(前回から続く)
京都市外から車で30分も離れると、もう郊外の緑に溢れた景観が沿道に広がる。山桜も一際美しい。
京都といえば町屋に寺院、道路が碁盤の目に広がる古都のイメージだが、南北にとても長い、自然溢れる農林水産資源の宝庫であることは、誰も想像しない。
京都府が日本海に面していることも知らない人は意外に多いみたいだ。
ここは府中部の京丹波町。
マツタケや黒豆、栗で有名なこの土地も、挑戦的でユニークな農業への取り組みが進んでいる。
花菜と呼ばれる
全国ワイドの販路をしっかりと確保した上で、消費者ニーズに的確に対応した生産体制が整備されている。
イチゴの高設栽培
大手製造メーカーの工場の管理手法を随所に採用した近代的な工程管理は目を奪われる。
種苗から、工具、農薬に至るまで見事に管理されており、整理整頓、清掃整備が行き届いている。
これも管理のほんの一部
もともと自動車メーカーのカンバン方式は、日本の農業を参考にしたとも言われている。
ニッポンの強みは世界に通用する。米豪式だけが国際標準なんかじゃないはず。
また、この農場は人材の育成にとても力を入れており、全国から研修生を受け入れている。
農業もまた人なり、である。
ヤッパリ「徹底こだわり京都」なんだなぁ、と改めて感心する。
丹後地方の春
更に車で北上して綾部市のナス生産者を訪ねる。
京都といえば、賀茂ナス。
ハウスの中は苗を定植して2週間目だそうであるが、整然と植えつけられているナスの苗床を見て息を呑む。
V字型に伸びた支柱の据付から畝の管理まで、これが自然物かと疑うほどの整然振りだ。
見た目だけではない。管理手法の話を聞くと更に肝を抜かれる。
気の遠くなるような手間のかけ方と長年にわたり研鑽を積み上げてきた技術ノウハウと応用力。
ここまで丹精こめて出来上がる賀茂ナスは、ひと玉350円前後で販売されるそうだが、僕は、
「だから京野菜は高い。」から
「京野菜は安すぎるッ!!」へと考え方が変わってしまった。
立派な加茂ナスが生長している
経験豊かな農園主にも若い後継者が出来て、益々頑張っている。
京都市内の料亭からも絶対の信頼を受けているから。
「さあ、どんな販路開拓作戦が練られるか???」
1時間半かけて桜咲く京都の街に戻る帰路、
僕の頭は「近代農産地区-京都」にイメージチェンジがすすんだ。
(シリーズ終わり)
田中 豊
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こんにちわ、mikihitoです。
地元というか、関西圏に住んでいながら、京都に、こんな近代的な生産施設があることも知りませんでした。
京野菜は、外食市場にも需要が高いということもあるのでしょうが・・・。
これは、すごいですね。
京都と農業といえば、僕には忘れられない事があります。今回の【京野菜】とかではなく、農業資材(土壌改良剤)での件です。ある繊維メーカーの繊維の技術を応用して開発されたものでしたが、生産性を上げるうえでかなりの効果がありました。また、この繊維メーカーの技術は、T自動車の最高級車の曇らないサイドミラーにも応用されていました。そういう意味で、【伝統】と【先端技術】が融合した産業(まさにある意味6次産業化)を生み出すのが京都の懐の深さかなと思っています。
mikihitoさん コメントありがとうございます。京都に限らず関西には歴史が深いだけに、ノウハウや技術、サービス、精神性など直接目に見えないスゴイものが底なしの量で広がっていますよね。もしかしたら関西の皆さん自身が当たり前に感じていて価値を特別に感じていないのかも知れません。その意味で、いまこそmikihitoさんのようなプロフェッショナルなkansai人や僕のような関西ファンのよそ者が「気付き」を海外のマーケットで実証していくことも有効なんだと思うのです。
三方よしさん コメント感謝します。京都は千年以上もかたくなに伝統を守っていることに敬意を持ちつつ縁遠いもの、よそ者には出来ないことだと考えていました。ここ数年、多くの方と交流していて感じたことは、京都は、日本一伝統を守るために、日本一新しいものを取り込む才に長けていることを益々実感しているのです。ハイテクと伝統産業、ベンチャー企業と老舗が共存しているだけではなく、双方の物づくりやサービスに具体的に根付いています。もしかしたら「守ることは挑戦すること」の極意が京都にはあるかもしれませんね。