蜀は食都 成都紀行(その1)

港に降り立った瞬間、
ムッとくるいつもの湿気に
ああ四川に来たんだなぁ」。

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(いつも湿度が高い成都の街)

年間を通して晴天日数はわずか25日ほどしかなく、
曇りや雨の日が多いため、本当に湿度が高い。

日本を発つ時はまだ14℃と肌寒かったが
ここはもう26℃にもなっていた。
とにかく蒸し暑い。

久方ぶりに四川省成都を訪れた。

我々日本人にとって、四川といえば、
パンダ、三国志、そして激辛料理だろう。

四川の人が辛い食べ物を好むのは、
この湿度の高さと大いに関係があるといわれている。
不調になりがちな身体の新陳代謝を促すためらしい。

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(四川の代表的激辛料理-「水煮魚片」)

確かに辛いものを食べた後には発汗し、
誰でも神経が高揚するように感じる。

気候や風土と食べ物は本当に関係が深い。

四川では、子供の頃から辛い食べ物に少しずつ慣らしていき、
10歳になる頃には一人前に激辛が食べられるようになるそうだ。
スゴい。

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ご存知「麻婆豆腐」。
突き抜ける辛さとヒリヒリとしびれる刺激は、ここ成都ならでは。
上海や香港・台北などで食べるマーボドーフは全く別の食べ物だ。

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写真は、麻婆豆腐の元祖と言われている「陳麻婆豆腐」の支店。
看板メニューの「金牌麻婆豆腐」の味は一流だが、昔の国営レストランを思い出させるほどの接客の悪さには閉口した。 

成都の有名レストランをハシゴしてみる。

特に「成都名小吃」と呼ばれる伝統惣菜には旨いものが多い。

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私の好物である「蒜泥白肉」(上)と「夫妻肺片」(下)。
辛さの中にコクのある味付けがたまらない・・・。

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実は成都もワンタン(抄手)が有名。
「龍抄手」はブランドになっている。

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四川に来始めのうちは
「地元の人と同じ辛さじゃなきゃつまらないッ!」
と意地を張る割には、どうしてもこの辛さを受け付けず、
ビールやお茶で一度シャブシャブと洗ってから口に運んだものだが、数日も経つとすっかり慣れて、辛くないと食べた気がしなくなるから不思議だ。

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本場の担々麺には汁がないのかと思いきや…

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下には真っ赤なタレが潜んでいた。

日本のラーメンと同じく、担々麺の本場成都でも店によって味付けや麺の種類などがかなり異なる。

とにかく四川料理の奥は深い

北京・上海・広東と並ぶ4大料理と言われる中でも、四川料理は香辛料や調味料の使い方などに独特の技が秘められている。

辛いだけではなく、複雑さや深みのある味付けは脳の記憶中枢に強く残る

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(成都の市場にて)

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(「麻(マー)」と「辣(ラー)」。唐辛子と山椒の組み合わせが特徴)

日本はもとより、上海や香港、台湾などでも本場同様の四川料理が食べられるところは極めて少ない。

本場成都を訪れることなくして、川菜(四川料理)を語ることなかれ、だ。

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四川系の新作料理 -ローストガチョウの皮とフォワグラ・マンゴーペーストのせは絶品だった。

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あまり知られていないが、昔から四川でもソバ(蕎麦)が食べられている・・・

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ただし、麺は弾力に富み、スープは真っ赤で酸味もある。
酢とラー油をタップリ入れた激辛韓国冷麺のよう。
ところ変われば、である。

本場の味を堪能するために、ぜひ一度成都を訪ねてみることをお勧めする。
中華料理好きなら、絶対に満足すること請け合いである。
(続く・・・)

テーマパーク化する中華街

年ぶりに横浜中華街を訪ねた。

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平日の昼間というのに多くの団体客やカップル、家族連れで一杯。

以前から中華街は人出の多いところで、
土日に行ったら歩くスペースもないくらいだった。

その後、長期不況もあってしばらく停滞する時期があったと聞くが
この日見る限り、そんなことはない様子だ。

街全体が生まれ変わっていることが実感できるのである。

先回のエントリで、アメ横でアジア人観光客が急増していることを紹介したが、中華街もそうかと思ったら、日本人が圧倒的に多いのである。
しかも老若男女、団体・個人さまざまな訪問客を迎えている。

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つまり、アメ横は売っているのが日本人で、買っているのはアジア人であるのに対し、中華街では訪れるのが日本人でそこで働いている人のほとんどが中国人なのでまるでどこにいるんだか分からなくなる。その中国人というのも二世・三世の華僑ではなく、中国からの就労者や留学生アルバイトが多い。たどたどしい日本語が面白い。

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(売り子さんの多くが中国人!?)

地下鉄も渋谷から直接乗り入れるようになり、確かにアクセスが便利になったことも大きいだろう。
しかし、街づくりにも熱心に取り組んでいるし、昔の閉鎖的なコミュニティー特有のあのワクワク感というよりは、外からも受け入れる開放感が感じられ

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(オープンしたばかりの横浜媽祖廟

関帝廟に続き、今年立派な「媽祖廟」も完成し、またひとつ立ち寄りスポットが出来た。そういう意味では、以前は本格中華料理を食べに行くところ、他では売っていない食材を手に入れるところというイメージだった中華街も、飲食はもとより、雑貨や土産店を冷やかしたり、中国寺を詣でたり、占いをしてみたり、と単店舗目的ではなく、街全体の回遊性が高まり、さながら入場無料のテーマパークを散策しているよう。また、年間を通してイベントも企画されている。

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(イベントの呼び込み?)

20年前、私が横浜中華街の貿易商社協議会の皆さん方と貿易促進のお手伝いをしていた頃の社長さんたちは、今中華街のさまざまな組織の会長や顧問としてますます活躍されている。当時も日中貿易にはさまざまな障害があり、会社の利害を超えて数多くの難題を解決してきた。今の反日騒ぎどころのレベルではなかった。貿易そのものが出来なくなるほど、当時は中国の政治情勢や社会混乱の影響をいつも受けていたのだ。それでも、いつ私が訪ねても中華街の皆さんは快く迎え、共に汗を流していたことを懐かしく思い出す。

それにしても中華街散策は益々面白い。
特に目に付いたものは、肉まんや焼売など点心類のテイクアウトだ。持ち帰りやその場で歩きながら食べるなど随分と消費の姿も変わった。

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(ディズニーランドの家族連れと変わらない)

また占いも大変な人気で、女の子だけでなく若い男の子が集まっていたのは興味深い。

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他に、足つぼやエステなどの癒しマッサージ系、食べ放題、麺食、開運グッズ、健康ハチミツなども人気が高い様子だった。

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(開運ストラップも人気)

危機感をバネに常に挑戦と革新を続けていくことが発展のために必なのだ。
変革なき組織や地域が長期にわたり存続し続けることはありえない。

伝統を受け継ぎ、それを現代に生かしながら自己改革していくことが、地方ではいま特に求められている。

横浜中華街には熱い想いを持つ行動派が何人もいるのだろう。大いに参考になる。

アメ横に続き、ここ中華街も観光誘致、企業誘致、物産振興のアイデア満載の宝箱だ。

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(中華料理の七つの味は・・・)

江南の春

江蘇省昆山を訪ねた。

ここは早くからアパレルや精密機械、電子工業など日系企業が
盛んに進出している地域で一時期よく通った所でもある。

揚子江(長江)下流南岸一帯を江南地方と呼ぶが、
詩人杜牧(とぼく)の詠んだ「江南の春」でも有名だ。

千里鴬啼緑映紅
水村山郭酒旗風
南朝四百八十寺
多少樓台煙雨中

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は、立春の一番良い季節にこの地を訪ねたのは初めてのこと。
のどかで、穏やかな風景に改めて感動した。

「周荘(しゅうそう)鎮」一帯は、観光開発もすすみ、外人観光客はもとより、国内ツアー客の多さが目立った。
 また、数千台の収容能力があろうかという広大な駐車場も週末には、上海や蘇州などからのマイカー族のドライブ客で駐車スペースがなくなるというから驚いた。ここでも時代の変化を実感した。

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(とにかく国内観光客の多いのには驚いた)

江南地方は別名「魚米の郷」とも呼ばれ、水稲、麦、綿、シルク、茶、魚、カニなど食材の宝庫でもある。

今回も淡水魚や上海ガニ、エビなどの養殖場、延々と広がる水田やビニールハウスが至る所で見られる。

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長江に繋がる大小の湖とそれらをつなぐ運河が網の目のように広がっているのである。

中国第一の水郷と呼ばれるこの街でも、その穏やかな流れと水と共に暮らす人々の生活を眺めていると本当に気持ちが和らいでくる。

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(水郷での生活風景)

上海から車でわずか1時間半ほどのところで春の息吹を体一杯に感じることが出来るエリアがあるのだ。

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(遠くに広がるのは淀山湖)

この20年ほどの間、海外からの投資も急増し、一帯では多くの工場も稼動している。国内観光客も飛躍的に増え続けるだろうから、この地も、もう穏やかでなくなる日が近いかもしれない。

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(昔の中国にタイムスリップ)

東洋のハワイ…三亜にやって来た

海南島北部から南部へ向かう道は、
東回りと西回りの2つのルートがある。

東回りは観光ルートで、見所が多い。

アジアフォーラムで有名な博鰲(ボアオ)鎮もこの沿線だ。

今回、我々は滅多に通る機会の少ない西ルートを進むこととなった。

洋浦開発区を後にして
目的地である三亜市までの約3時間の沿道には
椰子、檳郎、竜眼、バナナなどの畑が延々と広がり、
亜熱帯の農村風景に少しも飽きることがなかった。

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海南島の南西部はバナナ畑が広がる

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沿道にて

ここ海南島ではコーヒーも栽培されている。
沿道のコーヒーのテーマパークで一服したが、意外に美味しかった。

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(海南コーヒー…現地語では“コビ”と言うらしい)

ちなみに中国の高速道路は日本と同様、有料だが、
ここ海南島は、ガソリン税から手当てされていて、
通行料金は徴収されない

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(海南島では高速料金はタダ)

夕刻、海南島最大のリゾート地である三亜に到着した。

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(ブーゲンビレアの花がお出迎え)

細長く広がる海岸線では、ビーチやリゾート施設が延々と広がる。

夕暮れ前のひと時だったが、
どのビーチも観光客で賑わっており、
海水浴を楽しんでいる人もいた。
やはり中国南端の海南島である。

先週、広東・香港と台北にいたが、
肌寒くてビックリした記憶が忘れられない。

私はハワイに行ったことがないのだが、
同行の人によるとホテルからの眺めはワイキキビーチを
思わせるそうだ。

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(ホテルのテラスからの眺望)

三亜のリゾートホテルは、どこもプールやガーデン、テラス付きのようで
私たちが宿泊したホテルもビーチサイドで
設備、内装ともに洒落ていた。

土産屋、カラオケ、屋台など夜遅くまで賑やかなのは、
東南アジアのリゾート地と少しも変わらない。

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(豊富な海鮮・・・左は海南島でしか食べられないマンゴー貝)

それにしても、三亜や海口では
とにかく韓国人ツアー客の多さが目立った。

現地の人の話によると、
春節期間中から2月下旬の予定で
仁川と釜山から毎日のようにチャーター便が就航し、
多くの韓国人観光客が来訪したという。

060227golfbag ホテルでも、ハングル文字の名札をつけたゴルフバックがたくさん並んでいる。

ゴルフに温泉、リゾートライフと
三亜は韓国の人にとっても気軽で魅力的な観光地となったのだろう。

もちろん、春節期間中は
中国国内からの観光客でごった返したのだという。

ホテルの価格も2・3倍などではなく、
7~10倍も跳ね上がったそうで、
普通のツインが一泊7000元(約12万円!?)もしたという。

タクシーの運転手も、この間、休む間もなく働き
大いに儲かったそうだが、
春節も去り、観光客のピークも過ぎたせいか、
やたらと「案内するからどこかへ行かないか」と
必要もないのに盛んに声をかけてくるのであった。

ホテルといい、タクシーといい、
中国の市場原理というものは物凄い…。

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三亜の朝焼け

滞在時間が短く、街を探索することが出来なかった。
また、ぜひ訪ねたい街だ。

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早朝の三亜空港

中国最南端の楽園をゆく

060227map2 15年ぶりに、海南島を訪れた。

上海から空路3時間で海口国際空港に到着。
飛行場も沿道も昔とあまりに大きく変わっていたのでビックリしてしまった。

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(海口空港)

最初に海口を訪問した時は1980年代中ごろで
まだ広東省の一部であった。
その後1988年に独立して海南省となり、
同時に島全体が第5番目の経済特区に指定された時は
大きな話題となった。

街道沿いには椰子の樹やガジュマロの樹が植えられ、
やはり南国の風情が漂っている。
ホテル到着後、さっそく街に飛び出してみる。

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(ヤシと近代マンションの林立が今の海南島を物語っている)

海口の繁華街らしく、大勢の人が集まっている。
やはり顔立ちが異なっており、黎(リー)族か苗(ミャオ)族だろうか
明らかに漢族と違う様子がとても興味深い。

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一歩、路地に入ると、そこは庶民のワンダーランド。
市場あり、屋台あり、食堂あり、日用品屋ありで
中国南方のどこにでも見られる住民コミュニティーが
そこにあった。

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果物もマンゴーやスターフルーツ、マンゴスチン、パイナップルなどの熱帯果実が豊富に並んでいる。
青果市場も夕方に近いせいか活気が物凄かった。

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地元の言葉はもちろんわからないが、大陸各地からの居住民が多いためか標準北京語も飛び交っている。広東語とも違う独特の訛りが耳につく…。

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地元幹部の話では、2000年に入り、ようやく成長軌道に乗り出したそうで、昨年も年率10%を超える域内成長率だそうである。

島内は、観光資源開発と農水産加工、自動車などの精密部品、エネルギー・ケミカルなどに特化した開発戦略を求めているようだ。

15年前とはすっかり変わった海南島に、改めて強い興味を抱いた。

愛媛で農産物輸出を考える

愛媛県松山市で、(社)愛媛県産業貿易振興協会、ジェトロ愛媛貿易情報センター等の主催による「愛媛県農林水産物輸出促進セミナー」が開催された。

輸出セミナーは、昨年に続く2回目の開催だそうだが、70名を超える熱心な参加者を集めた。

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東京からジェトロ農水産部の石川総括審議役が、国の様々な施策や輸出事例などが紹介された。国の輸出事業推進の最前線におられる方だけに、貴重な情報を幅広く勉強できた。今後、東アジアだけでなく、インド、中東、欧州にまで、日本食の普及を目指すジェトロの意気込み熱く語られた。

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(ジェトロ石川審議役)

私が2番手に立った後、トリを務められたのは、島根県西部のJA西いわみの御手洗部長で、プレミアム米の台湾向け輸出の事例についての講演があった。JA西いわみの「ヘルシー元気米」の台湾輸出は、いまや伝説となりつつある成功事例として、小泉総理がアドリブで紹介するほどだ。

051215ja 中山間地の単位農協が、自力で無名の減農薬米を海外に輸出する挑戦は大きな注目を集めた。決して派手な語り口ではないが、人任せにせずコツコツと実績と信用を勝ち得ておられる経緯を説明された。いたずらに量を追い求めるのでなく、質を高め、息長く海外に販売することで組織が活性化し、地域が元気になるという大きなビジョン支えられた活動なのだ。

石川審議役も御手洗部長も、早くからお名前は耳にしていたが、対面が実現し、たいへん勉強になった。

松山といえば、漱石の坊ちゃん。そして道後温泉である。話を聞くと、韓国や中華系のツアー団体客が大勢温泉三昧にやってくるという。館内には、ハングルや中国語の表記がされていた。彼らもきっと愛媛産のミカンや水産物などの素晴らしさを体験していることだろう。

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(道後温泉本館正面)
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(館内の表示板。各国語で表記されている)

今回、松山を訪れるにあたって、もうひとつの楽しみがあった。

私の農業、ITの師匠である農産物コンサルタントの山本謙治氏(通称やまけん)が、親友のホリエモンこと堀江貴文氏と人気スポーツライター二宮清純氏の三人で、「愛媛じゃこ天ツアー」を敢行したときの紀行ブログを見て、ぜひ松山に来たらじゃこを味わおうと思っていたのだ。

良かったら、ぜひ氏のブログをご参照いただきたい。きっとじゃこ天が食べたくなるから…。ちなみに山本氏と二宮氏は愛媛県の出身なのだ。
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/06/with_1.html
(やまけんの出張食い倒れ日記)

私は今日まで、じゃこ天は、チリメンジャコを使って作られるものだとばかり思っていたが、現地に来てそれが間違いであることがわかった。「はらんぼ」と呼ばれるほたるじゃこという魚を骨ごとすり潰して油で揚げるテンプラである。

前夜、会席料亭で板前さんにわざわざ私の為に、揚げたてのじゃこ天を特別に作っていただいたのだ。もう感激、絶句であった。グルメブログでないので詳細は省くが、すり身独特の深い味わいで、瀬戸内の潮を香りを感じさせる見事な一品であった。

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(忘れられない愛媛の味)

ちなみに、香港をはじめ、東南アジア地域では、この魚肉練り製品はとても良く食べられている。もしかしたら、近いうちに、この愛媛のじゃこ天が海外でも味わえるようになるかも知れない。

畜産の町を訪ねて

宮崎県高城(たかじょう)を訪ねた。

昨日から降り続く雪は、九州高速道を南下する道中、熊本/宮崎/鹿児島の県境付近で横殴りの吹雪になり、速度規制をするほどだった。都城インターを降りると、肌寒い中にも晴れ間も見え、南国太平洋側に近いことを感じた。

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到着するや否や、高城町役場の課長さんの案内で、農業関連の現場も見学させていただいた。

高城町は、豚やブロイラー、肉牛・乳牛など畜産の生産額が農業全体の86%という地域だ。
農産物は、水稲のほか、ゴボウ、サトイモ、キュウリ、イチゴ、葉タバコ、茶葉などを産する。

来年1月には、隣接する都城市と合併する予定である。
今年の台風15号は、この地方でも大きな被害をもたらし、ここ一帯のハウスが完全に水没するほどの冠水に見舞われたという。とても信じられない。

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(この一帯は畑も家屋も皆、浸水したという)

最初に、認定農業者協議会の会長さんのハウスを見せて頂いた。

広いハウス内には、見事にキュウリの苗が植えられていて、すでに実っていた。

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「吊り下げ式栽培」という、この一帯では広く採用されている効率の良い栽培方法だそうである。とにかく見事という他ない。

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(吊り下げ栽培。ワイヤに水色のフックが掛かっている)

続いて、乳牛の酪農家を訪ねた。

お馴染みのホルスタインがずらりと並んでエサを食んでいる。牛舎を覆う酸味の強い発酵臭は、飼料成分によるものだろうか。稲藁は地元のものを使用しているとの事である。

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お話を伺ったら、冬は夏場に比べて、需要も減り、原乳の単価も低くなるので、作業量が減るのだという。
夏場の良い時で1リットル100円くらいで、今の時期は70円ほどの厳しいものだという。

また、成分により価格が変動するそうで、脂肪分の多い原乳を採ろうとするとどうしても高価な飼料を与えなければならないという
大変な作業だ。
それでも、当地の畜産は、農産に比べ、後継者は比較的確保しやすい方だという。

引き続き、町内最大の肉牛の肥育場も見学させていただいた。
とにかく広い敷地に延々と牛舎が連なる。いわゆる宮崎牛として出荷される和牛の黒牛と、ホルスタインの去勢牛が数多く肥育されている。

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(ホルスタインの去勢牛)

このホルスタインの去勢牛の販路は、主に大手食肉パッカーに出荷されるのだが、まさに昨日発表されたアメリカ産牛肉の輸入解禁により、来年には価格の軟化が懸念されるらしい。
畜産県である宮崎や鹿児島にも、また超えるべき試練が迫るかもしれない。

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(町内には、焼酎原料用甘藷の大貯蔵庫もある)

ほかにも、町の委託事業のひとつであるコメ粉で作ったパン工房も見学した。新たな取り組みを模索している。

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夕刻、年一度の研修会に参加させていただき、貴重な情報交換を行なった。

篠原町長をはじめ、100名を越す認定農業者が集まり、活発な議論を行なった。

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農畜産物の輸出に対しても強い関心を示していただき、とても頼もしかった。

畜産物は金額が大きいだけに、輸出するにしてもその実績が期待される。BSEや鳥インフルエンザなど今後の推移が気になるところだが、香港ではBSE以前、宮崎牛はブランドでもあっただけに、関係者には、来るべき解禁の時はぜひ頑張ってもらいたい。

寒さ募る高城の町を、ひとり深夜あとにした。

このエントリをすぐにアップする事を期待してくれているある方に捧げます…

思わぬ吹雪に遭遇する

今日は朝から雪が降り出した。

午後から、福岡県田川地域農業改良普及センターでの研修会に参加すべく、バスでの移動中、突然の吹雪に遭い、思わぬ雪景色となった。

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田川市後藤寺の街についても、雪は降り止まず、手がかじかんでしまって、ここ九州でも思わぬ寒さだった。

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(後藤寺の街で)

今日の研修会は、県の農業普及員の皆さんによるもので、2時間にわたりアジア市場に向かって攻める福岡県の輸出の取り組みについて講演させていただいた。

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(田川地域農業改良普及センター)

この地域は、良質な水や土壌に恵まれ、県下では最良食味の美味しい米が採れるのだそうだ。また、トルコキキョウの生産では県下最大で、花卉の輸出についても関心が寄せられた。他に、イチゴや甘柿、梨、メロン等の栽培も行なわれている。

若くて優秀な指導員の方ばかりで、たいへん熱心に話しを聞いていただいた。

田川は「炭坑節」で有名な旧産炭地のひとつでもあり、近年の停滞振りが懸念されている地域ではあるが、若い指導者にはぜひこの農産物輸出の挑戦の現状を多くの生産者に伝え、元気を出してもらって、新たなチャレンジに取り組んでもらいたいと願っている。

九州上海事務所が正式開業

再び上海を訪れた。

2週間ぶりなのに、朝晩はめっきり寒くなって、街行く人も冬の装いだ。

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(南京西路のブランド街で)

21日、上海市のホテル、花園飯店で、「九州上海事務所」のオープンを記念して、レセプションが盛大に開催された。

この九州上海事務所は、福岡県、北九州市、福岡市、九州電力の4団体による共同事務所で、自治体や企業が連携して、上海を基点に中国における情報収集や支援サービスなどを行なうもので、非常に画期的な取り組みといえる。

レセプションでは、上海市、江蘇省、連雲港市などの中国側来賓をはじめ、日本側は関係自治体の副知事や副市長等をホストに、総勢300人を超える招待客を集め、この種の式典としては非常に大規模なものとなった。九州のこれからの上海および中国に対する意気込みの強さが感じられる。

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式典での九州紹介のコーナーでは、福岡県をはじめ、沖縄県を含む九州全県の情報や物産・観光を映像を通じて紹介した。

あくまで「九州」である。観光や物産、企業誘致などを海外に向けてアピールするためには、やはり県境を越えた広域連携が不可避である。

特にアジアでは、北海道、東北、九州という名称の認知度が最近急速に上がっており、これを利用しない手はないのである。

もちろん、各県や市の担当者は、県名、都市名ブランドの売り込みに熱心だから、九州と**県、△△市などと巧く使い分ければよいのである。各自治体間の競争と連携は、今後、多様な展開を見せることだろう。

式典と併催で、「九州福岡産業観光展 in 上海」が開催された。

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上海からわずか1時間半という近さをもつ福岡の多様な観光、産業資源を紹介した。また、福岡県が重点とするIT、自動車産業、ロボット産業に関する展示も行なっており、来場者の注目を集めた。

051125aibo (ロボット犬も参加)

物産についても、地場産業の得意技を披露するものになっていた。博多織や久留米絣、日本酒、大川家具も、展示はもとより、ミスが笑顔で応対したり、販促マーケティング関係者が人脈構築や情報収集に取り組んだ。

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(博多織も中国への輸出を検討している)

加工食品も、日本酒・焼酎のほかに、和洋菓子、飲料、明太子、ラーメン、味噌、醤油など幅広い商品が紹介され、来場した中国人関係者の注目を浴びた。

「私たちで取り扱えないか」という引き合いが随分あり、反応の強さに驚いた。

輸出にかかわる煩雑な手続きなど、克服すべき課題は多いが、九州・福岡の産品の潜在的な需要があることを確認できたという点では収穫があった。

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(食品のコーナーは人で一杯)

会場では、招待者全員に化粧箱入りの愛宕梨(あたごなし)が配られ、大好評だった。一個1kgほどもある巨大梨だが、食味も食感も、そして見た目の豪華さも中国人の心を捉えたらしく、日本ブランドの実力を、ここでも確認することが出来た。

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(福岡の愛宕梨は大きくて歯ざわりが良いと大評判)

もちろん、この福岡産愛宕梨は、いま、上海の高級デパートでも高値で販売されている。

今後に向けて、手ごたえ十分だ。

秋の名品「鳴門金時」の畑を見た

徳島にも、全国に有名な農水産物が多い。
今回機会あって、名高い産物の生産現場を訪ねることが出来た。051115kintokiimo

徳島の名産といえば、まずは、なんと言っても「なると金時」と称するサツマイモである。

東の「べにあずま」と並ぶ西の代表格で、大阪市場などでは圧倒的なブランドになっている。

あの上品な甘さとホクホク感はたまらない。

ブランド名は早くから知っていたが、
どんなところで生産されているのか想像もつかなかった。

徳島県の北部、鳴門市郊外に“なると金時”の栽培を見ることができた。

東岸は紀伊水道に面していて、一面の海岸線が広がる。
北側を臨むと、淡路島が近くに横たわり、関西がとても近いことを実感できる。
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(鳴門側の海岸より淡路島を臨む)

実際、鳴門橋の開通以来、神戸や大阪、京都などには日帰り圏内で、ショッピングや行楽に出かけることは普通の事だそうだ。当地の言葉も関西のイントネーションだから、昔からその結びつきの強さは容易に想像できる。

ここ一帯の農地は、独特の海砂の畑で、しかも緑っぽい色をしたここだけの砂らしいが、どうもこれが鳴門金時のすごさの秘密らしい

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皮の鮮やかな紅色がすぐに目を引く。

大きさも立派だ。

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(すでに収穫は終盤)

海外では、台湾、香港、シンガポールでこの鳴門金時が売られているのを見たことがある。

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(台湾で売られていた鳴門金時)

すでに収穫は終盤を迎えていて、採り入れが終わった多くの土地には、はや大根が元気に育っていた。

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(砂地の高い畝が特徴的だ)

砂地というと、らっきょうも思い浮かべるが、やはりここでも栽培されていて、紫色の花がとてもきれいだった。

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また、徳島はレンコンの産地でもあり、ちょうど収穫の風景も見られた。
他の多くの産地は、水が張ってある状態で、水圧を使って収穫するのに対して、徳島県の場合は一旦水を引いて、泥を露出させた上で、重機を使って掘り出すそうだ。

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それにしても、レンコンがどこに埋まっているかを探り当てるのは、
素人では出来ないらしく、また、こんなに重労働だとは思わなかった。
これからレンコンを頂く時は、感謝して食べよう、と思った。

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次に、トンネル栽培のニンジンの生産現場を見せてもらった。
品薄のシーズンを狙って投入されるもので、4月には立派なニンジンが出荷されるのだそうだ。

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トンネルといっても人が中に入って作業できるほど大きく、以前は竹だった芯も今は金属製で、機械で設置されるそうだ。

水産物でも「鳴門ワカメ」は三陸に並んで有名で、海岸の至る所で養殖ワカメの「ワカメ棚」を見ることができた。やはり現地で、生産されている風景、環境、生産者の人たちと触れ会うことで、理解を深め、そしてファンになってゆく。

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(有名な鳴門のうず潮)

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(この日は、地元の人も滅多に見ることができないようなはっきりしたうず潮を見ることができた)

徳島の多様な物産の生産現場を訪れ、とても豊かな気分に浸ることが出来た。

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(徳島の農業を潤す“四国三郎”吉野川)

四国が一気に近づいてきた。