ブランド対策セミナーに参加して(1)

東京・虎ノ門で、農水省、関東農政局等の主催によるブランド保護対策セミナーが開催された。

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(セミナー会場)

中国・台湾への農水産品の輸出に関わるブランド保護対策に関するセミナーは、国内でも新らたな試みらしく、たいへん勉強になった。

やはり東京、大阪には、このような情報収集の機会があるから
私のような活動をしている者は
平素出来るだけフットワークを軽くしておき
情報源を広げておかなければならない。

セミナーの前半は、中小機構国際化アドバイザーの太田光雄氏による「中国・台湾における日本産農産物のブランド保護対策」についての講演だった。

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実は、太田先生は、私が20年ほどまえ前職当時、住友商事の中国食品関連のご担当をされており、数年間にわたり、よく一緒に仕事をしていたのだ。

早くから中国に対してとても造詣が深い方で、まだ駆け出しだった私に、いろいろと教えていただいたことを思い出す。

講演では、中国における商標・ブランド戦略など知的財産権に関する様々な情報や事例を挙げて、広範囲な紹介がなされた。中国での「青森」に関する商標権の争議無印良品をめぐる日中間の侵害事例の経緯など細かく解説され、非常に参考になった。

海外における販売戦略において、日本産農産品や食品などは高級商品として扱われるだけに、ブランド維持やコピー対策などでも、「守りとしてのブランド対策」と、積極的に販売を展開するための「攻めのブランド戦略」のふたつの視点があることを再認識した。

ルート開拓にどうしても関心が偏りがちだが、このブランド構築と保護対策は、これからますます重要になると感じた。

多くの関係者が懸念するアジア市場でのコピー商品の出現は、当事者だけでは解決できないので、ぜひとも国の支援が必要な分野である。地方で輸出を展開するには、国や専門家との連携を強化すべきである。

このような情報は、私もぜひ地方で発信していかなければならない。 (続く…)

東洋のハワイ…三亜にやって来た

海南島北部から南部へ向かう道は、
東回りと西回りの2つのルートがある。

東回りは観光ルートで、見所が多い。

アジアフォーラムで有名な博鰲(ボアオ)鎮もこの沿線だ。

今回、我々は滅多に通る機会の少ない西ルートを進むこととなった。

洋浦開発区を後にして
目的地である三亜市までの約3時間の沿道には
椰子、檳郎、竜眼、バナナなどの畑が延々と広がり、
亜熱帯の農村風景に少しも飽きることがなかった。

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海南島の南西部はバナナ畑が広がる

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沿道にて

ここ海南島ではコーヒーも栽培されている。
沿道のコーヒーのテーマパークで一服したが、意外に美味しかった。

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(海南コーヒー…現地語では“コビ”と言うらしい)

ちなみに中国の高速道路は日本と同様、有料だが、
ここ海南島は、ガソリン税から手当てされていて、
通行料金は徴収されない

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(海南島では高速料金はタダ)

夕刻、海南島最大のリゾート地である三亜に到着した。

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(ブーゲンビレアの花がお出迎え)

細長く広がる海岸線では、ビーチやリゾート施設が延々と広がる。

夕暮れ前のひと時だったが、
どのビーチも観光客で賑わっており、
海水浴を楽しんでいる人もいた。
やはり中国南端の海南島である。

先週、広東・香港と台北にいたが、
肌寒くてビックリした記憶が忘れられない。

私はハワイに行ったことがないのだが、
同行の人によるとホテルからの眺めはワイキキビーチを
思わせるそうだ。

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(ホテルのテラスからの眺望)

三亜のリゾートホテルは、どこもプールやガーデン、テラス付きのようで
私たちが宿泊したホテルもビーチサイドで
設備、内装ともに洒落ていた。

土産屋、カラオケ、屋台など夜遅くまで賑やかなのは、
東南アジアのリゾート地と少しも変わらない。

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(豊富な海鮮・・・左は海南島でしか食べられないマンゴー貝)

それにしても、三亜や海口では
とにかく韓国人ツアー客の多さが目立った。

現地の人の話によると、
春節期間中から2月下旬の予定で
仁川と釜山から毎日のようにチャーター便が就航し、
多くの韓国人観光客が来訪したという。

060227golfbag ホテルでも、ハングル文字の名札をつけたゴルフバックがたくさん並んでいる。

ゴルフに温泉、リゾートライフと
三亜は韓国の人にとっても気軽で魅力的な観光地となったのだろう。

もちろん、春節期間中は
中国国内からの観光客でごった返したのだという。

ホテルの価格も2・3倍などではなく、
7~10倍も跳ね上がったそうで、
普通のツインが一泊7000元(約12万円!?)もしたという。

タクシーの運転手も、この間、休む間もなく働き
大いに儲かったそうだが、
春節も去り、観光客のピークも過ぎたせいか、
やたらと「案内するからどこかへ行かないか」と
必要もないのに盛んに声をかけてくるのであった。

ホテルといい、タクシーといい、
中国の市場原理というものは物凄い…。

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三亜の朝焼け

滞在時間が短く、街を探索することが出来なかった。
また、ぜひ訪ねたい街だ。

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早朝の三亜空港

海南島の投資誘致

060227map 海口から車で西岸に向かって約1時間余り、国家級の開発区である洋浦経済開発区を15年ぶりに訪ねた。

1988年に海南島が広東省より独立して海南省になり、島全体が経済特区に指定された時のシンボル的な経済開発区である。

この開発区は当初、日本の大手ゼネコン社の香港法人が政府の委託を受けて開発したこともあって注目を浴び、当時、幾度かここを訪ねたことを記憶している。

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もちろん開発当初はまだインフラ工事に精一杯で
土地や港湾の造成中だった。

その後、海南島ブームが起こり
地域振興のため、他の省では受けられない様々な優遇措置もあったため、内外の観光客やビジネスマンなど多くの人が海南島を目指し、
一時活況を呈した。

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(現在発展中の洋浦経済開発区)

しかし、インフラ整備で資金不足に陥り
見合った外資誘致が進まず、
さらに密輸や不動産乱開発のイメージも重なり、
しばらく停滞の時期が続いた。

ところが、2000年頃を境に
それまで開発事業の委託方式から
海南省政府による本格的なテコ入れが図られた。

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(視察した海南省最大の製紙工場)

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(最新鋭の製紙プラントは、ここでも無人化・省力化がすすんでいる)

また、旺盛なエネルギー需要に支えられ、
石油化学やケミカル(化成品)関連、
その他、製紙などの素材産業も好調らしく
活況を取り戻している。

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(急速に拡張中の石油天然ガス精製プラント)

今回の訪中は、転換期を迎えた中国の経済開発区と
投資誘致に関する調査である。

福岡市は早くからアジア企業、特に中国企業の
同市への投資誘致活動を活発に展開している。

現在、これは「二十一世紀中華街構想」という形に企画化されており
市長もトップセールスを行うなど全庁・全市的に
活発な誘致活動をすすめている。

実は、外資誘致では中国の方が多くの経験やノウハウがあるのではないかという仮説のもと、専門家チームを結成して、国内や中国各地を研究し、アクションに繋げようというものである。

現在、中国企業の対日投資は、日本側の熱い期待がある反面、
両国の制度上の問題やビジネス面での前提など様々な要因を抱え、
必ずしも実績が伴っていないのが現状である。

しかし、この海南・洋浦開発区の例にあるように
経済環境の変化を背景に、現場の積極的な働きかけや行政支援が加われば、必ず実現できるものだと確信している。

今まさに戦略的発想とスピーディーな行動が求められる時が来た。
福岡の投資誘致も、いよいよこれからが本番だ。

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(現在の洋浦港)

中国最南端の楽園をゆく

060227map2 15年ぶりに、海南島を訪れた。

上海から空路3時間で海口国際空港に到着。
飛行場も沿道も昔とあまりに大きく変わっていたのでビックリしてしまった。

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(海口空港)

最初に海口を訪問した時は1980年代中ごろで
まだ広東省の一部であった。
その後1988年に独立して海南省となり、
同時に島全体が第5番目の経済特区に指定された時は
大きな話題となった。

街道沿いには椰子の樹やガジュマロの樹が植えられ、
やはり南国の風情が漂っている。
ホテル到着後、さっそく街に飛び出してみる。

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(ヤシと近代マンションの林立が今の海南島を物語っている)

海口の繁華街らしく、大勢の人が集まっている。
やはり顔立ちが異なっており、黎(リー)族か苗(ミャオ)族だろうか
明らかに漢族と違う様子がとても興味深い。

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一歩、路地に入ると、そこは庶民のワンダーランド。
市場あり、屋台あり、食堂あり、日用品屋ありで
中国南方のどこにでも見られる住民コミュニティーが
そこにあった。

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果物もマンゴーやスターフルーツ、マンゴスチン、パイナップルなどの熱帯果実が豊富に並んでいる。
青果市場も夕方に近いせいか活気が物凄かった。

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地元の言葉はもちろんわからないが、大陸各地からの居住民が多いためか標準北京語も飛び交っている。広東語とも違う独特の訛りが耳につく…。

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地元幹部の話では、2000年に入り、ようやく成長軌道に乗り出したそうで、昨年も年率10%を超える域内成長率だそうである。

島内は、観光資源開発と農水産加工、自動車などの精密部品、エネルギー・ケミカルなどに特化した開発戦略を求めているようだ。

15年前とはすっかり変わった海南島に、改めて強い興味を抱いた。

九州上海事務所が正式開業

再び上海を訪れた。

2週間ぶりなのに、朝晩はめっきり寒くなって、街行く人も冬の装いだ。

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(南京西路のブランド街で)

21日、上海市のホテル、花園飯店で、「九州上海事務所」のオープンを記念して、レセプションが盛大に開催された。

この九州上海事務所は、福岡県、北九州市、福岡市、九州電力の4団体による共同事務所で、自治体や企業が連携して、上海を基点に中国における情報収集や支援サービスなどを行なうもので、非常に画期的な取り組みといえる。

レセプションでは、上海市、江蘇省、連雲港市などの中国側来賓をはじめ、日本側は関係自治体の副知事や副市長等をホストに、総勢300人を超える招待客を集め、この種の式典としては非常に大規模なものとなった。九州のこれからの上海および中国に対する意気込みの強さが感じられる。

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式典での九州紹介のコーナーでは、福岡県をはじめ、沖縄県を含む九州全県の情報や物産・観光を映像を通じて紹介した。

あくまで「九州」である。観光や物産、企業誘致などを海外に向けてアピールするためには、やはり県境を越えた広域連携が不可避である。

特にアジアでは、北海道、東北、九州という名称の認知度が最近急速に上がっており、これを利用しない手はないのである。

もちろん、各県や市の担当者は、県名、都市名ブランドの売り込みに熱心だから、九州と**県、△△市などと巧く使い分ければよいのである。各自治体間の競争と連携は、今後、多様な展開を見せることだろう。

式典と併催で、「九州福岡産業観光展 in 上海」が開催された。

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上海からわずか1時間半という近さをもつ福岡の多様な観光、産業資源を紹介した。また、福岡県が重点とするIT、自動車産業、ロボット産業に関する展示も行なっており、来場者の注目を集めた。

051125aibo (ロボット犬も参加)

物産についても、地場産業の得意技を披露するものになっていた。博多織や久留米絣、日本酒、大川家具も、展示はもとより、ミスが笑顔で応対したり、販促マーケティング関係者が人脈構築や情報収集に取り組んだ。

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(博多織も中国への輸出を検討している)

加工食品も、日本酒・焼酎のほかに、和洋菓子、飲料、明太子、ラーメン、味噌、醤油など幅広い商品が紹介され、来場した中国人関係者の注目を浴びた。

「私たちで取り扱えないか」という引き合いが随分あり、反応の強さに驚いた。

輸出にかかわる煩雑な手続きなど、克服すべき課題は多いが、九州・福岡の産品の潜在的な需要があることを確認できたという点では収穫があった。

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(食品のコーナーは人で一杯)

会場では、招待者全員に化粧箱入りの愛宕梨(あたごなし)が配られ、大好評だった。一個1kgほどもある巨大梨だが、食味も食感も、そして見た目の豪華さも中国人の心を捉えたらしく、日本ブランドの実力を、ここでも確認することが出来た。

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(福岡の愛宕梨は大きくて歯ざわりが良いと大評判)

もちろん、この福岡産愛宕梨は、いま、上海の高級デパートでも高値で販売されている。

今後に向けて、手ごたえ十分だ。

中国の微妙な変化を見逃すな!

上海に出張した。

051116muji およそ2ヶ月ぶりだが、今回も至る所でスクラップ&ビルドにより、街の様相が目に見えて変化している。

建築物だけではない。街行く人も店舗も、商品もやはり変化している。

在住でなく、短期出張で行き来する人間が「微妙に」感じることのできる瞬間だ。

気のせいだろうか、最近、タバコを吸う人がめっきり少なくなっているような気がする。
ゴミを無造作に捨てる人もいることはいるが、都心ではあまり目立たなくなった。
上海の街にいる限りにおいては―だが、トイレの不潔さで悩むストレスがめっきり減った…。

最近、ニッポンを売るプロジェクトに関わるようになってからは、
今回のように別件で中国に訪れても、青果市場にはできるだけ足を運ぶようになった。
一種の職業病だな、と思う。

日本国内でもそうだ。
若い人のコンビニ詣でのように、買う目的が無くても、デパートの地下食品売り場と物産催事場へは、必ず立ち寄るスポットになってしまった。

今回も早朝、上海の黄浦江沿いにある果物の卸売市場を訪ねてみた。
ここは市場といっても、競りを行なう処と異なり、全国からブローカーや生産者が商品を持ち寄り、相対取引を行なう問屋街のような通りである。

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確かにここは、いつも雑然としており、商品管理というには程遠く、地面に果物を転がしっぱなしにしていたり、箱を高く積み過ぎて下が潰れても平然としているし、ゴミも散らかしっぱなしというくらいで、販売以前の衛生管理すら心配してしまうほどだ。

また、最近は、緑色食品や有機食品、AA級などとケースに記載してあることがあるが、規格や等級、品質保証、ブランドなど、素人の私には全く判別できない。もしかしたら、価格と鮮度、外観などを、見ながら、触りながらで区別しているようにしか思えない。

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(この時期、柿の出荷が目立った)

価格も、当然この国では一物一価ではないはずだ。上海語の出来ない私なんて初めから相手にされてない。カメラを向けると冷やかされっぱなしで、却って面白いコミュニケーションが図れた。

「にいちゃん!ちゃんと立派に撮ってくれよっ」

「私とオレンジとどっちが綺麗?アハハハハッ」

ってな調子だ。(下写真

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(市場の人との会話も弾む)

ただ、ここ数年の間で、微妙だが明らかに品種や品質が向上しているのではないかと、今回初めて感じた。
味わってみていないので、まさに外観だけだが、大きさや色、鮮度が向上し、種類が豊富に「なりつつ」ある。

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(商品構成にも明らかに進歩のあとが…)

現在、中国農業はある意味危機的な状況にあり、農村、農民への対策は、政府の最重点政策だ。対外開放に伴う食糧生産の矛盾は、当然、付加価値の高い経済商品への転換を大きく促している。

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(上海市内にある共同青果小売市場)

中国産の参入による海外市場での一層の競争激化も懸念されるが、一方で中国国内に流れる製品へのニーズも高級化していくこと間違いない。

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(今、上海では、乳製品売場の充実振りが目立つ)

いま、日本産の青果物を、この商流・物流に預けることは、天地がひっくり返っても考えられないが、この微妙な変化だけは、「行き来すること」によってしっかりとウォッチしていなければならない。

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(あった、あった!! 福岡県の梨が売られている!)

中国の流通が飛躍的に発達することは、十年先二十年先のことではない。もうすぐそこまで来ていると考えておいたほうが良い。

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(上海バンドの夜景)

商業ベースの中国向けのナシ輸出が遂に実現

先月24日に、福岡県産のナシ2.5トンが
中国上海に向けて出荷された。

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(出荷を待つ上海向けの福岡県産のナシ)
*写真はいずれも福岡県提供

昨年も福岡県は、地元企業の支援でナシを上海に輸出した実績があるが、今回は、産地から農業団体、物流、商社、小売店のすべての関係組織が取り組んだ、初の本格輸出となった。

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(上海の高級デパートで販売される福岡産のナシ)

中国大陸への農産物輸出は、
限定的な輸入制度、未発達の商物流など数多くの難題を抱えていて、
テスト輸出や供与は出来ても、商業ベースの輸出となると難度が極めて高く、早くから輸出事業に取り組んできた福岡県も、中国大陸向けには2年越しの実現となった。

今回、輸出実現の大きな推進力となったのは、
JA筑前あさくらナシ部会とJA全農ふくれんの主体的な取り組みによるところが大きい。

「今年は、ぜひ私たちのナシを海外に輸出したい!」という年初からの産地の熱意は、ただならぬものがあった。

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(自慢の福岡県産の豊水梨)

福岡県の農産物輸出のトータルコーディネートは、
今年発足した福岡県農政部
「福岡の食・輸出促進センター」である。

促進センターでは今年、
輸出に関心を持つ、やる気のある産地を募り、
きめ細かいサポートを展開している。

海外の販路開拓も、輸入商社、および上海の高級デパートである久光百貨さんの協力を仰ぎ、商流を築いた。

産地側もJA組織が積極的に動き、品質チェックや梱包等にもに気を遣った。

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(輸出のために、産地が品質チェックに万全を期した)

また、今回特筆すべきは、海外輸送に航空機ではなく「上海スーパーエキスプレス」が使われたことである。博多-上海間を27時間で結ぶ高速貨物船で、RORO船と呼ばれるトレーラーごと積み込むことが出来る、いわば海上国際シャトル便である。鮮度とコストの両立が求められる青果物の海外物流において、日本で唯一、上海港との間で高速定期航路を持つ博多港のポテンシャルは非常に高いのである。

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(上海スーパーエキスプレスに船積みされる貨物)

つい数ヶ月前までは、あまりに立ちはだかる困難が多く、あきらめかけていた中国向けのナシの輸出が実現したことは、実に大きな前進である。

特に、生産者、農業組織、商社、物流、小売店、そして行政が有機的に連携したことの意義はとても大きい

関係者の努力に心から敬意を表したい。

今後、この輸出が継続できるのか、福岡ブランドが認知されるか、ナシ以外にチャンスはあるのか、など難題が山積している。

13億人のマーケットの入り口にようやくたどり着いたばかりだ。

秋のバレンタイン商戦?

香港に出張した。

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(ネイザンロードの夜景)

相変わらず最高気温32℃の蒸し暑い香港の街だったが、
外出も億劫になるような一時の暑さのピークに比べると
少しは凌(しの)げそうな気もするが、
体にこたえることは間違いない。

それでも暦の上では、9月18日(旧暦8月15日)に、はや中秋を迎える。

ということは…。

やはり思ったとおり、
大型の百貨店の地下食品売り場は、
ほとんど月餅コーナーに占拠されていた。

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イメージとしては、日本の1月末ごろから
バレンタイン商戦向けのチョコレート売り場が
食品売り場を占拠しているのと、まったく同じ。

バレンタインに全く縁のない僕がひと月間
閉口してしまうあの感じだ。

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香港や台湾、中国などでは、中秋節に月餅を贈る習慣があり
親しい友人や取引先などにプレゼントするのである。
会社がまとめて購入することもあるそうで
メーカーにとっては、一年の売り上げをここで稼ぐ大事な時期なのである。

ここ香港でも最近は、有名ブランドの缶入り定番ギフト以外にも
デザインが工夫されたり、洋風のケーキのようなもの、
アイスクリームでできたアイス月餅、
冷やして食べる「氷皮月餅」などというユニークなものまである。

まもなく開園を控えたディズニーのイラストの付いた缶に入った月餅も売れており、トピックを感じさせる。

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(台北の百貨店地下売場でも)

月餅の上に金箔がのっている程度は許されるが、
昨年、バブルの様相の中国で、
月餅の中に金貨や旅行券を入れたり、
住宅つきなど豪華景品をつけた「バブル月餅」が登場し、
景品目当てに月餅を食べないのは浪費であるとして、
中国政府は、7月に華美を規制する通知を出したという。

贈賄汚職につながったり、華美な包装材が大量のゴミを発生させたりするためだと言われている。

この時期、月餅以外にも
乾し椎茸や貝柱、ふかひれなどの高級乾貨物のギフトセット
コーナーで販売されていた。

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(椎茸や貝柱等の高級食材ギフトも良く売れる)

また、満月にちなんで、この頃出荷されるナシ
売れるようになった。
鳥取県の20世紀ナシをはじめ、
昨年からは、日本の複数の県の豊水などの赤ナシ
売られるようになり、
旧正月(春節)に次ぐ有望なギフト商戦と位置づけられている。

上海で輸入果実のすごさを知る

福岡空港を午前10時発の便に乗ると
なんと上海には10時半に到着する。

時差が1時間あるためだが、
実際の飛行時間はわずか1時間半。
東京へ行くよりも短い。

しかも、この航空会社は、
同日午後6時上海発の復路便があるから
やろうと思えば、なんと
上海日帰りが可能なのである!

九州と上海の近さを肌で感じる。

肌で感じると言えば、今回の上海は暑かった。
連日33℃を超え、外出のたびに吹き出る汗を抑えるのに大変だった。

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(強い日差しの上海中心街)

ちょうど、台湾から福建省に上陸した強力な台風5号(アジア名:HAITANG)が接近していることもあって、時折、風も強かった。

いつもはガスやスモックがかかる上海の街も
久しぶりに青空が広がり、違った町並みを見せてくれた。

折りしも、18日より上海展覧センターで
「台湾農産品展示即売展」が開催された。

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(会場となった上海展覧センター)

今年4月に60年ぶりに国民党の連戦主席(当時)電撃的に訪中したが、それにタイミングを合わせるかのように、中国政府は台湾産の果物の輸入を全面的に解禁したのである。

これを広く市民・関係業界・報道界に広めるために
国務院、商務部、農業部などの主催で
台湾産果実の展示即売会が上海で開催されたのである。

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3日間の開催であったが、初日から会場は
解禁されたばかりの台湾の果物を目指して市民が殺到し大混雑した。
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マンゴーやパパイヤ、パイン、スターフルーツ、
スイカ、豊水梨、ブドウ、茶葉、蘭鉢などの生鮮物や
冷凍食品、水産加工品、菓子、健康食品なども展示販売された。

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(殺気すら感じるほど、台湾産果実を買い求める市民が押しかける)

一個70元(約900円余り)する巨大マンゴーや25元(約350円)のパパイヤなどが次々と売れていく。
初日からあまり売れ行きが良いので、こっそり値札を換えて値上げする業者も出る始末だった。
とにかく上海市民の新しい食品・海外産農産物に対する関心の強さと購買力に正直驚いた。
「日本産果実も、こうやって市場に並べることさえ出来れば、品目によっては決して売れないはずはない!」と、つい力が入ってしまう。

050724sakki (百元札が舞い、空箱が次々と積み上げられてゆく…)

しかし、現実には、日本産の果実は、リンゴとナシ以外は中国には輸出できない
過去の輸入実績に基づく、検疫上の問題というのが中国政府の理由だが、今回の熱帯果実の即決の輸入解禁を見てみると、複雑な思いもする。

とにかく、我々の商談現場では、貿易手続きの他にも商物流において気の遠くなるような障害が多く、現状では、多額の販促予算を持っているか、時間とコストをかけた取り組みが出来ないと、その多くが対中輸出には二の足を踏むことになるのが現状だ。
中国での販路開拓と同時に、日本国内での競争力強化に向けた取り組みにもなお一層の厳しい努力が求められる。

今回の台湾展示会で、
上海人消費者の購買力の潜在性を見せ付けられながら、
一方で様々な困難に直面し、暑さと共に卒倒しそうな気分に陥ってしまった。

私は、「農産物の対中輸出は、現状では絶対に発想転換が必要だ」と結論付けている。
これからが面白くなりそうだ。ファイティングスピリットが湧いてくる。

これまた折りしも、帰国日の夜、
中国政府が人民元を2.1%切り上げることを発表した。

切り上げは、「ニッポンを売る!」には追い風になるのだが、
それ以前に解決すべきことがあまりに多すぎて、
実際にはまだピンと来ない。

中国には、挑むもよし、また避けるもよし
すべては自身の思い次第だ。

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(今、上海では、ザリガニ(小龍蝦)料理が流行だとか…)

福岡地震と反日デモと「ニッポンを売る!」

16日に発生した上海での反日デモ活動が契機となり、
いま日中両国間で様々な駆け引きが展開されている。

我々日本人にとっては
中国政府が次にどんな対応をしてくるのか大いに注目している。

事態はまだ流動的で、
国際情勢、および中国の国内世論や政権内部の動向次第で
どう変わるのか、なかなか予測がつかず、未だ予断を許さない。

ところで、今朝6時11分、
福岡地方で震度5強の大きな地震が発生した。

私も福岡に滞在していたので、
この激しい揺れには驚いた。

3月20日の震度6の本震以来、
数日間めだった余震がなく、少しだけ忘れかけていた後の
突然の激しい揺れだっただけに、
実際の被害より、精神的なショックの方が大きかった。

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ここで、ふと考えてみると、
「これは、中国の反日活動をはじめとする
アジアで起きる様々な事件災害と同じではないか」
と。

私が30年ほど前から中国と関わりを持ってからも
政治問題に端を発する反日抗議や権力闘争による混乱、
予測もつかない事件や災害の発生などによる
突然の交流中断を何度体験させられたか。

数年間にわたり情勢が安定していたことなんて記憶にない。

最近でも、
大津波、SARS、鳥インフルエンザ、アジア通貨危機、天安門・・・

忘れかけた頃に決まって突然現れる不測の事態

戦後だけでも、日本は大国・中国に大いなる期待や幻想を抱きながら、
「これからはアジアの新時代だ」と盛り上がるのだが、
必ず乱気流に巻き込まれ、右往左往してしまう。

日頃、私は

多くのビジネスマンの方々は
2008北京オリンピック、2010上海万博までは
少なくとも右肩上がりのはずと期待されているようですが、
それ以前にも紆余曲折は何度かありますよ、

と訴えていたが、やっぱりそうなってしまった。

でも、その後、下の句が続く。

絶望的に見える状況になっても、いつの間にか回復し、
忘れたかのように、
また中国ブームが始まるのが不思議なんです

と。

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             (反日デモ数日前の上海)

要は、
常に不測の事態、予想もつかない出来事が起こりえるのが
当たり前の環境で、
それでも我々は「ニッポンを売る!」ことに挑戦するのである。

それは、今日発生した福岡西方沖の余震と同である。

専門家は、後追いの解説や分析は出来ても、
決して正確な予知は出来ないのである。

この耐性がない人・組織は、
中国などとのビジネスはやめておいたほうが無難である。