過熱と冷却と

                      
中国南部の広東省からマカオを経由して香港を廻ってきた。
   

台風が東部をかすめて、土砂降りと猛暑を繰り返し、
連日34℃に達するなど、なんとも凌ぎにくい数日間だった。

   
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「過熱にはとにかく冷やすしかない!!」
      

福島原発事故のことじゃない。

      
   

お隣の中国や香港では、旺盛な景気でうらやましい状態の一方で
経済がオーバーヒートしていて、当局はどこも火消しに躍起の状態だ。

       

おりしも3日連続して広東では暴動騒ぎが発生した。
         

潮州、増城といった町での事件だ。

                

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広東には様々な人たちがいて騒ぎ出すと結構荒っぽいし、
中央とは意識が異なるからここでの騒動は要チェックとなる。

    

日本では信じられないほどのインフレ、月ごとに値上げが続いている。

    
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特に食住関連の物価高は庶民の生活を直撃している。
    

   
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豚肉だって値上りするし、公共交通機関の運賃も。  
そして香港の公務員の給与も6~7%強引き上げられる。

       
    

不動産価格は大陸も香港も天井知らずになりつつあって
様々な沈静化策が打ち出されているが、完全にはコントロール出来ていない。

    
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株価も連日下げ止まらず、香港市民も気が気でならない   

   

また、所得の格差や差別、それに取締りの薄れる政権交代前に表面化しやすい汚職と腐敗の横行は常軌を逸している。

    

まさに火種さえあれば、一気に燃え盛る雰囲気に満ちている。

    
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広州増城での騒乱を伝える13日の香港紙

    

中東民主化のドミノがアジアにも迫っているという見方もある。

    

でも、僕は中国の事態を見ながら、これを他人事のように冷ややかな目で見続ける気にはならない。

     
   

今や日米欧の「かつてのリード国」も自らの経済崩壊の建て直しでほかには手が回らない状況で、新興大国である中国の経済や社会のメルトダウンは世界経済にも影響を及ぼすだろう。

       

さらにもうひとつ、日本人は対岸の火事と冷ややかかもしれないが
僕は、日本にだってドミノが伝播して何らかの騒ぎが今後起こらないと言えるだろうかという疑問が湧いているのだ。
     

誰もまともに信じてはくれないだろうが…。

   
     

無為な政局騒動に対して、冷静な日本国民は呆れている。
      

一方で、内向きには誇りと美談が充満しているが、
海外から観た日本は、すっかりたそがれていて
マスコミや世論がこき下ろす政治家の言動や原発処理に対する下品な論調がそのままアジアでも伝えられていて、もう情けないことなんとも耐え難い。

  
Dsc_2192      また交替の総理とスキャンダル記事が新聞の片隅に    
    
     

それら政治家を拝したのは、民主選挙なる方法で国民が選んだはずのリーダーたちのはずが、この20年間、そしてこれだけの国難が襲っているにも関わらず、未だ厳しい自己変革に向き合おうとしていてない。益々ソフトランディングの可能性は乏しくなっているというのに。

   
    

「まともに」自分の頭で考えて行動する国民なら、
暴動とまで言わないがこれから何が起こっても不思議ではなくなる「臨界点」に知らず知らずのうちに近づいているかもしれない、と中国にいてそう感じた。
      

ドミノ現象がどこかの国で止まると言い切れるだろうか?

   
   

暴動や政治転覆だけじゃなく、
健全程度の活力を失った廃墟という名の深刻停滞もまた同じ。

   

    
現状分析や情報収集ばかりでなく、今こそ過去の歴史に学び、未来のビジョンを構築する視座をもっておきたいと思う。

     

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。

“過熱と冷却と” への4件の返信

  1. バブルとそして、バブル崩壊と・・・。
    思い出しますね。
    バブル世代の人たちの中には、
    いまだにバブル再来を信じている人たちも
    いるのですが・・・、
    やっぱりノーテンキに見えるでしょうね。
    すっかり黄昏てしまったニッポンにて、
    明けの明星を信じつつ。

  2. mikihitoさん いつもコメントありがとうございます。外の一部から観たらたそがれているかも知れませんが、内にはもちろん多くの日本人が熱い想いで日々頑張っているのですよね。ただ、mikihitoさんも指摘されているように、かつての成功体験再来を待ち望む方向で「復旧」するのでは若い人たちに希望ある社会を残すことが出来なくなってしまうと、隣の国を観てふと感じたのです。仕組みは変えずに、ただテーマだけ塗り替えてももうだめです。白いキャンバスに夢を描き始めた東北と関西に、僕は注目しています。

  3. 最近僕が感じていた「外への志向」は、この辺りに起因しているのかもと、今回の記事を読ませて頂いて感じました。
    自分がどこへ向かうのか?これまで「内内」を向いていたものが一気にベクトルが変わることもあるのかもしれませんね。これまでの常識・概念では「これからは通用しない」のであれば、、、
    そういう意味から言うと、少し長い「時間軸」で物事を捉えないと、「間尺に合わないことだらけ」という事ですよね。勿論、原理原則からいうと「着目大局、着手小局」は変わらないでしょうが。
    僕も切り替えなきゃならない【機会】なのかもしれませんね。

  4. 三方よしさん コメント深謝。そうなんです。外向き指向も冷静に判断して行動しなければ、歴史を繰り返してしまいます。どうもこの国の人たちは、均質均一で、画一的で、ステレオタイプで、一気に動くきらいがありますよね。内か外か、だけではなく、内も外も、内でも外でもなく、なんて多様な見方や発想があってもいいと思うんですよ。少なくとも外を見ると、この多様性や個性の重要性に気付きます。日本もそんな時代を迎えたんだと思います。

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