宮崎県日南・串間地区を訪れる

宮崎県南那珂地区のマーケティングスクールに招かれて
同地を訪ねた。

宮崎空港から一路南下し、
日南市北郷町南郷町串間市にいたる県最南部の地域だ。
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日南海岸の海岸線沿いに車を走らせるのだが、
かつてと同様、左手には太平洋の水平線が広がり
沿道のフェニックスヤシがエキゾチックなすばらしい景観だ。

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(堀切峠付近)

昭和40年代は、新婚旅行、慰安旅行などのメッカとして
多くの観光客でごった返したところである。

海外旅行の自由化とともに
現在まで観光サービス業は低迷を続けているが、
最近、週末などは韓国からのゴルフ客が増加しており、
アジア各国からの観光誘致も熱心に行っている。

南那珂管内には、JA大束(おおつか)がある。
甘藷(かんしょ)の生産で有名な地域で、
昨年から香港を中心に海外でも売り上げが期待できる有望商品である。

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生産者のお話では、
今年は雨量が少なく、
特に甘い甘藷ができているという。

土作りから栽培収穫・加工まで
一つひとつの工程に対して
強いこだわりを持って取り組んでいることを知った。
すさまじいまでの品質に対する自信だ。

選果場では機械化・自動化されたラインが稼動しており驚いた。
甘藷でこれだけの設備を有しているのは
日本でもここだけなのではないだろうか。
生産量も日本一を奪還し、今年は販売量も大幅増を目指している。

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先週、香港の百貨店を訪れた折には
すでに宮崎産早生の甘藷が出回っており
早くも香港の消費者の心を引いているのを目撃した。

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(今月、香港にて)

午後、南郷町でマーケティングスクールが開催された。

150名の熱心な生産者や指導員が集まり、
会場はほぼ満員となった。

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県農業試験場の安藤科長さんより、
日本で最も実践的な残留農薬迅速分析法のひとつである
「宮崎方式」の紹介があった。

日本一速く(2時間)農薬残留の結果がわかり
出荷前にチェックができるという画期的なシステムで、
安心安全に対するみやざきブランドのこだわりがみてとれる

開発者である安藤さんのわかりやすい説明は出色で、
参加者も大変熱心に聴講し、鋭い質問を投げかけた。
生産者の真剣な姿勢は、農業大県宮崎の呼び名にふさわしい。

私の講演をもう3度も聴いて頂いている方がおられ
その熱心さぶりには本当に頭が下がる。

講演の後、串間市のキンカン栽培のハウスを見せていただいた。
今の時期、ちょうどビー玉大の大きさに実っていた。

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最近は、「完熟キンカン」として商品化されており、
正月の甘露煮加工用だけではなく、
生食用として年越し後まで完熟を待ってから収穫されるという。

その中でも直径3.3センチ以上、糖度18度以上の選ばれたものだけを、特に「たまたま」と称し、高額ギフト用に化粧箱詰めにされているが、これを生のままひとくち口の中にに放り込むと、ひっくり返るように甘くて美味しい。まさに大地が生んだ宝石だ。

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(高級ブランド金柑「たまたま」)

今年春、宮崎県がこの県産キンカンを香港で試験販売したところ、
大変好評で、出荷分、数千パックが完売した。

日本一の甘藷とキンカン。
どちらも中国人好みの農産物である。

また、この地区はスイトピーの生産も日本一だそうだ。
花卉の輸出も面白い。

生産地の皆さんの意識次第では、
販路拡大のチャンスになるのではないだろうか

南国の豊富な農林水産品の品々に心惹かれ、
飾ることなく、もてなし上手な南那珂の皆さんの暖かな心遣いに触れ、
後ろ髪引かれる想いで、この地を後にした。

中国四国地方の輸出促進連絡会に参加して

10日、中国四国農政局主催による
「地域農産物等輸出促進連絡会」が岡山市で開催され
私も参加させていただく機会を得た。

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中国といってもCHINAではなく、
中国地方の「ちゅうごく」である。

当地域は、
鳥取、島根の農産物輸出の横綱を擁し、
また岡山や広島、愛媛、徳島、高知などの
レベルの高い優良農産品を多く持つ
強県がそろう一大エリアだ。

中四国すべての県の輸出担当者、
各地のジェトロ所長、JA農業団体が揃い、
東京からは農水省輸出促進室ジェトロ本部からも担当官が参加され
官民のバランスが取れたメンバーが集まった。

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もう3回目になるというこの会合では、
国やジェトロの最新施策の紹介や各県の活動報告などがなされた。

私も時間をお借りして、
東アジア市場における農産物輸出の現状と課題について見解を述べさせていただいた。
各参加者とも、予定時間を超過するほど
非常に熱心に意見交換や情報収集を行ない、
その真剣さが感じられた。

20世紀梨の台湾向け輸出で実績を誇る鳥取県も、
昨年から難度の高い中国市場への参入に果敢にチャンレンジしている。

050810simane また、上海・台湾市場で積極的な販促活動を展開する島根県の担当者の報告は、大変勉強になった。

   

                            (上海で目につく島根産食品)

広島県・岡山県のチャレンジぶりも興味深い。
特に、ブドウ、モモなどアジア地域で人気の高い果物は
この両県が西日本を代表する産地だけに
今後の動向が注目される。

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(今が旬の岡山産ピオーネと清水白桃)

四国各県も、柑橘や野菜類、農産加工品のラインナップも豊富で、
やり方によっては、実績をあげることは十分に可能だと思う。

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(シンガポールで販売されている徳島産こまつ菜)

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(香港で売られている高知産かんしょ)

もっとも、鳥取県を除き、各県とも他の地域同様
輸出事業を始めたばかりで、
行政も農業関係者も本格的な輸出体制を構築するのはこれからのようだ。

生産・流通、物流の諸課題を克服し、
一日も早く成果を挙げてもらいたいと願っている。

上海で輸入果実のすごさを知る

福岡空港を午前10時発の便に乗ると
なんと上海には10時半に到着する。

時差が1時間あるためだが、
実際の飛行時間はわずか1時間半。
東京へ行くよりも短い。

しかも、この航空会社は、
同日午後6時上海発の復路便があるから
やろうと思えば、なんと
上海日帰りが可能なのである!

九州と上海の近さを肌で感じる。

肌で感じると言えば、今回の上海は暑かった。
連日33℃を超え、外出のたびに吹き出る汗を抑えるのに大変だった。

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(強い日差しの上海中心街)

ちょうど、台湾から福建省に上陸した強力な台風5号(アジア名:HAITANG)が接近していることもあって、時折、風も強かった。

いつもはガスやスモックがかかる上海の街も
久しぶりに青空が広がり、違った町並みを見せてくれた。

折りしも、18日より上海展覧センターで
「台湾農産品展示即売展」が開催された。

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(会場となった上海展覧センター)

今年4月に60年ぶりに国民党の連戦主席(当時)電撃的に訪中したが、それにタイミングを合わせるかのように、中国政府は台湾産の果物の輸入を全面的に解禁したのである。

これを広く市民・関係業界・報道界に広めるために
国務院、商務部、農業部などの主催で
台湾産果実の展示即売会が上海で開催されたのである。

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3日間の開催であったが、初日から会場は
解禁されたばかりの台湾の果物を目指して市民が殺到し大混雑した。
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マンゴーやパパイヤ、パイン、スターフルーツ、
スイカ、豊水梨、ブドウ、茶葉、蘭鉢などの生鮮物や
冷凍食品、水産加工品、菓子、健康食品なども展示販売された。

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(殺気すら感じるほど、台湾産果実を買い求める市民が押しかける)

一個70元(約900円余り)する巨大マンゴーや25元(約350円)のパパイヤなどが次々と売れていく。
初日からあまり売れ行きが良いので、こっそり値札を換えて値上げする業者も出る始末だった。
とにかく上海市民の新しい食品・海外産農産物に対する関心の強さと購買力に正直驚いた。
「日本産果実も、こうやって市場に並べることさえ出来れば、品目によっては決して売れないはずはない!」と、つい力が入ってしまう。

050724sakki (百元札が舞い、空箱が次々と積み上げられてゆく…)

しかし、現実には、日本産の果実は、リンゴとナシ以外は中国には輸出できない
過去の輸入実績に基づく、検疫上の問題というのが中国政府の理由だが、今回の熱帯果実の即決の輸入解禁を見てみると、複雑な思いもする。

とにかく、我々の商談現場では、貿易手続きの他にも商物流において気の遠くなるような障害が多く、現状では、多額の販促予算を持っているか、時間とコストをかけた取り組みが出来ないと、その多くが対中輸出には二の足を踏むことになるのが現状だ。
中国での販路開拓と同時に、日本国内での競争力強化に向けた取り組みにもなお一層の厳しい努力が求められる。

今回の台湾展示会で、
上海人消費者の購買力の潜在性を見せ付けられながら、
一方で様々な困難に直面し、暑さと共に卒倒しそうな気分に陥ってしまった。

私は、「農産物の対中輸出は、現状では絶対に発想転換が必要だ」と結論付けている。
これからが面白くなりそうだ。ファイティングスピリットが湧いてくる。

これまた折りしも、帰国日の夜、
中国政府が人民元を2.1%切り上げることを発表した。

切り上げは、「ニッポンを売る!」には追い風になるのだが、
それ以前に解決すべきことがあまりに多すぎて、
実際にはまだピンと来ない。

中国には、挑むもよし、また避けるもよし
すべては自身の思い次第だ。

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(今、上海では、ザリガニ(小龍蝦)料理が流行だとか…)

蒸し暑い東京で変化を感じる時

最近、海外や国内地方の出張が続き、
久しぶりに東京で一週間ほど活動している。
(東京はもともとホームグラウンドでもあります)

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新宿界隈

今回は、主にIT関連の事業のためだったが、
農水産品の輸出案件に関わるようになってから
普段の生活に新たな習慣が加わった。

それは、都心に出ると、必ずデパートの地下の青果物売場を覗くこと。以前は、人がごった返していて閉口していたのだが…。
わずか数週間のことだが、季節の果物や野菜がすっかり入れ変わっていて、季節の移り変わりが目に見えて判る。
“都会で感じる旬”である。

いま店頭に並んでいたのは、山形のサクランボや山梨の桃、
岡山のブドウに、佐賀のハウスミカンなどなど。
全国から選りすぐられた商品が所狭しと並んでいる。
最近は、国産青果物の産地表示をしているお店が多いから
判別がしやすい。

もっとも私が観察するのは
食欲を満たすためではなく、
情報収集と頭のトレーニングがもっぱらの理由だ。

この店頭に並ぶまでの物流や商流は?
都心のデパートに扱ってもらうための宣伝や工夫は?
ブランド戦略の有無、消費者の反応は?などをチェックしながら
これを海外で販売するにはどうしたらよいのだろうか?
とイメージを膨らませる。

アジアの量販店では、どうしても米国産や豪州産等の
リンゴやオレンジがドーンと積まれているが、
日本お店の品数の豊富さやディスプレイの多様さには、
独特の素晴らしさがある。

よく観察していると、やはりアジア系の人たちも
1000円前後の果物などを嬉しそうにかごに入れている姿を目にする。

このブログでもたびたび紹介している
国の輸出支援機関である「農林水産省輸出促進室」を訪ねた。

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先月6月末に公表されたばかりの
「農林水産物等輸出倍増行動計画」に関する内容など
いろいろと情報交換させていただいた。
農水省のホームページにも掲載されているから
ぜひ一度目を通して、国の支援事業の理解の一助にされてみては如何だろうか。

「農林水産物等輸出倍増行動計画」
http://www.maff.go.jp/yusyutsu/k_02/itiran.html

7日にロンドンで発生したテロの影響だろうか、
新宿や池袋、羽田空港など、都心ターミナルや交通拠点などでは
特別警戒をしているのが目立った。

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中国やアジア諸国では
このような警戒警備に遭遇するのは以前からも時々あったが、
日本でも世界でコトある度に緊張感を強いられるのも
「特別」ではなくなりつつある。

マレーシアを調査

先月末、㈱伊勢丹農水省輸出促進室JETROの協力を得て、
東南アジア市場における日本農産物輸出の可能性について、
現地調査のために、
マレーシア(クアラルンプル)、タイ(バンコク)、シンガポールを周って来た。

マレーシアは、人口2560万人のうち、
マレー系が約65%、中国系が25%ということで、
言わずと知れたマレー半島のイスラム国家であるが、
ビジネスとしては中国系富裕層が主なターゲットとなるようだ。

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朝3時におきて、クアラルンプル最大の青果市場に足を運んだが、
いずこも同じ、ものすごい活気だった。
飛行機から見た風景が一面ヤシとゴムのプランテーションだったので、
さぞや農産物も自国産ばかりだろうと思ったが、
意外に、タイ産や豪州産も多く、野菜は中国産も目についた。
輸入品も決して少ないわけではなさそうだ。

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一方、シンガポールやタイへも輸出される「キャメロンハイランド」産の高原野菜は有名だ。
市場の労働者の中には、バングラディシュなどからの不法移民がいるそうだが、いずれも財布を握っているのは中国系がほとんどだ。

話しによると、マレーシアでは、商売は中国・インド系、法律関係はインド系が幅を利かせているそうだ。この国のブミプトラ政策(マレー人優遇政策)は有名だが、最近では段階的に変化している傾向にあるという。

今日(8日)の日本の経済新聞に、
伊勢丹のマレーシア3号店が設立されるとの報道があった。

LOT10店、KLCC店共に食品・青果物も充実した品揃えで驚いた。
青森のリンゴや大分の大葉なども販売されていた。
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この国の食品売り場で目を引くのは、やはり豚肉の扱いである。
イスラムの人たちが忌み嫌う豚肉であるが、
信仰の異なる消費者のために、
「NON HALAL」という特別のコーナーに、
豚肉、ハムソーセージなどを扱っているのである。
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また、同店の食品担当の方に伺ったのだが、

「日本式の惣菜も人気があって販売しているのですが、
どことなく味に深みが無く、色も照りが無いんですよ。
なぜだか分かりますか?」となぞをかけられた。

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答えは、みりんが使えないからなのだという。
そう、ここではアルコールを食品に添加できないのである。
惣菜のほかにも、カステラなどの菓子類にも
添加剤としてのアルコールが使えないので、
注意が必要なのだそうだ。
国が違えば、というところである。

伊勢丹のある界隈は、
クアラルンプルでも最も賑やかな一帯であるが、
新たに最高級ブランドショップを集めた超モダンなショッピングセンターもソフトオープンしている。
ここは、香港や台湾にも匹敵する豪華さだ。
観光客、富裕層を狙ったビジネスが展開中だそうである。

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03年は5%強、昨年は7%強の成長(GDP)を遂げており
商業の方も好調なのだろう。

ただ、食品においては、
香港、シンガポールとは消費レベルが異なり、
関税など諸コストをそのまま算入するなど価格を高く設定すると、
販売が厳しくなることもあり、
輸出により「ニッポンを売る」ためには、
コスト構造にかなりの工夫が必要だろう。
一人当たりGDP(国全体)が4000ドル弱と中国沿海都市のレベルだ。

ジャスコにも足を運んだが、
ちょうどバイヤーズデー(お得意様招待日)ということも050708kljuscoあり、
館内はごった返していた。
買っている量も半端ではなかった。

周囲の道路も大渋滞を引き起こしており、
警察が整理に出動するほど。
その物凄さが想像できよう。

この国でも、製造業と並び、
商業でも日本人チャレンジャーたちが奮闘している。

滞在時間が短く、
ゆっくり街中を観察できなかったが、
新たな発見ができそうな印象で、
機会があれば、ぜひ訪れてみたい街である。

近い将来、中東・イスラム圏にも「ニッポンを売る!」ことにでもなれば、
この地は、貴重な橋頭堡にもなりえるのである。

幻のイチジク

福岡県はイチジクの有名な産地でもある。

なかでも東部の行橋・豊前市とその近郊の
JA福岡みやこ・JA福岡豊築は、
県下でも有数のイチジク産地である。

この地区は、
「蓬莱」という品種では日本一の産出高を誇っている。

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海外のバイヤーを現地に案内した。
ちょうどハウス栽培最盛期で、
採りたてのイチジクを一口ほおばった瞬間、

 「うまいッ!」

誰もが声を上げて驚嘆した。

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早速バイヤーから、テスト輸入の注文が入って喜んだが、
実は、このイチジクという果物、
日持ちと輸送管理が
おそらく「果物一」難しい品種のひとつだということが分かって
二度驚いた。

イチジクは、ご存知のとおり、
漢字で「無花果」と書くように、
実の中に無数の白い雌花を咲かせるので
一見、花が咲いていないように見えるのだそうである。

だから、果物といっても
いわばデリケートな生花であり、
しかも、水分をたっぶり含んだ柔らかな果肉で出来ている。

この品種の出荷先も、
近郊の大都市、北九州から広島にかけての一帯に限られ、
福岡市場でさえお目見えしないという。

どおりで見た事がないはずだ。

これまで、3回にわたり、航空便で東京に輸送する試験を行ったそうだが、いずれも輸送上の荷傷みにより、失敗したのだそうだ。

  「東京にも運べないものをどうやって海外に!?」

産地の関係者も半信半疑である。

もとより、
江戸時代(寛永年間)に中国から渡来したと言われるイチジクだから、
もし、この状態で消費者に届けば、いい値で売れるはず…。
バイヤーは自信満々である。

地元にとっても、
日本一の「蓬莱」を海外の富裕層に受け入れられることで、国内での一層のブランド力向上の契機となれば、と、期待も膨らむ。

 「過去の失敗経験にとらわれて行動しないのは、後退と同じ」

生産者、JA、バイヤー、行政の考えが一致し、知恵を絞ることとなった。

県の農業試験場からも専門家を招き、
包装形態や収穫のタイミング、輸送方法などについて
徹底的に研究して挑戦することになった。

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おそらくしばらくの間、
完全成功する可能性は低いのではと予想されるが、
難度が高い問題に挑戦することで、
組織が活性化することは間違いない。

「海外へのチャレンジの経験は、
必ず東京市場への再挑戦にも活かせるに違いない!」

「イチジクが輸出できれば、アジアに近い福岡は、鮮度要求が厳しいものだって何でも提供できる!」

地元JA担当者・輸出スタッフの目が輝いていた。

挑戦は、まだ始まったばかりだ…。

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(視察中、TV放送局の取材を受ける)

都城で講演

宮崎県の都城市で講演させていただいた。

JA都城の合併30周年の記念大会ということで、
管内600名近くの生産者、流通関係者、来賓などが集まる大規模な
式典だった。

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日本有数の農業県である宮崎の層の厚さを肌で感じた。

講演では、
農産物の国内外の新しい流通や海外との輸出入の動向などについて紹介させていただいたが、ここでも2時間にわたり、皆さん熱心に耳を傾けていただき大きな手ごたえを感じた。

都城は、宮崎県にありながらも、かつては薩摩藩に属し、
もともと島津氏の先祖の出自の地だそうである。

どちらかというと、おっとりとした気風の宮崎にあって、
ここは

  「泣こかい、飛ぼかい、
   どうせ泣くなら、飛んだ方がまし」

という進取の気風があるという。

変革の時代にあって、頼もしい土地柄だ。
きっとチャレンジ精神が旺盛なのだろう。

講演後の懇親会で農産物輸出の話しをしても、
幹部生産者の「すぐやる、今やる」の反応で、
こちらが驚くほどだ。

都城管内は、畜産業がとても盛んで、
市町村単位では畜産品の生産高は日本一だそうである。

青果物では、
甘藷(かんしょ)、キュウリ、茶、ゴボウ、らっきょう、キンカンなどが並ぶ。

講演の翌朝、地元の甘藷生産農家を訪ねた。

ここでは、一般に「からいも」と呼ぶそうで、
宮崎紅という品種の超早生を選別していたが、
その鮮やかな紅色は、目を見張った。

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見栄えを良くする為にと、人手によって一本一本ひげを鋏でカットしてる。
大変な作業だ。
大きさ、グレードによって選別され、袋やパック詰めにされて
大阪、東京、福岡などに出荷されているという。

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実は、この甘藷、細長くて小さめのものが
「ミニ甘藷」として、昨年香港でブームとなり、
その人気ぶりを現地で目の当たりにして驚いた記憶がある。

とにかく主婦や若いOLが日本産の甘藷を買い求めていくのである。

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(香港の日系デパートにて 2004年12月)

その後、台湾やシンガポールでも
宮崎産、徳島産、高知産が売られているのを確認した。
この事実を日本の生産者は、ご存じないようだった。

現地の中国人は、どのようにして食べているのだろうか?

都城の生産者のおすすめは、ふかして食べるか、天ぷらにするのが
良いそうだ。

東京でもスイートポテトやチップが人気だ。
加工品への応用にもチャンスがありそうだ。

アジアマーケットでも日本産「唐芋」のブームが来るかもしれない。

麦秋の甘木で

甘木市役所で講演をさせていただいた。

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甘木は、福岡県のほぼ中央に位置し、
面積では県下で3番目に広い。
人口は約4.2万人で、
畜産、農業、林業は市の基幹産業である。

来年3月には、近隣の朝倉町・杷木町と合併
朝倉市としてスタートをする予定だ。

ここでも、中国・アジアにおける
反日活動の動向、経済関係緊密化、ビジネスチャンス等に対して
とても強い関心が寄せられた。

この地域の農産品の海外輸出候補として挙げられるのは、
青ネギ、ナシ、甘柿、ブドウなど
国内でも商品化に成功した優良品目が多い。
とりわけ「博多万能ネギ」で知られる青ネギの産地としても有名だ。

この「博多万能ネギ」が香港では定番商品になっていて
毎週数便、エアカーゴで定期的に送られていることを
現場の生産者や行政担当者も知っておらず、
大いに興味を持っていただいた。

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(香港の高級スーパーで売られている「博多万能ネギ」)

認定農業者の方から
「コメの輸出は出来ないか?」という前向きな質問も出され、
関東や福岡などの大消費地向けの商品生産に
日夜励んでいるこの地域の生産者の
発想の柔軟性に改めて驚いている。

会場の参加者とやり取りをしていたら
予定の2時間があっという間に過ぎてしまった。

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(まさに麦秋の朝倉路)

全国規模のうねりになる日本農産物の海外輸出

27日、「農林水産物等輸出促進全国協議会」
(会長:木村尚三郎東大名誉教授)が正式に発足し、
その設立総会が全国の関係者を集めて、
東京・大手町で開催された。

総会には、アジアアフリカ会議から帰国したばかりの
小泉総理も駆けつけ、来賓挨拶を行なった。

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総理は、他の改革同様、
「守りから攻めへ」の農業改革について
熱心に自説を唱えた。

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具体的な事例として、
青森のリンゴ、島根のコメ、
福岡のあまおうイチゴ、宮崎のシンビジウム

アジア各国で高値で売れているという例を紹介し、
極めて強い関心を寄せていることを参加者にアピールした。

続いて、
この協議会の名誉会長である島村農水大臣が挨拶に立ち
参集者に向けて激励の言葉を贈った。

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また、経団連の奥田会長も祝辞を行ない、
農業セクターも同連合会のメンバーになるよう
エールを送ったのが印象的だった。

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第2部のパネルディスカッションでは、
木村会長をコーディネーターに、
全国的に有名な青森のリンゴ生産者の片山社長
上海・蘇州で評判の日本食材店を
8店舗経営する石橋水産有限公司の石橋会長と
私の3人がパネリストとして登壇し、
農産物の輸出の可能性と心構えについて発言・提言した。

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(左は石橋氏、中は片山氏、右は木村会長)

生産者自らが主体的に動いて、
新たな活路を見出すことを実践する片山さん。

中国という、ビジネス上の障害が多く、
競争激しい市場で勝ち抜くための厳しさと可能性について訴える石橋さん。

両名とも、行動力と実績があるだけに説得力は抜群だ。

私は、地方の行政や団体など、輸出支援をする立場から、
地域の生産者や企業が、
いかにしてやる気と工夫を引き出すかの重要性について
発言する機会を与えてもらった。

この「全国協議会」は、関係省庁、47都道府県知事、
農業、林業、水産業、食品産業、酒類、流通、外食、観光
JETRO、日商、経団連等の広範な団体組織から構成
されており、
官民一体となった経済促進・地域振興を目指すものである。

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輸出促進、食文化発信という様々な基本戦略と共に
輸出額を5年で倍増という数値目標も設定している。

全国協議会の事業を通じて、
日本全国から、やる気のある生産者、企業が排出し、
地域が元気になることを期待すると同時に、
輸出当事者も、困難多い海外ビジネスに際して
この協議会の情報やネットワークを
ドンドン使い倒してもらうことを願っている。

事務局:農林水産省大臣官房国際部貿易関税課輸出促進室