酷暑のただ中、熊本県阿蘇市を訪ねた。
そう、先月11日から発生した「九州北部豪雨」で
もっとも被害の大きかった地域のひとつである。
阿蘇五岳の山腹もごらんのとおり、
普段ならばこの季節、鮮やかな緑に覆われている斜面も
猫が引っ掻いたように深くえぐられた跡が生々しい。
麓の土砂ダムにはおびただしい流木や土砂が堆積し
行く手を塞いでいる。
夏休みの観光シーズンを迎え、
危険な個所を応急手当てを施され、
幹線観光道路は安全が確保されている。
連日の全国ニュースで報道されていた内牧(うちのまき)地区は、
阿蘇を代表する温泉街のひとつだが、
付近を流れる黒川が氾濫して大きな被害を受けた。
なかには1メートル以上の水が押し寄せ、
ホテルや病院に深刻な打撃を与えたという。
地域の被災廃棄物(水害がれき)置場に行ったら息を呑んだ。
おびただしい量のがれきが積み上げられている。
これでも半分以上が処理されたというのだから
その被害がいかに大きかったかが想像される。
話を聞けば、
水分を含んだ畳は、大人二人でも持ち上がらないほど
重くなるのだそうだ。
また、火山灰の土砂を含む洪水は泥流と化し、
排除がままならない。
さらに、水が引くと今度はセメントのように固まり、
手が付けられないほどの状態だったと言う。
地区の親しい畜産農家さんをお見舞いに訪ねた。
幸い、畜舎も水田、畑も
道路一本隔てて難を逃れたそうだが、
避難指示が出て数日間非難をされていて連絡がつかなかった。
当日深夜の豪雨の恐怖体験を伺い、
その後の気の遠くなるような復旧の苦労を耳にすると
かける言葉がまったく出てこない。
20年前にもこの地区では
浸水被害が出るほどの豪雨があったが
今回の被害は比べ物にならないそうだ。
このお家からわずか150メートルほどの裏手では
外輪山の麓の土砂が崩落して家屋を呑みこみ
3名の尊い命が犠牲となった。
絶句して腰が抜けてしまった。
全国、そして海外でも自然災害が多発している。
この現実にどう向き合うべきか思案しているさ中にも
また新たな被害が地域を襲い続ける。
大都市に対しても生命線の
食糧、水、空気、電気、元気を供給している地方が
次々と深刻な打撃を受けているのだ。
待っていてはもう答えは出ない。

田中 豊

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ご無沙汰しております。中洲川端の会社の岩田でございます。阿蘇の現状レポートありがとうございます。同じ九州にいながら気づいておらず、結局無意識にそういう惨状から目を背けている自分がおります。現場に行かれてこういう光景を直視されていたら心中いかばかりかとお察しします。私は、日々自分にできることだけを自分中心に考えて行動してしまっていますが、何かお役にたてることがありましたら教えていただけると幸いです。またもし、FACEBOOK等されていらっしゃいましたら、是非つながらせてください。こういう写真をFACEBOOKを通してシェアし、世界に発信していきたいと思います。大変なのはここだけではないのでしょうが。。。
岩田さんご無沙汰しています。貴重なコメントありがとうございます。
地域の被害に関心を寄せて頂き、とても頼もしく思っています。すでに報道も減り人々の関心も薄れつつある今も現場ではボランティアの人たちが頑張ってらっしゃいました。でも皆が均しく強い注目と行動を示すことは難しいと思います。
私の提案としては、事実事件に触れた時、必ずそこに住む人々の生活や生業(なりわい)にも広く思いを馳せること、自分の得意分野をもっともっと深め、事業や研究学問を通じて貢献することも大切だと考えます。将来ある若い岩田さんには大いに期待しています。
先般からの懸案ついて、ぜひ岩田さんから教えて頂きたいと願っていますので、その節はよろしくお願いします。
Facebookやツイッターはやっていません。このブログで精一杯なんです(苦笑)。ごめんなさい。またコメントくださいね。
深い洞察に基づいたご返信に心より感謝申し上げます。心に刻みたい言葉であふれています。小生でお役にたてることがりましたら、是非何なりとお申し付けください。