「天津三絶」という言葉をご存知だろうか? 天津三絶の看板
天津の3種の名物というような意味で、
街を歩くとこの言葉を時々目にする。
その筆頭は、全国的にも有名な天津名物「狗不理(ゴウブリー)包子」(豚饅頭)だ。
「狗不理」は約150年も続く「中国老字號」(老舗ブランド)のひとつで、
天津に初めて来たら誰でも一度は食べてみたいと思う一品だ。
この狗不理の名前の由来だが、
よく「犬も見向きもしない」との直訳でまことしやかに言われているのだが、
犬も食わない様な物が、何で旨い名物を指すのか私にはこれまでどうしても解せなかった。
ちなみに中国語で「狗」とは犬のことで、
「理」とは、ここでは動詞で(相手にする・構う)という意味である。
どうもこの由来は、巷でも意外に知られていないようなのだ。
タクシーの運転手に聞いてもあやふやで、
天津っ子でも正確に知らない人がいる位だから、
結構いい加減なのか、はたまたどうでもいいことなのだろうか。
由来を簡単に説明すると、
今から150年余り前に河北省武清県に生まれた幼名「狗子」(ワンちゃん)と呼ばれた男が、天津で肉饅頭屋を始めたが、これがめっぽう美味しくて大変な評判を呼んだ。
しかし、あまりに忙しく、いちいち接客できない(狗子売包子不理人)ため、いつしか人々の間で「狗不理」(客をかまわない狗子)と呼ばれるようになったのだという。
天津の本店で、そう解説してあったから、これが真説なのだろう。
本店の解説文
最近、日本でも職人堅気で、無愛想なラーメン屋の主人がいるけれども、そんな感じなのだろうか。
今や全国に多くのフランチャイズを持つ「狗不理包子舗」だが、天津に来たらやっぱり総本店で食べたくなるのが旅人の人情というものだ。
本店正面
蒸し立ての肉まんを一口ほお張ってみる。
「ん~ッ!?」
実は、見た目は特別ウマそうではなく、また食感もさほど良い訳ではない。上海の小籠包のように、熱々のスープが滲み出てくる訳でもない。どちらかと言うとパサパサとした感じで、肉餡も少なく、拍子抜けしてしまった。
ところが、一口食べると、またひと口と箸が伸びる。
強いて言えば、なんだか不思議な後を引く旨さなのだ。
値段が高い「三鮮包」(三種餡)よりも、安い「猪肉包」(豚肉だけの餡)の微妙なコクと塩加減の方が私には食欲をそそる。
軽食セットでは、この肉まんに、粟と緑豆で出来たお粥や醤油漬けの漬物を一緒に添えて食べるようだ。
添え物の粟・緑豆粥
今回ばかりは、狗不理の肉まんの味よりも、
犬が見向きしないのではなく、
主人のワンちゃんが客に見向きもしないという店名の由来を知り、
長年の謎がクリアになったことの方が感動したと言ったら天津の人に悪いだろうか? (続く)
みんな、包子をほおばる、ほおばる
街頭の壁にまで…(狗不理の肉まんをいつも食べると長寿になると書かれている)
田中 豊
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