ここ数日、中国内で日本製の化粧品や食品に有害物質が検出されたということで当局の検査が強化されているという。
実際に通関に時間がかかったり影響も出始めているようだ。
日本国内の報道では、この原因は今年5月の日本の使用農薬のポジティブリスト制への移行に伴う規制強化に対して、中国側がこの措置は形を換えた非関税障壁であるとして報復措置に出たもの、との見解がもっぱらである。
確かに、中国当局が規制を強化する背景には必ず何らかの意図が働いていると考えられるのも無理は無いが、我々は冷静さを失っては却って問題を複雑化させる。
農産物や食品貿易における日本の規制強化やネガティブ報道は、実は私が中国ビジネスに関わってからも数多く経験している。1980年代にも輸入が急増した中国茶の中にダニの死骸が異常に含まれているという報道やコメ不足のときにタイ産米にも同じように報道され、交易に大きな影響を与えた。
最も大きかったのが2002年の中国産ほうれん草に残留農薬が検出されたとの報道をきっかけに、日本中の世論が「中国産は汚染だらけ」の大合唱となり、検査が大幅に強化された結果、中国からの輸入が大幅に落ち込み、現在もその余波が続いている。
確かに、急成長する中国において食品に対する管理がずさんとなり、国内外で問題が噴出していることは事実であるが、中国当局がまったく放置しているわけではなく、また、日本向け輸出の大きな担い手である日系企業もかなりの負担をしながら、ここ数年改善に乗り出している。
ある意味では、残留農薬問題をきっかけに、中国における対日向けの食材では、近代的食品管理や有機・減農薬農業などが急速に普及していると言う皮肉な結果すらあるくらいである。
しばらく消費者はそっぽを向くだろうなどと安心するようでは先が思いやられる。
この種の問題は、一部のネガティブなとらえられ方をして、正常なビジネスに大きなコストや負担、制限が加えられてしまうことである。
これは国際交易の局面では、長期的に観れば決してプラスに働かない。
数日前も、テレビの人気女性キャスターが、何の脈絡も無いところで「農薬汚染がひどい中国産の農産物云々・・・」など平然と形容詞をつけていた。
また、中国の農業事情を取材するに当たって、衛生状態の悪い栽培現場を撮りたいので探して欲しいなど、初めから結論ありきの偏向ともいえる要求をされることも多い。
世論が求め、大衆が歓迎する方向に報道が移ろって行くのは理解できないわけではない。しかし、あまりに極端に走ると却って国益を失うことになることを知るべきである。
これは日中双方に言えること。
冷静に対応しないと現実離れした問題に発展しかねない。
もうひとつ、私のこれまでの経験から、ネガティブキャンペーンをしてみても最終的に勝利することは無い。短期的には得をしても、大きな潮流の中で根本解決することは無いからである。
攻めの姿勢で、堂々と渡り合うほうが絶対に強くなれる。
20年前、あれだけウーロン茶ブーム、紅茶ブームにさらされ、危機的状況とまで言われた日本茶の業界も、今はどうだろう。国内ばかりでなく、東南アジアやアメリカでも人気を呼び始めている。
今回の化粧品・食品の規制強化を動きを注意深く見守っていかねばならない。
田中 豊
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「我々は冷静さを失っては却って問題を複雑化させる。」・・・いい言葉ですね。
国と国との間でももちろんですが、メディアはその影響力の大きさを考えて慎重に対応すべきですね。
最近民放は特にとんでもないアホなキャスターや俳優の無責任な言動が多すぎるような気がします。
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