海を渡っていった日本人  僕らはもっと自信を持っていい!(その2)

(前回より続く)

って現代。
戦前戦後を通じて思い出される日本人町では
なんといってもブラジルの日本人町と
アメリカのリトルトーキョーではないだろうか。
そのどちらにも、ニッポンを売り込むために
市場調査、販売支援活動に訪ねたことがある。
先ずは、ブラジル・サンパウロにある
日本人町(リベルターデ)
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日系移民100周年の2008年にここを訪れた。
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       第一回移民781名を載せて、1908年に神戸港より出航した
最近は中国韓国の経済発展に伴い、
商店や会社のオーナーが日本人と入れ替わるところもあり、
日本人町ではなく、東洋人街と言われるようになっているとも聞いた。
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日本的な設えのなかにもいつの間にか・・・

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とはいえ、街は活気があり、
人の往来も賑やかだ。
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日本の多様な文化も発信されている
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地球の真裏でも、情報発信することに意義がある
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地元で活躍している日系人の皆さんたちと交流もしたが、
日系人は代々、ただ開拓してビジネスするだけではなく、
子供を医者や教育者にして、地元ブラジルのために
大きく貢献するなどの積み重ねが高く評価され、
“ニッケイジン”は絶大な信用を得ているという。
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町のあちこちに銅像が
農業や土木技術などの現場でも第一線で活躍しているそうだ。
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地域に根付き、共生する先人たちの労苦に思いを寄せる
同じ民族として、自分も褒められているかのように誇らしかった。
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ここ日本人町でもかなりのニッポンの食材食品が
販売されている。
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日本のストアと遜色ない
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寿司・弁当はここでも売れ筋商品に成長
 
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国民食も海を渡る・・・
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100年前から農業技術こそが日本の武器だったはず
再び日系コミュニティーが復権する日も遠くないかも知れない。
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僕等の魂に眠るブラジル開拓の精神を
今こそ地域創生に発揮すべきである。
重ねて訴える、僕ら本人はもっと自信を持っていい!!
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リベルターデ・大阪橋のたもとにて    2008年8月

活力蓄える沖縄農業の挑戦

つい先月、沖縄県那覇を訪ねた。

 

JAおきなわの皆さんたちとの勉強会に参加したのだが、
おりしもアメリカ大統領選挙の前日でもあり、
遠い海外の話題とはいえ、TPP交渉の行方も不透明で
その重大な影響が懸念される県農業ということもあって、
皆さん一際危機感を抱いており、
海外事情についても活発な質疑が飛び交った。

 

翌日、南部の産地や選果場を案内していただき
あちこちで新たなチャレンジに取り組んでいる姿を目にした。 

 

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肉厚でまるでパプリカのような「具志頭(ぐしちゃん)ピーマン」。

 

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生でかじっても甘くて、あのピーマン臭さがない。

ピーマン嫌いの子供でも食べられるに違いない・・・。

 

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他にも、ミニトマトやエンサイ、山東菜など珍しい品目も
紹介してもらった。  

 

       
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道中延々と続くサトウキビ畑。TPPの行方が気にかかる

 

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本島南部の海岸に出た。

 

絶景が広がる海岸線に目を奪われるが、
ここも重要な戦跡の一部。

改めて過去の歴史に思いを巡らせ、沖縄の今を再認識する。

 

 

まるで家族のように温かく迎えてくれる沖縄のスタッフの手配で
様々な農業現場を案内してもらった。

  
全国的に農業生産額が低迷するなかにあって、
沖縄県は関係者の努力の甲斐あって、ここ数年増加に転じているという。

 

 

     
那覇の町に戻ったら、県庁前のショッピングモールでは
クリスマスツリーの設営が始まっていた。 

 

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外の気温27℃の汗がむしばむ南国風情のクリスマスに
思わず笑みが浮かんだ・・・。

 

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寄稿のご案内

日本政策金融公庫の月刊誌「AFCフォーラム」12月号に寄稿した拙文が掲載されたので、ご紹介します。

 

 

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https://www.jfc.go.jp/n/findings/publish.html

 

 

「主張・多論百出」というコーナーです。

 

 

今、全国の自治体による農産物輸出は、
海外における各種プロモーションやマーケティング活動、
いわゆる川下戦術が花盛りですが、
これからさらに伸ばすために、
産地、商物流の川上・川中対策の必要性を訴えています。

 

 

同誌がお手元にある方はご一読いただければ幸いです。 

 

 

貴重な寄稿の機会を頂いた
日本政策金融公庫農林水産事業本部情報企画部各位に
厚くお礼申し上げます。
   

日本なしの海外展開、そして驚くほどの改良ぶりに感嘆した

秋節と言えば、

最近ギフト用に日本産のが輸出されるようになった。
 
 
主に台湾と香港向けなのだが、
70年の歴史を持つ鳥取県の二十世紀が
圧倒的な人気だ。
 
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季節になると台北の卸売市場でも鳥取梨の箱がうず高く積まれる
 
 
ほかにも、ここ数年、
大分、熊本、福岡、佐賀、千葉、茨城など
各県の組織が梨の輸出に熱心だ。
 
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ギフトシーズンともなると熊本八代産の大玉梨が飛ぶ様に売れる(台湾で)
ヒットの裏には関係者の努力が
 
 
 
東北大震災の前までは福島のJAも香港で頑張っていた。
 
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2009年10月
 
 
とはいえ、近年は地元台湾産や韓国産・中国産のレベルが上がり、
柿と同様、日本産も安閑としていられなくなっているのだ。
 
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台湾地産の高接梨も人気が高まっている (台北の果物専門店で)
   
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韓国産も品質、価格、対応サービスで急速にレベルを上げており、各市場で日本の強力なライバルとなっている
 
 
 
一方、我が国も不断の努力で
安心、美味、差別化を追及している。
 
 
九州の某県某市のブランド産地の梨園を視察させて頂いた。
 
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丘陵地に整然と梨や桃が植えられていた
 
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米は文字通り、八十八の手間がかかると言われているが、
聞けば、梨も良いものを作るために、気の遠くなるような手間をかけられているのだ。
 
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袋掛けも一回ではなく、複数回行われると聞いてビックリ
 
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若い生産者さんの改革・改良に向けた熱意に触れ感動。
     
農業という職業の無限の可能性と素晴らしさを改めて認識する。
 
 
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日本には「日本なし」「西洋なし」「中国なし」の3種が流通しているが、国内の生産量は圧倒的に日本なしで、二十世紀に代表される青なしと、「幸水」や「新興」など皮が褐色の赤なしに大別される。
 
 
 
分類上はバラ科ナシ属で、
千葉県、茨城県、福島県の生産が多い。
 
 
先日、生産量トップの千葉県の松戸産の梨を送って頂いた。
 
僕は以前、松戸に5年ほど住んでいたことがあるだけに、とても嬉しかった。
 
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豊水という品種で、文字通り水分たっぷりで
前歯が当たった瞬間から甘い果汁が噴出してきてビックリ驚いた。
 
 
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豊富な果糖やリンゴ酸、クエン酸には疲労回復効果があり、
ソルビトールという整腸作用のある成分も含まれているという。
 
 
 
会席料理の品書き(メニュー)の最後によく
水菓子」と書かれているのを見かけるが、
これは果物のことである。
 
中国語でもフルーツのことを「水果」という。
 
 
まさに水分80%以上で占められる梨にこそ相応しい言い方だと実感した。
 
 
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     梨を噛む 霧に見えざる 湖を前
                             福田 蓼汀
          
     
 
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梨に関わる格言はあまり思いつかないが、
若い時に中国語の学習で読んだ
(当時、僕の住む田舎では中国語の教材なんて何も無かった)
毛沢東の「実践論」の一節を思い出した。
 
 
〝知識を得たいならば、現実を変革する実践に参加しなければならない。梨のうまい味を知りたいなら、自分でそれを食べて、梨を変革しなければならない。”
 
 
近代版の知行合一だろうか?
 
いずれにしても中国人にとって
梨は、昔からとてもポピュラーな果物であることには違いない。
 
     
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香港の油麻地街市で売られる中国産南水梨(原産地は長野県で、台湾企業によって中国にもたらされたとも言われている) と青なし
 
 
 
まさに、日本をトップランナーに
各国がしのぎを削って梨の味の変革を実践しているのである…。
              

未来志向の産業として

公益財団法人 九州経済調査協会から

今年も「九州経済白書」が刊行された。
 
1967年に創刊され、今年で47回目を迎えるという。
 
 
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常に九州の産業経済の指針である同白書であるが
その年に採用されるテーマは、
地域を展望するにあたっての有効な「切り口」であり、
いつも高い関心をもって注目している。
 
これまでも僕の専門である
「アジア・中国」や「フードアイランド」といったテーマになった時は
自分の観点・視点にお墨付きをもらったような気分がして
とても心強い存在であった。
 
 
今年のテーマは、ずばり農業である。
 
アグリプレナーが拓く農業新時代」とあり、
農業と企業家(アントレプレナー)を合成したものを
アグリプレナーと定義し、僕の好きな
「挑戦」、「開拓」という思想が全面に展開されており、
未来産業として農業が位置づけれられている。
 
 
九州の産業経済に最も深い知見を持つエリート集団である
調査協会が今回初めて農業に着目したことは、
感慨深いものがあり、同時に
単なる伸びしろのある成長分野というだけでなく、
将来、社会の価値観が変わる可能性をも含むのでは?などと、僕は勝手に解釈している。
 
 
7つの県を合わせたひとつの「島」としての九州では
その農業産出額は全国の2割を超えており(2011年)
関東とほぼ同水準の全国2位のブロックである。
 
 
この多様で特徴ある農業を内向きに捉えず、
戦略的に活かすことで
もっともっと元気で豊かな地域が各地で復活することだろう。
 
 
白書では、新たに挑戦する数々の農業事例が盛り沢山で
海外に向けた農産物輸出についても章を設けられており
体系的に理解したいのであれば、ぜひとも一読を薦めたい。
 

2013年を振り返る(ベトナムの山中でとんでもない食材との格闘編)

今年も各地で美味しい食べ物、素晴らしい食材
珍しい料理に出会ったが、

最もインパクトが強かった体験をご紹介しよう。
 
 
「あああああ~っ! もう耐えられない!
 
 腰が悲鳴を上げているぅぅぅ~ッ。」
 
 
6月のこの時の出張は特別に強行だった。
 
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台湾で、台北から台南に下り、
車で山中を10時間くらい走破して、
そのままベトナムへ移動。
 
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そのくらいならよくある話なんだけど
翌日、以前のエントリで取り上げた
ドラゴンフルーツの里ファンティエットに
ホーチミンから往復12時間越えの1泊視察に行ったあと
間を開けずに、ホーチミンからまた西に向かって
ひたすら移動。
 
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田園地帯をとにかく横断する
 
 
もうフラフラでどこに行っているかの興味も失せ、
ただ腰だけをかばっていた記憶しかない。
 
 
やはり6時間くらい乗っていただろうか、
着いたところは、ベトナム南部の農村地帯。
 
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ジャングルみたいでもある
 
 
海からは程遠い内陸部であることだけは分かった。
 
 
ドンタップ省という行政区で
後で調べたら、北側はカンボジア国境らしく
メコンデルタの一角にあるらしい。
 
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あるプロジェクトの視察に来たのだが、
ここで手荒な、もとい、大歓迎を受けたのだった。 
 
 
中国や東南アジアでも、田舎に行くと
想像を絶するような歓迎をされたり
宴会に呼ばれたりすることがしょっちゅうある。
 
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仕事の話も無事に終わり、
吹き抜けの屋根の下で、地元のパートナーが
手作りのご馳走を振る舞ってくれるというのである。
 
 
まず最初に茹でたての蓮の実が、お通しで出てきた。
 
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これがホントに美味!
 
日本のブランド栗にも引けを取らない
甘みとホクホク感だった。
初めての食べ方だった。
 
 
次に出されたのが、
自家菜園で栽培している茹で野菜の盛り合わせ。
 
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ニンニクだれが誠に美味しゅうございました。
   
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続いては、蒸した地鶏の香草和え。
 
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歯ごたえは地鶏のものだけど、
それでいて柔らかく、味が濃くて、何よりもとてもジューシー。
 
 
ここまで来たら次々と。
 
家庭で作ったバインセオ。
 
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初めて食べたベトナム式お好み焼き。
 
 
息子がエビを焼いてくれた。薫りが香ばしい。
 
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「さあ、出来たわよぉ~っ!」
と、ここの大奥さんが運んできたのが、
ヘビのスープ。
 
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僕は、香港で冬の名物として
時々食べるんだけど、ちとグロテスクでもある。
 
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滋養にいいらしい。
 
 
 
次に出てきたのが
本日のメインディッシュである。
 
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ネズミの丸焼きだ。
 
 
「うわっ・・・!?」
 
僕は、絶句してしまった。
 
 
今年のメモリー。
 
 
僕は、20代の頃、広東に毎年2回延べ2か月以上を
8年間滞在していたから大抵の動物や
熊の掌、象の鼻、駱駝のコブなどの珍味部位など
ここでは公表できないほど
珍奇鳥獣の類を食べた経験を持っている。
 
当時中国はワシントン条約にも入っていなかったし
野味」といって、それが
広東料理の名物ジャンルのひとつでもあった。  
 
 
それでも、このネズミさんだけは、食べた記憶がない。
 
酒の飲めない僕は、いつも食べる担当。
 
意を決して一匹全部頂いた。
 
 
地元の人やホーチミンから同行したスタッフにとっては
もちろんご馳走だから、僕は嫌な顔をする訳にはいかないのだ。
 
聞けば、ここの大奥さんは、
事前に高級食材を買い込んできて、
前日から料理を仕込んでおいてくれたらしい。
 
 
ニコニコ完食しました。
 
この後も、まさに野味のオンパレード。
 
いつも間にか腰の痛みを忘れていたのは
気のせい?  
それとも野味の滋養効果?
 
 
日本メンバーのひとりが
ベトナム入りして早々と胃腸を崩し
何も食べられないからといって、
わざわざ作ってくれたのが、この地鶏のおじやだった。
 
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これがもう絶句するほどの美味しさだった。
 
銀座の高級水炊き屋にも劣らぬ深い味わいだった。
 
 
 
最後には果物の女王マンゴスチンや竜眼、
スターフルーツ、濃厚バナナなどを頂いて
心から満足したフルコースだった。
 
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こうして紹介するとベトナムの奥地は
まだ未開の、遅れた地域などと誤解されそうだが、
ここで出会った農村風景や生産者一家の温かい愛情は
日本の里山で感じたそれと少しも変わらない
 
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この日のシェフ 大奥さんはスケールが大きい
 
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ビジネスパートナーでもあるご当主とも完全に打ち解けた
 
 
別れ際には涙が止まらないほど
ベトナムの生産者と心が通じ合い、
これから良いビジネスにしようねと誓い合ったのだ。
 
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2013年を振り返る(里山の景観に感動編)

今年も一年間各地の現場を訪問する機会を得たが、
いつもながら、どこに行っても誰を訪ねても
心躍る素晴らしい出逢いばかりだった。

 

その中から、敢えてひとつ選ぶとして
これぞニッポンの里山の光景として
目に焼き付いた11月の感動をもう一度。

 
米の収穫も全て終わり冬支度の頃、
島根県松江市から東南方面に車を走らせる。
 
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山間部に入ると道の両側に、果樹が赤い実を付けている。
 
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車が止まったのは、上意東の畑(はた)地区。
 
 
そう、知る人ぞ知る干し柿の里である。
 
 
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海抜約180m前後の山腹は、風水でいう龍の通り道のような
入り組んだ谷あいの地形をしている。
 
後にその地形が、日本有数のブランド干し柿の秘密であることを知る。
 
 
 
周りは柿の木だらけ。赤い柿が実っている。
 
ただ、僕には馴染みのない形をしている。
 
 
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縦に細長い西条柿である。 
 
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実には4本の筋というか溝がある
四つ溝西条柿といわれている。
 
もちろんこのままでは渋くてとても食べられない。
 
話によると、戦国武将の毛利家が兵糧食として
ここに西条柿を持ち込んだと言われ、
樹齢400年を超す老木もあるという。
 
 
この日も収穫された西条柿が
加工場に集められる。
 
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畑地区には19戸の生産者さんがいて
この日、JAくにびきの案内で
組合長さんの加工場を見学させて頂いた。
 
 
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溝もくっきり見事な西条柿だ。
 
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まずはじめに機械でヘタを取る。
 
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こんな具合になる。ここまでは簡単。
 
 
次に皮むき。
          
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見ているととても素早くてきぱきと見えるが
実際はひとつずつとても丁寧に皮をむいている。
 
この仕事はご婦人方の担当だそうだ。
 
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根気と熟練が要る作業だ。
 
皮をむき終わると重さを測って、選別する。  
 
干し柿は、一本の紐に10個と決まっているから
重さが異なる柿を、一本の紐ごとに重さを均一にするために
選別をしなければならないのである。
 
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見ているだけで大変手間がかかる作業だと驚く。
 
紐を付けたら、いよいよ乾燥する工程にはいる。
 
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晴れた日は、こうして窓を開け放ち、天日と風で乾燥させる。
 
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干し柿造りで重要な三要素というのがあって、それは、
①乾いた冷たい風が通り抜けること
②昼間は十分な日差しがあたること
③気温の日格差が大きいこと
なのだそうだ。
 
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ちょうど昨日は、この三条件がベストの状態で揃ったそうで
昨日から干した分の列は、初日としては最高の出来栄えなんだそうだ。
                 
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あめ色の宝石と呼ばれる所以だ。
 
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ひとつひとつ驚くほどの手間をかけ
しかも自然条件がそろって初めていい商品が出来るのだ。
 
ブランド加工品とは、
このような陰の苦労や条件が積み重なってできた逸品なのである。 
 
そこでこの畑地区の地形というのが
乾いた冷たい風が、遠くに見える中海から吹き付けてきて
この特殊な地形をした谷間を通り抜けていくことで
見事に干しあがる理想の環境だということなんだそうだ。 
 
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山の向こうが中海。風が吹きぬけてくる極めて特徴的な地形。だからこの地区だけでしか出来ないのだ
 
 
以前、林道を山腹に一本作るというだけだけで、気象条件が変わるかも知れないと大議論にもなったくらいに神経質なことらしい。
 
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真心を込められて、陽光と寒風と外気に身をさらす
 
 
一週間ほど天日に晒してから、移動して熟成させる。  
 
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約ひと月干したら出来上がり。 
 
僕が訪ねたのは11月だったから、まだ出来ていなかった。 
 
ちょうど今頃が出荷の最盛期なのでは?
 
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頂いたのは、去年の製作分。真っ白な粉を吹いて、糖度はなんと60度になるらしい
 
これだけ手間暇がかかるのだから、高級品となる。
 
首都圏、関西と広島岡山などの山陽地区にも販売されているそうだから、見つけたらぜひ買って食べて欲しい。
 
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柿小屋と呼ばれる3階建てのこの建物の光景の素晴らしさは、
今でも思い出す。
 
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ウットリしてしまう。
 
今年のメモリー。
 
 
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今年の里山の景観感動賞
 
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ちなみにこの表面に白い粉を吹いたのがコロ柿と言われるもので
島根県の戦略商品となっている。
 
 
一方、縁結びのパワースポットとして、女性の参拝が絶えない八重垣神社のすぐそばに、もう一つの干し柿加工場がある。
 
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こちらは、あんぽ柿である。
 
あんぽ柿と言えば、福島県伊達産が有名だが
ここ島根県でも生産されている。
 
 
やはりこれも西条柿を一つずつ丁寧に皮を剥き、
乾燥機を使って水分を30%くらい飛ばす、
少しウエットな状態で中がトロッと溶け出るようだ。
 
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気が遠くなりそうに丁寧な処理と扱いには恐れ入る。
 
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しっとりと柔らかいタイプと言える。干し柿好きにはたまらない一品
   
日本人は古くからこんなに上品で甘いデザートを食べてたんだ。
 
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どれも手作業であることについては変わらない
 
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JAくにびきは、本当に生産者のために販路開拓に努めている。
 
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商品の特徴を熱心に説く担当者の目はキラキラ輝いている。
 
きっと生産者目線で日々考えている頼もしいJAに違いない。  
 
 
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澄んだ青空と、深い緑の大地、そして干し柿の琥珀色。
 
 
今年の印象深い配色の里山の姿を振り返ってみた。
 
 
 
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秋色に染まる台北で研鑽に励む日本の農業支援者と出会い、大いに刺激を受ける

日本で大きな被害をもたらした台風26号の影響で
台北も終日雨に見舞われた後、この日は気温が下がった。
 
寒さに弱い台北の人は、冬の出で立ちのように厚着をして
街を歩いている。
 
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もっとも僕は半袖のポロシャツのままなんだけど。
 
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郊外の基隆山もすっかり秋の気配だ。
 
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台北では、九州を拠点に農業支援活動に従事している
Sさん、Tさん、Hさんと合流。
 
この3人は、農業・農産物流通支援のプロフェッショナルで
海外展開支援についてもかれこれ10年に及ぶ経験を積んでいる。
 
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その上に立ち、これからは単なる一方的輸出ではない、
日台双方の農業生産者に共にメリットが生まれる
競合ではない共働・共生のモデル構想を実現すべく、
そのためには自分の言葉でのコミュニケーションが不可欠と一大決意。
 
10日間の時間とコストを投資して
中国語習得と台湾の文化や流通理解のために台北に滞在している。
 
 
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台南・関仔嶺産のポンカンがお目見えした
 
 
自らで定めた夢や目標を持ち、
常識セオリーという名のおのれの壁を破って
学生時代に戻って缶詰勉強したり、見聞を広めるその表情は
イキイキ、ワクワクそのもの!
 
やる事が目の前に次々と拡がってきて
時間があっという間に過ぎて行くのが見て取れる。
 
 
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台湾でも秋の味覚の代表のひとつ 柿。 かつては日本からも盛んに輸入されていたが、今では台中和平区にある摩天嶺産のブランド柿の登場で苦戦を強いられている
 
 
僕は、このハングリー精神のような活力元気を
これまではアジアの人たちから感じていたのだが、今は逆転。
 
 
どっこい日本人も、アジア新興国の人たちと変わらない
自分で考え、行動する、強力なチャレンジャーたちが輩出している。
 
 
Dsc05227台北の乾物問屋街のニンニク専門卸の店頭で
 

京都市から3時間のちりめんの里で、前のめりの人たちと熱い出会いがかなった

この間、関西と関東に出張していました。
県名で言えば、京都、東京、神奈川です。
 
 
はじめに訪れたのは、京都府の京丹後市
 
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日本海側に面している風光明媚なところで
西隣りはもう兵庫県境。
 
城崎温泉と言えば知っている人も多いだろう。
 
 
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京丹後市 峰山付近
 
 
京都市からは、まだ高速道路が貫通していないので
車で3時間以上もかかる。
 
この街にも今年もう2度目である。
 
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際立つ山海の景観もさることながら
ここで生産に励む人たちの気質、人情が
とても素晴らしいのだ。
 
新しいことにチャレンジする精神、
広い好奇心、そしてとても楽観的な人が多い。
 
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この日は、そんな地元京丹後市や与謝野町、綾部市などから
台風襲来間近だというのに生産者や支援者の方が集まってくださり
情報交換をさせて頂いた。
 
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会場となった吉翠苑
 
 
丹後と言えば、高級絹織物の丹後ちりめんがあまりにも有名だが、
食味優れる米、梨、京野菜、畜産乳製品、農産加工品、豊かな水産物などに携わる元気な生産者の皆さんと交流が実現した。
 
 
 
夕刻の帰路、与謝野町、天橋立のある宮津市、京丹後市を通って
京都の町に戻った。
 
 
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僕は素材としてのシルクに、今とても興味を持っている
 
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高速道路がまだ完成していない区間の
京丹波にある道の駅では、秋の産物がたくさん。
 
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地域ブランドの先駆けとしての存在感。
 
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京丹後の顔の見える生産者の皆さんの前のめりの表情、そして
甘辛い味付けのサバのそぼろが散りばめられた
丹後バラ寿司のお弁当のふくよかな味が忘れられない。
 
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中秋の名月二題

旧暦の8月15日は、日本ではお月見(観月)
中華圏では中秋節といって日本以上に盛大に祝う。
 
今年は9月19日がちょうど中秋にあたる。
 
 
香港では公休日が1日ある。
 
広東式の月餅を贈る習慣がある。
 
 
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広州の蓮香楼という老舗レストランのものが特に有名で、
このシーズンに広州や香港に出張すると
缶入りの月餅をあちこちから頂くことになる。
 
 
これがまた、持って重たいし、
食べると日本人には喉につかえるほどずっしりとヘビーで
正直いくつか溜まると処分に困る代物だ。
 
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皮にも餡にもラード(豚脂)や砂糖が入っているからね。
 
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夜空にぽっかり浮かんだ満月に見立てて
 
 
それでも香港にいた16日には
半島酒店(ペニンシュラホテル)の月餅は、すでに売り切れていたし、
兄弟ホテルの九龍酒店(カオルーンホテル)でも
引換券を持っている人優先の人気ぶりだった。
 
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(この二店は確かに日本人でもファンの多い月餅だ)
 
 
 
翻って台湾。
 
 
今年は前週の土曜日を振替出勤にして
中秋から4連休にするほど盛大に祝う。
 
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台湾式の月餅は広東式と異なり
皮がサクサクした感じで、
緑豆や肉みそのような餡が入っている。
 
 
この日も商談の場で台湾式月餅が登場した。
 
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皮がポロポロこぼれて食べにくいのが難点だが
これも香港同様、お節句の大事な食文化だ。
 
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露店でもあちこちで売られている
 
 
ちなみに、台湾では、中秋節にはもうひとつ欠かせない果物
文旦(ザボン)がある。
 
 
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特に台南の麻豆産や新北市の八里産、花蓮の鶴岡産などが
よく知られている。
 
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八里の文旦農園で 2012年5月
 
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僕は中秋前日の18日に香港台湾を離れたが
巨大台風が接近していた。
 
 
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みんな満月を愛でることが出来たのだろうか?