歴史の都 成都紀行(その2)

成都は海抜500mの四川盆地にあり、周囲は4000mを越す山にも囲まれ、奥深い内陸にありながら、気候は温和でしのぎやすい地だ。

天府の国」と呼ばれるように、実は古くから物資が豊富で、コメ、麦のほか、菜種やゴマ、落花生、淡水魚、豚、綿花、シルクなど自己完結できるだけの豊富な経済作物に恵まれていたのだ。

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成都郊外の農村風景。菜種がいっぱいに実をつけている

この地も数千年の歴史をもっているが、豊かで温和な風土で比較的安定した社会が続いたため、戦乱続く江南など他の地域から多くの人が四川の地を目指してやってきたのだという。

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四川シルク(蜀錦)の手紡ぎの再現

成都の歴史といえば蜀の国。
そう、ここは多くの日本人も親しんでいる三国志の舞台になったところでもある。

060502sanngokuseiti_1 成都は三国志の聖地なのだ

日曜日に地元政府の案内で「武候祠(ぶこうし)」を見学した。

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もともとは、この地を収めていた劉備の墓のあるところなのだが、どうも地元の人は諸葛亮孔明が好きなようで、孔明の字(あざな)である「武候」を冠して偉業を称えているようだ。

060502koumei_2 諸葛孔明像

また、劉備と共に関羽、張飛を合わせた三傑も祭ってあり、桃園の誓いや三顧の礼など馴染み深いシーンも再現している。

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地元の人の説明を受けると、三国志に出てくるエピソードにまつわる文物を目の当たりにできて本当に感動ものだ。

中でも南宋の民族的英雄で書家でもあった岳飛が書いた出師の表などは、もう歴史ファンならずともたまらない魅力だ。

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(今も手本とされる岳飛が書いた出師の表)

もうひとつ成都で有名な歴史的旧跡といえば、詩聖といわれた唐代の大詩人「杜甫」が4年間住んだといわれる「杜甫草堂」だろう。

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060502tohozou 杜甫の像

草堂というから小さな庵(いおり)でもあるのだろうと思っていたら、広大な敷地全体が歴史博物館になっており、杜甫に関する文物はもとより、当時の遺跡の発掘状態をそのまま保存している展示館もあり、複合的に理解できるようになっていた。

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(唐代の発掘遺跡)

私は漢詩にはあまり造詣がないのだが、

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国破山河在
城春草木深

感時花濺涙
恨別鳥驚心

烽火連三月
家書低万金

白頭掻更短
渾欲不勝簪

春望の句を知っているくらいだが、それでも十分面白い史跡だった。

また、成都の西側には「青羊宮」と呼ばれる道教寺がある。かつて老子が青羊を引いてきたという言い伝えにより建立された道廟で、現存する建物は清代のものだ。入り口の幅の割には意外に奥深く、予定時間を大幅に超過してしまい、思った以上に見ごたえのある道廟だった。

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三清殿と呼ばれるひときわ荘厳な建物には一対の銅製の羊があるが、そのひとつは、十二支の各動物を表したという極めて奇怪なものなのだ。

すなわち、

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耳が鼠 鼻が牛

爪が虎 背中が兎 

角が龍 尾が蛇

嘴が馬 ヒゲが羊 

目が鶏 頭が猿

腹が犬 臀が猪

をあらわすとされているのだ。

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敷地の一角で道士が座禅を組んでいた…

どの建物も興味深いが、併設している広い喫茶コーナーは秀逸で、多くの老人たちが朝早くから思い思いに茶をすすりながら談話したり、編み物をしたりしている。ほんとうにのどかな風景だったが、とても印象深かった。

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北京や西安ほど史跡観光地としての認知度は高くないが、成都は歴史の街としても十分に面白いところだ。

(続く)

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田中 豊

地域の元気づくりと海外ビジネスを通じて、日本を元気にしたい行動派プロデューサーです。 海外ビジネスの参謀役として長年活動してきました。 とりわけ農林水産業を振興にすることで地域が元気になることを現場の生産者、支援者の皆さんと共に日々実践していることをとても誇りに感じています。 「地域を活かし、そしてつなぐこと」をスローガンに訴え、いつの時でもチャンス(chance)ととらえ、絶えずチャレンジ(challenge)し、チェンジ(change)を果たしていくことの「三つのC」をモットーにしています。

“歴史の都 成都紀行(その2)” への1件の返信

  1. 成都って写真を見れば見るほどいいところですね。中国の歴史や文化をよく知って、言葉が出来ればぶらりと訪ねてみたい場所ですね。うらやましい。

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