鹿港(ルーガン)の街を歩くと、道端で
牡蠣(カキ)の殻をむく作業をしている光景に出会う。
ここが海辺に近い街であることを改めて感じる。
おしゃべり好きのお年頃(?)のオバさんたちが、
なぜか黙々と作業をしている。
そう、鹿港の名物に、カキのオムレツ(蚵仔煎)が挙げられる。
そう、台北の屋台でも良く見かける一品ですね。
焼けた鉄板の上に、
カキ、卵、そして片栗粉を溶いた液体で合わせ
レタスや青菜などを散り、店独自の甘辛タレで味付けする。
天后宮の参道でも、数件が店を連ね
店頭で実演調理している。

片手で卵をつかんで割りいれ、殻をポンと横に投げ捨てる瞬間
そのアクロバティックな動きも興味をそそるが、
やはり、
ジュウ~ジュウ~という乾いた音、
香り立つオムレツの匂い、
そして熱い鉄板で踊る食材を観ていると
五感を刺激されますね。
この日34.5℃もあり、暑くて水ばかり呑んでる僕が
名物を実際に口にすることはなかった・・・。
さらに露天街をディープに進んでいくと
やたら長い行列が出来ている店がある。
これも鹿港名物「芋丸」である。
あまりに人気なので、写真だけとって
あとから引き返したら丁度行列が切れて
商売上手な姉さんが、
「ちょっとぉ、名物食べていきなさいよ~!」
と誘われたものだから、
不覚にもつい求めてしまった。
なぜ不覚なのかというと
あまり口に合わないことを体験済みだからである。
今回もまた、買った責任をやっとの思いで果たした。
僕は絶対にその土地の食べ物の素晴らしさを感じるまで
好奇心を持ってトコトン好きになるのだが、
どうにもこの芋丸だけはまだまだ時間がかかりそうだ。

豚肉の餡をタロイモの細切りで包んで蒸し、甘辛のタレを付けて頬張るのだ 。
僕の座右の台湾版書籍には、
「傾国傾城的超級美食」とあるのだが、
そのココロが未だ理解できないもどかしさに襲われる。
でも、だからこそ食文化って面白いと思う。
僕が20年以上前にここを訪れて忘れられない味は
「焼きたての」牛舌餅である。

一番手前が「牛舌餅」
鹿港の街ではどこにでも売っている名物駄菓子である。
餅と名付いているが、
日本でいうもち米製のの粘り気のある食べ物ではなく
練った粉を焼いたサクサクするパイのようなもので、
普通に売られている分には、
正直言って、味もそっけもない素朴なスナックのようなものなのだ。
これが、冒頭強調したように「焼きたて」なら話は別。

働き者の親子が一生懸命に牛舌餅を焼く
鉄板からそのままアツアツを頬張ると
なんとも深~く甘い匂いと適度に香ばしい香りが溶け合って
フランスのパイに匹敵する! と感動したことを覚えている。
まさに地域ブランドの現場でしか味わえない価値がある。
そう、桁外れの暑さと芋丸の重い余韻のせいで
今回は牛舌餅も敬遠となってしまった。

鹿港産手延べ麺線 そうめんのような感じ
鹿港名物には、ほかにも肉まん、麺線、イカのとろみスープ(魷魚羹)などがあり、台南と並んでB級グルメやスナックの宝庫といえるだろう。
(シリーズ終わり)
