ウラジオストクでの訪問先のひとつに民営の海運会社があり、ここで貴重な体験をした。
立派なオフィスに調度類。
今年若干46歳の創業社長は
小さな海洋調査会社から身を起こし、
今では十数隻の中古船と倉庫も保有するに至っている。
とても精悍な表情をしており、いかにも男っぽい。
それもそのはず、以前はキャプテン(船長)をしていて
世界の海を股にかけていたのだと言う。
起業から現在に至るまでまでの創業物語は、さながら立志伝のよう。
地元当局と密接な関係を持って事業を拡大させる他の業者を尻目に、絶対に人に頼らないという強い意志を持っている。
それだけに、癒着する同業者との激しい競合や妨害工作、法外の攻撃などに常にさらされるのを、自らの力だけを頼りに事業を守り続けている姿は、さすがに小説になるような男の世界がそこにあった。
引き込まれるような眼差し、聞き入ってしまう落ち着いた語り口。
男が惚れる男…。
そのうち秘書のようなスラっとした女性があの有名なロシア紅茶を運んできた。
若くて美人というだけ(?)なら、時おり出くわすこともあろう。
しかし、その上
大胆にもウエストが丸出しで、胸も大きくはだけているなんて有り得ない事で、一瞬ギョッとした。
(掲載できないようなスナップが何枚か撮れて?しまった)
せっかく感動あふれる会談の最中に、
なんでこんな時に煩悩にさいなまれなきゃならないのか!?
と心の中で頭を掻きむしりながら、何度も葛藤する…。
そのうち会話も弾み、予定になかったのだが、
ぜひ自分が案内するから所有する埠頭の現場を見に行こう、と言う。
わざわざ社長が出てこなくても良いから、と遠慮したが、
社長: 「自分が行かないととても危険だから」
一同: 「んッ!?」
足元が危険だというのか、それとも…。
予想は当たってしまった。
私が乗せられた車は、どう見ても装甲車。
外にコンバットと書かれている。
乗車しようとするのだが、ドアが重くてなかなか開けることが出来ない。
聞けば、14kgもあるのだと言う。女性なら絶対に動かせない。
鉄板の厚さは75ミリ。当然防弾ガラスで、もちろん開閉なんて出来ない。
車の中は、総革張りのリムジンそのもの。
軍事工場で作ったもので、もし海外で作ったら数億円はする代物で
ウラジオストクにはわずか2台しかないと言う。
初めは子供のようにはしゃいで、自ら運転する社長にいろいろ質問などしたものだが、よく考えてみると、なんだかそら恐ろしくなってきた。
鉄柵を張り巡らせてある敷地内に入り、荷役する現場に着いて
感動のコンバットから降りたのだが、そこで2度ビックリ。
後ろの車から機関銃を持った無表情の警備員が出て来て、ピッタリと我々を護衛するではないか!!
ゾ、ゾオ~ッ。
そうだ、どこでも港の現場には怖い所があると聞いている。
しかも、ここはロシア…。
それでも、港湾荷役業務の話、中古車取り扱いの話など、現場で社長が熱っぽく語る話に引き込まれ、いつの間にか夢中で聞き入ってしまっていた。
新たに広大な敷地も買収し、壮大な事業構想なども伺い、予定を1時間以上オーバーしたが、本当にあっという間の収穫多い貴重な訪問となった。
帰る頃には、僕はあの機関銃を持っている警備員とも
アイコンタクトで仲良くなり、
彼のフト見せる笑顔にお友達感覚となった。
なんて優しい目をしているんだろう。
でもイザと言う時は、体を張って凄まじいもんだろうな、なんて勝手に想像を膨らませてしまう。
ロシアに詳しい人に聞けば、このような身辺警護やオフィスにいたセクシーな秘書は、結構よくある事だそうだ。
装甲車や機関銃の「硬」とセクシー秘書の「軟」。
僕はほんの少しばかり中国兵法の現代ビジネス向け解釈をライフワークにしているが、知ってかしらずか、この社長は、「硬軟ゆさ振りの計」を実践しているのだろうか。
僕が勝手に精神を揺さぶられただけ、とも言えなくもない。
兵法分析家(!?)として、チョッとばかし恥ずかしい。
事業競争の話を聞いても、登場する男女にしても、見方をすれば、ロシアは力ずくのマフィア経済が牛耳っているというような言い方もされるのかも知れないが、どうも言葉のイメージと現実は少し違うのかもしれない。
とにかく、このストレートさ、強烈さが何とも刺激的で心を揺さぶられた。
私にとって、ロシアに強い興味が湧いた瞬間だった。
田中 豊
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看了你的博客,我也对俄国很感兴趣了。
小梅さん コメントありがとうございます。
ロシア いいですよお~。一度ぜひ足を運んでみてください。カメラを忘れずにね。