佐賀の挑戦

佐賀県が、上海・青島から食品バイヤーを招聘し
県産農産物の輸出振興のための現地視察を行なった。
同県は、米(もち米)、麦(ビール麦)、大豆などをはじめ
たまねぎ、アスパラ等の野菜は日本ランキングレベル。
かんきつ、梨、イチゴなどの果実も有名で、
ほかにも佐賀牛、嬉野茶など
いわゆる「実力派」商品を有する九州屈指の農業県である。
視察では、神埼地区のイチゴ・アスパラガスの産地を訪ねた。
佐賀では、いま「さがほのか」「さちのか」を主力に
イチゴ栽培にも力を入れている。
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ちょうど最盛期を向かえ、
最新鋭のセンサーによる選別・パッケージラインのフル稼働の様子は壮観だ。
大粒で真っ赤なイチゴが一粒ずつベルトコンベアーで選別されていく様子は中国からのバイヤーも驚いていた。
国内はもとより海外に向けても、
イチゴを中国本土へ輸出することを
最大の目標としていることからもその熱意が伝わる。
佐賀県は昨秋から、
青島と大連に向けてナシの輸出も始めている。
山東・遼寧省といえば、中国でも指折りのナシの産地。
そのお膝元ともいえる青島で、
大玉2個で約2700円相当の贈答用ナシ等を含め
日本からコンテナで持ち込んだ8割を売り切ったというのだからスゴイ。
その青島の大手日系スーパーの総経理は、
当初、「まさかここまで売れるとは思わなかった…」と
小声でチラリ。
現地のプロも驚くジャパンブランドの威力は
想像以上かもしれない。
輸出の試験地となったJA伊万里を訪ねた。
不安も多い輸出事業だが、担当者のチャレンジ精神は旺盛だ。
伊万里港も大連港との航路が開設し、
物流からの支援も整いつつある。
今回、果実を味わうことが出来なかったが
ハウスの中では、ナシの花がとても美しかった。
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会場を佐賀市に移し、
東京から農水省の輸出担当室長も招いて、セミナーを開催した。
室長のほかに、上海・青島のバイヤーからそれぞれ
現地最新情報も報告され、たいへん熱の入ったものとなった。
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夜は、地元大手ホテルの料理長が提案する
佐賀県農産物を使った料理のプレゼンテーションが行なわれた。
とても斬新な企画で、
地元で採れたての野菜や肉、海苔などを素材にした
前菜やメイン、スープが、また果物を使ったデザートなど数十種類に及ぶレシピが提案された。
どれも秀逸・ユニークなものばかりで、とても面白いのだが、
これは佐賀県のノウハウなので、残念ながら詳細をご紹介できない。
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産地を訪れ、商品の持つ素晴らしさを知ることも当然大切だが、
「どのようにして食べるのか」という提案
販路開拓にはとても重要だ。
特に、海外で野菜を売る場合には必要だろう。
あっという間の3日間であったが、
中国からのバイヤーもたいへん満足し、
また多くの情報を持ち帰られることになった。
佐賀県は、知事をはじめ、県や市、
また農業団体が、輸出事業に対して極めて熱心な地域だと感じた。
それぞれの輸出担当者の理念は明確で、
何よりもスピード感ある行動で、実行力が高い
県連責任者の方が、

「輸出は、すぐに実績をあげるのは難しいが、
次の世代のために、今行動しておくことが
生産者のために何よりも必要だ。」

と語られたのには共感した。
言うのは簡単だが、組織の中で実行できる人は極めて少ない。
佐賀県の輸出事業に対する挑戦は、必ず実を結ぶことだろう。

朝刊の社説から農業を考える

31日付の日本経済新聞朝刊の社説を読んでいただきたい。
社説では、

日本の農業が存亡の危機にある現実を、いま一度直視したい。2003年の農業就業者368万人。このうち65歳以上の高齢者が56%を占める。耕作放棄地は東京都の面積の1.5倍に相当する34万ヘクタールに達している。農地の集約化が遅々として進まず、たくましい後継者も見つからないまま、日本国民の食を賄う農地が減り続けている。
食生活の変化もあり、1960年代に70%前後あった食料自給率(カロリーベース)は40%まで低下した。たとえ外国からの輸入を阻み続けることができたとしても、このまま放置すれば日本の農業は内側から崩壊してしまう。

と、指摘されると、
今、自分が関わっている日本の農業というものの問題の深刻さを
改めて認識してしまう。
さらに、

目指すべき方向は明らかである。高率関税による国内の農産物市場の保護と、すべての農家を対象とする補助金制度から早く脱却し、効率的・安定的に農業経営する「担い手」に支援策を集中する新しい農政の枠組みを作るべきだ。

と、提言している。
社説全編を通じて、
一旦進みかけた農業改革が挫折することに対する
強い危機感が感じられるのである。
国が保護してきた産業だけに、
改革も政府が、自民党が・・、などと言っていては、
問題は絶対に解決しない。
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がんばろう!ニッポン農業!
生産者自らが、地方自らが
立ち上がらなければ、前進しないのである。
でも、すでに、その兆候は、
あちらこちらで見られるようになった。
私は、
日本農業の輝かしい未来と可能性をハッキリと予感しており、
確固たる信念と自信を持っている・・・。

デパート催事から情報収集

福岡のデパートで「博多うまかもん市」が開催されている。
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福岡商工会議所の主催による
今年で23回目になる恒例の食品催事で、
和洋菓子、調味料、明太子、ラーメン、惣菜など
福岡の食品関連企業が多数出展している。
私は、九州の食材を
香港や台湾、韓国、中国へ輸出する
支援サポートをしている関係上、
どうしてもチェックしておかなければならないイベントなのだ。
海外の日系デパートやスーパーでは
頻繁に日本食品を集めたフードフェアを企画するからである。
「どうしたら九州や博多について情報発信ができるか?」
「注目されるフェアはどう演出すべきか?」
「フェアを通じて消費者ニーズを調査したり、
掘り起こすためにはどうしたら良いか?」
など、テーマや仮説を持ちながら、観て廻るのである。
輸出の安定化のためには、一時のお祭り騒ぎではなく、
定番商品として日常的に売り場において頂くことを
最大目標にしているが、
海外催事も、市場開拓のためには
有力な戦術のひとつとなっているのだ。
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台湾での食品フェアの筆者。自らハッピを着て売り場に立つことも…
正月も明け、次のバレンタイン商戦までのこの時期、
やはり目に付いたのは、
「イチゴ」を食材として
和洋菓子メーカーはいろいろ工夫していることである。
海外でも日本の農産物を売る場合、
ただ商品を並べただけでは
売れ行きにも限界がある。

「新しい食べ方の提案」
がなされていなければならない。
また、福岡の主だった有名ホテルの
デザートや惣菜の出展が目に付いた。
ホテルも、新しい販路開拓にチャレンジしている様子がわかる。
国内、しかも地元で開く食品催事と
海外で行なう催事とでは
商品扱いから企画、運営に至るまで
異なることも多いが、
「定番輸出を目指すためにも、
近いうちに必ずこのような人気催事をアジアでも実現してみせる!」
と秘かに誓うのであった。

台湾に売り込んだビッグプロジェクト

今年10月開業を目指す
台湾版新幹線(台湾高速鉄道)の試運転が
27日から始まった。
日本の新幹線が、初めて海外に輸出された例として、
私も大いに注目している。
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(共同通信社)
日本のお家芸である
高い信頼性を持つ技術システムが
アジアへ輸出されること自体、
我々日本人からすると、
あまり驚くべきことではない様に感じるが、
同じく、日本製品や技術を
海外に売り込むコンサルをしている立場から、
その苦労たるや如何ばかりであろうかと、
思いを馳せるのである。
今でも現場では、運営上、いろいろなトラブルが続いていると聞く。
とにかく、日本びいきの台湾の人たちに受け入れられた新幹線。
日本企業側の直接受注額が5300億円という
ビックプロジェクトだけに、私も大いに勇気付けられる。
無事の開業を祈るばかりだ。