ツバメと日本人

                  
台風接近する今日午前、
僕は半年ぶりにかかりつけの近所の病院へ行き
定期のミニドック検診を受けた。
      

採血、血圧、心電図、眼底検査など着々とこなしていく。

  
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台湾・台北の総合病院 今年5月

            

担当の看護師さんが、僕がリラックス出来るように
作業をしながら語りかけてくれる。
        

台風前で蒸し暑いですねぇ。

私、蒸し暑いの大嫌いなんです。」

   

そ、そうなんですか?
   
と僕は突然の語りかけに戸惑いながら生返事をした。

    
       
でもこの蒸し暑さが、ツバメなど夏に日本にやって来る渡り鳥にとってとても意味があることをご存知ですか?
          
若い看護師さんは採血用の注射器を器用に扱いながら続けて問いかけてくる。

    

い、いえ、知りません。 何故なんですか?

と間抜けそうに返事する僕。

      
     
蒸し暑くなると蚊をはじめ、鳥のえさになるような虫たちが大量に発生するじゃないですか。巣を造り、子を産み育てるのに、エサ取りに都合が良い環境になるんですって。」

    

へえ~っ」と頷きつつ、だんだんのめり込んでいく僕。

     

四季がはっきりしている日本の蒸し暑さこそ、渡り鳥たちにとって最適な環境なので、タイやフィリピンなど東南アジアから何千キロも渡って来るんですって。」

との解説だった。

  
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フィリピン・マニラ郊外山岳地区  2000年

     

    
考えてみれば、ただ暖かいところだけで良ければ、一年中暑く、適度にエサがある熱帯・亜熱帯の地域に定住していれば良いところを、命を懸けて海を越えてくる価値があるというものだろうか。

        
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タイ・アユタヤ県の穀倉地帯  2006年

  
  

その科学的な真偽については読者の知識や判断に委ねることとして、
僕は、その時とっさに別のことを考えていた

  

日本という世界で最も暮らしやすい環境にいても、これからの厳しい経済環境で生きていくためにはビジネス世界においても、リスクはあっても最適環境を求めて海を越えて新興国市場に果敢に移住や行き来する“ツバメのような日本人も”益々増える時代が来たんだろうなぁ…。

    
     
          *              *

     
      

ハイ、終わりましたよ!」

      

採血し終えた3本の試験管を手にしながら、その看護師さんが優しく微笑んだ。
            

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。