宮崎県日南・串間地区を訪れる

宮崎県南那珂地区のマーケティングスクールに招かれて
同地を訪ねた。

宮崎空港から一路南下し、
日南市北郷町南郷町串間市にいたる県最南部の地域だ。
050819map

日南海岸の海岸線沿いに車を走らせるのだが、
かつてと同様、左手には太平洋の水平線が広がり
沿道のフェニックスヤシがエキゾチックなすばらしい景観だ。

050819horikiritohge
(堀切峠付近)

昭和40年代は、新婚旅行、慰安旅行などのメッカとして
多くの観光客でごった返したところである。

海外旅行の自由化とともに
現在まで観光サービス業は低迷を続けているが、
最近、週末などは韓国からのゴルフ客が増加しており、
アジア各国からの観光誘致も熱心に行っている。

南那珂管内には、JA大束(おおつか)がある。
甘藷(かんしょ)の生産で有名な地域で、
昨年から香港を中心に海外でも売り上げが期待できる有望商品である。

050819hojoh

生産者のお話では、
今年は雨量が少なく、
特に甘い甘藷ができているという。

土作りから栽培収穫・加工まで
一つひとつの工程に対して
強いこだわりを持って取り組んでいることを知った。
すさまじいまでの品質に対する自信だ。

選果場では機械化・自動化されたラインが稼動しており驚いた。
甘藷でこれだけの設備を有しているのは
日本でもここだけなのではないだろうか。
生産量も日本一を奪還し、今年は販売量も大幅増を目指している。

050819ootukasenkajoh 050819otukasenkajoh2 

先週、香港の百貨店を訪れた折には
すでに宮崎産早生の甘藷が出回っており
早くも香港の消費者の心を引いているのを目撃した。

050819hongkong
(今月、香港にて)

午後、南郷町でマーケティングスクールが開催された。

150名の熱心な生産者や指導員が集まり、
会場はほぼ満員となった。

050819kaijoh

県農業試験場の安藤科長さんより、
日本で最も実践的な残留農薬迅速分析法のひとつである
「宮崎方式」の紹介があった。

日本一速く(2時間)農薬残留の結果がわかり
出荷前にチェックができるという画期的なシステムで、
安心安全に対するみやざきブランドのこだわりがみてとれる

開発者である安藤さんのわかりやすい説明は出色で、
参加者も大変熱心に聴講し、鋭い質問を投げかけた。
生産者の真剣な姿勢は、農業大県宮崎の呼び名にふさわしい。

私の講演をもう3度も聴いて頂いている方がおられ
その熱心さぶりには本当に頭が下がる。

講演の後、串間市のキンカン栽培のハウスを見せていただいた。
今の時期、ちょうどビー玉大の大きさに実っていた。

050819kinkan

最近は、「完熟キンカン」として商品化されており、
正月の甘露煮加工用だけではなく、
生食用として年越し後まで完熟を待ってから収穫されるという。

その中でも直径3.3センチ以上、糖度18度以上の選ばれたものだけを、特に「たまたま」と称し、高額ギフト用に化粧箱詰めにされているが、これを生のままひとくち口の中にに放り込むと、ひっくり返るように甘くて美味しい。まさに大地が生んだ宝石だ。

050819tamatama
(高級ブランド金柑「たまたま」)

今年春、宮崎県がこの県産キンカンを香港で試験販売したところ、
大変好評で、出荷分、数千パックが完売した。

日本一の甘藷とキンカン。
どちらも中国人好みの農産物である。

また、この地区はスイトピーの生産も日本一だそうだ。
花卉の輸出も面白い。

生産地の皆さんの意識次第では、
販路拡大のチャンスになるのではないだろうか

南国の豊富な農林水産品の品々に心惹かれ、
飾ることなく、もてなし上手な南那珂の皆さんの暖かな心遣いに触れ、
後ろ髪引かれる想いで、この地を後にした。

幻のイチジク

福岡県はイチジクの有名な産地でもある。

なかでも東部の行橋・豊前市とその近郊の
JA福岡みやこ・JA福岡豊築は、
県下でも有数のイチジク産地である。

この地区は、
「蓬莱」という品種では日本一の産出高を誇っている。

0507005hourai

海外のバイヤーを現地に案内した。
ちょうどハウス栽培最盛期で、
採りたてのイチジクを一口ほおばった瞬間、

 「うまいッ!」

誰もが声を上げて驚嘆した。

050705itijikuopen

早速バイヤーから、テスト輸入の注文が入って喜んだが、
実は、このイチジクという果物、
日持ちと輸送管理が
おそらく「果物一」難しい品種のひとつだということが分かって
二度驚いた。

イチジクは、ご存知のとおり、
漢字で「無花果」と書くように、
実の中に無数の白い雌花を咲かせるので
一見、花が咲いていないように見えるのだそうである。

だから、果物といっても
いわばデリケートな生花であり、
しかも、水分をたっぶり含んだ柔らかな果肉で出来ている。

この品種の出荷先も、
近郊の大都市、北九州から広島にかけての一帯に限られ、
福岡市場でさえお目見えしないという。

どおりで見た事がないはずだ。

これまで、3回にわたり、航空便で東京に輸送する試験を行ったそうだが、いずれも輸送上の荷傷みにより、失敗したのだそうだ。

  「東京にも運べないものをどうやって海外に!?」

産地の関係者も半信半疑である。

もとより、
江戸時代(寛永年間)に中国から渡来したと言われるイチジクだから、
もし、この状態で消費者に届けば、いい値で売れるはず…。
バイヤーは自信満々である。

地元にとっても、
日本一の「蓬莱」を海外の富裕層に受け入れられることで、国内での一層のブランド力向上の契機となれば、と、期待も膨らむ。

 「過去の失敗経験にとらわれて行動しないのは、後退と同じ」

生産者、JA、バイヤー、行政の考えが一致し、知恵を絞ることとなった。

県の農業試験場からも専門家を招き、
包装形態や収穫のタイミング、輸送方法などについて
徹底的に研究して挑戦することになった。

050705itijiku

おそらくしばらくの間、
完全成功する可能性は低いのではと予想されるが、
難度が高い問題に挑戦することで、
組織が活性化することは間違いない。

「海外へのチャレンジの経験は、
必ず東京市場への再挑戦にも活かせるに違いない!」

「イチジクが輸出できれば、アジアに近い福岡は、鮮度要求が厳しいものだって何でも提供できる!」

地元JA担当者・輸出スタッフの目が輝いていた。

挑戦は、まだ始まったばかりだ…。

050705nhk
(視察中、TV放送局の取材を受ける)

都城で講演

宮崎県の都城市で講演させていただいた。

JA都城の合併30周年の記念大会ということで、
管内600名近くの生産者、流通関係者、来賓などが集まる大規模な
式典だった。

050701mikakonojo

日本有数の農業県である宮崎の層の厚さを肌で感じた。

講演では、
農産物の国内外の新しい流通や海外との輸出入の動向などについて紹介させていただいたが、ここでも2時間にわたり、皆さん熱心に耳を傾けていただき大きな手ごたえを感じた。

都城は、宮崎県にありながらも、かつては薩摩藩に属し、
もともと島津氏の先祖の出自の地だそうである。

どちらかというと、おっとりとした気風の宮崎にあって、
ここは

  「泣こかい、飛ぼかい、
   どうせ泣くなら、飛んだ方がまし」

という進取の気風があるという。

変革の時代にあって、頼もしい土地柄だ。
きっとチャレンジ精神が旺盛なのだろう。

講演後の懇親会で農産物輸出の話しをしても、
幹部生産者の「すぐやる、今やる」の反応で、
こちらが驚くほどだ。

都城管内は、畜産業がとても盛んで、
市町村単位では畜産品の生産高は日本一だそうである。

青果物では、
甘藷(かんしょ)、キュウリ、茶、ゴボウ、らっきょう、キンカンなどが並ぶ。

講演の翌朝、地元の甘藷生産農家を訪ねた。

ここでは、一般に「からいも」と呼ぶそうで、
宮崎紅という品種の超早生を選別していたが、
その鮮やかな紅色は、目を見張った。

050701karaimo

見栄えを良くする為にと、人手によって一本一本ひげを鋏でカットしてる。
大変な作業だ。
大きさ、グレードによって選別され、袋やパック詰めにされて
大阪、東京、福岡などに出荷されているという。

050701karaimomuki

実は、この甘藷、細長くて小さめのものが
「ミニ甘藷」として、昨年香港でブームとなり、
その人気ぶりを現地で目の当たりにして驚いた記憶がある。

とにかく主婦や若いOLが日本産の甘藷を買い求めていくのである。

050701hknokansyo
(香港の日系デパートにて 2004年12月)

その後、台湾やシンガポールでも
宮崎産、徳島産、高知産が売られているのを確認した。
この事実を日本の生産者は、ご存じないようだった。

現地の中国人は、どのようにして食べているのだろうか?

都城の生産者のおすすめは、ふかして食べるか、天ぷらにするのが
良いそうだ。

東京でもスイートポテトやチップが人気だ。
加工品への応用にもチャンスがありそうだ。

アジアマーケットでも日本産「唐芋」のブームが来るかもしれない。

活気付く宮崎

宮崎に講演のために出張した。
おりしも、
プロ野球、Jリーグの春季キャンプの真っ最中で
いつになく、街に活気がある。
050215Giants
(街中でキャンプを歓迎している)
恒例の読売巨人をはじめ、ソフトバンク、西武、楽天、広島、ヤクルトの各プロ野球チームと鹿島、広島、セレッソ、川崎など多くのJ1、J2チームがキャンプを張っている。今年は、欽ちゃんの野球チームやサッカー日本代表の合宿も宮崎で行なわれたとのこと。
名実共にキャンプのメッカである。
おかげで報道陣が詰めかけ、九州はもとより、全国から熱心なファンが宮崎に押し寄せている。
連日マスコミを通じて街が紹介されるし、多くの観光客を誘致するわけで、さながら、2月は宮崎がスポーツの話題を独占! と言った感じだ。
これは地域振興にとって、とてもプラスになっていることだろう。
050215Camp
(宮崎空港ビル㈱)
九州の中でも、よそからの来訪者にとりわけ親切な宮崎の人たち。
いつ行っても、気持ちよく迎えてくれる。
こんなに多くのクラブチームがキャンプ地に選ぶのは、単に気温が高いとか、晴天率が日本一だというだけの理由ではないのではなかろうか。
ここでもソフトパワー発揮である。
さて、14日、15日の二日間にわたって、
宮崎の皆さんと地域活性化、農産物の輸出などについて
意見交換を行なった。
050215MiyazakiSeminner15日の午後には、全県から農業生産者の代表が350名も集まって、ブランド化戦略に関する研究会が行なわれた。
やはり西日本を代表する農林畜産県である。
若い代表の比率も高く、非常に熱心な聴講振りであった。
意識の高さを肌で感じる。
安心、安全をブランド化する新たな戦略について
活発な議論が展開された。
実は、宮崎は、県庁経済連の協力で
今年、「完熟きんかん」の香港向け輸出を開始した。
すでに2000パックの契約を実現しており、
そのスピードの速さが注目される。
050215Tamatama
(香港向けの中国語パンフレット・宮崎県)
皆さんご存知であろうか?
宮崎は、きんかん(金柑)の生産が日本一であり、
また、その中でも、3%程度しか収穫できないという
最高品質の完熟きんかん「たまたま」というブランドを。
私も初めて口にしたが、
その驚きの甘さとみずみずしさに絶句してしまった。
「なんだ!この美味しさは!!」
050215Tamatama2完熟きんかんの中でも、
糖度が18度以上で、横直径3.3cm以上の大玉だけが
「たまたま」と呼ぶことが出来るのだそうである。
無農薬で栽培されており、洗って生で頂くのが“お決まり”である。
値段もビックリするが、食べてみれば、それだけの価値がわかるのだ。
「これは、海外でも必ず売れる!」
すぐにピンと来た。
ちなみに、東京の市場でも大人気で、非常に高値で取引されているそうで、とても貴重な初春のフルーツである。
日本で価値のあるものは、海外に輸出することでさらに価値を高めることが出来るのだ。
宮崎の皆さん、挑戦してみませんかッ?