JAの新たな挑戦

福岡県のほぼ中央、JA筑前あさくらで農産物の輸出に関する講演を行った。
この3年間、同様のテーマで、26ヶ所の農業組織や団体で話題を提供したことになる。
海外での販路開拓のためには、海外で活動するだけでなく、
「国内の生産地・流通を巻き込む大きなうねりを作り出すこと」
これが私の大原則である。
asakurakaikan
今回は、ナシ部会の総会の後での講演ということで、
多くの生産者の皆さんが集まった。
nashi
輸出のために展示される福岡のナシ
昨年、4度にわたる台風が原因で、
生産・出荷にも大きな影響が出たこともあり、
総会では、厳しい経営環境に対する深刻な意見が飛び交った。
その厳しさたるや、改めて認識を深くする…。
このような光景は、この地域だけでなく、またナシだけでもなく、
すべての農産物で見られる、まぎれもない現実だ。
nashibukai
JA筑前あさくらと言えば、
農産品の輸出では、九州でも特筆すべき農協のひとつである。
それは、さかのぼること13年前、
福岡県が、初めて香港市場に向けての産物を定期的に輸出する事業を始めてから、
これまでずっと輸出を維持、発展させてきた農協だからである。
全国的にも知られている「博多万能ねぎ」は、ここが開発したものだ。
bannnohnegi
博多万能ねぎは、いまや香港では、
一部の地元スーパーでも見かける定番アイテムになっている
かつて、薬味用の小ネギは、香港では野菜を買った客に、
八百屋が、香菜(シャンツァイ)と共にタダで付けてくれる「景品」商品だったのだ。
(今でも台湾では、その習慣があるため、なかなか高級野菜として認知されていない)
しかし、JA筑前あさくらの担当者は、10年余りの奮闘の末、
「景品」から一気に定番野菜へと地位を向上させたのである。
日本全国にも普及させ、また同時に香港でも実現させるという、
この執念と努力にはとにかく敬服するに値する。
また、日本一の生産量を誇る甘柿(富有柿など)もこの地域の特産で、
数年前までは台湾向けに輸出され、好評を博していた。
2時間近くにわたる私の講演にも、
誰一人として居眠りする人は見かけられず、
改めて生産者の真剣さに身の引き締まる思いがした。
講演終了後、
3年間お付き合いさせていただいている手嶋なし部会長が
「今年はなんとしてでも、我々のナシをアジアへ輸出したい!」
という決意をこめた言葉が印象的だった。
「販売の現場」と「生産の現場」
この双方の厳しい現実から眼を離しては、真実は見えてこない。

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。