(前回より続く)
生活あれば、そこには必ず食がある。
萬華の裏通りにも、オープンな「食世界」が広がっている。
暑い日中、スイカが旨そうだ。
台湾庶民の味といえば、お粥も筆頭格。
僕は、台湾では芋粥か海鮮粥が好き。
麺類だって、負けてないぞ。
路上でオジさんがネギを洗っている。
熱々の胡椒餅(焼いた肉まんのようなもの)を作るんだ。
一人前ずつ丁寧に作らせていただいてます…。
昔、クーラーが珍しかった頃、香港や台湾、中国の食堂で
よく「冷気開放」の文字を見たっけ。
「空調完備」「室内冷えてます」ってな感じかな。
素食とは、精進食(ベジタリアン)のこと。
でも、
その隣にステーキ(牛排)屋が並んでいるところがなんとも台湾的。
台北の下町でも日本食は奮闘しているぞ。
屋台ではなく、「野台」の方が、ここではしっくりいくのかな?
結構な人気だナ。一体どんな麺なんだろう?
独り宴(うたげ)の後だろうか…。
こんなもんで顔をしかめちゃいけません。
食べ物ばかりに気を奪われていると、
なんだかお腹空いてきちゃったな。
萬華といえば、かつて何度か足を運んでいる
僕の行き着け(実は大したことない)のB級グルメの殿堂がある。
その名も「原汁 排骨大王」サマでなのである。
通りに面しただけのいたってシンプルな店構えだが、
多くの台北市民と僕の心を捉えて離さない。
言ってみれば、シンプルな豚のスペアリブと大根の塩味スープなんだが、これが絶品なんだ。
溢れんばかりのアツアツのスペアリブ(排骨)と大根が
薄味ながら雑味もなく、どこまでも深みのある旨いスープが鼻腔を興奮させる。
見た目はシンプルだが、きっと相当の技術が裏打ちされている…。
誰もがそう思う味。
モノの本によると、
鄭有進さんという通称「しんちゃん」が、父が屋台から起こした店を継いで1947年にこの場所に構えたそうである。
出典:「台湾好吃大全」(新潮社・平野久美子著)
今日もいたいた、しんちゃんが。
表で接客している時は、他には無いと言うような満面の笑顔なのに
スープが切れそうだと感じるや否や裏口に回り、次の準備に取り掛かる。
僕も後をつけて裏の調理場を覗いてみたら、
やっぱり職人しんちゃんが鋭い目ヂカラを発していた。
「スープこそ命」。そんな気合が伝わってくる
台湾では、会社も人も、外見だけで判断しちゃいけないよ、ってよく言われるが、やはりそのとおりでした。
今日も、変わらぬ味で、本当に美味しゅうございました。
ありがとう、しんちゃん師匠!
(次回に続く)
田中 豊
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