維新の地“下関”で

下関にある国土交通省九州地方整備局で講演させていただいた。
山口県の下関市に、“九州”地方整備局があるなんて、とても面白い。
050222kanmon
(コンテナを積載した外航船も行きかう関門海峡)
2時間にわたり、最近の日本とアジアの経済交流について、私の活動の一端をご紹介した。
特に九州の地場産品のアジアマーケットへの輸出動向やアジアからの観光誘致、中国企業誘致などの現場報告をさせていただいた。
いずれも、港湾・空港をはじめ、物流・人流インフラの整備が、九州とアジアの経済交流を進める上で、大きな鍵になっていること。
また、物流と共に、商流(経済活動)が車の両輪のようにバランスよく機能しないと、真の地域活性化は図れないことなどを実践活動の立場から話題を提供した。
  
下関といえば、言わずと知れた「維新回天の地」。
地方整備局の幹部職員の方々が、あまりに熱心な姿勢で聞いてくださるので、つい調子に乗ってしまった。

「私達日本人は、今、自由に外国に行け、また自由な海外ビジネスが出来ることも保障されていますよね。
でも、FTAやEPAなどと、これから一層の自由貿易・経済連携の時代と言われてますが、実際は、海外の食品は汚染されているとか、海外からの人材や観光客を入れれば犯罪は増える、外資が入れば支配される、などど、ヒト、モノ、カネ、どれをとっても、日本を“外国の邪悪”から守れと言わんばかりの論調が増えているように思えるんですが如何でしょうか?
攘夷か?開国か?
共に日本の国益のためにと議論してはいるものの、今の多くの日本の常識人のアタマの構造は、かつての維新前と同じではないかとさえ感じてしまいます。 
 
いずれにしても、後世の人たちが、明治と同じく平成の日本人は素晴らしかった、と言える決断をすべき時が来たのだと思うのです。」

と口走ってしまった。
何を隠そう、学生時代、私は、下関を舞台に活躍した幕末維新の英傑の一人、高杉晋作のファンだったのである。
はじめは熱狂的な攘夷論者だったが、その後の冷静な情勢判断と果敢な行動で新しい時代を拓いた。
050222takasugi
(下関・日和山公園に建つ高杉の像)
思想の中身もさることながら、その柔軟さ、しなやかさにあこがれていたことを思い出して、心の中でひとり苦笑いしてしまった。
これからの日本は面白い!

活気付く宮崎

宮崎に講演のために出張した。
おりしも、
プロ野球、Jリーグの春季キャンプの真っ最中で
いつになく、街に活気がある。
050215Giants
(街中でキャンプを歓迎している)
恒例の読売巨人をはじめ、ソフトバンク、西武、楽天、広島、ヤクルトの各プロ野球チームと鹿島、広島、セレッソ、川崎など多くのJ1、J2チームがキャンプを張っている。今年は、欽ちゃんの野球チームやサッカー日本代表の合宿も宮崎で行なわれたとのこと。
名実共にキャンプのメッカである。
おかげで報道陣が詰めかけ、九州はもとより、全国から熱心なファンが宮崎に押し寄せている。
連日マスコミを通じて街が紹介されるし、多くの観光客を誘致するわけで、さながら、2月は宮崎がスポーツの話題を独占! と言った感じだ。
これは地域振興にとって、とてもプラスになっていることだろう。
050215Camp
(宮崎空港ビル㈱)
九州の中でも、よそからの来訪者にとりわけ親切な宮崎の人たち。
いつ行っても、気持ちよく迎えてくれる。
こんなに多くのクラブチームがキャンプ地に選ぶのは、単に気温が高いとか、晴天率が日本一だというだけの理由ではないのではなかろうか。
ここでもソフトパワー発揮である。
さて、14日、15日の二日間にわたって、
宮崎の皆さんと地域活性化、農産物の輸出などについて
意見交換を行なった。
050215MiyazakiSeminner15日の午後には、全県から農業生産者の代表が350名も集まって、ブランド化戦略に関する研究会が行なわれた。
やはり西日本を代表する農林畜産県である。
若い代表の比率も高く、非常に熱心な聴講振りであった。
意識の高さを肌で感じる。
安心、安全をブランド化する新たな戦略について
活発な議論が展開された。
実は、宮崎は、県庁経済連の協力で
今年、「完熟きんかん」の香港向け輸出を開始した。
すでに2000パックの契約を実現しており、
そのスピードの速さが注目される。
050215Tamatama
(香港向けの中国語パンフレット・宮崎県)
皆さんご存知であろうか?
宮崎は、きんかん(金柑)の生産が日本一であり、
また、その中でも、3%程度しか収穫できないという
最高品質の完熟きんかん「たまたま」というブランドを。
私も初めて口にしたが、
その驚きの甘さとみずみずしさに絶句してしまった。
「なんだ!この美味しさは!!」
050215Tamatama2完熟きんかんの中でも、
糖度が18度以上で、横直径3.3cm以上の大玉だけが
「たまたま」と呼ぶことが出来るのだそうである。
無農薬で栽培されており、洗って生で頂くのが“お決まり”である。
値段もビックリするが、食べてみれば、それだけの価値がわかるのだ。
「これは、海外でも必ず売れる!」
すぐにピンと来た。
ちなみに、東京の市場でも大人気で、非常に高値で取引されているそうで、とても貴重な初春のフルーツである。
日本で価値のあるものは、海外に輸出することでさらに価値を高めることが出来るのだ。
宮崎の皆さん、挑戦してみませんかッ?

ようこそ ジャパン!

顧問先のある神田に行った折、
秋葉原に足を運んだ。
050202akihabara4
電気街の看板の
黄色や赤の原色の組み合わせのあの色遣いは、
アジアそのもの。
と、歩道の両端で目にとまったのが
「YOKOSO! JAPAN」の白い垂れ幕だ。
050202akihabara
国を挙げて、外人観光客を誘致しようという事業だが、
ここ秋葉原こそ、もっともホットなスポットだ。
外人客の大部分が、中国や香港、台湾、韓国からの
アジア系観光客である店も多く、
ほとんどが中国語の看板表記や中国人の販売員を置いている。
050202akihabara3
売上げの半分以上が中国系人観光客による店もあるという。
ちょうど春節(旧正月・今年の元旦は2月9日)前の
海外旅行シーズンということもあり、
あちこちで中国や台湾からの観光客がいた。
050202akihabara2
さらに隣の、アメ横まで足を伸ばすと
やっぱり、いるいる・・・
お買い物に熱中する中国系の人たち。
050202ameyoko貝柱や干し椎茸、豆菓子、化粧品など熱心に品定めしている。
ここもアジアの市場なのだ。
カメラやガイドブックをもった人、
駐在員の家族風の人たち、
それに寒い日本に重装備の
香港・台湾の観光客は
服装を見ただけですぐそれとわかる。
そう、秋葉原、アメ横、浅草は、
アジアからの観光客のゴールデンコースなのだ。
ようこそ! ニッポン
東京を楽しんだら、今度は
バラエティーに富んだ地方にもお越し下さいねッ!

国会でも議論される農産物の輸出

2日の衆議院予算委員会の場でも
日本の農産物の海外への輸出について
議論が交わされている。
050202kokkai
(共同通信社)
3年前に、人知れぬところで
「逆もまた真なり」と、心密かに誓って
地味な活動を始めたことを考えると、
こんなにも早く、
農産物の輸出が国会でも取り上げられるとは
信じられない想いである。
郵政改革、道路改革、三位一体を掲げ、
都市型議員のイメージが強い小泉総理だが、
農産物輸出についてここまで踏み込んだ発言をするとは思わなかった。
さらに、質問側に立った自民党議員は、
これまで、
日本農業を「しっかりと守る」立場の象徴的存在だっただけに
今回の「攻め」の質問は、時代の変化を感じさせられる。
青森のリンゴの例、島根のコメの例、
掛け合いの質疑ではあるが、
このような話題を実例で紹介されると
当事者は、きっと元気づくだろうな、と思う。
小泉総理が、質問に答える形で

「(海外輸出も含めて新たな挑戦をするかぎり)
政府が補助金を出さなくても、
日本の農業はまだまだ可能性がある」


発言していたのは印象的だった。
そこで、
小泉総理様、議員各位の皆様

農産物の輸出について
熱心な質疑をしていただいていますが、
現場は考えておられるほど簡単なものじゃありません。
今後もしばらくは大変だと思います。
でも、だからと言って、
またもや、政府に、党に、
何をしてくれ、補助金付けてくれ、
人任せなことを言っていては
やっぱりニッポンの農業に未来はありません。

今回のように、
国会の場で紹介してくれたり、
国民の関心を集めていただき、
国としての指針を明確に打ち出してさえ頂ければ
それで十分に有難いのです。
あとは、農業関係者や流通関係者が
しっかりとやってごらんにいれます。
どうぞ、信じて民間や地方にお任せください。
外交交渉案件や検疫突破などについて多くの面で、
ぜひとも国の支援が必要です。
未来のため、共に頑張りましょう!

中台チャーター便 相互乗り入れが意味するもの

春節(旧正月)で帰省する台湾人ビジネスマンらを乗せた
中国のチャーター機が29日午前、
台湾に乗り入れた。
050129airplane
(台湾中央通信社)
1949年の中台分断後、56年ぶりに
中国と台湾の直行チャーター便の相互乗り入れが実現した。
一般には
中国統一に関わる政治問題として報道されているが、
「ニッポンを売る!」の立場からは、
少し異なる視点から
現実を先取りしておかなければならない。
すなわち、
中国と台湾の統一、もしくは独立にともなう混乱は、
今しばらく時間を要するものと考えられるが、
いわゆる「大三通
(台湾当局による対中国大陸の通信、通航、通商の禁令解禁)が
実現し、人や物資が直接自由に往来されるとなると
現在、私達は台湾マーケットへ
日本の農産物等を必死で売り込みをかけているが、
いつ中国大陸から安い農産物が
ドッと台湾市場に押し寄せてくるかどうかわからないのだ。
また、中国市場でも、
台湾産青果物が本格的に輸入されるとなると
双方のマーケットで、
日本の強力なライバルが出現すると言うわけだ。
今回の中台チャーター便相互乗り入れは、
東アジア地域の政治的安定へ半歩踏み出すものである一方、
経済的には更なる激しい競争の予感を感じさせる、
非常に注目されるニュースなのである。
050129airplane3 050129airplane2
(台湾中央通信社)

台湾に売り込んだビッグプロジェクト

今年10月開業を目指す
台湾版新幹線(台湾高速鉄道)の試運転が
27日から始まった。
日本の新幹線が、初めて海外に輸出された例として、
私も大いに注目している。
050127twn_shinkansen
(共同通信社)
日本のお家芸である
高い信頼性を持つ技術システムが
アジアへ輸出されること自体、
我々日本人からすると、
あまり驚くべきことではない様に感じるが、
同じく、日本製品や技術を
海外に売り込むコンサルをしている立場から、
その苦労たるや如何ばかりであろうかと、
思いを馳せるのである。
今でも現場では、運営上、いろいろなトラブルが続いていると聞く。
とにかく、日本びいきの台湾の人たちに受け入れられた新幹線。
日本企業側の直接受注額が5300億円という
ビックプロジェクトだけに、私も大いに勇気付けられる。
無事の開業を祈るばかりだ。

日本最大の貿易相手国が変わった!

財務省が26日朝発表した2004年の貿易統計速報によると、
香港を含めた対中国の輸出額と輸入額を合わせた貿易総額は
22兆2005億円となり、対米国の20兆4795億円を上回り、
日本の最大の貿易相手国となった。
貿易相手国で米国が最大でなくなったのは、
戦後初めてのこと
だという。
050126china_trade
香港の港湾風景
私が中国に関わりを持ち始めた1970年代後半には
想像も出来なかった変化のしようだ。
我が国にとって名実ともに重要な存在になったことだけは
間違いない。

JAの新たな挑戦

福岡県のほぼ中央、JA筑前あさくらで農産物の輸出に関する講演を行った。
この3年間、同様のテーマで、26ヶ所の農業組織や団体で話題を提供したことになる。
海外での販路開拓のためには、海外で活動するだけでなく、
「国内の生産地・流通を巻き込む大きなうねりを作り出すこと」
これが私の大原則である。
asakurakaikan
今回は、ナシ部会の総会の後での講演ということで、
多くの生産者の皆さんが集まった。
nashi
輸出のために展示される福岡のナシ
昨年、4度にわたる台風が原因で、
生産・出荷にも大きな影響が出たこともあり、
総会では、厳しい経営環境に対する深刻な意見が飛び交った。
その厳しさたるや、改めて認識を深くする…。
このような光景は、この地域だけでなく、またナシだけでもなく、
すべての農産物で見られる、まぎれもない現実だ。
nashibukai
JA筑前あさくらと言えば、
農産品の輸出では、九州でも特筆すべき農協のひとつである。
それは、さかのぼること13年前、
福岡県が、初めて香港市場に向けての産物を定期的に輸出する事業を始めてから、
これまでずっと輸出を維持、発展させてきた農協だからである。
全国的にも知られている「博多万能ねぎ」は、ここが開発したものだ。
bannnohnegi
博多万能ねぎは、いまや香港では、
一部の地元スーパーでも見かける定番アイテムになっている
かつて、薬味用の小ネギは、香港では野菜を買った客に、
八百屋が、香菜(シャンツァイ)と共にタダで付けてくれる「景品」商品だったのだ。
(今でも台湾では、その習慣があるため、なかなか高級野菜として認知されていない)
しかし、JA筑前あさくらの担当者は、10年余りの奮闘の末、
「景品」から一気に定番野菜へと地位を向上させたのである。
日本全国にも普及させ、また同時に香港でも実現させるという、
この執念と努力にはとにかく敬服するに値する。
また、日本一の生産量を誇る甘柿(富有柿など)もこの地域の特産で、
数年前までは台湾向けに輸出され、好評を博していた。
2時間近くにわたる私の講演にも、
誰一人として居眠りする人は見かけられず、
改めて生産者の真剣さに身の引き締まる思いがした。
講演終了後、
3年間お付き合いさせていただいている手嶋なし部会長が
「今年はなんとしてでも、我々のナシをアジアへ輸出したい!」
という決意をこめた言葉が印象的だった。
「販売の現場」と「生産の現場」
この双方の厳しい現実から眼を離しては、真実は見えてこない。

台湾での農産品販促活動

1月18日から、台湾台北(タイペイ)の日系百貨店で福岡物産フェアを開催している。
旧正月(今年は2月9日が旧の元旦)前の歳末シーズンということも重なり、
売り場は買い物客でごった返した。
このお店は、台湾でも高級住宅街として知られる「天母」という場所柄、
高級商品の品揃えを追求しており、日本から食材を輸出する意味では
いいテストマーケティングになると期待している。
今回、福岡から、イチゴの「あまおう」をはじめ、甘柿、葉物野菜類、
とんこつラーメン、明太子、各種和洋菓子などを出品。
開幕前は、どうなることかと心配もあったが、
いざ開店してみると、あまおうをはじめ、予想以上の手ごたえを感じた。
mitukosi
開店直後、まだ搬入作業も終えておらず、
売り場も雑然としているところに
一人のお客様が、「あまおうは今買えますか?」と
問いかけてきたのには一同ビックリした。
その後は、エスカレーターで地下売り場へ降りてくる客のほとんどが
福岡フェアの売り場へ足を運び、
興味深そうに商品をのぞき込む。
ひとパック450元。日本円にして約1500円である。
福岡での市価の約3倍の値段。
実は、この3倍とか10倍とかの比較は意味がないことを
これからの記事で解き明かしていこうと思う。
まだ開店まもない午前10時ごろ、
トレーナーを着た若い男性が「あまおう」をギフト用にぜひ欲しいと言ってきた。
タイペイの他の日系デパートや高級スーパーを数店舗探したのだが
売り切れてしまっていて手に入らない、と言うのだ。
この天母という所は、市街地から結構距離がある。
わざわざフェアの広告を見て、祈る思いで足を運んで来た、という。
「本当にありがたい!」
心の中で何度も頭を下げて応対した。
でも、感情にふけってばかりいられない。
包装中もいろいろインタビューさせていただいた。
このような情報こそ、生きたマーケティングリサーチ。
アッパーミドルの若い台湾人消費者の一面を知ることができた。
やはり知りたい情報は、現場にしかないのだ。

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。
「災い」多き2004年も終わり、新たな希望を込めて2005年を迎えました。
昨年は、アジアビジネスのコンサルタントとして、「守り」から「攻め」への転換を提唱し、そして実践してきました。
特に、日本産農産物のアジアマーケットの輸出について顕著な実績を上げることができました。
しかし、まだまだ端緒についたばかりであり、これから、その奮闘ぶりを中心に、このブログを通じて紹介しようと思います。
元旦にいつも思い出す中国の言葉に、管仲の
「一年の計は穀を樹うるに如かず
十年の計は木を樹うるに如かず 
終身の計は人を樹うるに如かず」があります。
壮大なるビジョン実現のために、
まず今年どんな種や苗を蒔き、そして人材を発掘するか。
自然と気合が入ります。
本年もどうぞよろしくお願いします。