まず足元の良さを知らねば

「上海から福岡まで、飛行機でわずか一時間半です。東京より近いんですよッ」

「福岡―プサンと福岡―松山間は、それぞれ直線距離でほぼ同じことを知っていますかっ」

 などと講演の時に、少し物知り顔で紹介していたら、

なんと瀬戸内海をはさんで、岡山と高松というふたつの県庁所在地が、快速電車でわずか50分余りで結ばれていることを、今まで私は知らなかった。

何も知らないのだ。自分の国のことですら…。

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(列車は瀬戸大橋を渡って行く…)

出張の折に、香川県高松市に立ち寄った。

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生まれて初めての訪問地は、やはりワクワクする。
少しでも時間を惜しんで街中を歩き回りたい生来の癖が頭をもたげる。

ここ数年、大河ドラマファンの私は、源義経の屋島戦跡があちこちにあるというだけでもう興奮してしまう。もっと時間があったら、屋島一帯をぜひ歩いてみたかった。

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(高松平家物語歴史館のロウ人形)

日本の名園「栗林(りつりん)公園」は、広大な敷地のどこに立ち止まっても言葉が出ないくらいの絶景だった。

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この季節、ほとんど松の樹しか目につかず、11月だというのに、特に紅葉が綺麗な訳ではない。
まして、菜園や果樹園には興味があっても(!?)、庭木には興味がなく、風流心も人並み程度なのだが、その私が、とにかくその完璧なまでの美しさに感動した。

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「ニッポン万歳!」と心の中で叫んだ。

おりしも前々日、上海で「豫園」という古い明代の名園を訪ねたばかりだが、中国の人にとっては侘び寂に感じる庭石(玉玲龍と呼ばれる名石)にも、正直、私には頭で解析してみてもピンとこない。

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(上海の名園と謳われる豫園)

それに引き換え栗林公園の造形美には、やはり日本の文化も洗練されていて文句無く素晴らしいなと感じてしまう。

ご当地に来れば、当然、名物「讃岐うどん」をいただかなければ話にならない。

これもとにかく筆舌に尽くしがたい美味さで、小麦、醤油、薬味の洗練された食文化の妙を舌の上で感じ取った。

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(自分で暖めて作るセルフ式では、はじめ惑ってしまう)

半日に4杯もうどんを食べたのは、もちろん生まれて初めてである。

うどんと言えば、私が海外に頻繁に行くようになった20年位前から、香港では「烏冬麺」、台湾では「烏龍麺」として、普通に家庭料理素材として、スーパーや麺売り店でどこででも買えたのには、当時ビックリした。

日本のうどんは、早くから国際的にデビューしていたのである。しかも、日本語の音のままで。

いつか必ずこだわりの食を求めて、アジアでも讃岐うどんのブームがやってくるに違いない。

海外事情を収集するのも結構だが、わが国の知識や素晴らしさをもっと知っておかなければならないことを高松の街は教えてくれた。

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(今年前半、水不足に陥った四国地方)

現場から変わる日本の農業

農林漁業金融公庫の筑後地区友の会の総会が八女市で開かれ、福岡県庁農政部の方と共に講演会に登壇させていただいた。

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農林公庫は、経営基盤の弱い農林水産業に対する融資を行なう機関で、これまで大きな役割を果たしてきたが、現在、政府系金融機関の再編問題の渦中にある。

福岡県の筑後地区は、四季を通じて多種多様な農産物を産出している。都市圏消費者に向けた商品開発や新技術の導入にも積極的な地域で、JAのレベルでは海外輸出に対しても日本でもトップクラスの取り組みを行っている

昨年来、全国的にも注目されている福岡産イチゴのあまおうの香港、台湾向けの輸出でも、この筑後地区のJAの積極的な挑戦によるところが大きい。

国内でもトップクラスの販売力を誇るJAふくおか八女は、昨年来、独自の輸出戦略に取り組み、貿易実務を行なう通関士の資格を持った職員も活躍している。スゴイ!
JA福岡大城は、平成4年ごろからエノキタケをいち早く香港に輸出し、一時、大ブームを呼び起こした。

また、この地域でキノコを生産販売する農業法人を経営する元気な女性達も総会に参加され、大いに意気投合し、農業の持つ可能性について語り合った。

会合では、野田八女市長とも懇談する機会を得、今後の様々な取り組みや同市の農業政策に対するビジョンについての熱い想いをうかがった。

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(スピーチする野田国義八女市長)

10月28日29日には、筑後市で第59回全国お茶まつり福岡大会が開催された。

茶葉の生産販売に関する資機材の展示や製品の即売などが大規模に行なわれ、大勢の人で賑わった。会場では、タレントの森口博子さんやアナウンサーの林田スマさん、地元名士によるトークショーも開かれ、日本の文化に根ざす茶の文化の再認識について語り合った。

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会場では、若い生産者や青年会による様々なイベントが特に印象的だった。彼らにこそ、海外の市場についても理解を深めてもらい、その企画力と行動力で世界に挑戦して欲しいと強く感じた。生産現場の青年、女性達こそ、ニッポンを売る原動力なのだ。

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(青年会のイベント企画には長蛇の列が)

海外を取り込むスピリット

佐賀県西部に位置する白石(しろいし)町にある杵島(きしま)農業改良普及センター主催の勉強会に参加させていただいた。

金木犀の香りがする駅を降り立つと、延々と刈り取った後の田んぼが広がる。

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ここは県の機構であるが、所長をはじめ、若い職員にいたるまでとても勉強熱心な皆さんだった。土地柄なのだろうか。情報交換の場では、次々と質問や意見が出され、予定時間を大幅に超えてしまった。

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(センター全景)

ここでは水稲以外に、タマネギは全国トップクラスの生産高を誇り、ほかにもアスパラガスやレンコン、花卉、イチゴなども栽培されているそうだ。

技術開発にも熱心なようで、閉会後、面白い生食用の葉野菜を紹介してもらった。一見なんでもないサラダ菜のように見えるが、よく見てみると表面に**が噴いているようなとてもユニークな形状だ。

こりゃすごいインパクトだ! しかも、葉を生で食してみると、なんと**味がするではないかッ! すごい! 話によると、何でもアフリカ原産の品種を改良したものらしい。

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(残念ながら、まだ公表できない)

現在開発中なので、実は詳しく紹介できない。ごめんなさい。量産できれば、近いうちに、杵島**や白石**というサラダ野菜が発売されることになるかもしれない。お楽しみに。

こんなインパクトある商品であれば、国内市場と同時に海外にも輸出してみたらどうだろうか、と考えてみた。「技術革新」「販路開拓」このふたつを自分たちの手で行えば、これはすごい自信と活性化が図れることだろう。

また、地域の女性グループが開発したという、地元産大豆を使用したテンペを紹介してくれた。テンペとは、インドネシアで食べられている大豆の発酵食品で、納豆そっくりである。

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(商品カタログより抜粋)

現地では油で揚げたりして食べられているが、日本の納豆と違うところは、粘り気がなく、あの特有の納豆臭さがない。大豆イソフラボンをはじめ栄養価も高いらしく、コレステロール値や血圧を下げる効果もあるということで、最近、健康食品として、日本でも食べられるようになった。

どっこい日本の女性生産者もやるではないか。
「日本商品は海外ではすぐにコピーされるから」などと屁理屈を言わずに、しっかりと海外の良いものを取り入れてアレンジして開発している。こうでなくちゃ。本場に逆輸出する事だってありうるかもしれないゾ。

白熱したやり取りを終え、とても心地よい疲れを感じて、白石の町を後にした。

建国記念日に沸く横浜中華街

今年初めて横浜中華街を訪れた。

ちょうどこの時期は、
10月1日が大陸・中華人民共和国の
国慶節で、
10月10日が台湾の
双十節
いわゆる建国記念日が続き、
中華街でも、毎年それぞれの出身者による慶祝行事や
記念のイベントなどが行われる。

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私は、かつて日中ビジネスの促進団体に勤務し、
3年間ほど、横浜地区の貿易を営む企業の管轄担当をしていて、
ここ中華街の多くの経営者の方々には大変世話になった。

20年ほど前は、
今ほど日中貿易が完全に開かれた時代ではなかったから
中国貿易を専門にしている企業は、
それなりに独占的な利益を得ているところもあったが、
反面、様々な困難や苦労も多かった。

中華街、横浜地区の経営者は、華僑であれ、日系であれ、
柔軟性というか度量の深さのような一種独特の雰囲気があり、
その頃20代の私は、彼らに大人(たいじん)の風格を感じていた。

この日、中華街の大陸華僑系のリーダー格の社長さんと15年ぶりに再会し、情報交換させていただいた。

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地下鉄も直下まで延伸し、新しい中華街の改造に
街を挙げて積極的に取り組むプロセスを仔細に伺った。
日本でも、これだけ中国との交流が活発化し、
商品や人々の結びつきが拡大している中、
文化発信地としての中華街の新たな役割を担っているのである。

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(横浜関帝廟)

カレーとマグロ

神奈川県三崎市と
横須賀市に初めて訪れた。

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JR横須賀駅を降りると、
すぐに多くの自衛艦(だと思う)が停泊しているのが目に飛び込んでくる。

街を歩いていても、
あちこちで制服姿の自衛官に出会うし、
もちろん米軍が駐留しているので、
いかにも基地の町なんだと感じさせられる。

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あちこちでカレーライスの店が目立つのは、
旧海軍の定番メニューである
カレーで町おこしをしているようだ。

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次回は、時間の余裕を持って
歩き回りたい所だ。

   *        *

三崎は遠洋・近海漁業の基地であり
マグロ料理でも有名だ。

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今、中国をはじめとしてアジア各国でも
日本食の普及によりマグロを食べる人たちが急に増えて、
鹿児島県から中国向けに輸出が始まっている

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051011maguro_sashimi (マグロは日本の食文化そのもの)

今後、遠洋で日本とアジアの漁船がマグロを奪い合うことになるだろう。

中国の需要増で、石油や天然資源だけでなく、
食品でもコーヒーやナチュラルチーズの相場が上がっているという。

マグロやフグ、アワビなどもそのうち中国特需が引き金の
価格高騰が訪れるかもしれない。

ピンチと思うか、チャンスと思うか、である。

安中を訪ねる

群馬県安中市で講演させていただいた。

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(信越本線安中駅)

安中・高崎地区商工界の経営者の研修会
物流、製造、自動車、石油、金融保険、不動産、会計事務所など
多岐にわたる。

変化大きい中国・アジア情勢の現状と
北海道・東北や九州のような東京から遠い地方ほど
アジアとの関わりが密接であることをレポートした。

もちろん「ニッポンを売る!」がメインテーマである。

それぞれの分野で非常に関心を持っていただいた。

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(安中の郊外風景)

安中地区には、ケミカル関係に従事する企業も多く、
物流業とともに、最近の原油価格、石油製品価格の高騰には
少なからぬ影響を受けている
という。

研修会の会長のお話では、
石油精製などの技術や設備が不足する中国に対して、
軽油などの石油製品を日本から輸出しているので
日本の石油価格はなかなか下がらないだろうという
見解をご披露いただいた。

石油製品までが、日本より中国の方が高く売れるのだ

国内では、
しばらくは高値を覚悟しなければならないのだろうか。

特需といえば、先の台風13号で
台湾中南部が過去最大という農業被害を被ったのだが、
ここ群馬県嬬恋産のキャベツが
数十コンテナ(40ft)も台湾向けに緊急輸出されたと
現地の商社から聞いた。

日本国内では生産過剰となり、廃棄処分が重なったことにもよる。

8月末に台北に行った時、高級スーパーで
日本産の見事なキャベツの方が
台湾地元産の萎びたそれより安かったのを見て驚いたばかりだ。

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(JR高崎駅)

アジア各地でも、山梨をはじめ、千葉、群馬、茨城産の青果物や食品を
最近良く見かける。

東京大消費圏だけでなく、
海外にも関東のスグレモノが出回ってきた。

独自色強める熊本の輸出アプローチ

熊本県の農産物輸出のアプローチは、
非常に特徴あるもので、とても興味深い。

くまもと農林水産物等輸出促進研究会(会長:吉川農園 吉川幸人社長)が昨年5月に設立されているが、
その構成員はすべて農業法人や企業であり、とてもユニークだ。

一般的に、農産物輸出に関する地方組織としては、
自治体が主導し、JA等農業団体、地場産品振興の外郭団体、商工団体などで構成されているのに対して、
本研究会では、今注目されている農業法人が主体となっている点だ。

(ちなみに熊本県には、別に農業団体等で構成される「熊本県農畜産物輸出促進協議会」が今年発足し、活動を展開している。)

同じ生産者でも
自らの手による販売・販路開拓というテーマに積極的に取り組んでいる組織だけに、輸出にも強い関心があり、新規事業に対するアレルギーも少ないようだ。

しかも、海外輸出というテーマに対して、
関心と「やる気」がある法人が、自ら参加している組織だから
初めから意識が高く、主体的な姿勢で取り組んでいるのである。

だから、発想も柔軟で、ユニークな活動が展開できる。

例えば、多くの県が、輸出対象地域を
上海、香港、台湾などのアジア近隣地域に集中しているが、
「研究会」では、独自性を貫き、
アメリカ西海岸を優先ターゲットにしている点などだ。

22日、ロサンジェルスから、
日系スーパーの社長とバイヤーを招き、
アメリカ向け農産関連商品のセミナーと商談会が開かれた。

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(会場となったグランメッセ熊本)

これまで、アジアでの販路開拓に携わってきた私にとって
アメリカ市場での食品事情は、とても新鮮で、大変参考になった。

セミナーではアメリカ最新事情について紹介があり、
日本のゴボウやナガイモが結構人気だということや
アメリカではBSEはあまり深刻に受け止められていないこと、
また輸入の際に、卵、乳製品、色素については注意が必要なことなど、興味深い話しが盛り沢山だった。

クチナシ色素を使っている日本のインスタントラーメンは輸入できないとか、
ヨモギ(蓬)や七味唐辛子のある成分は、麻薬に準ずるものとして輸入できないなど、
国が違えば事情も異なることがわかる。

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もちろん現地バイヤーから日本の農業法人に対するメッセージは、
人任せに売るのではなく、自ら現場に立って売り歩いてみること、
こだわり、高品質を謳う以上、直感的に差別性を訴えられる商品だけが現地の消費者に支持される
という指摘は、
アジア市場を攻める上でも共通の原則である。

セミナーの後、各メンバー法人から持ち寄られた商品を紹介する個別プレゼンが行われ、積極的な売込みを行った。

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自ら真剣に販路開拓に励む農業法人や食品企業の主体的な活動を
行政や団体がバックアップする熊本県のアプローチは非常に理に適った、
しかも地に足の着いた現実的・継続的な展開例だと思った。

今後の展開が楽しみだ。

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(個性ある農産加工食品が並ぶ)

農耕文化の窓口-糸島で考える

福岡県農業会議糸島支部で講演させて頂いた。

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(会場の伊都文化会館)

糸島は福岡市の西に隣接する山紫水明の豊かな土地で、
志摩町、二丈町、前原市からなり、
九州大学の移転に伴い、
ここ数年の発展が目覚しい地域である。

いまから約8000年前には人が住んでいたといわれ、
この一帯に「伊都国(いとこく)」と呼ばれる国が
1800年前に存在していたとが魏志倭人伝にも記載されている。

至る所に古墳があり、地名も万葉仮名のような読み方も残っていて、
考古学ファンのみならず、
遠い昔に思いをはせることが出来そうな土地だ。

会合では、糸島地域の農業、食品加工のリーダーに参加していただき
会議室は満席となった。

2時間の講演時間もあっという間に過ぎたと感じるほど
非常に熱心に聞いて頂いた。

糸島地域は、福岡商業圏を控えていることから
早くから付加価値の高い農水産物を栽培してきた。

蘭や菊などの花卉栽培は有名で、
沿岸の水産養殖業も多い。
最近では、イチゴの「あまおう」の主要産地のひとつでもある。

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(目を奪われる無数の蘭が栽培されている)

また、畜産業も盛んで、
「糸島牛」はブランド化されており、
鶏肉、鶏卵も九州では知名度が高い。
生卵は、香港向けに毎週数千パックがこの地域から輸出されている。

地元畜産農家が出資して事業展開している
高級ブランド牛乳「伊都物語」は、
福岡でもプレミアム商品として根強い支持を受けている。

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(生クリームのようなプレミアム牛乳「伊都物語」)

二丈町の「福ふくの里」は、一見どこにでもある農産品直売所、道の駅のようだが、実は、漁業関係と農業関係が対等に協力して事業展開しているユニークな直販所だ。

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どこにでもありそうだが、意外にこのような形態は珍しいそうである。
まさに「海彦&山彦」の世界だ。

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(産直野菜と天然魚介類が共に充実している)

朝9時前から、多くの買い物客が開店を待っているそうで、
開業初年度から計画を大幅に上回る売り上げを出している。

このように、糸島は、農林水産畜産と非常にバランスの取れた豊かな物産に恵まれ、
また、ユニークでチャレンジ精神に富んだ人材や組織に支えられている地域だ。

これまで、日本産の農産物がすでに輸出されているという情報がなかったため、まだ実績はないが、このような進取の気性に富んだ地域なら
きっと行動を起こしてくれるに違いない。

かつては、稲作の伝播など大陸文化交流の窓口だった土地柄だけに
現代の交流拠点として、ぜひ海外にも雄飛してもらいたいものだ。

商業ベースの中国向けのナシ輸出が遂に実現

先月24日に、福岡県産のナシ2.5トンが
中国上海に向けて出荷された。

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(出荷を待つ上海向けの福岡県産のナシ)
*写真はいずれも福岡県提供

昨年も福岡県は、地元企業の支援でナシを上海に輸出した実績があるが、今回は、産地から農業団体、物流、商社、小売店のすべての関係組織が取り組んだ、初の本格輸出となった。

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(上海の高級デパートで販売される福岡産のナシ)

中国大陸への農産物輸出は、
限定的な輸入制度、未発達の商物流など数多くの難題を抱えていて、
テスト輸出や供与は出来ても、商業ベースの輸出となると難度が極めて高く、早くから輸出事業に取り組んできた福岡県も、中国大陸向けには2年越しの実現となった。

今回、輸出実現の大きな推進力となったのは、
JA筑前あさくらナシ部会とJA全農ふくれんの主体的な取り組みによるところが大きい。

「今年は、ぜひ私たちのナシを海外に輸出したい!」という年初からの産地の熱意は、ただならぬものがあった。

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(自慢の福岡県産の豊水梨)

福岡県の農産物輸出のトータルコーディネートは、
今年発足した福岡県農政部
「福岡の食・輸出促進センター」である。

促進センターでは今年、
輸出に関心を持つ、やる気のある産地を募り、
きめ細かいサポートを展開している。

海外の販路開拓も、輸入商社、および上海の高級デパートである久光百貨さんの協力を仰ぎ、商流を築いた。

産地側もJA組織が積極的に動き、品質チェックや梱包等にもに気を遣った。

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(輸出のために、産地が品質チェックに万全を期した)

また、今回特筆すべきは、海外輸送に航空機ではなく「上海スーパーエキスプレス」が使われたことである。博多-上海間を27時間で結ぶ高速貨物船で、RORO船と呼ばれるトレーラーごと積み込むことが出来る、いわば海上国際シャトル便である。鮮度とコストの両立が求められる青果物の海外物流において、日本で唯一、上海港との間で高速定期航路を持つ博多港のポテンシャルは非常に高いのである。

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(上海スーパーエキスプレスに船積みされる貨物)

つい数ヶ月前までは、あまりに立ちはだかる困難が多く、あきらめかけていた中国向けのナシの輸出が実現したことは、実に大きな前進である。

特に、生産者、農業組織、商社、物流、小売店、そして行政が有機的に連携したことの意義はとても大きい

関係者の努力に心から敬意を表したい。

今後、この輸出が継続できるのか、福岡ブランドが認知されるか、ナシ以外にチャンスはあるのか、など難題が山積している。

13億人のマーケットの入り口にようやくたどり着いたばかりだ。

秋のバレンタイン商戦?

香港に出張した。

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(ネイザンロードの夜景)

相変わらず最高気温32℃の蒸し暑い香港の街だったが、
外出も億劫になるような一時の暑さのピークに比べると
少しは凌(しの)げそうな気もするが、
体にこたえることは間違いない。

それでも暦の上では、9月18日(旧暦8月15日)に、はや中秋を迎える。

ということは…。

やはり思ったとおり、
大型の百貨店の地下食品売り場は、
ほとんど月餅コーナーに占拠されていた。

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イメージとしては、日本の1月末ごろから
バレンタイン商戦向けのチョコレート売り場が
食品売り場を占拠しているのと、まったく同じ。

バレンタインに全く縁のない僕がひと月間
閉口してしまうあの感じだ。

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香港や台湾、中国などでは、中秋節に月餅を贈る習慣があり
親しい友人や取引先などにプレゼントするのである。
会社がまとめて購入することもあるそうで
メーカーにとっては、一年の売り上げをここで稼ぐ大事な時期なのである。

ここ香港でも最近は、有名ブランドの缶入り定番ギフト以外にも
デザインが工夫されたり、洋風のケーキのようなもの、
アイスクリームでできたアイス月餅、
冷やして食べる「氷皮月餅」などというユニークなものまである。

まもなく開園を控えたディズニーのイラストの付いた缶に入った月餅も売れており、トピックを感じさせる。

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(台北の百貨店地下売場でも)

月餅の上に金箔がのっている程度は許されるが、
昨年、バブルの様相の中国で、
月餅の中に金貨や旅行券を入れたり、
住宅つきなど豪華景品をつけた「バブル月餅」が登場し、
景品目当てに月餅を食べないのは浪費であるとして、
中国政府は、7月に華美を規制する通知を出したという。

贈賄汚職につながったり、華美な包装材が大量のゴミを発生させたりするためだと言われている。

この時期、月餅以外にも
乾し椎茸や貝柱、ふかひれなどの高級乾貨物のギフトセット
コーナーで販売されていた。

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(椎茸や貝柱等の高級食材ギフトも良く売れる)

また、満月にちなんで、この頃出荷されるナシ
売れるようになった。
鳥取県の20世紀ナシをはじめ、
昨年からは、日本の複数の県の豊水などの赤ナシ
売られるようになり、
旧正月(春節)に次ぐ有望なギフト商戦と位置づけられている。