節句に想う(その1)

          
ここ台湾では、春節(旧正月)、中秋節と並ぶもうひとつの季節イベントが、旧暦5月5日の端午節である。

   
   

端午の節句と言えば、楚の国王側近であった屈原が失意のうちに川に身を投げ、それを悲しんだ人たちが、遺体が魚に食べられないようにと(ちまき)を川に投げ込んだという伝説にちなんでいる。

   

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今年は、ちょうど訪問中の5月28日であった。

    

日本では「中華ちまき」と言えば台湾というイメージがあるくらいで、
街のあちこちで粽を売っている。

     

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青果市場の場外にて

    

    

よく観察すると、北部粽とか南部粽、アズキ粽など数種類あることがわかる。

  
ベジタリアン(素食)のために、素粽なんてのもある。

    

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甘口、辛口など数種類あるし、さらに店や家庭によっても様々だ。

    

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千年をも越す長い間、こうやって
変わらない売り方をしているんじゃないだろうか?

   

      
    

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日本人に有名な小籠包の名店「鼎泰豐」本店でも粽が頂ける

   
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鶏スープで有名な鼎泰豐だけあって柔らかい鶏肉がぎっしり(左)
ネットリ・サッパリのアズキ餡もはずせない(右)

    

     
なるほど、 プロの味もあれば、お袋の味もありそうだ。

      

        

     *           *            *

   

    
青果市場を定点観測していた時、たまたま場外市場の歩道で、
お母さんと娘さん、お孫さんと思われる家族3人で粽を作っている現場に遭遇した。

    

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「近くで観せてもらっていいですか?」
   

と、いつもの調子で僕が訊ねる。

     

        
少し恥ずかしそうにしていたが、
黙って微笑んでくれるのはOKの返事。

        
      
お互い東洋人どうしの暗黙の了解かな!?

     

    
日本では見たことないほど大ぶりの乾した笹の葉を準備する。

    

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     この時期あちこちの食材店で笹の葉を売っている

    
       

これを水で戻しておいて、クルっとひねって漏斗型の容器にする。

    

簡単なように見えて、やっぱり難しそうだ。

   

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この笹の器の中に、出し汁などで下ごしらえしたもちを詰め、
その上に貝柱や干しエビ、脂の乗った大きな豚肉の塊、椎茸、
たけのこ
など数種類の具を手際よく載せていく。

    

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最後に宝石のように橙色鮮やかなアヒルの卵の黄身をひとつ
大切に載せてから、再度お米で覆って笹の葉でくるみ、
タコ糸のような太い紐で見事に結わえるのだ。

   

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その間、何十秒くらいだろうか?

   

おそらくひとまとまり作り終わったら、
その後、加熱の作業に移るんだろう。

     

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ただ黙々と作っていく・・・。

      

      
ひとつずつ作っていくのは面倒で手がかかりますねぇ?」

    
と僕が尋ねると、ようやく口をきいてくれた。

     

     
   
今、若いお母さんの家では粽を作らない家庭が多いんだよ。昔は、粽を上手く作れることが、嫁入りの条件だったんだけどねぇ。」

      

寡黙だったお母さんがようやく笑顔で答えてくれた。

    

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でも、ここのお家では、お嫁さん(娘さん?)とお孫さんがしっかりと手伝っていて、母の味が受け継がれていましたよ

      

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母娘三代の共同作業

       

     
どの国、どの地域でも、地元の農産物を使った食文化がある。

    
     

さきほどのお母さん。 僕と打ち解けた勢いで、

よくもこんな粽作りなんか長いこと観てて、そんなに面白いかね?」

と手を動かし続けながら訊いて来た。

       

       

もしかしたら、当たり前に感じている台湾の人より、
僕のような「外国人」の方が強い関心を寄せているのかもしれない。

      

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自分たちの文化をもう一度見直さなくちゃ
     

      
       

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                                (次回に続く)

         

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。

“節句に想う(その1)” への6件の返信

  1. こんばんは!
    明日からオレゴンからのやってくる15歳の女の子がホームステイします。私もあらためて日本の良さを知ろうと、土日は熊本を巡ってくる予定です。彼女がどんなことに興味を持つのかしっかり観察しなくては!!
    でもニッポンを知るさんの人柄が伝わってくるお母さんとの会話で、ちょっとうれしくなりました。。。写真からもその信頼関係が伝わってきますよね~さすがです!

  2. inoさん コメントありがとうございました。私は92年ごろオレゴンのポートランドに半年ぐらい滞在していたんですよ。ダウンタウン、マウントフット、ウイークエンドマーケット、ローズガーデン。どれも素晴らしい思い出です。とても親日的で、ナイキ本社など優良企業も多い街ですよね。異文化交流はとても意義あることだと思います。ぜひ良い思い出を作ってあげてくださいね。

  3. ニッポンを売るさん、ありがとうございます!
    奇遇ですね。。。ポートランドに半年いらっしゃったんですね~今年の夏念願のオレゴン訪問を予定して、今飛行機のキャンセル待ちの状態です。(涙)早くチケットがとれて予定が立てられるといいのですが。。。ぜひまた見所など教えてくださいね!ありがとございます!!

  4. 今夏オレゴンですか。うらやましいなあ。熊本も雄大ですが、オレゴンもまたスケール大きいですよ。でっかく大きくいろんな体験をしてきてくださいね。オレゴンレポート楽しみにしています!!

  5. ニッポンを売るさん。
    いつも情報ありがとうございます〜
    台湾の粽は、バイトの女の子からもらって食べました。
    豆が入っているタイプでした。
    ニッポンを売るさんがおっしゃるように、異文化のオモシロさって、結局は自国の文化を振り返るためなんだなぁ〜と思います。
    外国の良さも吸収しつつ、普段は気づかなかった「日本の良さ」への気づきって確実にありますね。
    気分は幕末戦士です(笑)
    気分だけです(汗)))

  6. アヤさん コメントありがとう。
     僕もまったく同感です。なぜわざわざ海外にまで行って「ニッポンを売り」に行くのか? そう、私たちの商品、地域、知恵の素晴らしさを私たち自身が再発見するためでもあるんです。
     幕末戦士って、そそる言葉ですねえ。アヤさんが幕末にしかも男に生まれていればニッポンはもっと変わっていたかも…。否、これからのニッポンや地域を素晴らしいものに変えていきましょう!

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