ドバイでの公式行事を終え、
JETROの手配でドバイ市郊外に視察に行った。
延々と続く砂のじゅうたん。
同じ砂でも白砂もあれば、赤い砂もある。
時折、ムスリムモスクが姿を現す。
まさにアラビアンナイトを読んで空想したような世界が眼前に。
こんなところで人はどうやって暮らしているんだろう?
ラクダさんが放牧されている。
どのくらい走ったのだろうか。
広大な白砂のじゅうたんの端に
壁で囲われた緑の一角が突然現れた。
砂漠にオアシスだな! などと悠長なことを考えていたら
なんと、そこはとんでもない規模と先進性を持った農業基地だった。
ハウスあり、露地あり、研究所あり、物流倉庫ありで
ひとつの完結された近代的アグリ社会である。
あるハウスでは、かじると果物のように甘くてみずみずしい
パプリカが栽培されていた。
忘れられない味とみずみずしさ
ほかにもスプラウト(芽野菜)やハーブ類など見たこともない野菜が
沢山作られている。
また、切花など花卉も豊富。
採算がのり易いアイテムなのだろう。
ハウスの中にいると、まさかここが砂漠の真ん中だとはとても思えない
野外に出てみると、
キャベツなどの葉野菜もかなりの広さで栽培されている。
こういう地産地消もあるんだ
そしてさらに歩を進めると、
なんとポット仕立てのイチゴの高設栽培が一面に広がっている
ではないか!!
中東ドバイでもイチゴは人気なのである。
先端技術、合理的経営、外国人労働者・・・。ひとつの農場モデル。
赤茶色の砂世界に、ここだけ緑豊かな別天地が広がる。
よ~く観ると、いたるところに技術の応用が見られる。
担当者の話を聞いても、花卉でも施設園芸も、露地にも
様々な農業技術が駆使されていることがわかる。
眼からウロコの連続。 だから海外の見聞は必要なのだ。
農業は文化でもあるが、自動車・半導体並みの技術の粋でもある
ことをまざまざと見せ付けられた。
今まで生産者の苦労、経験や勘というものを尊んでいるが、
これから更に技術を集積して、これに価値を加える戦略も
軍事や経済並みの重要性を持つはず。
日本にこれが出来ない訳はない。
世界はもう動き出している・・・。
「ニッポンを売る!」アクションに、数年前からある仮説を予見していたが、このドバイでの視察を通じて、ますますその可能性を確信している。
水が極めて乏しい地域で食料を確保すること、
技術集約的な方向性を追求し、それを戦略的に広めること
の現実を垣間見た。
わが国は水資源に恵まれている反面、
多雨や洪水、病虫害、雑草などとの闘いを強いられているが、
海を渡るといかに水が大切なのかが実感できる。
農業が自然と対峙している産業であることを再認識させられた。
だからこそ、ただ辛くて遅れた産業なのではなく、
未開の可能性を秘めた有望な近代産業のひとつであることも
広く日本の青年たちにも感じてもらいたい。
世界が水で、技術で、心でつながっている産業なのだ。

田中 豊

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「いや~、ドバイでも遂にここまできたか…」というのが実感です。石油エネルギーから代替エネルギーに移行すると、産業の空洞化が起きるのでは、なんて思っていたので、中東やアフリカでこのような動きがあるようになることにホッとします。さらに、このような動きが活発になればなるだけ、日本の農業を世界の農業へと躍進させるチャンスになるのかなと感じています。
食や農が大きな産業であることは、変わりないでしょうが、そのターニングポイントが今ではないだろうかと思います。どのような方向へ進むかは、私たちの胸の中にある、そのことだけは間違いないでしょうが。。。
三方よしさん コメントありがとうございます。中東の産油国はおそらく皆今のうちに脱石油依存の自立経済を目指しているんでしょうね。資金はあるので、人材や技術、情報などを外から取り込むことを実行できる開放指向の国や地域が一歩進むのではないでしょうか。宗教や政治が鍵になりますね。本当はフラットの日本も、国民性というやつでしょうかどうもこの波に乗れません。危機感を感じています。ご指摘のとおり、これからは農業も技術の活用が重要ですね。三方よしさんも益々世界を舞台に忙しくなりますよ。
砂漠地帯での農業・・・本気でやる人たちのパワーがあれば、夢がカタチになっていくのですね。地平線にラクダ、その中の野菜や果物の栽培は『楽園』をイメージさせますね。このプロジェクトための技術やコストやご苦労もあるのでしょうが。
はなさん またコメントありがとうございます。はなさんがおっしゃる「本気」ということがいかに大切かを日々感じています。「本気」が厳しい現実を突破できる唯一の原則なんだと思います。日本も私たちの周りも同じですね。僕らも足元の事を、ただ真面目にではなく、本気で取り組んでみると状況が大きく変わるのではないでしょうか。そんな実例を私は日本でも海外でも見て続けているのです。一緒に本気でチャレンジしましょう。