日本でわかるアジア人の嗜好

東京でまとまった数の外人に出会うとなると
少し昔までは六本木や品川など港区と相場が決まっていたが、
今確実に、しかもアジアの人たちと出会おうとすれば
秋葉原かアメ横に行くのが一番手っ取り早い

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桜の満開を過ぎた上野公園ではなく
フラリとアメ横に立ち寄ったら、
いるわ、いるわアジアの団体ツアー客や常住者らしき人たちが
大勢買い物をしている
ではないか。

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もしかしたら日本人より多いんじゃないかと思うくらいの比率だ。

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(立ち止まって観光ガイドブックで場所を確認)

耳を澄ませば、韓国語、広東語、台湾語、北京語、タガログ(フィリピン)語、タイ語が聞こえてくる。

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それにしても旺盛な購買欲だ。これは最近、上海やバンコクなどの食品スーパーで見た光景とどこか似ている

変な人だと思われないよう彼らが何を買っているのかをコッソリと観察する。

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宗谷産干し貝柱、ドンコ椎茸、水産珍味、ワサビ味の豆菓子、うなぎ蒲焼、タラバガニ、イクラ、イチゴ、健康茶などを買っている。

海苔屋では、台湾人と思われる若い女性の二人連れが、家で寿司を作りたいからと英語で交渉して、寿司用海苔をまとめて数帖買っていたのにはビックリした。寿司がアジア人家庭にも入り込んでいるのだ。

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(家庭で寿司を作るらしい・・・)

ほかにもいろいろ興味深い消費行動をしていたが、 紹介はいずれ別の機会で。

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(電卓片手に値切り交渉は当たり前)

またここでは、食品だけでなく時計やアクセサリー、化粧品、薬品、ハローキティーのキーホルダーや携帯ストラップなども売れていた。

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何もいちいち海外に行かなくても、日本国内でテストマーケティングをしているようなものだ。アジアの華人や韓国人がどんな日本食材を求めているかを知りたければ、一度アメ横に行ってみることをお勧めする。

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FOODEX JAPANでもニッポンを売る

14日から千葉県幕張メッセで
第31回国際食品・飲料展(FOODEX JAPAN 2006)が開催された。

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(会場エントランス)

期間中、10万人に迫る動員を誇るこの商談会は、世界三大国際食品展のひとつにも挙げられている。

思えば、今から22年前、私が北京に駐在していた当時、中国の食品貿易の唯一の窓口商社であった中国糧油食品進出口総公司から
「日本で事業効果の高い食品展示商談会に出展したい」と言われ、このFOODEXを紹介し、日本の主要輸入商社が共同で受け入れ体制を整えて、初めて中国ブースが実現したときのことを懐かしく思い出す。

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(今年の中国ブース)

久しぶりに中国食品館を視察したが、中国全土から出展者を集め、一大勢力となっていた。

て、ここでも初めてFOODEXにブースを展開した新コーナーがある。
それは、まさに「日本食品の輸出促進コーナーである。

「ニッポンを売る!」アクションに携わる者としては、とても嬉しいことだ。

ジェトロ(日本貿易振興機構)農水産課がプロデュースするもので、和のひろば」と称する一角にセミナー会場と輸出に挑戦する全国24団体による商品展示コーナーを設け、日本食品を海外に発信するブースがここに誕生した。

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(日本食品輸出促進コーナー)

私もジェトロの要請を受け、会期中、セミナーのパネリストと参加全ブースへのアドバイス活動を行なった。

食品輸出セミナーでは、台湾、香港、シンガポール、タイのバイヤーも登壇し、各地のマーケットや日本食品の販売事情などを紹介した。

日本食品がすでに定着しつつある香港・台湾とこれから次の可能性を含むシンガポール・タイ、そして誰もが関心を持つ巨大市場-中国のマーケット比較は、参加者の貴重な参考になったと思う。

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(日本食品輸出のパネルディスカッション風景)

展示ブースでは、北は青森から南は鹿児島まで、全国の食品企業や団体がバイヤーとの出会いや情報を求めて積極的にプロモーション活動を行なった。

すでに輸出実績の豊富な青森県の農業法人(リンゴ)や静岡県の製茶企業(緑茶)、各地の酒造メーカー(日本酒・焼酎)も参加し、さすが販促活動に習熟しているなといろいろ勉強になった。

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(経験豊富な出展者のブースには何故か次々と有力バイヤーが現れる・・・)

ただ、ほとんどの出展者が、輸出については初めての企業が多く、「どうしたら一歩が踏み出せるか?」「安心できるパートナーを探したい」という点で試行錯誤しているようだった。

海外の商談会では、来場者が当然、海外企業バイヤーばかりなので、一見、ストレートに商談や情報収集につながるように思われるのに比べ、FOODEXとはいえ日本での商談会では日本人の来場者が多く、外人バイヤーが少ないことが物足りないように感じられる向きもあるが、特に地方の企業にとっては、実は必ずしもマイナス点とは言えない事実もあのだ。それは輸出を始めてしばらくすると自ずと判ることである。

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(NHK「経済最前線」クルーも取材に来場)

しかし、今回は初めての試みったこともあり、輸出促進のブースであることの演出やより効果あるビジネスマッチング実現のための改善点はいくつかありそうだ。

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(輸出促進ブースにも多くの来場者が集まった)

とにかく、日本食品輸出促進コーナーが、このFOODEXでも中国館同様、近い将来、この巨大会場にあって、一大テーマ館を構成できるよう、今後の展開を期待している。

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(今年のFOODEX会場遠景)

毎年好評の食品ビジネスイベントが開催される

る3月20日、福岡市で「FOOD2006 in FUKUOKA」が開催される。

この事業は、福岡市福岡商工会議所、(社)福岡貿易会ジェトロ福岡貿易情報センターの4者で構成される「福岡アジアビジネス支援協議会」が主催するもので、在福岡の各国貿易代表機構も後援している。

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今年の事業は、中国、イタリア、カナダ、タイ、台湾、韓国、シンガポールから50社近くの企業が集まり、品質や価格、安全性などに特徴ある食品・食材を展示商談する「新食品・食材商談会」とその食材を用いてプロの調理人がアイデア料理を競うキッチンデモンストレーションが目玉の「福岡対話」の二つのイベントで構成される。

実はこの福岡市のFOOD事業は、過去6回にわたって毎年開催されており、すでに圏内の食品関係業者の間ですっかり定着した評判の事業なのである。

その理由は、第1回目からこの事業は、「個性も特徴もない商談会やセミナーにしない!!」「出展者にも来場者にも役に立たない、主催者の独りよがりのイベントにしない!!」というスタッフの強い意志があった。

東京や関西と異なる九州圏の食品企業のニーズを事前に徹底的に調査し、日本側需要家が求める商材をアジアの各企業に準備してもらうことと、福岡対話と称するシンポジウムでは、その時代の半歩先ゆくテーマ、たとえば、輸入食品の安全性、ITと食品、地場食品の輸出などを常に情報発信し続けてきた。

今年もアジアを中心に、欧米企業も一堂に会して、個性ある新商品を出展提案してもらい、食べ方のレシピも実演で提供するという新たなコンセプトで「食都福岡」「食品ビジネス拠点都市―福岡」を情報発信する。

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毎年毎回、進歩・進化する今年の事業には、すでに過去最高の来場希望者のエントリーが事務局に寄せられている。食品関連の企業、企画関係の方は、ぜひ参加されることをお勧めしたい。

開催日: 3月20日(月)
会 場: ソラリア西鉄ホテル8階大宴会場「彩雲」

プログラム:
「新食品食材商談会」 10:00~18:00
「福岡対話」キッチンデモンストレーション 10:30~16:00

参加: 無料

申し込み・問い合わせ:
福岡商工会議所経済部国際センター
TEL:092-441-1117  FAX:092-474-3200
E-mail:kokusai@fukunet.or.jp

正月商戦

日本ではとっくに終わった正月だが、
アジアでの多くの国が昔の陰暦(農暦)を用いた旧正月を祝うところが多い。

中国をはじめ、台湾、韓国、シンガポール、ベトナムなど数多い。
中華圏ではこの旧正月を春節、韓国ではソル、ベトナムではテトと呼ぶ。

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(中国の正月飾り)

月の満ち欠けを基準にする太陰暦だから、いわゆる太陽暦の一年とずれが生じるので、毎年カレンダー上では元旦が変わることになる。

今年の旧暦元旦は、新暦では1月29日となり、この前後が正月休みとなる訳だ。

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(中国の南方では、日本の門松のように、めでたい金柑を飾る)

この正月休みに合わせて、ボーナスや祝い金などがでるから
旧正月前のひと月位がいわゆる歳末商戦となり、
一年で一番、消費者の購買意欲が刺激される期間となる。

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(会社でも金柑やポチ袋が飾られる-台湾のオフィスで)

家庭や職場の正月準備はもとより、贈答の習慣もあるため
高額なギフト商品もこの時期良く売れる。

香港・台湾をはじめ、東南アジアの大都市でも
当然、日本食品は好んで選ばれるから、
どうしても高価になりがちな日本製の輸出食品は、この時期に販売するのが得策でもある。

日常売られている商品なら押しなべて何でも良く売れるが、
この時期に特に良く売れるものがいくつかある。
でも、これは輸出に真剣にチャレンジする人が得られるノウハウでもあるから、残念ながら、ここでは紹介できない。

また、パッケージの色やデザインの工夫をすると売り上げが変わる。
買ってそのままギフトとして使える凝った包装の商品は人気が高い。

パッケージのデザインについては、現地の嗜好に合わせて改良すると売れる場合と日本のものをそのまま用いた方が、いわゆる「舶来信仰」を刺激してよく売れる場合があるから、一概にどちらが良いとは言えないのである。あまり精巧に現地化したパッケージにすると、折角の日本直輸入のテイストが失われる場合があるから注意が必要だ

ある食品などは、この春節商戦で一年のほとんどの売り上げを稼ぐから、バレンタインデーのチョコレートやクリスマスケーキよろしく、売る方は当然真剣勝負なのである。

今年は、アジアが全般的に景気回復基調にあり、各都市で例年になく売り上げが伸びているようである。

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世界の注目集まる香港で

WTO閣僚会議を13日に控えた前週、会議の舞台である香港に立ち寄った。

世界が注目する会合だけに、香港のホテルも日本からのフライトも予約が困難を極めるほどの満席状態だった。

香港の街はすでにクリスマスのデコレーションで、いまや有名になったビルの電飾も相変わらず美しい。

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(いまや名物となった香港の電飾)

年々センスが良くなっているのがわかる。セントラルの一角にもクリスマスの装飾が施され、若いカップルなどで賑わっていた。

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商業施設もすっかりクリスマスモードである。一部バーゲンも始まっており、ここ数年に比べ、明らかに景気が上向いていることが傍目にも伺える。

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(香港でもクリスマス商戦が)

私たち一行が搭乗した福岡発香港行きの便は、実は今年初めて福岡の戦略商品であるイチゴの「あまおう」の香港向け第一便が搭載された便でもあった。

このあまおうは、日本国内市場でも、最も高価で取引される「美人系」のイチゴで、一昨年は香港向けに1.4トンの輸出を実現し、昨年度は台湾向けも併せて23.5トンと、なんと一年で16.5倍に増えたのである。

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(今年香港向け第一便の福岡産「あまおう」)

今冬は、産地や試験場、現地バイヤーとの協力関係も強化され、科学的分析を通じて、輸出を意識した商品作り、包装の改善、マーケティングミックスなど新たな取り組みにも挑戦している。

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(鮮度保持のための新工夫が施されている) 

この中心的役割を担っているのが、福岡県農政部の「福岡・食の輸出促進センター」である。常に難題に取り組む情熱は並大抵のものでない。今年初めて、困難といわれる上海向けの梨の商業輸出も実現した。生産者と共に行動する姿勢は、ひとつのモデルと呼ぶにふさわしい。

福岡から香港向けの農産物は、空港に集荷された商品が朝一番で通関を済ませ、午前の便に乗せられ、香港到着後、空港からそのまま売り場に並べられるので、当日午後5時に、香港の消費者は手に取ることが出来るのである。これは、トラックで福岡から東京に運ぶより一日早いこととなり、生鮮農産物の輸出には非常に有利である。

この日も、空港到着後、早速高級デパートに並べられた。
ひとパック79.8香港ドル(約1300円)という値札がつけられたが、私の見ている前で、香港人らしきご夫人ふたパック、サッとかごに入れてくれた。

何度この光景に遭遇しても、やっぱり信じられない想いであると共に、心の中で「毎度ありがとうございます」と頭を下げていた。

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(お買い上げありがとうございます…)

3年前、自分をだますつもりで、「とよのか」イチゴを香港の店頭に並べて頂いた時のことを思い出した。
それがこんなに短期間で、これから迎えるクリスマス、旧正月、新年商戦における青果売場のメイン商品のひとつにまで成長するとは思いも寄らなかった。

事実は常に想像を超えている。
もちろんそれを実現するのは、一人ひとりの人間の信念と行動である。

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(庶民の果物屋(旺角地区)でも正品のあまおうが約1600円売られていた。驚いた)

愛媛で農産物輸出を考える

愛媛県松山市で、(社)愛媛県産業貿易振興協会、ジェトロ愛媛貿易情報センター等の主催による「愛媛県農林水産物輸出促進セミナー」が開催された。

輸出セミナーは、昨年に続く2回目の開催だそうだが、70名を超える熱心な参加者を集めた。

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東京からジェトロ農水産部の石川総括審議役が、国の様々な施策や輸出事例などが紹介された。国の輸出事業推進の最前線におられる方だけに、貴重な情報を幅広く勉強できた。今後、東アジアだけでなく、インド、中東、欧州にまで、日本食の普及を目指すジェトロの意気込み熱く語られた。

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(ジェトロ石川審議役)

私が2番手に立った後、トリを務められたのは、島根県西部のJA西いわみの御手洗部長で、プレミアム米の台湾向け輸出の事例についての講演があった。JA西いわみの「ヘルシー元気米」の台湾輸出は、いまや伝説となりつつある成功事例として、小泉総理がアドリブで紹介するほどだ。

051215ja 中山間地の単位農協が、自力で無名の減農薬米を海外に輸出する挑戦は大きな注目を集めた。決して派手な語り口ではないが、人任せにせずコツコツと実績と信用を勝ち得ておられる経緯を説明された。いたずらに量を追い求めるのでなく、質を高め、息長く海外に販売することで組織が活性化し、地域が元気になるという大きなビジョン支えられた活動なのだ。

石川審議役も御手洗部長も、早くからお名前は耳にしていたが、対面が実現し、たいへん勉強になった。

松山といえば、漱石の坊ちゃん。そして道後温泉である。話を聞くと、韓国や中華系のツアー団体客が大勢温泉三昧にやってくるという。館内には、ハングルや中国語の表記がされていた。彼らもきっと愛媛産のミカンや水産物などの素晴らしさを体験していることだろう。

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(道後温泉本館正面)
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(館内の表示板。各国語で表記されている)

今回、松山を訪れるにあたって、もうひとつの楽しみがあった。

私の農業、ITの師匠である農産物コンサルタントの山本謙治氏(通称やまけん)が、親友のホリエモンこと堀江貴文氏と人気スポーツライター二宮清純氏の三人で、「愛媛じゃこ天ツアー」を敢行したときの紀行ブログを見て、ぜひ松山に来たらじゃこを味わおうと思っていたのだ。

良かったら、ぜひ氏のブログをご参照いただきたい。きっとじゃこ天が食べたくなるから…。ちなみに山本氏と二宮氏は愛媛県の出身なのだ。
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/06/with_1.html
(やまけんの出張食い倒れ日記)

私は今日まで、じゃこ天は、チリメンジャコを使って作られるものだとばかり思っていたが、現地に来てそれが間違いであることがわかった。「はらんぼ」と呼ばれるほたるじゃこという魚を骨ごとすり潰して油で揚げるテンプラである。

前夜、会席料亭で板前さんにわざわざ私の為に、揚げたてのじゃこ天を特別に作っていただいたのだ。もう感激、絶句であった。グルメブログでないので詳細は省くが、すり身独特の深い味わいで、瀬戸内の潮を香りを感じさせる見事な一品であった。

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(忘れられない愛媛の味)

ちなみに、香港をはじめ、東南アジア地域では、この魚肉練り製品はとても良く食べられている。もしかしたら、近いうちに、この愛媛のじゃこ天が海外でも味わえるようになるかも知れない。

東京での輸出セミナーに参加して

9日に、東京四谷 主婦会館プラザエフで、
農林水産物等輸出促進セミナーが開催された。

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(会場のプラザエフ)

これは農林水産省が行なう支援事業の一つで
今年度は、名古屋、札幌、宮崎、那覇など全国9箇所で催されている。

さすが東京だけあって、大勢の参加者を集め、白熱した雰囲気でのセミナーであった。

051211izumi セミナー冒頭で、農水省輸出促進室和泉室長が挨拶し、今年度は全国的な事業展開の成果が現れ始め、今年1~9月の輸出額は前年同期比+7.6%増の2,226億円のジャパンブランドの農林水産物が輸出されたという。

全国版のセミナーだけあって、講師も経験実績が豊富で、大変実務的で有意義な内容だった。

㈱ホクレン通商取締役の坂井紳一郎氏による香港向け輸出の実践論は、非常に参考になった。豊富な情報とそのノウハウの一部に触れるだけで、さすが輸出最先進地・・・北海道だと再認識した。輸出成功の王道は、自ら日々の努力の積み重ねであるという指摘は、本当に説得力があった。

もう一人の講師である㈱日通総合研究所町田一兵氏の講演も、物流を切り口にした対中国輸出のポイントについて勉強させてもらった。今後の市場規模には大きな期待がある中国大陸だが、物流と決済など多くの課題に目をそらすことなく、冷静にアプローチすることの重要性を改めて確認させられた。

後半のパネルディスカッションでは、講師おふたりに加え、東京海洋大学の櫻井研先生がコーディネーターを務められ、より内容が深められた。

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櫻井先生は、農産物輸出、国際マーケティングの権威であり、80年代からの農産物輸出の指南役として、国の事業にも精力的に活動されている。

櫻井先生の専門家2講師に対する「ブランドの本当の価値について」「メイドインジャパンであることの本質について」の問いと、総括における輸出事業成功の姿勢に関するコメントは、やはり問題の本質を理解している方だからこそのメッセージであったと思う。

東京だけあって、生産メーカー、団体、行政に加え、商社の方が多く参加しているのが、私の目には新鮮に映った。地方では、輸出事業に関心をもつ物流、商流の事業者がまだ十分でないところが多い。

事業面でも、行政面においても、東京と地方の連携をすすめることが大切なのかも知れない。

九州上海事務所が正式開業

再び上海を訪れた。

2週間ぶりなのに、朝晩はめっきり寒くなって、街行く人も冬の装いだ。

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(南京西路のブランド街で)

21日、上海市のホテル、花園飯店で、「九州上海事務所」のオープンを記念して、レセプションが盛大に開催された。

この九州上海事務所は、福岡県、北九州市、福岡市、九州電力の4団体による共同事務所で、自治体や企業が連携して、上海を基点に中国における情報収集や支援サービスなどを行なうもので、非常に画期的な取り組みといえる。

レセプションでは、上海市、江蘇省、連雲港市などの中国側来賓をはじめ、日本側は関係自治体の副知事や副市長等をホストに、総勢300人を超える招待客を集め、この種の式典としては非常に大規模なものとなった。九州のこれからの上海および中国に対する意気込みの強さが感じられる。

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式典での九州紹介のコーナーでは、福岡県をはじめ、沖縄県を含む九州全県の情報や物産・観光を映像を通じて紹介した。

あくまで「九州」である。観光や物産、企業誘致などを海外に向けてアピールするためには、やはり県境を越えた広域連携が不可避である。

特にアジアでは、北海道、東北、九州という名称の認知度が最近急速に上がっており、これを利用しない手はないのである。

もちろん、各県や市の担当者は、県名、都市名ブランドの売り込みに熱心だから、九州と**県、△△市などと巧く使い分ければよいのである。各自治体間の競争と連携は、今後、多様な展開を見せることだろう。

式典と併催で、「九州福岡産業観光展 in 上海」が開催された。

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上海からわずか1時間半という近さをもつ福岡の多様な観光、産業資源を紹介した。また、福岡県が重点とするIT、自動車産業、ロボット産業に関する展示も行なっており、来場者の注目を集めた。

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物産についても、地場産業の得意技を披露するものになっていた。博多織や久留米絣、日本酒、大川家具も、展示はもとより、ミスが笑顔で応対したり、販促マーケティング関係者が人脈構築や情報収集に取り組んだ。

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(博多織も中国への輸出を検討している)

加工食品も、日本酒・焼酎のほかに、和洋菓子、飲料、明太子、ラーメン、味噌、醤油など幅広い商品が紹介され、来場した中国人関係者の注目を浴びた。

「私たちで取り扱えないか」という引き合いが随分あり、反応の強さに驚いた。

輸出にかかわる煩雑な手続きなど、克服すべき課題は多いが、九州・福岡の産品の潜在的な需要があることを確認できたという点では収穫があった。

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(食品のコーナーは人で一杯)

会場では、招待者全員に化粧箱入りの愛宕梨(あたごなし)が配られ、大好評だった。一個1kgほどもある巨大梨だが、食味も食感も、そして見た目の豪華さも中国人の心を捉えたらしく、日本ブランドの実力を、ここでも確認することが出来た。

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(福岡の愛宕梨は大きくて歯ざわりが良いと大評判)

もちろん、この福岡産愛宕梨は、いま、上海の高級デパートでも高値で販売されている。

今後に向けて、手ごたえ十分だ。

守りだけで解決できるのか

「噂には聞いていたが、まさかこんなに早く動き出すとは…」

19日付の朝日新聞記事を目にして驚きを隠せなかった。

[農産物も“韓流” 九州向け輸出強化]

福岡市内に物流拠点開設

 韓国の農産地が九州のスーパーなど小売店との直接取引に乗り出す。来年早々にも拠点となる物流センターを福岡市内に開設。商社経由の販売方法を見直し、直接販売で物流費を抑え、価格競争力を高める

 慶尚南道などの自治体や第三セクターが具体的な販売ルートの開拓を検討中だ。パプリカやマツタケといった農産物を共同で借りるセンターにいったん保管して、小売店に配送する。福岡を拠点にした一般向けの通信販売も検討する。

 日本側で受け皿となる韓国貿易センターは「韓国産の場合、日本に届いてからの流通コストは小売価格の4分の1を占めるだけに、価格の引き下げは十分可能」とみている。

 食品の安全・安心をアピールするため、残留農薬検査なども徹底。生産農家をさかのぼって検証できるシステムを導入する案もある。

 04年に韓国から日本に輸出された食料品は1555億円に上り、うち九州は4割を占める。ただ、99年と比べると、対日、対九州とも約3割減っている。

 中国産品の輸出増や、種苗を日本から持ち出して栽培して、日本に逆輸入する「海賊版」への取り締まりが強化された影響という。

まだ、正式には具体的な事業は明らかにされていないが、
何らかの行動計画が練られているはずだ。

日本産農産物の海外輸出については、
やっとスタートラインにたったばかりだが、
いつも意思決定と行動が早い韓国の攻勢に対して
日本の関係者はどう対応するつもりだろうか。

福岡市に物流拠点を設けるというが、
これは福岡近郊の生産者だけでなく、
日本第4位の商業圏と呼ばれる福岡市場圏に出荷する
他県の生産者にも何らかの影響が考えられる。

また、今年からは、台湾からマンゴーなどの熱帯果実、
さらにFTAを締結した東南アジアなどの国々から、
検疫を通った様々な農産物が
今後、次々と日本市場に向けて輸出されてくるのである。

守りの姿勢、国内既存販路の強化さえ十分であればそれで良いという考えが、どこまで現実的であろうか。

地産地消を本来目的ではなく、
単なる排他的キャンペーンの道具として使うのであれば
需要家や広範な消費者からはいずれ支持されなくなるだろう。

韓国も、聞くところによれば、
中国産など諸外国からの安価な農産物の流入により
国内農業が打撃を受けており、
廃業・離農する生産者が増えていると聞く。

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(韓国のスーパーで)

また、日本などから無許可で導入した新品種などのコピー産品に対しても、国際的な枠組みに加盟したため、韓国当局が取り締まらねばならない事態も始まり、
窮余の策として、今から、海外へ向けての輸出の取り組みを模索しているのかも知れない。

中国などで開催される国際食品展での
大規模なプロモーション活動など
韓国の官民を挙げた積極的な活動は、
ここ数年、本当によく目に付くようになった。

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(2003年9月、中国上海で開催された国際食品展での韓国の巨大ブース。このとき、SARSが発生したとして、日本からの出展者、参観者はほとんどいなかった…)

このことは、
中国をはじめ、農林水産業を主たる産業とする国々でも
それぞれ内情は違っていても
海外輸出を強化する方向性には変わらないはずだ

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韓国とは、サッカー同様、日本農業にとっても
切磋琢磨しあうライバル(良く言えば!?)だ。

すでに私たちは、香港市場、台湾市場において、
安価で、しかも非常に近似した韓国産農産物と
厳しい「国際試合」を展開しているから、
およそ彼らの方法論、商品・サービスレベルは
すでに大方把握している。

050820taiwan台湾市場でも、
以前から、左写真のように
このような安価な韓国産甘柿と
“国際試合”をすでにおこなっているのである。

ほかにも、ミカン、イチゴ、ブドウ、梨、海苔、菓子など数え上げたらきりが無い・・・

サッカー同様、相手の戦術さえ知っていれば恐れるものなし。
むしろ堂々と戦うチームの方が強くなるのである

それにしても、日本産農産物の組織流通は、
もっと柔軟かつスピーディーな行動をしなければ
「大切なチャンス」を失うことになる。

宮崎県日南・串間地区を訪れる

宮崎県南那珂地区のマーケティングスクールに招かれて
同地を訪ねた。

宮崎空港から一路南下し、
日南市北郷町南郷町串間市にいたる県最南部の地域だ。
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日南海岸の海岸線沿いに車を走らせるのだが、
かつてと同様、左手には太平洋の水平線が広がり
沿道のフェニックスヤシがエキゾチックなすばらしい景観だ。

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(堀切峠付近)

昭和40年代は、新婚旅行、慰安旅行などのメッカとして
多くの観光客でごった返したところである。

海外旅行の自由化とともに
現在まで観光サービス業は低迷を続けているが、
最近、週末などは韓国からのゴルフ客が増加しており、
アジア各国からの観光誘致も熱心に行っている。

南那珂管内には、JA大束(おおつか)がある。
甘藷(かんしょ)の生産で有名な地域で、
昨年から香港を中心に海外でも売り上げが期待できる有望商品である。

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生産者のお話では、
今年は雨量が少なく、
特に甘い甘藷ができているという。

土作りから栽培収穫・加工まで
一つひとつの工程に対して
強いこだわりを持って取り組んでいることを知った。
すさまじいまでの品質に対する自信だ。

選果場では機械化・自動化されたラインが稼動しており驚いた。
甘藷でこれだけの設備を有しているのは
日本でもここだけなのではないだろうか。
生産量も日本一を奪還し、今年は販売量も大幅増を目指している。

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先週、香港の百貨店を訪れた折には
すでに宮崎産早生の甘藷が出回っており
早くも香港の消費者の心を引いているのを目撃した。

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(今月、香港にて)

午後、南郷町でマーケティングスクールが開催された。

150名の熱心な生産者や指導員が集まり、
会場はほぼ満員となった。

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県農業試験場の安藤科長さんより、
日本で最も実践的な残留農薬迅速分析法のひとつである
「宮崎方式」の紹介があった。

日本一速く(2時間)農薬残留の結果がわかり
出荷前にチェックができるという画期的なシステムで、
安心安全に対するみやざきブランドのこだわりがみてとれる

開発者である安藤さんのわかりやすい説明は出色で、
参加者も大変熱心に聴講し、鋭い質問を投げかけた。
生産者の真剣な姿勢は、農業大県宮崎の呼び名にふさわしい。

私の講演をもう3度も聴いて頂いている方がおられ
その熱心さぶりには本当に頭が下がる。

講演の後、串間市のキンカン栽培のハウスを見せていただいた。
今の時期、ちょうどビー玉大の大きさに実っていた。

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最近は、「完熟キンカン」として商品化されており、
正月の甘露煮加工用だけではなく、
生食用として年越し後まで完熟を待ってから収穫されるという。

その中でも直径3.3センチ以上、糖度18度以上の選ばれたものだけを、特に「たまたま」と称し、高額ギフト用に化粧箱詰めにされているが、これを生のままひとくち口の中にに放り込むと、ひっくり返るように甘くて美味しい。まさに大地が生んだ宝石だ。

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(高級ブランド金柑「たまたま」)

今年春、宮崎県がこの県産キンカンを香港で試験販売したところ、
大変好評で、出荷分、数千パックが完売した。

日本一の甘藷とキンカン。
どちらも中国人好みの農産物である。

また、この地区はスイトピーの生産も日本一だそうだ。
花卉の輸出も面白い。

生産地の皆さんの意識次第では、
販路拡大のチャンスになるのではないだろうか

南国の豊富な農林水産品の品々に心惹かれ、
飾ることなく、もてなし上手な南那珂の皆さんの暖かな心遣いに触れ、
後ろ髪引かれる想いで、この地を後にした。