「噂には聞いていたが、まさかこんなに早く動き出すとは…」
19日付の朝日新聞記事を目にして驚きを隠せなかった。
[農産物も“韓流” 九州向け輸出強化]
福岡市内に物流拠点開設
韓国の農産地が九州のスーパーなど小売店との直接取引に乗り出す。来年早々にも拠点となる物流センターを福岡市内に開設。商社経由の販売方法を見直し、直接販売で物流費を抑え、価格競争力を高める。
慶尚南道などの自治体や第三セクターが具体的な販売ルートの開拓を検討中だ。パプリカやマツタケといった農産物を共同で借りるセンターにいったん保管して、小売店に配送する。福岡を拠点にした一般向けの通信販売も検討する。
日本側で受け皿となる韓国貿易センターは「韓国産の場合、日本に届いてからの流通コストは小売価格の4分の1を占めるだけに、価格の引き下げは十分可能」とみている。
食品の安全・安心をアピールするため、残留農薬検査なども徹底。生産農家をさかのぼって検証できるシステムを導入する案もある。
04年に韓国から日本に輸出された食料品は1555億円に上り、うち九州は4割を占める。ただ、99年と比べると、対日、対九州とも約3割減っている。
中国産品の輸出増や、種苗を日本から持ち出して栽培して、日本に逆輸入する「海賊版」への取り締まりが強化された影響という。
まだ、正式には具体的な事業は明らかにされていないが、
何らかの行動計画が練られているはずだ。
日本産農産物の海外輸出については、
やっとスタートラインにたったばかりだが、
いつも意思決定と行動が早い韓国の攻勢に対して
日本の関係者はどう対応するつもりだろうか。
福岡市に物流拠点を設けるというが、
これは福岡近郊の生産者だけでなく、
日本第4位の商業圏と呼ばれる福岡市場圏に出荷する
他県の生産者にも何らかの影響が考えられる。
また、今年からは、台湾からマンゴーなどの熱帯果実、
さらにFTAを締結した東南アジアなどの国々から、
検疫を通った様々な農産物が
今後、次々と日本市場に向けて輸出されてくるのである。
守りの姿勢、国内既存販路の強化さえ十分であればそれで良いという考えが、どこまで現実的であろうか。
地産地消を本来目的ではなく、
単なる排他的キャンペーンの道具として使うのであれば
需要家や広範な消費者からはいずれ支持されなくなるだろう。
韓国も、聞くところによれば、
中国産など諸外国からの安価な農産物の流入により
国内農業が打撃を受けており、
廃業・離農する生産者が増えていると聞く。
(韓国のスーパーで)
また、日本などから無許可で導入した新品種などのコピー産品に対しても、国際的な枠組みに加盟したため、韓国当局が取り締まらねばならない事態も始まり、
窮余の策として、今から、海外へ向けての輸出の取り組みを模索しているのかも知れない。
中国などで開催される国際食品展での
大規模なプロモーション活動など
韓国の官民を挙げた積極的な活動は、
ここ数年、本当によく目に付くようになった。
(2003年9月、中国上海で開催された国際食品展での韓国の巨大ブース。このとき、SARSが発生したとして、日本からの出展者、参観者はほとんどいなかった…)
このことは、
中国をはじめ、農林水産業を主たる産業とする国々でも
それぞれ内情は違っていても
海外輸出を強化する方向性には変わらないはずだ。
韓国とは、サッカー同様、日本農業にとっても
切磋琢磨しあうライバル(良く言えば!?)だ。
すでに私たちは、香港市場、台湾市場において、
安価で、しかも非常に近似した韓国産農産物と
厳しい「国際試合」を展開しているから、
およそ彼らの方法論、商品・サービスレベルは
すでに大方把握している。
台湾市場でも、
以前から、左写真のように
このような安価な韓国産甘柿と“国際試合”をすでにおこなっているのである。
ほかにも、ミカン、イチゴ、ブドウ、梨、海苔、菓子など数え上げたらきりが無い・・・
サッカー同様、相手の戦術さえ知っていれば恐れるものなし。
むしろ堂々と戦うチームの方が強くなるのである。
それにしても、日本産農産物の組織流通は、
もっと柔軟かつスピーディーな行動をしなければ
「大切なチャンス」を失うことになる。