赤ひげ病院で悟った今年の行動指針

この正月、
心の底から静かに感動した話を聞いてください。
 
 
年末休暇が始まった昨12月29日の午後
高齢の父が転倒して、額に大怪我をしてしまいました。
 
 
日曜で、なおかつ年末休暇で病院はどこも既に休みで
公的機関である急患センターへ運び込みました。
 
たまたま外科医として当直していた30代後半くらいの
一見地味な医師がテキパキと縫合処置してくれたのです。
 
脳内のチェックも、連絡がつかない薬剤部との指示も
その医師が自ら動いてくれて、
慌てて動転していた僕が正気に戻るほど
冷静沈着で完璧な応急処置をしてくれたのでした。
 
 
それでも、怪我の状態が極めてひどいので
毎日、チェックと消毒が欠かせないとのこと。
 
 
長い連休が始まったばかりで
不安に思っていたら、
 
「大丈夫。安心しなさい。
明日からは自分が勤めている
町の医院に来てください」と。
 
 
言葉通り、大晦日も、元旦も三が日もずっと
病院を開けて治療してもらっています。
 
   
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その病院は、今では珍しいくらいの古びた病院で
カルテも手書き、医・薬も分業しておらず、
70過ぎの老院長が取り仕切る 
本当にクラシカルでアナログな町医者風情なのだ。
 
 
大晦日や元旦だから、
当然、看護師さんや事務の人がいない。
 
 
その担当医と老院長と若い男性医師だけで
10人ほど来院した患者を黙々と処置していく。
 
 
機器の準備や消毒交換、絆創膏の出し入れからすべて
その二人の男性医師が駆けずり回ってこなしていく。
 
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こんなに医師が駆け回る病院は見たことが無い。椅子に座っていることがない
 
 
元旦、2日、3日の昼間にです。
 
 
それに医療事務スタッフがいなければ
普通、預かり書を患者に渡して5000円か1万円を預かって
後日精算をするはずなのだが、
ここは名前だけ書いておいて、後日支払い。
 
 
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なんと治療の掛け売りではないか!
患者が来なければ取りっぱぐれたり、
保険事務が面倒になるのは病院側になってしまう。
 
患者を信じているの?
 
 
 
しかもニコニコと、すべての患者に
 
「大丈夫、もう心配要らないよ」
      
「明けましておめでとう!」
 
「今年はきっといい年になるからねぇ」
 
と自ら寄り添い、絶対に声掛けを忘れない。
 
 
 
嫌々な義務感では決してやっていない、
正月なのにやらされている感が微塵も無く、
疲れや面倒な表情も一切見せないのだ。
 
 
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このお二人が仁術医の赤ひげ先生だ。
左の先生は、前日の元旦に24時間の当直勤務明けした朝なのだ
 
 
この信じられない光景を見て
僕は自分でも無意識に頭を深く垂れていた。
 
 
全ての患者が、その老先生・若先生に対して
笑顔で丁寧に深々とお辞儀をして
お礼を述べている。
 
 
いったいこの僕は、今まで何をやっていたんだろう?
 
 
 
確かに、医師だけでなく、
旅館やホテルのサービス業は正月が掻き入れ時だし
警察官や消防士、自衛官ほか多くの公務員も
年末年始は休む時ではなく、忙しい期間のはずだ。
     
最近は小売業も元旦や2日が初売りだったりして
正月休み返上の業界は増えている。
 
 
 
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病院の玄関には休診の張り紙がしているが、建物の中では連日てんやわんやの処置が行われている
 
 
でも、でも、
僕は、この老医師、ベテラン医師、若い医師の
日常的にすら見える淡々と、黙々とした献身介護ぶりを見て
心の底から感謝し、感動した。
 
 
 
同時に、農業の現場でも
人の目の届かないところで、
休むことなく、正直に誠意をこめて、自然相手に、
消費者の笑顔を励みに日々研鑽努力する
農林水産畜産業の生産者、支援者の姿が重なりあった。
 
 
 
おりしもTPP参加で、もっとも影響を被り、
業界改革が急務だと言われてる農業と医療の世界。
 
大規模化、近代化、効率化、IT化・・・。
 
 
一方で、このような市井(しせい)
地域に根ざして決して目立つことがない、
真の農業者、医療従事者の活動が
少しでも報われる制度にも改革して欲しいと切望している。
 
食料も命も、やはり人の手で守られているのだから。
 
 
彼らは微塵も不平不満を漏らさない人たちなのだ。
 
 
 
僕自身も謙虚に学び、自ら顧(かえり)み、
情熱と誠意を尽くすことこそ我が核心なり」と再認識し、
今からでも遅くはないと、改めることに躊躇せず
新たな一年の指針テーマとして行動したい。
 
 
 
小さな小さな正月の出来事でした。
 
 
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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。

“赤ひげ病院で悟った今年の行動指針” への2件の返信

  1. お父様の具合は如何ですか?(実は僕の父親もバッタリ倒れて・・・こちらは幸いなことに擦り傷程度で済んだ次第です。)
    それにしても良い教えを頂きましたね。更にこちらまでブログを通じ「かくあるべき」という姿を頂き、新年から身が引き締まる思いです。環境などではなく、人柄(志)が重要であることを改めて感じます。
    くれぐれもお父様の一にも早い回復をお祈りします。また、ニッポンを売る!さんもご無理なされませんよう、お互いに淡々と粛々と情熱を持って「プロの仕事」に徹しましょう。

  2. inoueさん コメントありがとうございます。
    お見舞いの言葉に深く感謝しています。この医師とinoueさんの姿は本当に重なります。いつも謙虚で誠意を尽くす仕事をされていて多くの事業者の方から信頼を得られていますね。
    すでにスタイルを確立しておられますから、今年はさらに自信を持って農業現場で活躍されますよう心から期待しています。

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