毎年好評の食品ビジネスイベントが開催される

る3月20日、福岡市で「FOOD2006 in FUKUOKA」が開催される。

この事業は、福岡市福岡商工会議所、(社)福岡貿易会ジェトロ福岡貿易情報センターの4者で構成される「福岡アジアビジネス支援協議会」が主催するもので、在福岡の各国貿易代表機構も後援している。

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今年の事業は、中国、イタリア、カナダ、タイ、台湾、韓国、シンガポールから50社近くの企業が集まり、品質や価格、安全性などに特徴ある食品・食材を展示商談する「新食品・食材商談会」とその食材を用いてプロの調理人がアイデア料理を競うキッチンデモンストレーションが目玉の「福岡対話」の二つのイベントで構成される。

実はこの福岡市のFOOD事業は、過去6回にわたって毎年開催されており、すでに圏内の食品関係業者の間ですっかり定着した評判の事業なのである。

その理由は、第1回目からこの事業は、「個性も特徴もない商談会やセミナーにしない!!」「出展者にも来場者にも役に立たない、主催者の独りよがりのイベントにしない!!」というスタッフの強い意志があった。

東京や関西と異なる九州圏の食品企業のニーズを事前に徹底的に調査し、日本側需要家が求める商材をアジアの各企業に準備してもらうことと、福岡対話と称するシンポジウムでは、その時代の半歩先ゆくテーマ、たとえば、輸入食品の安全性、ITと食品、地場食品の輸出などを常に情報発信し続けてきた。

今年もアジアを中心に、欧米企業も一堂に会して、個性ある新商品を出展提案してもらい、食べ方のレシピも実演で提供するという新たなコンセプトで「食都福岡」「食品ビジネス拠点都市―福岡」を情報発信する。

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毎年毎回、進歩・進化する今年の事業には、すでに過去最高の来場希望者のエントリーが事務局に寄せられている。食品関連の企業、企画関係の方は、ぜひ参加されることをお勧めしたい。

開催日: 3月20日(月)
会 場: ソラリア西鉄ホテル8階大宴会場「彩雲」

プログラム:
「新食品食材商談会」 10:00~18:00
「福岡対話」キッチンデモンストレーション 10:30~16:00

参加: 無料

申し込み・問い合わせ:
福岡商工会議所経済部国際センター
TEL:092-441-1117  FAX:092-474-3200
E-mail:kokusai@fukunet.or.jp

ブランド対策セミナーに参加して(2)

…(1)から続く

ミナーの後半は、作家で金儲けの神様として知られる邱永漢氏が登壇して、「中国・台湾で勝負する農産物の日本ブランド確立に向けて」と題する講演をされた。

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実は、邱先生が9年前に福岡で基調講演をされた後、パネルディスカッションのパネラーとしてご一緒した時以来、2度目の再会となった。それ以来、邱先生の著作や行動については、ずっとチェックを入れている。

だから、邱先生の言論や発想は多少知っていたつもりだったから、日本の農産物を中国や台湾に輸出するというテーマについて講演されるとはとても意外だったのだ。

060311Qsan2 なぜなら、邱さんはこれまで、永田農法の中国での展開を提案したり、コーヒーや日本そばの中国での栽培に挑戦されているから、日本からの輸出ではなくて中国に移って生産せよという、発想としては逆なのではないか、と感じていたからだ。

講演は相変わらずの名調子で、会場を大いに沸かせた。まるで名作落語を聴いているような心地良ささえ感じてしまう。パワーポイントに頼る私の講演などは、まだまだ修業の余地がありそうだ。

060311Qsan3 やはり日本産の農産物の輸出について、邱さんは、とても難しいのではないか、と本音を漏らされた。生産コストが大幅に安い中国に対して、高コストの日本産農産物を恒常的に販売することは、邱さんの原理原則では、やはり反対なのだろう。

私はそれを聞いてむしろホッとしたほどだ。ホッとすると同時に、ますますファイトも沸くというものだ。

でも、最後には
「私は日本産の農産物がどうしたら中国で売れるのか、その答えは持っていない。普通に考えれば、とても難しいと思うからだ。もし、売れるような情報があったら、むしろ私に教えて欲しいくらいだ。皆がグズグズしているうちに、私はサッサと行動に移しますから」と。

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会場は大いに沸いた。さすが邱先生。
齢82歳にして、この発想と行動力。脱帽する他ない。

同行の方が、講演終了後に邱さんに題字を求めたら、丁寧に一字一字筆を走らせてくれた。

毎日、聞いたことのないことを聞き
毎日、見たことのないものを見る
          邱 永漢

また、大いに刺激を受けた。

ブランド対策セミナーに参加して(1)

東京・虎ノ門で、農水省、関東農政局等の主催によるブランド保護対策セミナーが開催された。

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(セミナー会場)

中国・台湾への農水産品の輸出に関わるブランド保護対策に関するセミナーは、国内でも新らたな試みらしく、たいへん勉強になった。

やはり東京、大阪には、このような情報収集の機会があるから
私のような活動をしている者は
平素出来るだけフットワークを軽くしておき
情報源を広げておかなければならない。

セミナーの前半は、中小機構国際化アドバイザーの太田光雄氏による「中国・台湾における日本産農産物のブランド保護対策」についての講演だった。

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実は、太田先生は、私が20年ほどまえ前職当時、住友商事の中国食品関連のご担当をされており、数年間にわたり、よく一緒に仕事をしていたのだ。

早くから中国に対してとても造詣が深い方で、まだ駆け出しだった私に、いろいろと教えていただいたことを思い出す。

講演では、中国における商標・ブランド戦略など知的財産権に関する様々な情報や事例を挙げて、広範囲な紹介がなされた。中国での「青森」に関する商標権の争議無印良品をめぐる日中間の侵害事例の経緯など細かく解説され、非常に参考になった。

海外における販売戦略において、日本産農産品や食品などは高級商品として扱われるだけに、ブランド維持やコピー対策などでも、「守りとしてのブランド対策」と、積極的に販売を展開するための「攻めのブランド戦略」のふたつの視点があることを再認識した。

ルート開拓にどうしても関心が偏りがちだが、このブランド構築と保護対策は、これからますます重要になると感じた。

多くの関係者が懸念するアジア市場でのコピー商品の出現は、当事者だけでは解決できないので、ぜひとも国の支援が必要な分野である。地方で輸出を展開するには、国や専門家との連携を強化すべきである。

このような情報は、私もぜひ地方で発信していかなければならない。 (続く…)

やりましたッ!博多あまおう堂々の販売第一位

台湾のシンボル的存在のひとつである百貨店で、
今年1~2月初旬の日本産農産品の売り上げランキングで
福岡産イチゴの「博多あまおう」が第一位を獲得
した。

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(台湾で販売される博多あまおう)

並み居る有名青果物の中で、
しかも一年で最も販売が伸びる春節(旧正月)前後の
歳末・正月商戦での第一位だから、その喜びもひとしおである。

もちろん短期の催事イベントではなく、季節定番商品としてである。

同時に、店舗責任者の方から、販売客単価を大きく押し上げる効果に大いに貢献した、とお褒め頂いた。

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(台湾でも人気を博した博多あまおう)

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(驚くほど頻繁に補充される…)

思えば、台湾への輸出に着手したのが3年前のこと。
それまでの香港を含めた海外輸出のノウハウをもってしても
どうしたら新市場を開拓できるか、スタッフ全員とても不安だった。

台湾は、とても日本商品の受容度が高く、
ビジネスがやり易いところと思われているが
実は、中国と同じ年の2001年末にWTOに加盟してから
ようやく農産品の輸出が手探りで始まったばかりなのである。

だから、もちろん台湾の業者も本格的に日本産青果物を輸入しているところは皆無に等しかった。

その後、福岡県は官民を挙げて販路拡大に取り組んだ。
ここ数年の努力は並大抵のものではない。
今回の成果は、絶対に一朝一夕では実現できず、
またいくつかのノウハウを応用すればよい訳でもない。

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(ミス福岡も台湾入りし、キャンペーンを行った)

「人任せの販売では絶対に上手くいかない」というのが、
関係スタッフの信念。
今回の売り上げ第一位の好成績は、
「博多あまおう」の輸出関係者みずからが勝ち取ったもの。
去年の上海向け梨の輸出成功に続く快挙で、
生産者、JA、商物流企業、そして
福岡県「福岡・食の輸出促進センター」の執念の結果である。

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(現場実践主義の県スタッフには頭が下がる)

3年前、多くの人が本気にしなかった中で
本気で「台湾向け輸出にも成功させてやる」と心から信じ、念じたこと
これが閉塞感や固定観念を打破し、
新機軸を実現させた最大の原動力である。

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(一流職人による苺大福の実演には多くの人が集まった)

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(台湾のテレビ局の取材を受ける)

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本当に多くの台湾の皆さんにお買い上げ頂きました。多謝!

日本のキャラクターも海外へ

台湾の航空会社の台北-福岡線に
キティーちゃん専用機ハローキティージェットが就航している。

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キャラクターをあしらった飛行機は
日本でもすっかりおなじみだが、
機体デザインやノベルティーだけでなく、
機材備品などにここまで徹底しているのか、と驚いた。

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搭乗の機内音楽から始まって
シート、常備袋、乗務員のエプロン、石鹸やトイレットペーパー、
そして食器だけでなく食材までもキティーのデザインが施されている。

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これでもか、というほど、機内はキティーだらけだが
乗客の子供だけでなく、大人も結構喜んでおり、
雰囲気が和んでいる。

ツアー観光客らしき台湾人の乗客が多いのだが、
福岡線はビジネスマンより観光客が多いからだろうか。

考えてみれば、キャラクターグッズは、
雑貨や食べ物、小物など結構、機内で使用できるものがあるもんだと改めて認識した。

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(化粧室の中までも…)

それ以上に、台湾の人たちのキティー熱には恐れ入った。
「卡娃伊(カワイイ~ッ)Kitty猫!」と言った感じなのだそうだ。

これがアメリカのディズニーやスヌーピーなどではなく
日本のキャラクターであることは、私たちの好感度をグッとくすぐる。

アニメを含めた日本カルチャーが海外へ雄飛することは
大きな追い風となる。

徳島でもニーハオ

徳島を訪れた。

久方ぶりの四国行で、徳島県は恥ずかしながら初めてだ。

高松から海岸線沿いを南下したが、
徳島駅に着いたのは、もう夕方5時を回っており
すでに真っ暗だった。

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明日から始まるビジネスを控え、少しでも徳島の事を知りたいと、
夜「阿波おどり会館」に足を運んだ。

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ここでは、毎日昼と夜に、阿波踊りをショー仕立てで実演してくれるもので、8月12日からの本物の阿波踊りには中々行けないが、ぜひ一度観てみたい者にとっては、本当にありがたいスポットだ。

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正面の席を確保するために早めに会場に入り
しばらくすると、品のよさそうな中年婦人や若い女性の団体さんが
大勢入って来て、僕の周りの正面の席を広く陣取った。

品がいいといっても、そこは女性たち。
いつの間にか、ガヤガヤとお喋りする声が満ち溢れてきた。

聞き慣れた方言だなあ、などと思っていたら、
なんと台湾語や中国語なのである。

「どこから来たんですか?」
とすぐに聞いてしまう私。

「台北ですよ」
と見た目には日本人と区別がつかないご婦人が笑顔で答えてくれた。

いろいろと話すと、この団体さん、
日本の有名な華道流派の台湾支部の人たちで、初めて京都の家元を訪ねてお稽古をした帰りに、徳島に観光に立ち寄ったとのことである。

051113yokoso_japan 「徳島は素晴らしい。東京や京都もいいけど、ここは空気も綺麗だし自然が美しい」

「日本には何度も来てもワクワクする」

と、屈託なく返してくれる。

嬉しいじゃないですか。
だから日本人は、台湾の人に親近感を覚えてしまうのである。

また、乗って来た観光バスの中には
抱えきれないほどのお土産を買って置いてあるそうだ。

海産珍味やワカメ、お饅頭、小物、湯呑などだとか。

私にとっては彼女らが何を買うのか、仕事柄興味深々なのだが
おば様方にしてみれば、私が何でこんなに根掘り葉掘り効くのか、不思議だったに違いない。

台湾では、結構日本の華道が盛んだそうで、
いくつかの流派があるんだそうな。

茶道はあまり普及していないらしい。

「くそっ!抹茶や和菓子、それに茶器を台湾に売り込むチャンスだったのに…」

「でも、待てよ。
普及していないということは、これから流行るチャンスということでもあるんだな。」

ただでは転びたくない性格である。

気を取り直して、

「台湾は、いつだって綺麗なお花が沢山あるから、
花材には困らないんでしょうねぇ。
蘭なんかも使って生けるのですか?」

などと、素人丸出しの質問をすると、
彼女たちは「ワハハ」と笑って答えてくれた。

「いろいろあるんだけど、季節によって台湾にはないものや
スイセンなどのお花は、日本から取り寄せなきゃならないので、結構お稽古代がかかっちゃって大変なのよぅ」

ん~っ、これはチャンスかも。

花卉(生花類)の海外輸出も
ニッポンを売るアイテムのひとつだからである。

宮崎県がシンビジュームなどの蘭鉢を中国に輸出している。

花と一緒に、陶磁器製の花器や織物のテーブルセンターなども一緒に売ってみては?

などとアイデアだけは広がっていく…

そうこう話が弾んでいると、いよいよ開演の時間。

本場の阿波踊りを堪能した。
祭りはどこでもそうだが、この鐘と太鼓、笛、三味線のテンポ良い一定のリズムを聞いているとだんだんトランス状態になってくるのを感じた。大興奮だ。

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「踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らなソンソン」

台湾の女性たちも、隅で固まっている日本人サラリーマンの人たちに混じって、いつの間にかみんなステージに上がって踊っていた。
言葉は要らない…。

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ここ徳島でも台湾や韓国、中国の旅行者が最近増えてきているらしく、
このように日本文化や食の世界を体験する人たちの間で
地方のことに対してもかなり詳しく理解している人が増え、認知度、知名度を上げている。

観光誘致、物産振興ともに、すでに海外ニーズは高まりつつある。

興奮の余韻残る、夜の阿波おどり会館を後にした。

秋のバレンタイン商戦?

香港に出張した。

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(ネイザンロードの夜景)

相変わらず最高気温32℃の蒸し暑い香港の街だったが、
外出も億劫になるような一時の暑さのピークに比べると
少しは凌(しの)げそうな気もするが、
体にこたえることは間違いない。

それでも暦の上では、9月18日(旧暦8月15日)に、はや中秋を迎える。

ということは…。

やはり思ったとおり、
大型の百貨店の地下食品売り場は、
ほとんど月餅コーナーに占拠されていた。

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イメージとしては、日本の1月末ごろから
バレンタイン商戦向けのチョコレート売り場が
食品売り場を占拠しているのと、まったく同じ。

バレンタインに全く縁のない僕がひと月間
閉口してしまうあの感じだ。

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香港や台湾、中国などでは、中秋節に月餅を贈る習慣があり
親しい友人や取引先などにプレゼントするのである。
会社がまとめて購入することもあるそうで
メーカーにとっては、一年の売り上げをここで稼ぐ大事な時期なのである。

ここ香港でも最近は、有名ブランドの缶入り定番ギフト以外にも
デザインが工夫されたり、洋風のケーキのようなもの、
アイスクリームでできたアイス月餅、
冷やして食べる「氷皮月餅」などというユニークなものまである。

まもなく開園を控えたディズニーのイラストの付いた缶に入った月餅も売れており、トピックを感じさせる。

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(台北の百貨店地下売場でも)

月餅の上に金箔がのっている程度は許されるが、
昨年、バブルの様相の中国で、
月餅の中に金貨や旅行券を入れたり、
住宅つきなど豪華景品をつけた「バブル月餅」が登場し、
景品目当てに月餅を食べないのは浪費であるとして、
中国政府は、7月に華美を規制する通知を出したという。

贈賄汚職につながったり、華美な包装材が大量のゴミを発生させたりするためだと言われている。

この時期、月餅以外にも
乾し椎茸や貝柱、ふかひれなどの高級乾貨物のギフトセット
コーナーで販売されていた。

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(椎茸や貝柱等の高級食材ギフトも良く売れる)

また、満月にちなんで、この頃出荷されるナシ
売れるようになった。
鳥取県の20世紀ナシをはじめ、
昨年からは、日本の複数の県の豊水などの赤ナシ
売られるようになり、
旧正月(春節)に次ぐ有望なギフト商戦と位置づけられている。

台風の恐ろしさを体験

香港・台湾に出張した。

おりしも、ちょうど台風13号(漢字名:泰利)の来襲に遭い
ひさしぶりに出張先で台風を経験をした。

31日午後、台風襲来を承知で、
香港から台湾へ強硬移動。
空港に着くや、激しい風雨に見舞われた。

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(台湾・中正空港で)

上陸は翌朝ということで、
夕刻数時間ですべての用件を済ませ、
ホテルへの帰路、
車から降りたその瞬間、
足元から信じられないような強い風が吹きあがり、
一瞬、視界が無くなり、息が出来なくなってしまった

吹き飛ばされそうな体を支えるのに精一杯で
道路に立ち尽くしてしまった。

もちろん、全身ずぶ濡れになったが、
何度も日本で台風は体験しているが、
一瞬とはいえ、路上で動けず、
体が飛ばされそうになった恐怖体験は
初めての事
だった。

きっとこれが風速4~50メートルという状況なのだと思う。

31日夜のニュースで、
南部では、夜にもかかわらず、
36℃の強い熱風が吹き荒れたのだそうだ。

亜熱帯の台風の凄さを身をもって体験した。

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翌早朝、上陸後の台風の目に入っている間、
静まり返った街中を散策してみた。

街路樹が根こそぎ倒れていたり、
看板が外れたりしており、
時折吹き付ける強風に、思わず緊張してしまう。

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午前9時になっても、台北の大通りは、
人も車も往来していない状態で
こんな光景は異様だった。

学校も会社も臨時休校や全面休業だからである。

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(普段ならバイクと車で渋滞の朝の通勤時の目抜き通り)

テレビニュースでも、中南部の農村部の惨状を伝えるものが多く、
土砂崩れや決壊、浸水などの報道とともに、
産業別では、やはり農業、
特に果実の被害が甚大になるとの予測である。

台北市の青果の卸売価格も平均10~15%上昇しており、
一部ブロッコリーが20%、レタスが132%アップという報道もあった。

実際に早朝の台北最大の濱江青果卸売市場に足を運んだが、
人影はまばらで、テレビの取材クルーの姿が目立つくらいだった。

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(閑散とする卸売市場)

農業はどうしても自然災害に左右される。

先の台風5号が台湾を襲い、50年ぶりの被害をもたらしたと言われているが、ある台湾の輸入商社一社だけで、
このひと月間に日本で暴落した群馬県産キャベツを
19コンテナ(40フィート)も緊急に買い付けたという。

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そう言えば、台北のある高級スーパーでは、
地元台湾産のしおれたキャベツより、
立派な日本産キャベツの方が3割ほど安くてビックリした。

物流や商流が構築されると、台風などをきっかけに
思いがけない事態が起きるということだ。

危険と隣りあわせだったが、いい経験をさせてもらった。

高雄の変貌ぶりに驚く

およそ7年ぶりに、高雄に来た。

台湾南部の大都市、高雄は、
コンテナ取扱量でも世界第5位のアジアを代表する港湾都市で
台湾経済の発展とともに大きく変容してきた街である。

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(アジア物流の拠点-高雄港)

宿泊したホテルが85階建ての高層ビルの61階の部屋で、
その眺望のよさも見事だったが、単なる港町だと思っていたら
かつてのタイペイ(台北)を思わせるような規模に拡大している。

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(陸地にも広がる高雄の街)

商業の中心地には、日系百貨店の看板も目立つ。
伊勢丹、三越、そごう、阪神などなど。
大丸も今は撤退したが、店舗を構えていたという。

高雄の人たちは、とりわけ親日的な様子で、
出会った人は大方、心底日本びいきではないかと感じてしまう。
だから、食の世界でも日本製、日本産の商品は関心が高いようだ。

また、ここ数年、富裕層が増えたそうで、
高額商品のほとんどが、地元ローカルの顧客層が購買するのだという。

台湾のお金持ちは、確かにひと目でそれとわかる風貌の人もいることはいるが、暑い気候の土地だからか、服装や持ち物をみても庶民と変わらない人が結構多い。
普通のTシャツを着てハンバーガーなどをかじっているようなオジサンがベンツに乗って、すごい時計をしていたり、高級レストランやスポーツクラブなどに出入りしていたりする。
袈裟の良し悪しで、簡単に判断できないのである

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(ここにもいた台湾家族の団結力)

ちょうど25日の午後2時に、防空訓練と称する
市民総動員の避難訓練に出くわした。

14時の時報と共に、街を歩いている人も
デパートで買い物をしている人も、
決められた防空施設(シェルター)に非難するのである。

おりしも、中国でロシアとの共同軍事訓練の最中で、
すわ緊張か、と、妙に興奮したが、
今日の訓練は、年一回定められた定期的なもので
年中行事のごとく慣れた感じだった。

050826boukuu それでも、街には装甲車が走ったり、
戦闘機が高速道路に着陸訓練することもあるそうだから驚く。
平和になれた日本人には、にわかに信じがたい。

台湾には徴兵制もあり、地域によって様々なコストがあるもんだと考えさせられる。

コストといえば、高雄まで、農産物を運ぶとすると、運賃、積み替え、荷痛みなど地方独自のコストが発生するかもしれない。

これまでは、タイペイ、香港、シンガポールなど、
国際空港のある拠点都市で販売していたから、あまり意識していなかったが、高雄の街では新たな課題ができそうだ。

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(高雄市有国民市場にて)

それでもアジアでは、高雄までは十分にマーケット目標にしても良い都市なのかもしれない。

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(夜遅くまで多くの客でにぎわう六合夜市)

上海で輸入果実のすごさを知る

福岡空港を午前10時発の便に乗ると
なんと上海には10時半に到着する。

時差が1時間あるためだが、
実際の飛行時間はわずか1時間半。
東京へ行くよりも短い。

しかも、この航空会社は、
同日午後6時上海発の復路便があるから
やろうと思えば、なんと
上海日帰りが可能なのである!

九州と上海の近さを肌で感じる。

肌で感じると言えば、今回の上海は暑かった。
連日33℃を超え、外出のたびに吹き出る汗を抑えるのに大変だった。

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(強い日差しの上海中心街)

ちょうど、台湾から福建省に上陸した強力な台風5号(アジア名:HAITANG)が接近していることもあって、時折、風も強かった。

いつもはガスやスモックがかかる上海の街も
久しぶりに青空が広がり、違った町並みを見せてくれた。

折りしも、18日より上海展覧センターで
「台湾農産品展示即売展」が開催された。

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(会場となった上海展覧センター)

今年4月に60年ぶりに国民党の連戦主席(当時)電撃的に訪中したが、それにタイミングを合わせるかのように、中国政府は台湾産の果物の輸入を全面的に解禁したのである。

これを広く市民・関係業界・報道界に広めるために
国務院、商務部、農業部などの主催で
台湾産果実の展示即売会が上海で開催されたのである。

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3日間の開催であったが、初日から会場は
解禁されたばかりの台湾の果物を目指して市民が殺到し大混雑した。
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マンゴーやパパイヤ、パイン、スターフルーツ、
スイカ、豊水梨、ブドウ、茶葉、蘭鉢などの生鮮物や
冷凍食品、水産加工品、菓子、健康食品なども展示販売された。

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(殺気すら感じるほど、台湾産果実を買い求める市民が押しかける)

一個70元(約900円余り)する巨大マンゴーや25元(約350円)のパパイヤなどが次々と売れていく。
初日からあまり売れ行きが良いので、こっそり値札を換えて値上げする業者も出る始末だった。
とにかく上海市民の新しい食品・海外産農産物に対する関心の強さと購買力に正直驚いた。
「日本産果実も、こうやって市場に並べることさえ出来れば、品目によっては決して売れないはずはない!」と、つい力が入ってしまう。

050724sakki (百元札が舞い、空箱が次々と積み上げられてゆく…)

しかし、現実には、日本産の果実は、リンゴとナシ以外は中国には輸出できない
過去の輸入実績に基づく、検疫上の問題というのが中国政府の理由だが、今回の熱帯果実の即決の輸入解禁を見てみると、複雑な思いもする。

とにかく、我々の商談現場では、貿易手続きの他にも商物流において気の遠くなるような障害が多く、現状では、多額の販促予算を持っているか、時間とコストをかけた取り組みが出来ないと、その多くが対中輸出には二の足を踏むことになるのが現状だ。
中国での販路開拓と同時に、日本国内での競争力強化に向けた取り組みにもなお一層の厳しい努力が求められる。

今回の台湾展示会で、
上海人消費者の購買力の潜在性を見せ付けられながら、
一方で様々な困難に直面し、暑さと共に卒倒しそうな気分に陥ってしまった。

私は、「農産物の対中輸出は、現状では絶対に発想転換が必要だ」と結論付けている。
これからが面白くなりそうだ。ファイティングスピリットが湧いてくる。

これまた折りしも、帰国日の夜、
中国政府が人民元を2.1%切り上げることを発表した。

切り上げは、「ニッポンを売る!」には追い風になるのだが、
それ以前に解決すべきことがあまりに多すぎて、
実際にはまだピンと来ない。

中国には、挑むもよし、また避けるもよし
すべては自身の思い次第だ。

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(今、上海では、ザリガニ(小龍蝦)料理が流行だとか…)