福岡西方沖地震から考える

20日午前、福岡佐賀地方を襲った地震は、絶対にここではありえるはずがないと信じていた市民に大きなショックを与えた。
直接間接の被害に遭った多くの被災者の皆様に、心からお見舞い申し上げます。
地震の翌朝、所用で外出した道中でも、このような情景に出遭った。
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これらの画像は、遠く離れた人々にどのような情報を伝えるのだろうか?
福岡の街全体が、あちこちで倒壊し、大惨事の姿を想像するかもしれない。
私も神戸淡路大震災の時、発生一週間後、この眼で見た凄惨な光景は、今も忘れることが出来ない。
でも、今回の福岡の場合は、少し様子が違う。詳しくは省略するが、震源が都市の直下でなかったからか、倒壊したのは、主に古い寺社や家屋、ブロック塀などが中心だ。
繁華街の中心である福岡ビルの外壁ガラスがめちゃくちゃに割れたのだが、周りのビルはほとんど割れておらず、概観からは変化がない。このビルは比較的古いから、構造的に割れやすかったのだろう。
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しかし、この光景がセンセーショナルなシンボルとなってしまった。報道サイドとすれば、画像的に地震被害が分かりやすいところを狙うのは当然である。
私が何故このことにこだわるかと言うと、今後、福岡は、観光誘致や企業誘致にとって、暫くはマイナスイメージが付きまとうかもしれないからだ。被害者が出ているのに不謹慎と言われるかもしれないが、これは軽視できない事である。
これまで、福岡に企業を誘致する際に、訴えてきたフレーズのひとつが「日本で最も災害の少ない街」。特に、地震がないことが、東京との比較で、最大のアピールポイントになっていたのである。
昨年の中越地震発生2週間後に会議で新潟に行ったのだが、実際、新潟市は大きく目立った被害はなかったのである。当初報道により「新潟地震」と呼ばれたため、新潟市が危険だというイメージが広がり、付近の観光地やサッカーの試合、ビジネス関連の会議などに人が集まらず、新潟市の友人達がとても複雑な思いをしていたことを憶えている。
被災者がいる以上、「ここでは被害がなかったから問題ない」と大きな声で訴えることも出来ず、危険な街というイメージが先行してしまうことを心配していた。
同様に、現在、韓国で大騒ぎになっているという竹島問題や去年の中国のサッカーブーイング問題も注意が必要だ。その意味では小泉総理が言うように、まずは冷静に見守らなければならないというのは正しい判断かもしれない。
ここで報道の真偽やあり方を問うつもりはない。
実は、私自身も、例えば、香港で日本産のイチゴがまとまって輸出できたからといって、日本産農産物があたかもアジア市場で売れまくる、と軽々に判断してはいけないのだ。
また、福岡は過去、大地震の記録がなかったために、専門家も含めて誰も備えがなかった。地震保険も福岡県と佐賀県は一等地、すなわち保険料が一番安い地域なのであった。
そういえば、21世紀に入っても、地震や台風、豪雨などの自然災害、テロ、経済危機、疫病などは、時と所を選ばず、突然やってくる。
海賊事件も九州と関わりがあった。海賊なんて誰が予測していただろうか?
海を渡る事業は、いつもそのリスクにさらされる。
これも、正しいソフトパワーで打ち破っていくより他にない。

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。

“福岡西方沖地震から考える” への3件の返信

  1. 確かにしばらくは福岡のイメージや様々な経済活動に今回の地震はマイナスの影響をもたらすことが心配されます。
    最近、福岡では外資をはじめとした不動産投資会社がSPCを活用した不動産証券化手法で土地や建物をかなり物色していますが、福岡に触手を伸ばす理由のひとつが福岡の都市としての魅力、地震の少なさなどにあったと聞いています。
    その一角が崩れたことに対する対応をわたしたち地元の人間はしっかり考えないといけないでしょう。

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