緊急事態に翻弄される対外貿易

  

属する貿易団体から、緊急のニュースレターが届いた。

  

経済産業省貿易経済協力局からの通知で、
11日、政府が「北朝鮮による核実験に係るわが国の当面の対応について」を発表し、その中に北朝鮮からの全ての品目の輸入を禁止するという措置が含まれている。

この措置は、今日13日に外為法第10条に基づき閣議決定され、明日14日から施行される予定だ。

詳細については、同省のホームページに掲載されることになっている。

  

措置の主な内容として、

○北朝鮮からの全ての貨物について、経産大臣の輸入承認義務が課せられることになり、輸入が禁止される。

○北朝鮮から第三国へ輸出される仲介貿易取引や承認を受けずに行う輸入貨物代金の支払いも禁止される。

また、施行日以前に交付された輸入承認の取扱いについても別途規定が盛り込まれる。

今回の北朝鮮による核実験は、唯一の被爆国であるわが国としては断じて容認されるべきものではない。それはわが国に近かろうが遠かろうが関係はない。人類存亡の問題でもあるからだ。

  

核問題に対してわが国、我が国民が敏感に反応するのは当然のことである。

  

民間貿易取引は、原則的には平和と安全保障が前提として行われる経済行為である以上、これが脅かされることがあれば、政治上の理由で制約が加えられることは覚悟をしておかなければならない。

  

国際貿易では市場原理だけでなく、政治問題や様々な天災・人災が原因で予測もつかない事態に急変することが時々起こる。

最近でも、9.11テロSARSの流行で身動きすら取れない経験をした記憶はまだ新しい。

  

私も業務上関係している農水産、食品、繊維、建材の業界では北朝鮮と何らかのつながりがあるはずで、企業によっては取引中断や制限、逆に他国へのシフトや調達奔走など、逆風や特需に追われているはずだ。

前世紀までは中国をはじめ、主に社会主義国とのビジネスは常に政治問題に翻弄され、私も何度か修羅場を経験してきた。

  

新内閣発足直後、様々な波紋を呼んでいる今回の核実験問題だが、平和を前提とする貿易立国に住む国民のひとりとして、この事態に対して毅然と立ち向かうことが求められている。

  

同時に、したたかな国際派ビジネスマンなら、当然、世論やマス報道だけに目を奪われるのだけでなく、次ぎの展開、またその次ぎの展開を見据えた変化を先取りするイメージを持ち、アクションを起こしおかねばならない事は言うまでもない。

    

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。

“緊急事態に翻弄される対外貿易” への4件の返信

  1. やっぱし、プロはちがうなあ。今回の事態は長期化することが予想されるので次の次の対応策をしっかり考えておかないといけないですね。

  2. luckymentaiさんいつもコメント感謝しています。
    お察しの通り、長期化した場合の対応という意味がひとつと、第二次大戦の時のヤルタ会談のように、終戦処理ではありませんが、この地域の情勢が安定という方向に一変した時にすぐにビジネスに走れるように今から手を打っておく、という二つの意味があると思うのです。
     仮定ですが、そうなると日本海を取り巻く地域のビジネスや人的交流は一変するのではないでしょうか。

  3. 北朝鮮に行きました

    2000年7月、北朝鮮に行きました。百聞は一見に如かずですね。ニュース見ててもあまりに情報が少なくてピントがずれてるんで、ブログを書く気になりました。

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