月をかけて完成した楽山大仏。頭の部分だけで10年を要したという。
どれだけの大きさかが分かってもらえるだろうか
足指だけでもこのくらいだ
全長72メートルで12階建てのビルに相当するという。もちろん磨崖坐像としては世界最大である。
まさに「山が仏、仏が山」と言われる所以だ
壁面から観るとこんな感じになる。まさに断崖絶壁!
この地はちょうど、揚子江の支流にあたる岷江と大渡河、そして青衣江が合流する大河の難所で、長年洪水に見舞われ、多くの犠牲者を出していたという。説明によると、この川の氾濫を鎮めるために大仏が建立されたわけだが、大仏建立後、目立った洪水は発生していないのだそうだ。まったく科学的根拠がないのに。
右側が岷江、左側が大渡河が合流するところ。川の色が違う
それにしても、このハンサムというか個性的というか、大仏様の顔は印象的だ。
また、普通なら座禅を組むとか、手は印を結ぶなどするはずなのに、ここの大仏様は椅子に腰掛けているようでもあり、また手もお行儀良く膝の上に乗せてあって、とにかくユーモラスだ。
大仏の壁面だけでなく、対岸から船に乗って、岷江の水面からも大仏様全体を俯瞰したが、とにかく素晴らしかった。
大仏は船上からと山上、足下から眺めた
30年前、中国渡航すら特別な事だった時代に、まさか仕事もあってここを訪れるなんて思いもしなかった。
いま観光開発の真っ只中だった。もう数年もすると立派な観光地になっているに違いない。 (続く)
ゆったりした時間が流れる楽山の街
田中 豊
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