朝刊の社説から農業を考える

31日付の日本経済新聞朝刊の社説を読んでいただきたい。
社説では、

日本の農業が存亡の危機にある現実を、いま一度直視したい。2003年の農業就業者368万人。このうち65歳以上の高齢者が56%を占める。耕作放棄地は東京都の面積の1.5倍に相当する34万ヘクタールに達している。農地の集約化が遅々として進まず、たくましい後継者も見つからないまま、日本国民の食を賄う農地が減り続けている。
食生活の変化もあり、1960年代に70%前後あった食料自給率(カロリーベース)は40%まで低下した。たとえ外国からの輸入を阻み続けることができたとしても、このまま放置すれば日本の農業は内側から崩壊してしまう。

と、指摘されると、
今、自分が関わっている日本の農業というものの問題の深刻さを
改めて認識してしまう。
さらに、

目指すべき方向は明らかである。高率関税による国内の農産物市場の保護と、すべての農家を対象とする補助金制度から早く脱却し、効率的・安定的に農業経営する「担い手」に支援策を集中する新しい農政の枠組みを作るべきだ。

と、提言している。
社説全編を通じて、
一旦進みかけた農業改革が挫折することに対する
強い危機感が感じられるのである。
国が保護してきた産業だけに、
改革も政府が、自民党が・・、などと言っていては、
問題は絶対に解決しない。
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がんばろう!ニッポン農業!
生産者自らが、地方自らが
立ち上がらなければ、前進しないのである。
でも、すでに、その兆候は、
あちらこちらで見られるようになった。
私は、
日本農業の輝かしい未来と可能性をハッキリと予感しており、
確固たる信念と自信を持っている・・・。

デパート催事から情報収集

福岡のデパートで「博多うまかもん市」が開催されている。
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福岡商工会議所の主催による
今年で23回目になる恒例の食品催事で、
和洋菓子、調味料、明太子、ラーメン、惣菜など
福岡の食品関連企業が多数出展している。
私は、九州の食材を
香港や台湾、韓国、中国へ輸出する
支援サポートをしている関係上、
どうしてもチェックしておかなければならないイベントなのだ。
海外の日系デパートやスーパーでは
頻繁に日本食品を集めたフードフェアを企画するからである。
「どうしたら九州や博多について情報発信ができるか?」
「注目されるフェアはどう演出すべきか?」
「フェアを通じて消費者ニーズを調査したり、
掘り起こすためにはどうしたら良いか?」
など、テーマや仮説を持ちながら、観て廻るのである。
輸出の安定化のためには、一時のお祭り騒ぎではなく、
定番商品として日常的に売り場において頂くことを
最大目標にしているが、
海外催事も、市場開拓のためには
有力な戦術のひとつとなっているのだ。
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台湾での食品フェアの筆者。自らハッピを着て売り場に立つことも…
正月も明け、次のバレンタイン商戦までのこの時期、
やはり目に付いたのは、
「イチゴ」を食材として
和洋菓子メーカーはいろいろ工夫していることである。
海外でも日本の農産物を売る場合、
ただ商品を並べただけでは
売れ行きにも限界がある。

「新しい食べ方の提案」
がなされていなければならない。
また、福岡の主だった有名ホテルの
デザートや惣菜の出展が目に付いた。
ホテルも、新しい販路開拓にチャレンジしている様子がわかる。
国内、しかも地元で開く食品催事と
海外で行なう催事とでは
商品扱いから企画、運営に至るまで
異なることも多いが、
「定番輸出を目指すためにも、
近いうちに必ずこのような人気催事をアジアでも実現してみせる!」
と秘かに誓うのであった。

中台チャーター便 相互乗り入れが意味するもの

春節(旧正月)で帰省する台湾人ビジネスマンらを乗せた
中国のチャーター機が29日午前、
台湾に乗り入れた。
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(台湾中央通信社)
1949年の中台分断後、56年ぶりに
中国と台湾の直行チャーター便の相互乗り入れが実現した。
一般には
中国統一に関わる政治問題として報道されているが、
「ニッポンを売る!」の立場からは、
少し異なる視点から
現実を先取りしておかなければならない。
すなわち、
中国と台湾の統一、もしくは独立にともなう混乱は、
今しばらく時間を要するものと考えられるが、
いわゆる「大三通
(台湾当局による対中国大陸の通信、通航、通商の禁令解禁)が
実現し、人や物資が直接自由に往来されるとなると
現在、私達は台湾マーケットへ
日本の農産物等を必死で売り込みをかけているが、
いつ中国大陸から安い農産物が
ドッと台湾市場に押し寄せてくるかどうかわからないのだ。
また、中国市場でも、
台湾産青果物が本格的に輸入されるとなると
双方のマーケットで、
日本の強力なライバルが出現すると言うわけだ。
今回の中台チャーター便相互乗り入れは、
東アジア地域の政治的安定へ半歩踏み出すものである一方、
経済的には更なる激しい競争の予感を感じさせる、
非常に注目されるニュースなのである。
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(台湾中央通信社)

ニッポンの宝たちに期待する

28日、「福岡県青年農業者会議」で記念講演をさせていただいた。
福岡県で農業に従事する青年約200名近くが集まり、
それぞれの発表者が、
日々の農業実践や生活について意見発表したり、
生産・経営などの研究成果をプレゼンテーションする場なのである。
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皆、それぞれ個性ある主張や研究で驚いた。
研究発表では、ほとんどの人がパソコン・デジカメを使いこなし
ビジュアルなプレゼンだったのは、さすが青年たちだ。
終日、18の発表を行い、優秀者が表彰され、
九州大会、全国大会に参加する。
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青年達の発表が終わった後、
「東アジア市場における日本の農産物輸出の現状」について
私が講演させていただいたが、
2時間にわたり、皆さんに非常に熱心に聴いていただいた。
私の話が退屈で
途中退席したり、居眠りしたり、メールを打ったりするのではないかと
心配していたが、そんなことは全くなかった。
会場のピリピリするような真剣さを感じ、
私のほうが興奮して熱っぽく語り通した。
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農業青年といっても、市街で見かける若者となんら変わらない。
スーツを着て、長髪あり、髪染めあり、
鶏のトサカのようなヘアスタイルの人だって珍しくない。
今後も海外からの安い農産物の流入によって、
日本農業も決して安閑としていられない。
私が取り組んでいる農産品の輸出も含め、
旧来の農業を根底から覆し、さらに発展させていくのは
この青年たちなのである。

200名近くの農業にチャレンジしようという若者達を前に
本当に頼もしい思いがした。
この人たちのためなら、何でも応援したいと思った。
締めくくりには、若き青年幹部全員と固い握手をして
共に検討を誓った。
「お互い頑張ろうなッ!」
「何でも支援するから」
久しぶりに熱い血が体を駆け巡った。
この青年達こそ、日本の宝である。

台湾に売り込んだビッグプロジェクト

今年10月開業を目指す
台湾版新幹線(台湾高速鉄道)の試運転が
27日から始まった。
日本の新幹線が、初めて海外に輸出された例として、
私も大いに注目している。
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(共同通信社)
日本のお家芸である
高い信頼性を持つ技術システムが
アジアへ輸出されること自体、
我々日本人からすると、
あまり驚くべきことではない様に感じるが、
同じく、日本製品や技術を
海外に売り込むコンサルをしている立場から、
その苦労たるや如何ばかりであろうかと、
思いを馳せるのである。
今でも現場では、運営上、いろいろなトラブルが続いていると聞く。
とにかく、日本びいきの台湾の人たちに受け入れられた新幹線。
日本企業側の直接受注額が5300億円という
ビックプロジェクトだけに、私も大いに勇気付けられる。
無事の開業を祈るばかりだ。

日本最大の貿易相手国が変わった!

財務省が26日朝発表した2004年の貿易統計速報によると、
香港を含めた対中国の輸出額と輸入額を合わせた貿易総額は
22兆2005億円となり、対米国の20兆4795億円を上回り、
日本の最大の貿易相手国となった。
貿易相手国で米国が最大でなくなったのは、
戦後初めてのこと
だという。
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香港の港湾風景
私が中国に関わりを持ち始めた1970年代後半には
想像も出来なかった変化のしようだ。
我が国にとって名実ともに重要な存在になったことだけは
間違いない。

JAの新たな挑戦

福岡県のほぼ中央、JA筑前あさくらで農産物の輸出に関する講演を行った。
この3年間、同様のテーマで、26ヶ所の農業組織や団体で話題を提供したことになる。
海外での販路開拓のためには、海外で活動するだけでなく、
「国内の生産地・流通を巻き込む大きなうねりを作り出すこと」
これが私の大原則である。
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今回は、ナシ部会の総会の後での講演ということで、
多くの生産者の皆さんが集まった。
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輸出のために展示される福岡のナシ
昨年、4度にわたる台風が原因で、
生産・出荷にも大きな影響が出たこともあり、
総会では、厳しい経営環境に対する深刻な意見が飛び交った。
その厳しさたるや、改めて認識を深くする…。
このような光景は、この地域だけでなく、またナシだけでもなく、
すべての農産物で見られる、まぎれもない現実だ。
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JA筑前あさくらと言えば、
農産品の輸出では、九州でも特筆すべき農協のひとつである。
それは、さかのぼること13年前、
福岡県が、初めて香港市場に向けての産物を定期的に輸出する事業を始めてから、
これまでずっと輸出を維持、発展させてきた農協だからである。
全国的にも知られている「博多万能ねぎ」は、ここが開発したものだ。
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博多万能ねぎは、いまや香港では、
一部の地元スーパーでも見かける定番アイテムになっている
かつて、薬味用の小ネギは、香港では野菜を買った客に、
八百屋が、香菜(シャンツァイ)と共にタダで付けてくれる「景品」商品だったのだ。
(今でも台湾では、その習慣があるため、なかなか高級野菜として認知されていない)
しかし、JA筑前あさくらの担当者は、10年余りの奮闘の末、
「景品」から一気に定番野菜へと地位を向上させたのである。
日本全国にも普及させ、また同時に香港でも実現させるという、
この執念と努力にはとにかく敬服するに値する。
また、日本一の生産量を誇る甘柿(富有柿など)もこの地域の特産で、
数年前までは台湾向けに輸出され、好評を博していた。
2時間近くにわたる私の講演にも、
誰一人として居眠りする人は見かけられず、
改めて生産者の真剣さに身の引き締まる思いがした。
講演終了後、
3年間お付き合いさせていただいている手嶋なし部会長が
「今年はなんとしてでも、我々のナシをアジアへ輸出したい!」
という決意をこめた言葉が印象的だった。
「販売の現場」と「生産の現場」
この双方の厳しい現実から眼を離しては、真実は見えてこない。

台湾での農産品販促活動

1月18日から、台湾台北(タイペイ)の日系百貨店で福岡物産フェアを開催している。
旧正月(今年は2月9日が旧の元旦)前の歳末シーズンということも重なり、
売り場は買い物客でごった返した。
このお店は、台湾でも高級住宅街として知られる「天母」という場所柄、
高級商品の品揃えを追求しており、日本から食材を輸出する意味では
いいテストマーケティングになると期待している。
今回、福岡から、イチゴの「あまおう」をはじめ、甘柿、葉物野菜類、
とんこつラーメン、明太子、各種和洋菓子などを出品。
開幕前は、どうなることかと心配もあったが、
いざ開店してみると、あまおうをはじめ、予想以上の手ごたえを感じた。
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開店直後、まだ搬入作業も終えておらず、
売り場も雑然としているところに
一人のお客様が、「あまおうは今買えますか?」と
問いかけてきたのには一同ビックリした。
その後は、エスカレーターで地下売り場へ降りてくる客のほとんどが
福岡フェアの売り場へ足を運び、
興味深そうに商品をのぞき込む。
ひとパック450元。日本円にして約1500円である。
福岡での市価の約3倍の値段。
実は、この3倍とか10倍とかの比較は意味がないことを
これからの記事で解き明かしていこうと思う。
まだ開店まもない午前10時ごろ、
トレーナーを着た若い男性が「あまおう」をギフト用にぜひ欲しいと言ってきた。
タイペイの他の日系デパートや高級スーパーを数店舗探したのだが
売り切れてしまっていて手に入らない、と言うのだ。
この天母という所は、市街地から結構距離がある。
わざわざフェアの広告を見て、祈る思いで足を運んで来た、という。
「本当にありがたい!」
心の中で何度も頭を下げて応対した。
でも、感情にふけってばかりいられない。
包装中もいろいろインタビューさせていただいた。
このような情報こそ、生きたマーケティングリサーチ。
アッパーミドルの若い台湾人消費者の一面を知ることができた。
やはり知りたい情報は、現場にしかないのだ。

首相の施政方針演説から

小泉首相は、21日の国会施政方針演説で、

「海外では、ナシやリンゴなど日本の農産物が高級品として売れています。
やる気と能力のある農業経営を重点的に支援するとともに、企業による農業経営への参入を進め、
農産物の輸出増加を目指すなど「攻め」の農政に転換いたします。 」

と表明した。
文字にしてわずか数行しかないが、その意味するところは大きいと思う。
やる気と気力のある農業経営を重点的に支援、というのが
何を意味するのかは、必ずしも明確ではないが、
日本の農産物輸出が、ひとつのテーマになったことだけは間違いない。
三年前、福岡でこのプロジェクトに着手してから、
まさか首相の施政方針にも加えられるとは、誰が想像しただろうか。

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。
「災い」多き2004年も終わり、新たな希望を込めて2005年を迎えました。
昨年は、アジアビジネスのコンサルタントとして、「守り」から「攻め」への転換を提唱し、そして実践してきました。
特に、日本産農産物のアジアマーケットの輸出について顕著な実績を上げることができました。
しかし、まだまだ端緒についたばかりであり、これから、その奮闘ぶりを中心に、このブログを通じて紹介しようと思います。
元旦にいつも思い出す中国の言葉に、管仲の
「一年の計は穀を樹うるに如かず
十年の計は木を樹うるに如かず 
終身の計は人を樹うるに如かず」があります。
壮大なるビジョン実現のために、
まず今年どんな種や苗を蒔き、そして人材を発掘するか。
自然と気合が入ります。
本年もどうぞよろしくお願いします。