マレーシアを調査

先月末、㈱伊勢丹農水省輸出促進室JETROの協力を得て、
東南アジア市場における日本農産物輸出の可能性について、
現地調査のために、
マレーシア(クアラルンプル)、タイ(バンコク)、シンガポールを周って来た。

マレーシアは、人口2560万人のうち、
マレー系が約65%、中国系が25%ということで、
言わずと知れたマレー半島のイスラム国家であるが、
ビジネスとしては中国系富裕層が主なターゲットとなるようだ。

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朝3時におきて、クアラルンプル最大の青果市場に足を運んだが、
いずこも同じ、ものすごい活気だった。
飛行機から見た風景が一面ヤシとゴムのプランテーションだったので、
さぞや農産物も自国産ばかりだろうと思ったが、
意外に、タイ産や豪州産も多く、野菜は中国産も目についた。
輸入品も決して少ないわけではなさそうだ。

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一方、シンガポールやタイへも輸出される「キャメロンハイランド」産の高原野菜は有名だ。
市場の労働者の中には、バングラディシュなどからの不法移民がいるそうだが、いずれも財布を握っているのは中国系がほとんどだ。

話しによると、マレーシアでは、商売は中国・インド系、法律関係はインド系が幅を利かせているそうだ。この国のブミプトラ政策(マレー人優遇政策)は有名だが、最近では段階的に変化している傾向にあるという。

今日(8日)の日本の経済新聞に、
伊勢丹のマレーシア3号店が設立されるとの報道があった。

LOT10店、KLCC店共に食品・青果物も充実した品揃えで驚いた。
青森のリンゴや大分の大葉なども販売されていた。
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この国の食品売り場で目を引くのは、やはり豚肉の扱いである。
イスラムの人たちが忌み嫌う豚肉であるが、
信仰の異なる消費者のために、
「NON HALAL」という特別のコーナーに、
豚肉、ハムソーセージなどを扱っているのである。
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また、同店の食品担当の方に伺ったのだが、

「日本式の惣菜も人気があって販売しているのですが、
どことなく味に深みが無く、色も照りが無いんですよ。
なぜだか分かりますか?」となぞをかけられた。

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答えは、みりんが使えないからなのだという。
そう、ここではアルコールを食品に添加できないのである。
惣菜のほかにも、カステラなどの菓子類にも
添加剤としてのアルコールが使えないので、
注意が必要なのだそうだ。
国が違えば、というところである。

伊勢丹のある界隈は、
クアラルンプルでも最も賑やかな一帯であるが、
新たに最高級ブランドショップを集めた超モダンなショッピングセンターもソフトオープンしている。
ここは、香港や台湾にも匹敵する豪華さだ。
観光客、富裕層を狙ったビジネスが展開中だそうである。

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03年は5%強、昨年は7%強の成長(GDP)を遂げており
商業の方も好調なのだろう。

ただ、食品においては、
香港、シンガポールとは消費レベルが異なり、
関税など諸コストをそのまま算入するなど価格を高く設定すると、
販売が厳しくなることもあり、
輸出により「ニッポンを売る」ためには、
コスト構造にかなりの工夫が必要だろう。
一人当たりGDP(国全体)が4000ドル弱と中国沿海都市のレベルだ。

ジャスコにも足を運んだが、
ちょうどバイヤーズデー(お得意様招待日)ということも050708kljuscoあり、
館内はごった返していた。
買っている量も半端ではなかった。

周囲の道路も大渋滞を引き起こしており、
警察が整理に出動するほど。
その物凄さが想像できよう。

この国でも、製造業と並び、
商業でも日本人チャレンジャーたちが奮闘している。

滞在時間が短く、
ゆっくり街中を観察できなかったが、
新たな発見ができそうな印象で、
機会があれば、ぜひ訪れてみたい街である。

近い将来、中東・イスラム圏にも「ニッポンを売る!」ことにでもなれば、
この地は、貴重な橋頭堡にもなりえるのである。

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。