先月24日に、福岡県産のナシ2.5トンが
中国上海に向けて出荷された。
(出荷を待つ上海向けの福岡県産のナシ)
*写真はいずれも福岡県提供
昨年も福岡県は、地元企業の支援でナシを上海に輸出した実績があるが、今回は、産地から農業団体、物流、商社、小売店のすべての関係組織が取り組んだ、初の本格輸出となった。
(上海の高級デパートで販売される福岡産のナシ)
中国大陸への農産物輸出は、
限定的な輸入制度、未発達の商物流など数多くの難題を抱えていて、
テスト輸出や供与は出来ても、商業ベースの輸出となると難度が極めて高く、早くから輸出事業に取り組んできた福岡県も、中国大陸向けには2年越しの実現となった。
今回、輸出実現の大きな推進力となったのは、
JA筑前あさくらナシ部会とJA全農ふくれんの主体的な取り組みによるところが大きい。
「今年は、ぜひ私たちのナシを海外に輸出したい!」という年初からの産地の熱意は、ただならぬものがあった。
(自慢の福岡県産の豊水梨)
福岡県の農産物輸出のトータルコーディネートは、
今年発足した福岡県農政部
「福岡の食・輸出促進センター」である。
促進センターでは今年、
輸出に関心を持つ、やる気のある産地を募り、
きめ細かいサポートを展開している。
海外の販路開拓も、輸入商社、および上海の高級デパートである久光百貨さんの協力を仰ぎ、商流を築いた。
産地側もJA組織が積極的に動き、品質チェックや梱包等にもに気を遣った。
(輸出のために、産地が品質チェックに万全を期した)
また、今回特筆すべきは、海外輸送に航空機ではなく「上海スーパーエキスプレス」が使われたことである。博多-上海間を27時間で結ぶ高速貨物船で、RORO船と呼ばれるトレーラーごと積み込むことが出来る、いわば海上国際シャトル便である。鮮度とコストの両立が求められる青果物の海外物流において、日本で唯一、上海港との間で高速定期航路を持つ博多港のポテンシャルは非常に高いのである。
(上海スーパーエキスプレスに船積みされる貨物)
つい数ヶ月前までは、あまりに立ちはだかる困難が多く、あきらめかけていた中国向けのナシの輸出が実現したことは、実に大きな前進である。
特に、生産者、農業組織、商社、物流、小売店、そして行政が有機的に連携したことの意義はとても大きい。
関係者の努力に心から敬意を表したい。
今後、この輸出が継続できるのか、福岡ブランドが認知されるか、ナシ以外にチャンスはあるのか、など難題が山積している。
13億人のマーケットの入り口にようやくたどり着いたばかりだ。
田中 豊
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