守りだけで解決できるのか

「噂には聞いていたが、まさかこんなに早く動き出すとは…」

19日付の朝日新聞記事を目にして驚きを隠せなかった。

[農産物も“韓流” 九州向け輸出強化]

福岡市内に物流拠点開設

 韓国の農産地が九州のスーパーなど小売店との直接取引に乗り出す。来年早々にも拠点となる物流センターを福岡市内に開設。商社経由の販売方法を見直し、直接販売で物流費を抑え、価格競争力を高める

 慶尚南道などの自治体や第三セクターが具体的な販売ルートの開拓を検討中だ。パプリカやマツタケといった農産物を共同で借りるセンターにいったん保管して、小売店に配送する。福岡を拠点にした一般向けの通信販売も検討する。

 日本側で受け皿となる韓国貿易センターは「韓国産の場合、日本に届いてからの流通コストは小売価格の4分の1を占めるだけに、価格の引き下げは十分可能」とみている。

 食品の安全・安心をアピールするため、残留農薬検査なども徹底。生産農家をさかのぼって検証できるシステムを導入する案もある。

 04年に韓国から日本に輸出された食料品は1555億円に上り、うち九州は4割を占める。ただ、99年と比べると、対日、対九州とも約3割減っている。

 中国産品の輸出増や、種苗を日本から持ち出して栽培して、日本に逆輸入する「海賊版」への取り締まりが強化された影響という。

まだ、正式には具体的な事業は明らかにされていないが、
何らかの行動計画が練られているはずだ。

日本産農産物の海外輸出については、
やっとスタートラインにたったばかりだが、
いつも意思決定と行動が早い韓国の攻勢に対して
日本の関係者はどう対応するつもりだろうか。

福岡市に物流拠点を設けるというが、
これは福岡近郊の生産者だけでなく、
日本第4位の商業圏と呼ばれる福岡市場圏に出荷する
他県の生産者にも何らかの影響が考えられる。

また、今年からは、台湾からマンゴーなどの熱帯果実、
さらにFTAを締結した東南アジアなどの国々から、
検疫を通った様々な農産物が
今後、次々と日本市場に向けて輸出されてくるのである。

守りの姿勢、国内既存販路の強化さえ十分であればそれで良いという考えが、どこまで現実的であろうか。

地産地消を本来目的ではなく、
単なる排他的キャンペーンの道具として使うのであれば
需要家や広範な消費者からはいずれ支持されなくなるだろう。

韓国も、聞くところによれば、
中国産など諸外国からの安価な農産物の流入により
国内農業が打撃を受けており、
廃業・離農する生産者が増えていると聞く。

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(韓国のスーパーで)

また、日本などから無許可で導入した新品種などのコピー産品に対しても、国際的な枠組みに加盟したため、韓国当局が取り締まらねばならない事態も始まり、
窮余の策として、今から、海外へ向けての輸出の取り組みを模索しているのかも知れない。

中国などで開催される国際食品展での
大規模なプロモーション活動など
韓国の官民を挙げた積極的な活動は、
ここ数年、本当によく目に付くようになった。

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(2003年9月、中国上海で開催された国際食品展での韓国の巨大ブース。このとき、SARSが発生したとして、日本からの出展者、参観者はほとんどいなかった…)

このことは、
中国をはじめ、農林水産業を主たる産業とする国々でも
それぞれ内情は違っていても
海外輸出を強化する方向性には変わらないはずだ

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韓国とは、サッカー同様、日本農業にとっても
切磋琢磨しあうライバル(良く言えば!?)だ。

すでに私たちは、香港市場、台湾市場において、
安価で、しかも非常に近似した韓国産農産物と
厳しい「国際試合」を展開しているから、
およそ彼らの方法論、商品・サービスレベルは
すでに大方把握している。

050820taiwan台湾市場でも、
以前から、左写真のように
このような安価な韓国産甘柿と
“国際試合”をすでにおこなっているのである。

ほかにも、ミカン、イチゴ、ブドウ、梨、海苔、菓子など数え上げたらきりが無い・・・

サッカー同様、相手の戦術さえ知っていれば恐れるものなし。
むしろ堂々と戦うチームの方が強くなるのである

それにしても、日本産農産物の組織流通は、
もっと柔軟かつスピーディーな行動をしなければ
「大切なチャンス」を失うことになる。

国際中枢港湾都市・志布志の底力に驚く

11日、鹿児島県志布志町の招きで、
同町の40名余りの元気人たちで構成される
異業種交流会の「志布志商人(あきんど百人塾
夏の定例会で話をさせていただく機会を得た。

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メンバーは、自営業、物流業、商店、農業、サービス、行政など多種多彩に及ぶ。
地場産業の国際ビジネスへの挑戦が今日のテーマであったが、講演後の交流会では、大盛り上がりというより静かではあったが、個別の懇談では会員ひとり一人が私に迫ってくる気迫を感じ、その意識の高さと秘めたる決意がテレパシーように伝わってくる。
こういう方たちは、往々にして実際行動に踏み切る可能性が高い。とても頼もしい。

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志布志町は来年1月の合併を控え、「志布志市」になる準備が進められている。慶田町長とは2度目の面会だったが、先だってまた中国にも視察をされており、相変わらず精力的に国際交流へも強い関心をお持ちだった。

ここ志布志は、太平洋に広がる志布志湾の奥にあり、西は大隅半島に連なり、東縁は宮崎県南部に接している。
歴史的にも中世以来の対外貿易の窓口港であり、江戸時代末期には、薩摩藩の密貿易の拠点でもあったという。

町の一角には、密貿易船から貨物を積み替えた小船がカモフラージュされた秘密の格納庫の跡(今は復元されていない)が発掘されたという場所があり、とても興味深い。
きっと、海外にも積極的に交流を図るという進取の行動力のDNAが、今にも息づいているのだろう。

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(地面を掘り秘密の水路に通じていて、屋敷で荷卸をカモフラージュしていたという発掘調査跡地)

志布志港は、コンテナの取扱量では、博多、門司港に次ぐ、九州第3位の中核国際港湾である。
特徴的なのは、畜産用飼料(トウモロコシ、稲わら等)の輸入港としては、鹿島港に次ぐ日本第2位の規模である。
畜産県鹿児島・宮崎への飼料供給基地として、年間240万トンの配合飼料を生産しているそうである。

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(急増する貨物に追いつけず、拡張が計画されている志布志港)

しかし、飼料の輸入量が大きい割りに輸出貨物が少なく、海外輸出に対する需要開拓は緊急の課題でもある。理想は畜産飼料を輸入して、畜産加工品を輸出できれば、貨物がバランスしていくはずだ。

関東・関西市場には遠くても、台湾や香港などアジア市場には、日本でもっとも近い港湾のひとつである。
海外こそ挑戦すべきターゲットであっても不思議ではない。
ただ、BSEや鳥インフルエンザの発生により、肉類の海外輸出には現在逆風だが、香港では宮崎産の黒豚肉がブランド品として扱うデパートもあり、可能性は十分にある。

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(林立する飼料工場のスケールは圧巻)

志布志港の穀物バースには、系統、商系の大規模な飼料サイロや加工場がいくつも連なり、しかも拡張中だと聞いて、そのスケールの大きさに本当に驚いた。BSEの発生で、国産牛の飼育が盛んになり、輸入飼料の需要が急増しているものと見られる。志布志港は、新たに水深14メートルの多目的ターミナルの整備がすすめられている。
農畜産物の輸出には、国際物流機能の有無は大きなポイントになる。

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(志布志町港湾商工課の川野さんに整備事業を紹介していただく)

秘めたる熱い志を持つ
志布志商人百人塾のメンバーのこれからの動向が楽しみだ。

アジアビジネス先進地「神戸」で

商談のために神戸に出張した。

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久しぶりの神戸だったので楽しみにしていたが、
商談に熱が入りすぎて、ゆっくり街を探索することが出来なかったのが残念。

神戸は大学時代の恩師の故郷であることと
福岡市と共通点が多いことから
私は前々から強い興味を持っている。
自分の故郷以外で、唯一住んでみたい憧れの街でもある。

同じ港町であり、商業・サービス業など第三次産業の集積も高い。
また最近、地震に見舞われたことでも共通している。

福岡市は、いま「21世紀の中華街構想」というビジョンを掲げているが、
神戸は、横浜と並びチャイナタウンの本家本元だ。

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(神戸・南京町)

今回商談に訪れた食品の輸出についても、
ここには輸出を行なう商社が多く集積しており、
「ニッポンを売る」商流の基礎は、東京・横浜に劣らない。

また、神戸市は、
アジアからの企業誘致、観光誘致にしても一日の長があり、
多くの面で見習うことが多い街である。

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(ポートライナーから神戸港をのぞむ)

そういえば、異人街周辺には、
台湾・香港からの団体旅行客で一杯で、
異国情緒ある風景に加え、
日本語よりアジアの言葉の方が多く耳に残り、
あっという間に海外旅行(出張?)している気分に浸ることが出来た。

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(異人館付近はアジアからの観光客で一杯)

全国規模のうねりになる日本農産物の海外輸出

27日、「農林水産物等輸出促進全国協議会」
(会長:木村尚三郎東大名誉教授)が正式に発足し、
その設立総会が全国の関係者を集めて、
東京・大手町で開催された。

総会には、アジアアフリカ会議から帰国したばかりの
小泉総理も駆けつけ、来賓挨拶を行なった。

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総理は、他の改革同様、
「守りから攻めへ」の農業改革について
熱心に自説を唱えた。

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具体的な事例として、
青森のリンゴ、島根のコメ、
福岡のあまおうイチゴ、宮崎のシンビジウム

アジア各国で高値で売れているという例を紹介し、
極めて強い関心を寄せていることを参加者にアピールした。

続いて、
この協議会の名誉会長である島村農水大臣が挨拶に立ち
参集者に向けて激励の言葉を贈った。

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また、経団連の奥田会長も祝辞を行ない、
農業セクターも同連合会のメンバーになるよう
エールを送ったのが印象的だった。

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第2部のパネルディスカッションでは、
木村会長をコーディネーターに、
全国的に有名な青森のリンゴ生産者の片山社長
上海・蘇州で評判の日本食材店を
8店舗経営する石橋水産有限公司の石橋会長と
私の3人がパネリストとして登壇し、
農産物の輸出の可能性と心構えについて発言・提言した。

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(左は石橋氏、中は片山氏、右は木村会長)

生産者自らが主体的に動いて、
新たな活路を見出すことを実践する片山さん。

中国という、ビジネス上の障害が多く、
競争激しい市場で勝ち抜くための厳しさと可能性について訴える石橋さん。

両名とも、行動力と実績があるだけに説得力は抜群だ。

私は、地方の行政や団体など、輸出支援をする立場から、
地域の生産者や企業が、
いかにしてやる気と工夫を引き出すかの重要性について
発言する機会を与えてもらった。

この「全国協議会」は、関係省庁、47都道府県知事、
農業、林業、水産業、食品産業、酒類、流通、外食、観光
JETRO、日商、経団連等の広範な団体組織から構成
されており、
官民一体となった経済促進・地域振興を目指すものである。

050428houdou (駆けつけた多くの報道陣)

輸出促進、食文化発信という様々な基本戦略と共に
輸出額を5年で倍増という数値目標も設定している。

全国協議会の事業を通じて、
日本全国から、やる気のある生産者、企業が排出し、
地域が元気になることを期待すると同時に、
輸出当事者も、困難多い海外ビジネスに際して
この協議会の情報やネットワークを
ドンドン使い倒してもらうことを願っている。

事務局:農林水産省大臣官房国際部貿易関税課輸出促進室

反日の上海を行く

今日午前、北京・広州に続いて、
上海でも反日デモが発生し、
一部投石騒ぎや破壊行為が行なわれたことが、
日本では終日報道された。

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(時事通信社)

WTO加盟以来、
SARSを除けば、経済関連のニュースが多かった中国だが
思い出したかのように、
反日感情の悪化とその行動が
日本中に衝撃を与えている。

いま中国・韓国で起きている一連の出来事は、
多くの日本人に激しいショック、
あるいはこれらの国々に対する嫌悪感を与えたことは間違いない。

デモ活動の背景については、
いろいろ観測されているが、
いずれにしても、
中国当局側により、世界中にこの感情を知らしめることが
ある種の目的であったことだけは間違いない。

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(朝の上海の街角で)

「ニッポンを売る!」という視点から見れば、
この反日、日本商品ボイコット(排斥)、歴史認識問題などは、
マーケットとしてのアジア、消費者としてのアジア人をとらえる上で
どうしても避けられないテーマである。
中国、韓国だけでなく、台湾、香港、東南アジアにおいても。

対日感情については、
今後長期間は、いかなる条件・方法をもってしても
根本的な解決はありえないと考える方が自然であり、
それを前提としたアプローチを目指すべき
だろう。

ただ、ハッキリとしておかなければならないことは、
この種の事態は、
これからも起きる可能性があり続けると同時に、
もう日本商品が売れなくなるとか、
日本人が現地でビジネス出来なくなるという事は
まったくない
と言うことである。

中国と30年近くも付き合っていると、
この辺の感覚がなんとなく分かってくる。

昨年来、講演の機会があるたびに訴えているのだが、
中国特需だからといって、北京オリンピック、上海万博までは
ビジネス天国だとばかりに舞い上がり、
反日デモや人権問題、汚職や格差といっては
嫌悪感や差別意識が支配する。
どちらに振れても、日本人は中国に対して熱くなりすぎて極端なのである。

おそらく日本のような安定した平均社会を前提として
中国に過大な期待を寄せているからなのではないだろうか?

とにかくビジネスマンたるもの、
冷静にチャンスを窺(うかが)おうではないか。

今週11日から13日まで
渦中の上海に、マーケティング調査のために出張した。

精力的に数多くの日本人駐在員の方々と情報交換したが、
まったく普段と変わらない様子であった。

日本の騒ぎぶりが信じられないといった風である。

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(いつもと変わりない上海の街)

さすがに、この週末は、それなりに注意を払っていると思うが
日本で我々が想像しているような状態ではない。

出張時の上海の様子については
私のレポートが、Yahooニュース中国情報局
転載されているので、参照されたい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050415-00000003-scn-int

http://forum.searchina.ne.jp/2005/0415/column_0415_001.shtml

愛国の熱情も大切だけれど、
熱くなり過ぎると客観情勢を見誤ることも
過去の歴史が教えてくれている。

九州が動き出す

熊本で、九州農政局主催の農林水産物・食品の輸出促進活動報告会が開かれた。
050325nouseikyoku1目的は、九州6県の輸出担当者が一堂に集まり、平成16年度の国の補助事業に対する活動報告会なのだが、
この事業を広く知ってもらおうと、地場産食品輸出に関わる企業や団体、生産者にも参加が呼びかけられ、会場一杯の参加者により、熱心に議論が行なわれた。
3年間の本格的輸出事業を行い、前年比10倍増のイチゴ輸出を達成した福岡県。
輸出に熱心な経済連と強力タッグを組んで中国への販路開拓に取り組む佐賀県。
観光誘致と水産物輸出からアジアへ切り込む長崎県。
物流と商流の構築を重視し、実践的なアプローチに挑む大分県。
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輸出に果敢に挑戦する単位農協や農業法人のバックアップに徹し、輸出者に求められる支援の場を提供する熊本県。
全国的に注目されるスギ木材の輸出と共に、高付加価値・安心安全農産物のアジア市場開拓を図る宮崎県。
独自のアプローチで、農・林・水・畜産物の輸出に取り組む鹿児島県。
各県とも、品目、輸出先、方法、事業主体も、それぞれ異なる開拓手法で、非常に興味深かった。
「異なる・個性ある」ということは、素晴らしい価値である、と私は考えている。
理由のひとつは、それぞれが持つ資源や知恵を使って、主体的に考え、行動しているからである。
もうひとつには、そのような個性あるアプローチができるだけの基盤が各県にあるということを証明しているのである。
手探りながらも、商品、人材、情報、ノウハウ蓄積、アジアとのネットワークを駆使して挑戦できるだけの層の厚さを九州各県は持っているのだ。
もちろん、今後どこもが輸出に成功するとは限らないが。
このことは、短期的には九州どうしの産地競争が海外市場でも展開される懸念があるのだが、各県がアジア向け輸出のファーストステップを果たした後、こんどは九州としての連携が生まれてくることは必然だと思うのである。
報告会では、私にも発言させていただく機会を与えられ、来るべき「九州の広域連携の可能性」についても言及した。
各地の個性や特長を生かした連携があるはずだ。「九州はひとつ」という言葉の意味は、意識の温度差やターゲットの異なる各地域を、同じ方法論で一律に進めることではなく、困難問題の克服や相互補完・協力、海外情報の交換、他産業との連携などを柔軟大胆に行なえる意識の共有化ではないか、と私は考えているのである。
多様な個性の集合体こそ、他にはない「九州ブランド」の価値なのではないだろうか。
会議の冒頭で、九州農政局長のスピーチで、

「これから九州は『食・体験・観光』というキーワードでつながりを深めていくという方向の中で、アジア向け農水産物輸出を捉えてみては」という提言がなされた。

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非常に注目される提言である。これはもう掛け声ではないのである。すでに行動計画も練られ、九州の各機関も横断的な協力支援体制を構築し始めているのである。
農水産業における生産・流通(物流・商流)・販売の有機連携、個性の異なる六つの県の地域連携、第一次産業と二次、三次、四次との産業連携が、アジアへの農産物の輸出をテーマにして、いよいよ動き出そうとしているのである。
行政も、生産者も、企業も、団体も、サポーターも、地域の関係者は、思考観念の転換と行動の準備はできているだろうか?
会議の中で、輸出に熱心なJA単協担当者が「農産物輸出は、何が起こるかわからない。ものすごい緊張感を伴う」という発言をしたのが、とても印象的であった。
かといって、このJAは、今年は、止めるどころかさらに輸出に取り組むそうである。
実は、この緊張感こそが、地域の生産販売力のレベルを大幅に向上させ、他から得られない強力なノウハウを国内販売に生かすことが出来るという価値を、すでに認識しているのである。
九州は、いよいよ動き出した。

維新の地“下関”で

下関にある国土交通省九州地方整備局で講演させていただいた。
山口県の下関市に、“九州”地方整備局があるなんて、とても面白い。
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(コンテナを積載した外航船も行きかう関門海峡)
2時間にわたり、最近の日本とアジアの経済交流について、私の活動の一端をご紹介した。
特に九州の地場産品のアジアマーケットへの輸出動向やアジアからの観光誘致、中国企業誘致などの現場報告をさせていただいた。
いずれも、港湾・空港をはじめ、物流・人流インフラの整備が、九州とアジアの経済交流を進める上で、大きな鍵になっていること。
また、物流と共に、商流(経済活動)が車の両輪のようにバランスよく機能しないと、真の地域活性化は図れないことなどを実践活動の立場から話題を提供した。
  
下関といえば、言わずと知れた「維新回天の地」。
地方整備局の幹部職員の方々が、あまりに熱心な姿勢で聞いてくださるので、つい調子に乗ってしまった。

「私達日本人は、今、自由に外国に行け、また自由な海外ビジネスが出来ることも保障されていますよね。
でも、FTAやEPAなどと、これから一層の自由貿易・経済連携の時代と言われてますが、実際は、海外の食品は汚染されているとか、海外からの人材や観光客を入れれば犯罪は増える、外資が入れば支配される、などど、ヒト、モノ、カネ、どれをとっても、日本を“外国の邪悪”から守れと言わんばかりの論調が増えているように思えるんですが如何でしょうか?
攘夷か?開国か?
共に日本の国益のためにと議論してはいるものの、今の多くの日本の常識人のアタマの構造は、かつての維新前と同じではないかとさえ感じてしまいます。 
 
いずれにしても、後世の人たちが、明治と同じく平成の日本人は素晴らしかった、と言える決断をすべき時が来たのだと思うのです。」

と口走ってしまった。
何を隠そう、学生時代、私は、下関を舞台に活躍した幕末維新の英傑の一人、高杉晋作のファンだったのである。
はじめは熱狂的な攘夷論者だったが、その後の冷静な情勢判断と果敢な行動で新しい時代を拓いた。
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(下関・日和山公園に建つ高杉の像)
思想の中身もさることながら、その柔軟さ、しなやかさにあこがれていたことを思い出して、心の中でひとり苦笑いしてしまった。
これからの日本は面白い!

東北と九州の連携に向けて

東北地方の経済団体、シンクタンクの代表が福岡を訪れ、
農産物をはじめとする地場産品の海外輸出についての
情報交換や意見交換をする勉強会で
九州地方の実情について報告させていただいた。
050213touhokuアジアに近いという理由で、九州は地場産品のアジア市場への輸出において先進地であるという、東北の関係者の認識であったが、実情は必ずしもそうではない、むしろリンゴ100年の輸出の歴史を誇る実績や、フカひれ、ホタテなどの高級水産物の対アジア向け輸出の成功事例等を考えると、むしろ東北地方こそ先進地であると言えると率直に報告した。
いずれにしても、どちらが先進地かどうかという問題ではなく、
今後の国際化戦略の本格的な展開のために、
如何に地域連携を図るかということに、全員の関心が集まった。
東北六県が共同で調査や情報収集、事業活動を展開を始めていることに、正直うらやましい感じだ。
九州はまだ各県が単独で事業を展開しており、
しかも両隣を非常に意識しながらの行動に
今後、世界中のサプライヤーが集まるアジアマーケットで
本当に勝負できるのであろうかという不安を感じているのである。
地域連携の実現は、長期的には楽観視しているが、
具体的なシナリオが描けていない状況だ。
東北の域内連携の動向を参考にしていきながら、
九州の連携をどう進めていくか、
また、東北と九州の域間連携も模索していきたい。
とにもかくにも、地方の自立と県境を越えた新たな枠組み構築が
農産物の輸出というテーマをもって図れるとしたら、
こんなに面白いことはない。
実は、この勉強会の機会を設けてくれたのは、
国土交通省である。
とても貴重なきっかけの場であったと
感謝している。

国会でも議論される農産物の輸出

2日の衆議院予算委員会の場でも
日本の農産物の海外への輸出について
議論が交わされている。
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(共同通信社)
3年前に、人知れぬところで
「逆もまた真なり」と、心密かに誓って
地味な活動を始めたことを考えると、
こんなにも早く、
農産物の輸出が国会でも取り上げられるとは
信じられない想いである。
郵政改革、道路改革、三位一体を掲げ、
都市型議員のイメージが強い小泉総理だが、
農産物輸出についてここまで踏み込んだ発言をするとは思わなかった。
さらに、質問側に立った自民党議員は、
これまで、
日本農業を「しっかりと守る」立場の象徴的存在だっただけに
今回の「攻め」の質問は、時代の変化を感じさせられる。
青森のリンゴの例、島根のコメの例、
掛け合いの質疑ではあるが、
このような話題を実例で紹介されると
当事者は、きっと元気づくだろうな、と思う。
小泉総理が、質問に答える形で

「(海外輸出も含めて新たな挑戦をするかぎり)
政府が補助金を出さなくても、
日本の農業はまだまだ可能性がある」


発言していたのは印象的だった。
そこで、
小泉総理様、議員各位の皆様

農産物の輸出について
熱心な質疑をしていただいていますが、
現場は考えておられるほど簡単なものじゃありません。
今後もしばらくは大変だと思います。
でも、だからと言って、
またもや、政府に、党に、
何をしてくれ、補助金付けてくれ、
人任せなことを言っていては
やっぱりニッポンの農業に未来はありません。

今回のように、
国会の場で紹介してくれたり、
国民の関心を集めていただき、
国としての指針を明確に打ち出してさえ頂ければ
それで十分に有難いのです。
あとは、農業関係者や流通関係者が
しっかりとやってごらんにいれます。
どうぞ、信じて民間や地方にお任せください。
外交交渉案件や検疫突破などについて多くの面で、
ぜひとも国の支援が必要です。
未来のため、共に頑張りましょう!

中台チャーター便 相互乗り入れが意味するもの

春節(旧正月)で帰省する台湾人ビジネスマンらを乗せた
中国のチャーター機が29日午前、
台湾に乗り入れた。
050129airplane
(台湾中央通信社)
1949年の中台分断後、56年ぶりに
中国と台湾の直行チャーター便の相互乗り入れが実現した。
一般には
中国統一に関わる政治問題として報道されているが、
「ニッポンを売る!」の立場からは、
少し異なる視点から
現実を先取りしておかなければならない。
すなわち、
中国と台湾の統一、もしくは独立にともなう混乱は、
今しばらく時間を要するものと考えられるが、
いわゆる「大三通
(台湾当局による対中国大陸の通信、通航、通商の禁令解禁)が
実現し、人や物資が直接自由に往来されるとなると
現在、私達は台湾マーケットへ
日本の農産物等を必死で売り込みをかけているが、
いつ中国大陸から安い農産物が
ドッと台湾市場に押し寄せてくるかどうかわからないのだ。
また、中国市場でも、
台湾産青果物が本格的に輸入されるとなると
双方のマーケットで、
日本の強力なライバルが出現すると言うわけだ。
今回の中台チャーター便相互乗り入れは、
東アジア地域の政治的安定へ半歩踏み出すものである一方、
経済的には更なる激しい競争の予感を感じさせる、
非常に注目されるニュースなのである。
050129airplane3 050129airplane2
(台湾中央通信社)