北海道のアジアパワーに脱帽(2)

        
夕刻、小樽から札幌に戻り、再度仕事して一服、

   

 「面白いものを見に行きましょうか」

   

という誘いを受けて、夜「すすきの」に繰り出した。

      

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 どんなものに出会うのだろうか?
    

期待を胸に、夜の歓楽街に向かった。

      

      

そこは、北海道ビギナーの定番「札幌ラーメン横丁」。
     

細い路地に何軒ものラーメン店が軒を並べている。

      

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狭いその横丁に足を踏み入れた途端、アッと驚いた

      

どの店も中国人の観光客でぎっしりと込み合っているではないか!

    

もう占拠されているという感じだ。

   

路地にもガイドブックを持ったいくつもの女の子たちのグループが、どの店がいいか迷っている。

     

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耳に入ってくる言葉は、広東語、北京語、台湾語、上海語勢ぞろいだ。

   

店の中もぎっしり一杯で、
ワイワイガヤガヤ香港の飲茶楼と同じくいつものとおりの喧騒ぶり。

    

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日本人のカップルが 

「なんだこれは!?」
     

目を白黒させながら、首をすくめて麺をすすっている。

       

店の前には
「香港の**旅行社と提携」「雑誌クーポン使えます」など
中国語で書いてある。

   
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韓国語だって・・・

    

  一体、ここはどこなんだ!?

   

  札幌に中華街なんてあったっけ!?

    

もっともこういう現象は時間帯や季節にもよるそうだが、
ちょうど旧正月シーズン終盤にもかかっていて、
なおさら凄かったみたいだ。

   

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どこにもお調子者は居る・・・

   

おそるべし、アジアンパワー。

    

      

そのあと狸小路という大きな商店街を歩いていたら、
果物屋さんが遅くまで店を開けていた。

    

そのうち香港人らしきカップルがやってきて
一目散にイチゴの前に来て品定め。

    

二人でパックを手に取りながら、あれがいいこれがいい。

  

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 安いねッ!  と広東語で感嘆の声。

    

あっと言う間に4パックもお買い上げ。

    

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ニコニコしながら去っていった。

    

後からのぞいて見てみると、そのお店で売っていたのは
福岡産の「あまおう」と仙台産「とちおとめ」だった・・・。

    

そう、北海道ではあまりイチゴは生産されていないはず。

    

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彼らにとっては、日本に来たら本場のイチゴが食べたかった、ということなのだろう。

     
産地がどこかなんて、こだわる必要は無い。

   

考えてみれば、タラバガニだって、ジンギスカンだって、素材の産地は僕もよく知らないけれど札幌の味、日本の味ですもんね。

    

香港でも今や、高いけど「あまおう」はあちこちで売ってます。

   

間違いなく香港で買うより安いのだけども、産地から届いた時間は、札幌より香港の方が早い可能性が大なのですよッ!!

      

このカップルは香港で一度は日本のイチゴを食べたことがあるのではないだろうか? など余計な想像を膨らませてしまう。

      

お店の人に聞くと、甘柿もよく売れるのだそうだ。

   
   

 「札幌でもお買い上げ、誠にありがとうございますッ。」
   
      

 僕は心の中で、そうつぶやいた・・・。

      

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北海道のアジアパワーに脱帽(1)

             
仕事も順調にすすみ、半日空き時間が出来たので
小樽へ案内していただいた。

      

札幌からも電車で約30分。こんなに近いとは思わなかった。

        

美しい雪景色から、突然北海の大海原が開けたときは感動した。

      

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小樽は最近、観光誘致にも成功していて
レトロな雰囲気漂う石造りの建築物や運河沿いに並ぶ倉庫群は、一度は訪ねてみたい所ではないだろうか。

      

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JR小樽駅から歩いて直線10分余りですぐに運河沿いの通りに至る。

      

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天気も冷たいけど気分上々。
            

ゆっくり見物するか、と思いきや、韓国人のツアー客がいくつも来ていて、耳から入ってくる歓声は韓国語ばかり。
      

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いやー、ビックリした。

     

お喋りなオバさん達から声をかけられたりするが、
何を言っているのかサッパリわからない。

      
でも、皆とにかく楽しそうで、僕もツアーの塊の中に入り込んで
訳もわからずハシャギまくった。

     

それにしても路面が凍っていて危ないことおびただしい。
    

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韓国の人なら母国でも慣れているからいいかもしれないが、台湾や香港の人はどうしているのだろう。
      
まっ、それもいい体験か・・・。

      

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写真撮影スポットで韓国の人たちと写真を撮り合っていたら
突然、吹雪きだして、前も見えないくらいのモノ凄さになった。
    

温度計の数字は、マイナス1℃。

体感温度はもっと低い。

      

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ツアー客の人たちは、すぐに待機していたバスに乗ればい が
私はただただ右往左往するばかり。一瞬で体に雪が積もるほど。
     
      
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タクシーに乗ろうという同行の方の勧めを断って
吹雪の中の小樽観光ロードを歩ききった。

     

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日銀小樽支店
    

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吹雪の中をこんなにはしゃぐ九州人を見て
あきれ果てた事でしょう。
    

ゴメンナサイ。

  

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でも、雪の少ない地方の人間だからこそ、
台湾や香港、中国、東南アジアの人たちが北海道に行きたがり、また感動する気持ちがよくわかるのです。

      

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今、世界的に流行しつつある「Japanese Sushi」でも
ここ小樽は憧れの街。

    

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つくづく発信力のある街だと思った。

     

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その日の夜、札幌に戻り、
さらにアジアパワーに驚かされる事になる。

      

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美味しいお茶の淹れ方知ってます?

   

福岡県八女市21世紀茶業青年の会の研究会が開かれ、私も招かれて参加させていただいた。

   

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八女といえば高級緑茶「玉露」では全国的にも有名な産地であり、八女茶ブランドとしても確立している。

 

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地元の青年の皆さんたちと一緒に、海外の市場開拓・マーケティングについて研修した。

  
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講演の後、「おいしい緑茶の淹れ方選手権大会」が開かれ、私も志願して一選手として参加させていただいた。

 

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5名の選手がひとつのテーブルに着き、各々グラム3000円もする玉露を同じ茶器で自分流に最高の淹れ方で5杯に分けて入れてから、自分の番号の上に置く。

  

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自分で淹れた後、隣のテーブルに移り、同じように淹れられた異なる選手の5杯の玉露を飲んで、今度は審査員として一番美味しいと思う番号を投票するのである。
    
もちろん、誰が淹れたのかはわからない。

  

私以外は、緑茶生産者や茶商の青年やJAの緑茶担当者であり、その道のプロである。

   

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中には日本茶インストラクターの資格を持った人や手もみ技術で全国大会を制覇したツワモノまで何人もいる。

   

私も一応、常識として玉露は入れる温度がとてもナイーブで、人肌くらいに冷ましてから急須に入れることくらい知っていたはず。

     

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まずは茶器を十分に暖める・・・

    

気合を入れて試合に臨んだ。

     
しかし、温度計がある訳でもなく、頼れるのは自分の経験とカンだけ

  

廻りはじっと腕を組んで待っているのに、私だけ辛抱しきれずに急須にお湯をさしてしまった。

        

その後もしばらく他の4名はジッと動かない・・・。
   

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腕組みしたまま微動だにしない

    

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その間の時間の経過がなんと長かったことか。

  

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5人それぞれが淹れた茶碗の中の玉露の色を見たら一目瞭然だった。

  

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完敗・・・・・。

   

私が淹れたお茶は、色も悪いし、冷めると一遍に風味を無くして不味くなってしまっている。

   

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隣のテーブルの審査

    

初戦敗退である。

   

トホホ・・・   

勉強し直します。

    

    
それにしても、私が審査したテーブルでも
5杯5様で、すべて色も香りも味も違った。

    

甘さ、旨み、渋み、あと口・・・

上手に淹れられたお茶は冷めても美味しいのだ。

   

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いや、冷めた方が違いがはっきりしてしまうほどだ。

  

なんて奥が深いんだろう!!?

 

俄然、お茶に対して興味が湧いて来た。

  

茶葉の分量、湯の温度、浸出時間、茶器の暖め方、そして心を込めて・・・

     

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知性と精神性の両方が求められるのだ。

    

このような競技(?)をぜひ大消費地や海外でもやってみてはどうだろうか?

     

いっぺんに高級緑茶ファンが増えるはずだ。

 

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実は裏方の準備がとても大変なのだ

   

お茶席の抹茶も代表的な日本文化だけど、生活に根ざした美味しくお茶を頂く技法としても日本人の文化を再発見することができる。

  

ワインやコーヒーもいいけど、緑茶もいいぞ。

   

最近、料理の出来る若い男性が女性の間でモテているというが、

世の女性の皆さん!

「日本茶を美味しく淹れられる男性って素敵ッ!!」

と合唱してくれないだろうか。

    

きっと男たちはマイ急須などを持って研究に没頭するに違いない。

    

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ペットボトル全盛の時代、お茶を美味しく淹れられる男性を、私は本当にカッコいいと思う。

       

もちろん女性もとても素敵だ。

        
バレンタインやホワイトデーにはチョコレートもいいけど、八女玉露のリーフ茶なんてのはオシャレじゃないかなあ。

   

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特別に「水出しの玉露」というのを頂いたが、最高に美味しかった。

   

   
それにしても、八女地区の緑茶生産者の青年たちは皆イケメンぞろいで驚いた。

   

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このまま渋谷の街を歩いても何ら違和感のないような、ルックスもいいし素直で明るいイイ男たちばかり。

   

輝いて見えるだ。

   

この茶業青年の会は40歳が定年で、会員が90余名いるそうである。

   

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それだけ若い後継者に恵まれている産業なのだろう。

   

自然を相手にモノ作りする青年は、これから地球レベルで物事を考える時代、もっとも先端を行くリーダー達なのだ。

  

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優勝者の表彰  「おめでとう!」

   

ぜひ大きな志を持って、これから世界を相手に飛躍して欲しい。

  

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福岡県は今、緑茶の海外輸出に向けて着々と作業をすすめている。

    

産地青年たちの行動が始まれば、きっと面白い事が起こせると思う。

     

           

装甲車と機関銃とセクシー秘書

 
ウラジオストクでの訪問先のひとつに民営の海運会社があり、ここで貴重な体験をした。

 

立派なオフィスに調度類。
    

今年若干46歳の創業社長は
小さな海洋調査会社から身を起こし、
今では十数隻の中古船と倉庫も保有するに至っている。

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とても精悍な表情をしており、いかにも男っぽい。

それもそのはず、以前はキャプテン(船長)をしていて
世界の海を股にかけていたのだと言う。

   
 
起業から現在に至るまでまでの創業物語は、さながら立志伝のよう。
   

地元当局と密接な関係を持って事業を拡大させる他の業者を尻目に、絶対に人に頼らないという強い意志を持っている
    

それだけに、癒着する同業者との激しい競合や妨害工作、法外の攻撃などに常にさらされるのを、自らの力だけを頼りに事業を守り続けている姿は、さすがに小説になるような男の世界がそこにあった。

   

引き込まれるような眼差し、聞き入ってしまう落ち着いた語り口。

男が惚れる男…。

   

   
そのうち秘書のようなスラっとした女性があの有名なロシア紅茶を運んできた。
    

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若くて美人というだけ(?)なら、時おり出くわすこともあろう。
しかし、その上
大胆にもウエストが丸出しで、胸も大きくはだけているなんて有り得ない事で、一瞬ギョッとした。
(掲載できないようなスナップが何枚か撮れて?しまった)
   

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せっかく感動あふれる会談の最中に、

なんでこんな時に煩悩にさいなまれなきゃならないのか!? 

と心の中で頭を掻きむしりながら、何度も葛藤する…。

     

そのうち会話も弾み、予定になかったのだが、
ぜひ自分が案内するから所有する埠頭の現場を見に行こう、と言う。
    

わざわざ社長が出てこなくても良いから、と遠慮したが、

    
社長:  「自分が行かないととても危険だから」
  

一同:  「んッ!?」
  

足元が危険だというのか、それとも…。

     

予想は当たってしまった。

   
    
私が乗せられた車は、どう見ても装甲車。

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外にコンバットと書かれている。
    

乗車しようとするのだが、ドアが重くてなかなか開けることが出来ない。

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聞けば、14kgもあるのだと言う。女性なら絶対に動かせない。

鉄板の厚さは75ミリ。当然防弾ガラスで、もちろん開閉なんて出来ない。

   

車の中は、総革張りのリムジンそのもの。

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軍事工場で作ったもので、もし海外で作ったら数億円はする代物で
ウラジオストクにはわずか2台しかないと言う。

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初めは子供のようにはしゃいで、自ら運転する社長にいろいろ質問などしたものだが、よく考えてみると、なんだかそら恐ろしくなってきた

  
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鉄柵を張り巡らせてある敷地内に入り、荷役する現場に着いて
感動のコンバットから降りたのだが、そこで2度ビックリ。
   

後ろの車から機関銃を持った無表情の警備員が出て来て、ピッタリと我々を護衛するではないか!!
   

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ゾ、ゾオ~ッ。

   

そうだ、どこでも港の現場には怖い所があると聞いている。

しかも、ここはロシア…。

    

それでも、港湾荷役業務の話、中古車取り扱いの話など、現場で社長が熱っぽく語る話に引き込まれ、いつの間にか夢中で聞き入ってしまっていた。

   

新たに広大な敷地も買収し、壮大な事業構想なども伺い、予定を1時間以上オーバーしたが、本当にあっという間の収穫多い貴重な訪問となった

   

帰る頃には、僕はあの機関銃を持っている警備員とも
アイコンタクトで仲良くなり、
彼のフト見せる笑顔にお友達感覚となった。

なんて優しい目をしているんだろう。 
  
  

でもイザと言う時は、体を張って凄まじいもんだろうな、なんて勝手に想像を膨らませてしまう。

   

ロシアに詳しい人に聞けば、このような身辺警護やオフィスにいたセクシーな秘書は、結構よくある事だそうだ。 

  

装甲車や機関銃の「硬」とセクシー秘書の「軟

  

僕はほんの少しばかり中国兵法の現代ビジネス向け解釈をライフワークにしているが、知ってかしらずか、この社長は、「硬軟ゆさ振りの計」を実践しているのだろうか。

   

僕が勝手に精神を揺さぶられただけ、とも言えなくもない。

   

兵法分析家(!?)として、チョッとばかし恥ずかしい

    

     
事業競争の話を聞いても、登場する男女にしても、見方をすれば、ロシアは力ずくのマフィア経済が牛耳っているというような言い方もされるのかも知れないが、どうも言葉のイメージと現実は少し違うのかもしれない

    

とにかく、このストレートさ、強烈さが何とも刺激的で心を揺さぶられた

    

私にとって、ロシアに強い興味が湧いた瞬間だった。

   

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ヘルシー料理の本命はどこ?

 
体に良い、体にやさしい料理と言えば、
日本料理の素晴らしさは、かなり世界中に浸透している

   

ヘルシーで、油脂分が少なく、栄養バランスに富んだ日本食は、世界一の長寿国の大きな根拠となるものである。

 

最近は、BSEや鳥インフルエンザなどの流行を背景に、肉食から魚食への転換も世界中で起こっているようで、魚介類を素材にした日本料理がブームになっている要因のひとつにもなっているようだ。

  

アジア各地でも、ずっと日本食の健康志向については注目を集めており、単なる高級接待料理だけではなくなっている。

   
  

が、しかし、最近、そのヘルシー料理の地位が危ういかもしれないのだ。

 

シンガポールのある庶民向けのフードコートの一角にあるレストランで、下の写真のようなメニューを発見した。

   

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大長今」とは、日本でもブレイクしたTVドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」の韓国原題で、「養生套餐」とは「ヘルシーセットメニュー」という感じだろうか。

  

この番組は東南アジア一帯でも相当ヒットしたようで、台湾では冬のソナタより視聴率が高かったという話もある。

  
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HPより引用

  

かつて、日本の連続ドラマ「おしん」が世界中でヒットしたのと同じような現象に近いのかも知れない。

  

それが単なる視聴率だけの問題ではなく、もしかしたら飲食の業界にも影響するかもしれないのだ。

  

「チャングム」では韓国の宮廷料理だけではなく、不老(アンチエイジング)や長寿、病気予防・治療などの食養生の知恵が満載で、長い歴史に育まれた韓国伝統の医食同源、薬食同源のイメージが視聴者にも伝わってくる。

  

もっとも、この店では、ナムルやビビンバ、コムタンスープ、人参茶など、すでに日本でもおなじみの定番料理をヘルシーメニューと謳っているだけの話なのだが、時としてイメージは消費者に大きな影響を与えることがある。 

   

裕福になったアジア大都市では、若返りや長寿にこだわる、いわゆる「健康オタク」が急増している。

   

日本で放映されたテレビの健康番組が現地語に即刻翻訳され、結構ブームになっているらしい。

  

健康酢、ウコン、五穀米、納豆いたるまで、日本食材のブームが各国に伝播している。

   

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シンガポールでは牛丼にもこのとおり長い列が

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東南アジアでも讃岐うどんブーム!?

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健康食品もこの人気

    

このように、単に商品を紹介するだけではなく、メディアを通じて食べ方や文化、健康知識、情報伝達などを戦略的に活用することも有効に違いない。

  

このままにしていると、「ヘルシー料理の代名詞は韓国料理」に取って代わられるかもしれない。

  

ここでも「攻め」の姿勢が求められる。

   

緊急事態に翻弄される対外貿易

  

属する貿易団体から、緊急のニュースレターが届いた。

  

経済産業省貿易経済協力局からの通知で、
11日、政府が「北朝鮮による核実験に係るわが国の当面の対応について」を発表し、その中に北朝鮮からの全ての品目の輸入を禁止するという措置が含まれている。

この措置は、今日13日に外為法第10条に基づき閣議決定され、明日14日から施行される予定だ。

詳細については、同省のホームページに掲載されることになっている。

  

措置の主な内容として、

○北朝鮮からの全ての貨物について、経産大臣の輸入承認義務が課せられることになり、輸入が禁止される。

○北朝鮮から第三国へ輸出される仲介貿易取引や承認を受けずに行う輸入貨物代金の支払いも禁止される。

また、施行日以前に交付された輸入承認の取扱いについても別途規定が盛り込まれる。

今回の北朝鮮による核実験は、唯一の被爆国であるわが国としては断じて容認されるべきものではない。それはわが国に近かろうが遠かろうが関係はない。人類存亡の問題でもあるからだ。

  

核問題に対してわが国、我が国民が敏感に反応するのは当然のことである。

  

民間貿易取引は、原則的には平和と安全保障が前提として行われる経済行為である以上、これが脅かされることがあれば、政治上の理由で制約が加えられることは覚悟をしておかなければならない。

  

国際貿易では市場原理だけでなく、政治問題や様々な天災・人災が原因で予測もつかない事態に急変することが時々起こる。

最近でも、9.11テロSARSの流行で身動きすら取れない経験をした記憶はまだ新しい。

  

私も業務上関係している農水産、食品、繊維、建材の業界では北朝鮮と何らかのつながりがあるはずで、企業によっては取引中断や制限、逆に他国へのシフトや調達奔走など、逆風や特需に追われているはずだ。

前世紀までは中国をはじめ、主に社会主義国とのビジネスは常に政治問題に翻弄され、私も何度か修羅場を経験してきた。

  

新内閣発足直後、様々な波紋を呼んでいる今回の核実験問題だが、平和を前提とする貿易立国に住む国民のひとりとして、この事態に対して毅然と立ち向かうことが求められている。

  

同時に、したたかな国際派ビジネスマンなら、当然、世論やマス報道だけに目を奪われるのだけでなく、次ぎの展開、またその次ぎの展開を見据えた変化を先取りするイメージを持ち、アクションを起こしおかねばならない事は言うまでもない。

    

中国の規制強化を考える

ここ数日、中国内で日本製の化粧品や食品に有害物質が検出されたということで当局の検査が強化されているという。

 実際に通関に時間がかかったり影響も出始めているようだ。

  

 日本国内の報道では、この原因は今年5月の日本の使用農薬のポジティブリスト制への移行に伴う規制強化に対して、中国側がこの措置は形を換えた非関税障壁であるとして報復措置に出たもの、との見解がもっぱらである。

 確かに、中国当局が規制を強化する背景には必ず何らかの意図が働いていると考えられるのも無理は無いが、我々は冷静さを失っては却って問題を複雑化させる

  

 農産物や食品貿易における日本の規制強化やネガティブ報道は、実は私が中国ビジネスに関わってからも数多く経験している。1980年代にも輸入が急増した中国茶の中にダニの死骸が異常に含まれているという報道やコメ不足のときにタイ産米にも同じように報道され、交易に大きな影響を与えた。

 

 最も大きかったのが2002年の中国産ほうれん草に残留農薬が検出されたとの報道をきっかけに、日本中の世論が「中国産は汚染だらけ」の大合唱となり、検査が大幅に強化された結果、中国からの輸入が大幅に落ち込み、現在もその余波が続いている。

 確かに、急成長する中国において食品に対する管理がずさんとなり、国内外で問題が噴出していることは事実であるが、中国当局がまったく放置しているわけではなく、また、日本向け輸出の大きな担い手である日系企業もかなりの負担をしながら、ここ数年改善に乗り出している。

 ある意味では、残留農薬問題をきっかけに、中国における対日向けの食材では、近代的食品管理や有機・減農薬農業などが急速に普及していると言う皮肉な結果すらあるくらいである。

 

 しばらく消費者はそっぽを向くだろうなどと安心するようでは先が思いやられる。

 

この種の問題は、一部のネガティブなとらえられ方をして、正常なビジネスに大きなコストや負担、制限が加えられてしまうことである。

 

 これは国際交易の局面では、長期的に観れば決してプラスに働かない。

 

 数日前も、テレビの人気女性キャスターが、何の脈絡も無いところで「農薬汚染がひどい中国産の農産物云々・・・」など平然と形容詞をつけていた。

 

 また、中国の農業事情を取材するに当たって、衛生状態の悪い栽培現場を撮りたいので探して欲しいなど、初めから結論ありきの偏向ともいえる要求をされることも多い。

 

 世論が求め、大衆が歓迎する方向に報道が移ろって行くのは理解できないわけではない。しかし、あまりに極端に走ると却って国益を失うことになることを知るべきである。

  
これは日中双方に言えること。

  

冷静に対応しないと現実離れした問題に発展しかねない。

 もうひとつ、私のこれまでの経験から、ネガティブキャンペーンをしてみても最終的に勝利することは無い。短期的には得をしても、大きな潮流の中で根本解決することは無いからである。

攻めの姿勢で、堂々と渡り合うほうが絶対に強くなれる。

  

20年前、あれだけウーロン茶ブーム、紅茶ブームにさらされ、危機的状況とまで言われた日本茶の業界も、今はどうだろう。国内ばかりでなく、東南アジアやアメリカでも人気を呼び始めている。

  

今回の化粧品・食品の規制強化を動きを注意深く見守っていかねばならない。

シンガポールでも常設店オープン

シンガポールでも日本産農産物・食品の常設店舗コーナーが、今月1日、伊勢丹シンガポールスコッツ店で正式オープンした。
  

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先のクアラルンプルに次ぐもので、
同じく農水省の支援事業の一環として半年間にわたり恒常的な販売コーナーの設置と週替わりの販促イベントが行なわれ、全国各地の特徴ある商品がテストマーケティングされるシステムだ。
   

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日本各地の特産物が販売される

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香港と同じ自由貿易港であるシンガポールは、手続き上の障害も少なく、また一人当たりのGDPも日本の地方並みの高さを示しており、 成熟した地元消費者が高付加価値の日本食品を抵抗なく購入する。

常設コーナーのオープンセレモニーには、宮腰農林水産副大臣をはじめ、日本大使館磯部公使、和泉農水省輸出促進室長、そしてシンガポール政府関係者、地元日系財界関係者が出席した。

   

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スピーチする伊勢丹シンガポール森社長

   
私も末席に参加させていただいたが、今回、地元の人たちから熱い注目を集める招待者がいた。

DAWN YEOH(ドーン・ヨー)ちゃんというシンガポールの有名タレントだ。今回、日本農産物の販促支援にも一役買ってくれることになったのだ。
  

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宮腰副大臣(右)とドーン・ヨーさん
  

司会者から名前を呼ばれると、あちこちから黄色い声が飛んだ。
トレンディー俳優なのだろうか。すごい人気だ。

今後、TVドラマなどで美味しいフルーツを頬張るシーンが見られるかもしれない。

   

常設店オープンと共に、会場は多くの買い物客で賑わった。

やはりシンガポールの購買力は本物だ。
  

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北海道物産展がシンガポール伊勢丹で開かれたそうであるが、2年目の今年、バイヤーも驚く売り上げの大記録を打ち立てたのだそうだ。

その裏側では、やはり出展企業すべてが販売員を日本から派遣し、実演も交えてしっかりと販促活動をした結果だということだ。
  

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日本の職人の実演には、今日も長蛇の列が
  

いかに購買力がある国でも、人任せの販売では全く見向きもされない。海外市場で商品やブランド、地名の認知度を上げるには、絶対に手抜きをしてはいけないことを今回も教えられた。

  
   

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クアラルンプルの日本食品販売事情

 
30日に開業した日本産農産物の常設店舗事業は、主に販売コーナーと週ごとの販促イベントから構成されている。

販売コーナーについては、オープン記念ということで
様々な商品が店頭に並んでいた。

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そのアイテム数の多さにも驚いたが、
鮮度の良さも私の想像以上だった。

通関上の特別の配慮はなかったそうである。

 

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果物の王様 クラウンメロンが約4600円なり

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泉州特産の水ナスまでも売っていた!

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JAS認証マークつきの加工品も
 

 
マレーシアといえば、誰もが知る回教徒の国で
中東に行かずともその食文化のギャップを体験することが出来る。

 

最も顕著なのが食肉の扱い。

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特に豚肉は回教徒は絶対に口にしないし、扱う事だって忌み嫌う。

牛肉や鶏肉、羊肉だって、回教のしきたりに従って処理されなければならないという。

だから、豚肉を販売するには、
わざわざ「NON-HALAL」というコーナーを設けて販売されている。

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「HALAL(ハラル)」とは、イスラムの律法にのっとった食べ物という意味で、厳格に守られている。

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中国系消費者にとって、肉といえば豚肉を指すくらいだから、
現場を理解するのにこちらの方が戸惑ってしまう
 

また、回教徒は飲酒をしないのだが、単に酒類を買わないだけでなく
食品に添加してあるアルコール類にも厳しくチェックがかかるから
販売サイドはものすごく気を遣うのだそうである。

だからアルコール添加物を除去したカステラなどは
私達が食べるとなんとなく物足りない食味になるらしい。
味醂(みりん)や獣脂なども同様だ。
 

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人気のケーキも日本とは違うのだろうか?
 

国が違えば、対応を替えなければならないことの良い例だ。

もちろんこのデパートでは
日本から清酒や焼酎などもしっかりと輸入販売されているから
ダメだと諦めるのは早とちりということになる。

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マレーシアでもこのとおり、日本の酒類が豊富
  

異文化をいかに受け入れ、それに適切に対処することも
販路開拓の重要な要素になる
だろう
 

逆に、日本食品の特徴や食べ方などについても丁寧に現地消費者に伝えなければならない。この手間を抜いて海外での普及は考えられない。

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東アジアとアラブのクロスロードとも言えるマレーシア。

 
我々にいろいろな情報を与えてくれる・・。
 

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同じ回教徒の衣装といえど、こんなにも違う・・・

  

日本ブランド農産物が空の玄関にもお目見え

回のエントリに続き、成田の話題をもうひとつ。

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成田空港出発ターミナル

少し前の話になるが、6月5日、
海外出張のためにいつものように成田空港に行ったら、
出国審査を出た後の一角(第2ターミナルビル本館3階)にJAが日本の農産物を宣伝・販売するコーナーを見つけた。

その名もぶらんどJAである。

パスポート検査の後すぐの場所で、免税品の買い物に散らばる前の多くの人が通過するローケーションのよい所だけにプロモーションには格好の場所ではないだろうか。

店舗の外観は黒を貴重にしたとてもシックなデザインだ。

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あまりに洗練されているので、およそ農産物の販売店というイメージとは大きく異なるところが斬新だ。

どんどん買ってくださいという免税店とは明らかに一線を画しているようで、日本を訪れる外国人に対して、ハイテク、アニメだけでなくジャパンブランドの農産物を紹介するという情報発信機能が前面に出ている。

ちょうど3日前の6月2日に正式オープンし、式典には中川農水大臣も駆けつけたという。

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店内の様子

季節商品として、メロンさくらんぼが販売されていた。

さくらんぼは化粧箱入りで15000円とかなり高価だから、簡単に誰でも手土産に買っていけるものではないが、技術王国・日本の高品質農産物を知ることはできる。

奥には、コシヒカリやあきたこまちなど日本を代表するブランド米や高級煎茶、梅干や乾し椎茸などの加工食品なども取り扱っていた。

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試しに、販売されていたブランド米450グラム(500円)をひとパック買い求めてみた。

お土産用のお米だから、もちろん国内で普通に買うより明らかに割高だけれども、ワンコインで買える価格だから、数個なら手にも持てるし、海外で配って話題作りになるだろう

和服を着た親切な店員さんから、お米に関する話を聞く。

英語や他の外国語が出来るかどうかは判らないが、日本語で丁寧に商品情報やこのコーナー設立の趣旨を説明してもらう。

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0607022matrix_2また買う時に、これからどこの国へ行くのかと尋ねられる。

農産物は、国によって個人で持ち込める商品に制限があるからだ。

資料で持ち込めることが出来ることを確認してから売ってくれる仕組みだ。

店内にも日本語と英語で国別、品目別にマトリックスで持ち込み可否が判るポスターやパンフレットが備えてあるが、これが少し判りにくい。

でも、買う時に確認してくれるから、それもよいか・・・

お米を買うと、サービスとして商品に貼れるよう日本チックなデザインのステッカーをつけてくれる

浮世絵とか、富士山、桜、和のデザインなど20数種類の中から好きなものが選ぶことが出来る。

これはとても洒落たサービスだと思うのだが、残念ながら実際に買ってみないとそういうサービスがあることが分からない。もったいない。

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好きなステッカーを選んで、パッケージに貼る

全体コンセプトから、商品、サービスに至るまで、斬新なアイデアが散りばめられているが、まだスタートしたばかりで、きっと試行錯誤なのだろう。

「まず事を起こし、走りながら考える」ことを良しとする、私の信条には合致している。

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もっとも今後、これをどう生かすかは、現場の不断の改良と努力が必要だろう。

かなりの実践を必要とするが、やり方によっては、貴重な情報受発信の場として活用することができるかも知れない。

今後の展開を注目したい。